織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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セシリア戦後半です。

どうぞ


第12話

「一夏!」

 

「一夏君!」

 

モニターを見つめていた簪と楯無は、思わず声をあげた。

 

静かに戦況を見詰めていた千冬と真耶も、爆発の黒煙に埋まった画面を真剣な面持ちで注視する。

 

「――ふん」

 

黒煙が晴れたとき、千冬は鼻を鳴らした。けれど、どこかその顔には安堵の色がある。

 

「肝心なところで油断したな……機体に救われたか」

 

まだかすかに漂っていた煙が、弾けるように吹き飛ばされる。

 

そしてその中心には、あの純白の機体があった。

 

そう、真の姿で――。

 

――――――――――――

 

――フォーマットとフィッティングが終了しました。確認ボタンを押してください。

 

ふう……危ない危ない……。ミサイルの直撃を受けたときに現れたウィンドウにちょっと安堵した。

 

どうやら、俺専用になったみたいだ。

 

そして指示されるがまま『確認』ボタンを押すと―。

 

キィィィィン…。

 

高周波な金属音が聞こえるがそれが合図なのだろう。全身の装甲が新たな形に変わっていく。

 

「ま、まさか……一次移行{ファースト・シフト}!?あ、あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!?」

 

「その通りだよ。出来れば初期設定のまま、終わりたかったが………流石は代表候補生、そう簡単にはいかなかったな」

 

「っ……バカにして!」

 

俺の言葉を聞いてセシリアはギリッと歯噛みをしていた。

 

どうやら挑発と受け取ったみたいだな。

 

そんなやりとりをしているうちに俺の装甲は変化を終えた。

 

最初の工業的な凹凸は消え、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的などこか中世の鎧を思わせるデザインへと変わっている。

そして何より変わったのはその武器だった。

 

――近接特化ブレード《雪片弐型》。

 

日本刀から生まれたような刀身は、刀より反りのある太刀に近い。

それに何より、その名前だ。

 

――雪片。それは、かつて千冬姉が振るっていた専用IS装備の名称。刀に型成した形名。それが雪片。

 

キツいな………

 

「まさかこれを持つことになるとは思わなかったよ」

今更ながらこの専用機を造ったヤツに文句を言いたくなった。

 

雪片は千冬姉だけが持つのにふさわしい武器のはずだ。なのに俺がこれを持つのには正直手に余る。

 

……ああ、まったく。つくづく思い知らされる。

 

「俺は恵まれ過ぎだよな……」

 

専用機に千冬姉の最高の武器を持たされる事に俺は思わず呟いた。

 

「とりあえず、この武器{名}に恥じない戦いをするか」

 

「……は?あなた、何を言って―」

 

「さあ、ここから本番だ!」

 

俺は雪片をしまい。セシリアに素早く接近する。

 

「なっ、速い!?」

 

さっきまでとはスピードが違う、さすがに俺専用になっただけはある。

 

そして、その勢いのまま拳を振り下ろした。

 

「くうっ!」

 

セシリアはとっさに銃身を盾にしてガードするが衝撃は伝わっているようだ。

 

今度は焦らずにいくぞ!

 

俺はセシリアに追撃ラッシュを開始していく。

 

殴打、蹴撃、裏拳、ついでにドロップキック。

 

格闘オンリーで攻めていきセシリアの戦いはさせない。

 

「このっ!いい加減にしなさい!」

 

俺からのラッシュに対応が出来なくなったのか銃身を振り回して距離を離していく。

 

「これ以上はやらせませんわ!」

 

ラッシュ中に再装填していたのか弾頭型のビットが発射される。

 

「もう同じ手は食らわねえ!」

 

しまっていた雪片を呼び出しての横一閃!残っていたビットは全て破壊した。

 

もう隠し玉はないな、虚さんからレーザーが曲がる射撃があると聞いてはいたがセシリアはそこまで扱えていないみたいだ。

 

さあ、そろそろ決めるぞ。

 

雪片は鞘にしまい腰に装着し構える、所謂居合いの形だ。

 

千冬姉は刀を抜いたままで一撃必殺の技を使うが俺は違う。

 

俺は千冬姉みたいな戦いは出来ない………、けれども俺は俺の戦いをするだけだ。

 

「あら、武器をしまうだなんて降参ですか?」

 

