織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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セシリア戦になりますが1話で纏まらなかったので二話に分けました。

ではどうぞ


第11話

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

俺が現れたのを見るとセシリアはふふんと鼻を鳴らした。相変わらずの腰に手を当てたポーズだ。

 

けれども俺はそんな事に興味はなくセシリアのISに目を向ける。

 

鮮やかな青色の機体『ブルー・ティアーズ』。その外見は、特徴的なフィン・アーマーを四枚背に従え、どこか王国騎士のような気高さを感じさせる。

それを駆るセシリアの手には二メートルを超す長大な銃器レーザーライフル《スターライトMkⅢ》が握られていた。

ISは元々宇宙空間での活動を前提に作られているので原則空中に浮いている。そのため自分の背丈より大きな武器を扱うのは珍しくない。

 

うん。ここまでは虚さんから教えてもらった通りだな。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

腰に当てたを俺の方に、ピッと人差し指を突き出した状態で向けてくる。左手の銃は、余裕なのかまだ砲口が下がったままだ。

 

「チャンスって?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

 

そう言って目を笑みに細める。

 

俺のISから情報が流れ、ロックされているのがわかる。

 

うーん。俺、謝るような事したかな?むしろ謝る必要があるのはセシリアじゃないのかな?主に千冬姉に……とナメられた言葉を投げ掛けられても怒りは感じなかった。

 

「そういうのはチャンスとは言わないな」

 

「そう?残念ですわ。それなら―――」

 

――警告!敵IS射撃体勢に移行。トリガー確認、初弾エネルギー装填。

 

「おわ――ひいいっ!?」

 

「へ?」

 

俺に目掛けて砲口からレーザーが発射されそうになり身構えていたら、突然セシリアは悲鳴をあげて自分の身体を抱き締めながら震え出した。

 

真剣勝負に気持ちを切り替えていた俺にとって突然の事に唖然となった。

 

セシリアの突然の変化にざわざわと観客席から戸惑いの声がわき起こる。

 

「お、おい大丈夫か?調子が悪いんなら別の日にしてもいいんだぞ?」

 

顔を青ざめさせて震えているセシリアに対して心配になり声をかけた。体調が悪くて負けたなんて言われたくないし、そんな相手に勝利しても嬉しくないからだ。

 

「だ、大丈夫です。あなたに心配されるつもりはありませんわ」

 

「そう言われてもな……」

 

いまだに震えているセシリアに正直どうすればいいか迷っている。

 

「敵の施しは受けません!お別れですわね!」

 

青ざめさせていた顔を奮い立て、スターライトから閃光が襲い掛かる。

 

「おわっ!?」

 

不意討ちに近い形だが何とかかわした。とりあえずセシリアは元に戻ったようだな。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲{ワルツ}で!」

 

そう言い、射撃射撃射撃とまさに雨のごとく降り注いでくる。しかも的確にこちらを狙ってくる為、凌ぐのですら難しい。でも俺は不思議と焦りや不安がなかった。

 

「装備は…」

 

白式に内装されて武装を見ると『近接ブレード』のみだった………。

 

え―、……それしかないのかよ………。

 

仕方ないな……。

 

とりあえず使ってみるか、俺は近接ブレードを呼び出して装備した。

 

「中距離射撃型のわたくしに近距離格闘装備で挑もうだなんて………笑止ですわ!」

すぐさまセシリアの射撃。それを難なくかわす、普通なら絶望的な距離だが俺には問題ない。何故なら―

 

「悪いが俺は絶対勝利の女神達に愛されているんだ。そう簡単には負けてやる訳にはいかないな……いくぞ!」

 

今まで特訓に付き合ってもらった簪、刀奈さん、そして虚さんや本音の為に引くわけにはいかない。激戦が、始まった。

 

――――――――――――

 

「くっ……なかなかやりますわ」

 

開始から10分が経過した。

シールドエネルギーはそんなに減ってはいないし、実体ダメージはない。

 

「このブルー・ティアーズを前にして、初見でかわされるなんてあなたが初めてですわね」

そう言ってセシリアは自分の周りに浮いている4つの自立型機動兵器を、まるでフリスビーを取ってきた犬を褒めるかのように撫でる。

フィン状のパーツに直接特殊レーザーの銃口が開いている。その兵器の名前が『ブルー・ティアーズ』と呼ばれている。

最初虚さんから聞いた時にはややこしくなったが実戦投入一号機なのでそうなったらしいと教えてくれたので納得した。

 

そのおかげもあって対策はばっちりだ。本当に虚さんには感謝だな。早い内に差し入れしよう。

 

「いつまでもまぐれは続きませんわ。では、閉幕{フィナーレ}と参りましょう」

 

セシリアは笑みと共に右腕を横にかざす。すぐさま、命令を受けたブルー・ティアーズは二機多角的な直線機動で接近してくる。

 

「よっ、ほっと」

 

ビットの先端からレーザーが放たれるが難なくかわす。そこからセシリアのライフルが突いてくるが忍者の動きのごとくよけて接近していく。

 

「さっきからちょこまかとややこしいですわ……」

 

俺の動きに着いてこれずセシリアは思わず呟いた。

訓練機である程度の回避のしかたを教わっていたのと初期状態でここまで動けているのはありがたい。

簪が軽く設定してくれたのが役にたってるな、それならこれが出来るな。

 

俺は簪と一緒に特撮ヒーロー物を観ていた時に必殺技として繰り出していたのを思い出してセシリアの頭上をはるか上空に飛び出した。

 

「一体何を?」

 

セシリアは俺の行動に訳がわからないみたいだがこの方が好都合だ。

このまま1回転してそのままセシリア目掛けて急降下して右足を突きだした。

 

「はああぁぁっ!」

 

「なっ、何ですの!?」

 

セシリアは咄嗟にビットを使い、俺の動きを止めようとしたがそれよりも速く落下している為に当たらない。

 

いけるな。当たれ!!

