「「「え?」」」
放課後の第三アリーナ。今日からクラス対抗戦に向けて、セシリアの為に俺と本音はISの特訓をしようとしていた時に思わぬ顔に俺達は間抜けな声をあげた。
「な、なんだその顔は……おかしいか?」
「いや、その、おかしいっていうか――」
「何か場違いだよね〜」
「篠ノ之さん!?どうしてここにいますの!?」
そう、俺とセシリアと本音の前にいるのは箒だった。しかも、IS『打鉄』を装着、展開している。
「どうしてもなにも、一夏に頼まれたからだ」
「はあ!?」
箒の言葉に思わず耳を疑った。俺そんな事は頼んだ覚えはないぞ?
しかもセシリアと本音が疑わしい目と非難気味の視線を送ってきた。
「それに、近接格闘戦の訓練が足りていないだろう。私の出番だな」
そう言うがはっきり言って出番がない。近接格闘戦についての訓練はすでに俺がいるので事足りている。
それに箒は剣道の全国大会優勝していてもISに関しては全くの初心者だ。いくら何でも無理があるな。
「予約が一杯でしたのに……。まさかこんなにあっさりと訓練機の使用許可が下りるだなんて………」
「やっぱり博士の妹だからかな〜?」
うん、それは俺も思った。
「では一夏、始めるとしよう。刀を抜け」
「おいこら、ちょっと待て!」
やる気満々で俺に向かって刀を構えるが制止の声をあげる。
「何だ?何かあるのか?」
「だから!セシリアがメインの訓練をするんだから俺に刀を向けてどうするんだよ!」
きょとんとしている箒に俺は説明したが……。
「問題ない、セシリアはついでだ!まずは一夏からだ!」
という箒の言葉にガクッと肩を落とした………。
ダメだこりゃ………俺しか見てないな………はあ……こうして見るとやっぱり束さんの妹だと感じさせられる。
大事な人以外の周りが一切見えない………こっちはえらい迷惑してるんだけどな………。
「一夏さんどうしますの?」
箒の行動と言動に対して少しだけ不快感を感じているセシリアが俺に話しかけてきた。
「悪いけど退場してもらうか……」
「どうするの〜?」
「とりあえず俺が篠ノ之さんを迎え打つからセシリアは背後からブルーティアーズで攻撃してくれ」
「ですが……」
「すまない。でないと訓練時間がなくなってしまうぞ」
「わかりました。仕方ありませんわね……」
俺の提案にため息をはいてセシリアは応じてくれた。
「よし、こい!」
「では――参るっ!」
俺の掛け声と共に箒は踏み込んで刀を振り下ろそうとするが―。
「うわっ!?」
背後からレーザーが襲い掛かり箒は声をあげた。
「セシリア!邪魔するな!」
「よそ見は厳禁だ」
背後から攻撃して来たセシリアに箒は怒りの声をあげるが俺は構わずに追撃をくらわせる。
「なあ!?卑怯だぞ一夏!!」
「悪いがここで終わりだ!」
セシリアのブルーティアーズのレーザーと俺の居合いで箒のISのエネルギーは尽きた。
「ずるいぞ!2対1など!」
箒は俺達に対して非難の声をあげたが。
「何言ってるんだ?俺達は訓練をしてるんだ卑怯もへったくれもないだろ」
俺はあらかじめ用意していた言葉を箒に言ってやった。
「くっ……減らず口を……」
箒は憎らしげに俺達を睨み付けるが―
「っ!?……今日はここまでにしてやる!さらばだ!」
何かに気付いた箒は慌てて振り返り走りだした……、まるで悪役みたいな捨て台詞を言って俺達の前から居なくなった。
「何だったのでしょうか?」
「さあ?」
「何か慌ててたね〜」
箒の様子を見て俺達は首を傾げた。彼女の性格からしてそう簡単に引きそうにないのだが―。
「おい、お前達」
突然背後から声が聞こえた。
「「「お、織斑先生!?」」」
俺達が振り返った先には仁王立ちした千冬姉がいた。よく見ると怒っているのか威圧感を感じる。
「ど、どうかしましたか?」
代表して俺が千冬姉に質問した。ちなみにセシリアは顔を青ざめさせ、本音は俺の後ろに隠れた。
「篠ノ之を知らないか?」
「えっ?さっきまでいましたけど……」
「そうか入れ違いだったか……」
そう言い悔しげな表情を浮かべる千冬姉。
「あの、何かあったんですか?」
「クラスの雑用をやらせていたのだが途中で逃げ出したのだ」
「ええっ!?本当ですか!!」
「本当だ。あいつめ、逃げられると思うなよ!」
ドンと地面を踏んづける千冬姉に俺達はビビる………。
こ、怖い……箒、早く千冬姉のところに帰れよ!俺達の事は構わずにさ!!