「いや、違う。この一撃で仕留めるだけさ!」

 

俺はそう言い、セシリアに一気に加速し接近する。

 

「このっ!墜ちなさい!!」

 

セシリアは接近を許すまいとレーザーライフルをしきりに連射してくるがもうすでに見切っている。

 

後はタイミングのみ……。

 

俺は居合いの間合いに飛び込みセシリアの懐に近付いたところで雪片を抜刀し素早く一閃。

 

そのままセシリアを通りすぎて離れた。お互いに背中合わせにしつつ雪片を1回転させて鞘に収めて呟く。

 

「俺の勝ちだ……」

 

その瞬間セシリアの機体からバチンと言う音と共にエネルギーダウンしていくのがわかる。

 

『試合終了。勝者織斑一夏』

 

決着の着いたブザーとアナウンスで俺の勝利が決まった。

 

――――――――――――

 

「よくやったな織斑。代表候補生に初戦で勝利した事を喜んでいいぞ」

 

ピットに戻った俺に千冬姉はそう言って誉めてくれた。

 

「おめでとう一夏。凄くカッコ良かった」

 

「一夏君良かったわね。特訓が役に立ったみたいだし、私達も嬉しいわ」

 

 

簪と刀奈がやって来てお褒めの言葉と共に抱きしめてくれた。

 

ああ……俺勝ったんだな。しみじみとISでの初勝利を噛みしめる。

 

「えっと、ISは今待機状態になってますけど、織斑くんが呼び出せばすぐに展開できます。ただし、規則があるのでちゃんと読んでおいてくださいね。はい、これ」

 

山田先生がIS起動におけるルールブックを渡されたが結構分厚い。まあこれくらいでないと規則にならないんだろうな………。

 

「何にしてもお前の初戦はよくやった、今日はこれでおしまいだ。帰って休め」

 

「ありがとうございます」

 

「それから更識姉妹、織斑を頼んだぞ」

 

「はい」

 

「わかりました」

 

千冬姉に促されるまま俺と簪と刀奈さんはピットを後にした。

 

――――――――――――

 

「はあ……」

 

あれから制服に着替えて夕飯を済ませて部屋に戻ってくるなりソファーに座り一息ついた。

 

「お疲れ一夏」

 

「お疲れ様一夏君」

 

俺の両隣にそれぞれ座り労いの言葉をかけてくれる簪と刀奈さん。

 

「ああ、みんなのおかげで勝てたから正直ホッとしてるよ」

 

部屋に戻って張り詰めた空気が無くなり体が重くなった気がする。今までの疲労感がやってきたみたいだ。

 

「これからもISの訓練は持続させないとね」

 

「そうですね。お願いします」

 

「私も頑張る。ようやく専用機が完成したから一夏と一緒にできるね」

 

そう言ってぐっと両手を握り締めて気合いの入った顔をする簪。

 

今まで専用機の完成が遅れていたがようやく完成のメドがたったみたいだな。

 

一時は完成が見送られる事になりそうだったからな………主に俺のせいで………。

 

俺の専用機を造ったところは簪と同じ倉持技研だそうだ。

 

ところが唯一無二の俺が優先されてしまい簪の専用機の完成を見送られてしまいその事で悲しんでいた姿を見て腹がたった。

 

なので倉持に殴り込みという名の抗議をしようとしたが千冬姉に止められた。

 

私が話をするから安心しろと言っていたのでどうかなと思っていたが、次の日には簪の専用機の完成見送りの件はなくなり晴れて完成する事になった訳だ。

 

ただ簪が言うには技術者達の顔にあちこち痣があったと言っていた事を聞いて思わず頭を抱えたくなった。

 

千冬姉やりすぎだよ………。

 

まあ、千冬姉も怒ってたんだな………。簪と刀奈さんとは仲良いし実の妹みたいに可愛がってるからなおさらだ。

 

「あ〜、そういえばクラス代表どうしょうか……」

 

ふと思い出して呟いた。

クラス代表決定戦で勝利した訳だから必然的に代表になるんだよな。

 

「一夏、クラス代表になるの嫌なの?」

 

俺の顔を見て気になったのか簪が聞いてきた。

 

「まあな、俺としては最初の一年はISの実技と勉強を優先したいからそういうのは遠慮したかったんだよ………」

 