 

ズドォォン!

 

俺のキックは見事セシリアのボディにヒットした。

 

「きゃああっ!?」

 

衝撃に耐えきれなかったのか悲鳴をあげて吹き飛ばされる。

 

「な、何て攻撃を……」

 

セシリアは壁際までに吹き飛ばされたところを体勢を立て直した時には驚愕の顔に染まっていた。

 

ある程度のダメージは与えたはずたが決定打にはならなかったか。

 

「もう接近はさせませんわ!今度こそ閉幕{フィナーレ}です!!」

 

セシリアの表情が変わったのかわからないがどうやら俺は強者と認識して本気になったみたいだな。

 

「今度はこっちが閉幕にしてやるよ」

 

グッと右手を握り締めてセシリアに向かい打った。

 

――――――――――――

 

「はあぁ……。凄いですね織斑くん」

 

ピットでリアルモニターを観ていた真耶はため息混じりに呟く。確かに一夏はセシリアと比べて稼働時間が劣るとはいえ健闘を通り越して圧倒しているのだ。

 

「ああ、更識達との特訓の成果が出ているな」

 

「そうですね……惚れ惚れしちゃうくらいに成長してますよ」

 

千冬の言葉に笑みを浮かべて楯無は彼氏である一夏の成長ぶりを喜んだ。

 

「一夏……カッコいい……」

 

そして簪は頬を紅く染めながら両手を胸の前に組み目をキラキラと輝かせていた。

 

(やれやれ……一夏の事が好きだからな……仕方ないか……)

 

簪と楯無には恋人フィルターもあってか一夏の健闘ぶりによりさらにカッコよさを引き立たせており、その戦いぶりを目に焼き付けようとモニターに食い入っている事に気付いているのは千冬だけだった。

 

(お二人共真剣ですね。特訓相手をしたから心配なんですね)

 

真耶は二人は一夏の特訓相手をしている事は知っていたので戦いぶりが気になっているのだなと感じていたがしかし、すでに恋仲になっている事は知らない。

 

(頑張れよ……勝負はまだわからないぞ……)

 

千冬はモニターを見つつ心の中で一夏の事を応援するのだった。

 

――――――――――――

 

――獲った!

 

セシリアの間合いに入った俺はブレードを振り下ろしてビットを破壊していく。

 

「なっ!ブルー・ティアーズが!?」

 

まさか全部破壊されるとは思わなかったのかセシリアは驚きと動揺が隠せないようだ。

 

チャンスだ!俺は一気に勝負を決めようと接近したが―

 

「―――かかりましたわ」

 

ニヤリとセシリアが笑うのが見えた。――マズイ!ここで出してくるのか!?

焦り過ぎたか虚さんに教えてもらっていた大事な事を忘れていた。

 

ヴンッ―。

 

セシリアの腰部から広がるスカート状のアーマー。その突起が外れて、動いた。

 

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは6機あってよ!」

 

そのまま俺目掛けてレーザー射撃用のビットではなく、弾道型つまりはミサイルだ。

 

「チッ……」

 

ドカァァンッ!!

 

咄嗟にブレードを振り下ろすが間に合わず、俺は爆発と光に巻き込まれた。

 




おまけ


セシリアが急に震え出した理由―

「わたくしが――」

(オルコットめ、あれだけ補習しても理解しなかったようだな。私は悲しいぞ……)

(本当にいい度胸してるじゃない。一夏君には悪いけど実力行使しようかしら)

(一夏の事をあんなにバカにして……許せない!!)

上から千冬、楯無、簪である。額にはビシッと怒りマークが出ていた。

「二人共。万が一、織斑が負けたら私が出よう。それでいいな?」

「いえいえ私がでます。織斑先生の手を煩わせる訳にはいきませんよ」

「ううん。私がやる、あんな小物にお姉ちゃんや織斑先生が相手するのはもったいないよ」

と三者三様に言うが心は既に一緒だった。

一夏をバカにしたオルコット許さん!!である。

哀れセシリア、すでに処刑と言う名の模擬戦が組まれていた事は知らなかった。

「「「うふふふ……」」」

と笑み浮かべてセシリアを見つめた。

セシリアはそれを恐怖と感じたのか悲鳴をあげて、寒さで震えるのだった。

(オルコットさん。さすがにやり過ぎですね……自業自得です)

1組で一番の良心的である真耶は3人を止めるような事はしなかった。

何故ならあれだけ補習したのに理解してもらえなかった哀しさにショックだった。

その事に関して心を鬼にして実力行使せざるを得ないと決心していたのだった。
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