織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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お待たせしました。

ではどうぞ


第13話

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット。試しに飛んでみせろ」

 

四月も下旬、遅咲きの桜の花びらがちょうど全部なくなった頃、今日もこうして千冬姉の授業を受けている。

 

俺は千冬姉に急かされる前に展開する為意識を集中させる。

 

ISは一度フィッティングしたら、ずっと操縦者の体にアクセサリーの形状で待機している。

ちなみにセシリアは左耳のイヤーカフス。俺は右腕のガントレット。普通はアクセサリーなんだんだが………何故か俺は防具になっていた。

 

(来い、白式)

 

そう心の中でつぶやく。刹那、右の手首から全身に薄い膜が広がっていくのがわかる。約0・5秒の展開時間。俺の体から光の粒子が解放されるように溢れて、そして再集結するようにまとまり、IS本体として形成される。

ふわりと体が軽くなる。各種センサーが意識に接続され、世界の解析度が上がる。一度瞬きすると、俺の体はIS『白式』を装備した状態で地面から十数センチ浮遊していた。

同じく、セシリアもISを装備して浮かんでいる。

 

「よし、飛べ」

 

言われて、俺達は急上昇し、目的の地点まで到達した。

これも刀奈さんと簪と一緒に訓練している成果が出ている。授業では昨日習ったばかりだが上級生の虚さんと刀奈さんから詳しく教えてくれたので解りやすかった。

正直、教えてくれる人がいるのは本当に助かるな。

全くわからない状態だったら………やめよう、惨めな展開しか思い付かなかった…………。

 

「やっぱり空を飛ぶのはいいな」

 

空からの景色を見ながら呟いた。ISを装備しての訓練はキツイけど楽しくもある。空を飛ぶ事によって全く違う景色が見えるから、ある意味心踊るものがある。

 

こうしてみるとISって良いものなのかなと好きにはなれそうだ。

 

確かに束さんが造ったISは確かに宇宙活動用としての目的だがしかし、本来とはかけ離れた使い方や女性にしか使えない事による女尊男卑という、歪んだ世界になってしまった。

 

まあ、俺の姉がブリュンヒルデだし、あんまり本人の前では言いたくはないが一時期千冬姉とISが嫌いになってた時はあった。

 

千冬姉がモンド・グロッソで優勝してから色んな人が織斑千冬の弟としての色眼鏡として見られるから俺はこの生活に嫌気が差していた。

 

どいつもこいつも千冬姉が優秀だから弟の俺も優秀だろと言わんばかりだ。

 

おかげで俺の心はやさぐれてしまい。もういいだろ、構わないでくれと諦めてた時期があったな…………。

 

としみじみしていると――

 

「一夏さんは上達が早いですわ。わたくしからすれば才能があってうらやましい限りですわね」

 

セシリアが俺に話し掛けて来て思考をやめる。

 

「そうかな?俺としては教えてくれる人達が優秀だから上達してるだけで才能があるかわからないぞ」

 

「それを理解して実践出来るから才能があるとわたくしはそう思いますわ」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

楽しそうに微笑むセシリア。その表情は嫌味でも皮肉でもなく、本当に単純に楽しいという笑顔だった。

 

あの試合以降、セシリアの態度は軟化され良家のお嬢様らしく振る舞いクラスメイトの評判は悪くない。初めて会った時の態度が今ではすっかり影を潜めている。

 

どっちが本当のセシリアかわからないが千冬姉と山田先生から代表候補生とクラス代表の自覚が出てきたなと言っていたっけな。

 

まっ、俺としては今のセシリアの態度なら好感は持てると言っても友達としてだけどな。

 

「一夏さん、よろしければそのコーチなさっている方を教えて頂けてませんか?わたくしも一夏さんと一緒に強く―」

 

「一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!」

 

いきなり通信回線から怒鳴り声が響く。見ると、遠くの地上では山田先生がインカムを箒に奪われておたおたしていた。何してんのあいつ?つかそんな事したら………。

 

ゴチン!!

 

「〜〜っ!?」

 

「教師の装備を奪うな馬鹿者!それから勝手に指示を出すな!!」

 

千冬姉のゲンコツが再び火を噴き、箒の頭上に振り下ろされた。箒は痛さから言葉にならない声で頭を抑えながら身悶えている。

 

 

あいつ(箒)学習能力ないのかな?