クラスの女子達にしたら唯一無二の男性操縦者である俺を出したかったんだよな〜色んな意味でな。

 

「確かにそうよね。一夏君はまだ初心者だし、クラス代表が忙しくてISの勉強が疎かになったら大変ね」

 

「ええ、出来れば誰かにやらせる形にしたいんですが……何かないですか?」

 

「だったら生徒会に入らない?一夏君が入るなら歓迎するわ」

 

俺に生徒会入りの提案をする刀奈さん、確かに魅力的だよな。

 

「構いませんが俺が入っても大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫よ。一夏君と簪ちゃんが入学するまでは虚ちゃんと一緒だったし、人手が欲しいのよ。どうかしら?」

 

「わかりました。生徒会に入ります」

 

「ありがとう一夏君」

 

「私も生徒会に入ってもいい?」

 

「もちろんよ簪ちゃん」

 

俺が生徒会入りが決まり、それを受けて簪も入りたいと言ってきたのを笑顔で了承する刀奈さん。

 

これでクラス代表は回避される事は決まったな。まあ、セシリアがやりたがってたし問題ないだろう。

 

「一夏君の生徒会入りが決まったところでそれじゃ夜の運動しましょうか?」

 

そう言って刀奈さんは制服の上着を脱ぎ俺にすり寄ってきた。

 

「えっと……今日はもう疲れたから休みたいんですけどダメですか?」

 

「ダ・メ」

 

「それに一夏、山田先生の胸をじっと見てた……」

 

あらら……、さっきの件での嫉妬から火が着いてしまったようです。

 

「なので私達の魅力で一夏君をメロメロにしないとね」

 

「うん。いっぱいして惚れ直してもらうんだから」

 

「あはは……困ったな……」

 

と言ってはみるが本当は困ってない、困ったフリをしてるだけで顔がニヤケてしまっている。

 

「だから今夜は寝かさないよ」

 

「そう言う訳だから覚悟してね」

 

「「一夏(君)♪」」

 

そう言って恋人達に押し倒されてしまい、そのまま俺達は情事に展開するのでした。

 

――――――――――――

 

「では、一年一組の代表はセシリア・オルコットさんに決まりました」

 

『ええ―――っ!?』

 

翌日の朝のSHR。山田先生が嬉々として喋ってはいるがクラスの女子は納得がいってはいないようだ。

 

「静かに!私が理由を話そう」

 

騒いでいる女子達に一喝して黙らせる千冬姉。

 

「なぜ織斑がクラス代表にならなかった理由は生徒会入りが昨日決まったからだ。なのでクラス代表との掛け持ちは無理と判断した為にオルコットがクラス代表を就任する事が決まったのだ。わかったか?」

 

生徒会入りと言う説明にざわめきたつ女子達、まあ当然かな?

 

「あ、あの……少しいいでしょうか」

 

そんなざわめきの中セシリアが手をあげた。

 

「なんだオルコット?」

 

「は、はい……。この前の発言についてお詫びと謝罪したいのですがよろしいでしょうか?」

 

ずいぶんとおどおどしているな、昨日までの傲慢な態度嘘みたいだ。

 

「いいだろう。許可する」

 

「はい。この前の発言で皆さんに不愉快な思いをさせてしまい本当に申し訳ございませんでした」

 

深々と頭を下げてセシリアは皆に謝罪をした。どうやら昨日の内にようやく反省したのだろうこれで落ち着くといいな。

 

「ようやく代表候補生としての自覚が出来たようだなオルコット」

 

「はい……反省しています」

 

「さて、諸君。納得していない事はないかもしれないがオルコットは反省している。これで終わりにしようそれでいいな」

 

『はい!』

 

おお、さすが千冬姉だ。バッチリクラスを纏めあげたな、でなきゃ教師なんてやってられないからな。

 

「それではクラス代表はセシリア・オルコットに決まりだ。異論はないな」

 

はーいとクラス全員一丸となって返事をした。団結はいい事だ。

 

こうして授業が始まった訳だが、視線を感じた。

 

視線の主はセシリアだ。

 

昨日までの見下していた感じがなくなり、俺をまるで尊敬するかのような表情で見ていた事に気付いた。

 

まさかね………俺はふっとある事を考えたがやめた。

 

とりあえず授業に集中しないとな。




セシリアが改心した理由は次話のおまけで書きます。

しばしお待ちください
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