 

先日のクラス代表決定戦の時も刀奈さんに突っ掛かってゲンコツ喰らっているのにな………はあ。

 

「織斑、オルコット、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

「了解です。では一夏さん、お先に」

 

言って、すぐさまセシリアは地上に向かう。ぐんぐんと小さくなっていく姿を、俺は感心しながら眺めた。

 

「流石だな代表候補生は」

 

そして完全停止も難なくクリアしたみたいだ。――さあ、俺の番だな。

意識を集中させて一気に地上を目指す。

 

(そろそろか………)

 

俺は降下しながら目標に近付いて来たので完全停止に移行させて停止する。

 

「うむ、十センチ。目標通りだな、ちゃんと訓練しているな」

 

「ありがとうございます」

 

と千冬姉からお誉めの言葉を頂いた。厳しいイメージのある千冬姉だがちゃんと誉める時は誉めてくれる。まあ、授業態度ややってはいけない行動を取るとビシッと締める。さっきの箒がいい例だな、うん。

 

その後、武装関係の展開をやったがセシリアは近接武装に戸惑い、千冬姉から注意を受けたら何故か俺に責任転嫁してきた。

 

『責任をとって頂きますわ!』

 

と言って来たがそこは自分でなんとかしようなセシリア。

 

――――――――――――

 

「というわけでっ!セシリアクラス代表決定!そして織斑くん生徒会副会長就任おめでとう!」

 

「おめでと〜!」

 

ぱん、ぱんぱ―ん。クラッカーが乱射される。俺の頭に乗ってきた紙テープは、その実質重量よりもはるかに重くのしかかる。

ちなみに今は夕食後の自由時間。場所は寮の食堂、一組メンバーは全員揃っていた。各自飲み物を手にやいのやいのと盛り上がっている。

 

「……………」

 

おかしいな、めでたいのかこのパーティーは………。

ちらり壁を見ると、そこにはデカデカと『織斑一夏生徒会副会長就任、セシリア・オルコットクラス代表就任パーティー』と書いた紙があるが………。

 

何で俺のだけ字が大きく、セシリアのが小さいんだ………。絶対に文句言いそうだな、就任パーティーね……。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

さっきから相づちを打っている女子は二組だった気がするんだが、気のせいか。んな訳ないよなあからさまにクラスの人数が越えているし、一組じゃない人達や上級生もいる。

 

「みんなパーティーを楽しみたいのよ」

 

その上級生の筆頭である刀奈さんは俺の隣に座って飲み物を注いでくれる。

 

「一夏の人気もあるのかもね……」

 

と他クラスである簪はそう言って俺の隣に座りお菓子をよそってくれた。

 

「人気者だな、一夏は………ふん」

 

箒は機嫌を悪くして鼻を鳴らして離れた場所に座り、お茶を飲み始めた。

 

気にしない、気にしないっと。

 

「はいは―い、新聞部で―す。話題の新入生、織斑一夏君に特別インタビューをしに来ました〜!」

 

オーと一同盛り上がる。あの、俺だけじゃなくてセシリアも取り上げてください。

 

でないと彼女のプライドに火が着きそうだな………。

 

「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってま―す。はいこれ名刺」

 

受け取って、その名刺を見ると、随分と手が込んでるな……将来はジャーナリストを目指しているのかな?

 

「薫子ちゃんのお姉さんは雑誌の編集者をやっているのよ」

 

「そうですか」

 

「ではではずばり織斑君!生徒会副会長になった感想を、どうぞ!」

 

ボイスレコーダーをずずいっと俺に向け、無邪気な子供のように瞳を輝かせている。

 

「そうですね……」

 

生徒会副会長という重役を担うので下手な回答は出来ないなと少し考える。

 

「副会長に就任したので会長を支え、迷惑をかけないよう責任を持ってやります」

 

と無難な回答をしたが―。

 

「えー。もっといいコメントちょうだいよ〜。俺に触るとヤケドするぜ、とか!」

 

どうやら不満のようだ。しかもそんなキザなセリフは言いたくはないな………似合わないし、キャラじゃない。

 

「そう言われましても………俺としては重役に就任したのでふざけた回答は出来ませんよ」

 

「固いね〜。じゃあまあ、適当に捏造しておくからいいとして」

 

よくないわ!思わずツッコミを入れようと思ったら―。

 

「ねえ、薫子ちゃん」

 

いつの間に移動したのか黛先輩の背後に回り肩をポンと置いた。

 

「な、何、たっちゃん?」

 

「悪いけど生徒会の事に関してふざけた記事を書くのはやめてくれないかしら?」

 

そう言い微笑んではいるが雰囲気は怖い………。

 

「だからね、織斑一夏君は真面目に答えてくれたからそのまま書いてね。か・お・る・こ・ちゃん」

 

そう言い黛先輩の肩を握るが心なしかミシミシという音が聞こえるのは気のせいだと思いたい。

 

「そそそ、そうよね。私ったらなんて事を!おほほ……」

 

刀奈さんの言葉が効いたのか顔を青ざめさせて黛先輩は何度も頷いた。

 

「そ、それじゃ会長であるたっちゃんから一言お願い」

 

慌てて刀奈さんにインタビューする黛先輩。えっと……色々すいません……。

 

「そうね。彼は人気も実力もあるから、後々成長してこの学園の生徒会長になれよう指導していくわ」

 

「おお〜っ、スゴいね!バッチリ書かせてもらうわ」

 

「お願いね」

 

そう言って再び俺の隣に座る刀奈さん。

次はセシリアにインタビューしたが黛先輩は懲りずに全部聞くまでもなく捏造で終わった。

 

その後セシリアとツーショット写真を撮る事になったがクラス全員が入って集合写真になったがまあいいか。

 

ちなみにこっそりと刀奈さんと簪とのスリーショット写真を撮ってもらい。後日その写真をもらい部屋に飾ってある。

 

ともあれ、この就任パーティーは十時過ぎまで続いた。

改めて女子のエネルギーは凄まじい事をその身に知った1日なった。

 

「つ、疲れた……」

 

俺は妙に消耗して部屋へと帰還。ベッドに転がった。

 

「楽しかったわね」

 

「うん。久しぶりに騒いだ」

 

と俺の恋人達はそう言って楽しげな顔になっている。

 

まあ、確かにこんなバカ騒ぎは滅多にしないからな………更識家は由緒ある家系なので二人共お嬢様なのだ。

 

例外でセシリアみたいなのがいるが、同年代とこうして楽しく騒ぐ機会は少ないので二人にはこういうところでないと出来ないんだろうな…………と思いつつ、簪、刀奈さんという高嶺の華と恋人になれている俺は幸せ者だよな………としみじみと噛み締めた。

 

「そういえば一夏君、簪ちゃん」

 

「何?」

 

「どうしました?」

 

「明日、転校生が来るから教えておこうと思ってね」

 

「転校生ですか………」

 

「随分と急だけど………やっぱり一夏がらみ?」

 

「そうよ。世界からIS学園に入学させようと代表候補生が殺到してるのよ」

 

「うげ……」

 

刀奈さんの説明に思わず呻いた。勘弁してくれよな……マジで……。

 

「お姉ちゃん、転校してくる人は誰かわかってるの?」

 

「ううん。まだ受付は済ませてないからまだ……ただ中国から来るって事しかまだ情報はないわね……」

 

深々とため息をはく刀奈さん。まあ、危険を回避する為にはいち早く情報は欲しいよな………。

 

「とりあえず何が起こるかわからないから一夏君は注意してね」

 

「わかりました」

 

刀奈さんの言葉に頷き、俺達は就寝となる訳だが………この転校生が新たなトラブルの火種を持ち込んでしまう事になるとはこの時俺は知らなかった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なななな………何なのよ―――――――!!あの女達は――――――!!?」




おまけ

こうしてセシリアは改心した。

「はあ……」

クラス代表決定戦終了後、セシリアは更衣室にてベンチに座っていた。

「負けてしまいましたわ……」

そう呟くがその表情には悔しさなく、むしろ清々しい気分だ。

「ああ、良かった。オルコットさんここにいたんですね」

「山田先生………」

セシリアの元に真耶がやってきた。

「申し訳ありませんでした」

「えっ?えっ?どうしんですか?」

突然立ち上がり頭を下げたセシリアに戸惑う真耶。

「わたくしの為に補習をしてくださったのに全く理解してなかった事に対してです」

「ああ、そういう事ですか」

「はい。わたくしは代表候補生になって浮かれていました。ですのでクラス代表決定戦に負けて目が覚めた気がします」

「それは良かったですね」

「はい」

お互いに微笑んでいたが―

「これで織斑先生との模擬戦がなくなりましたね」

「はい?」

次の一言でセシリアは固まった。

「えっと……それはどういう事なんでしょうか?」

「ええ、実は先ほどのクラス代表決定戦でオルコットさんが織斑くんに対しての暴言や侮辱で怒りをかってしまいまして織斑くんが負けたら次は私が出ると言ってたんですよ」

「ええ――――っ!?」

真耶の説明に思わず声をあげるセシリア。

「本当に良かったですよ……オルコットさんが無事に済んで………」

「そ、そうですわね……」

セシリアは理解した突然やって来た恐怖と寒気の原因はこれだった事に。

(ま、負けて良かったですわ―――――――!!)

セシリアは顔を青ざめさせながらも無事に済んだ事に感謝した。

エリート?イギリス代表候補生のプライド?そんなの物を捨て去ってでも命が大事だと本能が勝った瞬間であった。

「わ、わたくし何でもします!補習も真面目に受けますわ!で、ですから織斑先生との模擬戦は許してください!!」

と泣きながら真耶にすがり付くセシリアであった。

その後真耶のおかげで落ち着き、補習用に渡された教科書を真剣に読み代表候補生としての振る舞いを改めたのであった。





次回はセカンド幼なじみが登場します
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