俺達は千冬姉から逃げ出した箒に対して本当に心からそう思った。
その後、千冬姉が居なくなってから訓練を再開した。
セシリアに対して近接格闘戦の対策をしながら、俺達はクラス対抗戦についての話し合いをした。
セシリアは近接武器を搭載しているが展開が遅い事をどうにかしようと俺が簡単にアドバイスした。
そうしたらセシリアは言わずに素早く展開出来た事を物凄く喜びのその勢いで抱き着いてきた時はちょっとヒヤリとしたのは内緒だ。
――――――――――――
「ふう……」
部屋に帰り、シャワーを浴びて体の火照りをさましていた。
そばには簪と刀奈さんが俺と同じように火照りをさましている。
俺達の顔はほんのり紅い。
訓練後、直ぐ様部屋に帰ってシャワーを浴びているとバスタオルを巻いた姿の簪と刀奈さんが一緒に入ってきた。
俺は入って来た二人には気にせずにお互いに体の洗う事にした
。
二人の白い肌と時折漏れる艶かしい声を聞きながら二人の体を洗っていき、そこから……ゲフンゲフン。
のぼせそうになる手前で俺達は上がった。
とまあ、ゆっくりとした時間が流れていくと
コンコン
部屋をノックする音がするので開けると―。
「お邪魔するわよ」
鈴が部屋に入ってきた。俺の許可を待たずに………。
「やっぱり噂通りだったわね……」
「鈴?何か用か?」
「そこの二人にお願いがあって。というわけだから、部屋代わって」
「「「はい?」」」
鈴の突然のお願いに思わず間抜けな声をあげた。
「いやぁ、お二人も男と同室なんてイヤでしょ?気を使うし。のんびりできないし。その辺、あたしは平気だから代わってあげようかなって思ってさ」
そう言うが俺は平気じゃない、鈴と一緒だなんて余計気をつかうしのんびりできない。それに恋人達と一緒の部屋を代わろうとするほどバカではないし、幸せ空間を手放すつもりはない。
「鈴。それ、荷物全部か?」
「そうだよ。あたしはボストンバッグひとつあればどこでも行けるからね」
相変わらずフットワークの軽いやつだ。女子にしては荷物がかなり少ない……簪と刀奈さんは割と多めだ。
「とにかく、今日からあたしもここで暮らすから」
「あのね……」
「部屋は代わらないし勝手に決めないで!」
鈴の要望に刀奈さんは呆れ、簪は怒りだした。
「あのさ…鈴」
「何」
「部屋を代わるのはいいが寮長に許可をとったのか?」
「まだよ。まっ、あたしなら簡単に許可を取れるわよ」
そう言って胸を張るが寮長が誰か知らないのか?仕方ない痛い目にあってもらうか。
「わかった。まずは寮長の許可を取ってこいよそうしたら代わってやる」
「「っ!?」」
俺は鈴にそう提案した。二人の表情が驚きに変わるが構わずに話を進める。
「わかったわ。じゃあ寮長に許可を取ってくるわ!待っててね一夏!」
「逝ってらっしゃい」
意気揚々と部屋を出ていく鈴に心の中で合掌していた。
「「一夏(君)!!」」
鈴が居なくなり、簪と刀奈さんが俺に信じられないと言わんばかりに問い詰めてきた。
「どうして……どうしてなの!?」
「私達と一緒に過ごすのが嫌になったの!?」
悲壮感漂う表情の刀奈さんと今にも泣きそうな簪にちょっと胸が痛んだ。
「とりあえず二人共落ち着いて」
「でも……何で……」
「何であんな事を言ったの?」
「鈴の性格からしてそう簡単には引かないですし、俺も部屋を代わるつもりはないですよ。それに忘れてませんか?」
「「えっ?」」
「ここの寮長千冬姉だから安心していいですよ」
「「あ―」」
俺の言葉に納得したのか二人はホッとした表情に変わる。
「ひにゃあぁぁぁ!?」
ズドォォン!!
突如として外から悲鳴と大きな音が聞こえ部屋が揺れた。
南無……成仏しろよ鈴。
合掌していると――
コンコン、ガチャ
「入るぞ」
ノックする音が聞こえたので俺がドアを開けようとする前にドアが開き千冬姉が入ってきた。片手にはぐったりとした鈴がぶら下がっている……。
「織斑、更識姉妹。イタズラ猫は躾ておいた、後は任せるぞ」
そう言い鈴をポイッと投げ捨て部屋から出ていった。
「おい、鈴大丈夫か?」
大きなたんこぶをつくり、気絶している鈴を揺すって起こしてみると。
「一夏―――っ!!」
ガバッと起き上がり、俺に詰め寄ってきた。
「千冬さんが寮長だなんて聞いてないわよ!」
「いや、てっきり知ってるかと思ってたから逝かせたんだけどな……」
「そんな訳ないでしょう!知ってたら突撃しないわよ!あたしに死ねって言ってるようなものじゃない!!って一夏、微妙に言い方が違う―――っ!!」
ダーッと涙を流しながら、俺の胸ぐらを掴みガクガク揺する鈴でした。
「そういう訳だから部屋を代わる事は諦めてくれ」
「わかったわよ。千冬さん相手じゃ諦めるしかないじゃない………」
そう言い渋々といった感じの鈴。まあ、恐怖体験すれば諦めやすいからな。
「ところで約束覚えてる?」
「約束?いつのだ?」
「ほら、小学生の時にした大事なやつ……覚えてるよね?」
急に顔を伏せて、ちらちらと上目遣いで俺を見る。心なしか恥ずかしそうにしている。
「えーと、あれか?鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を食べてくれる?だっけ」
「そう!それそれ!」
約束を覚えてくれた事に鈴の表情はパアッと明るくなるが………あれ?
「何で鈴がその約束覚えているんだ?」
「はあ?当たり前でしょ!大事な約束なんだから!」
「いやさ……その約束はもう無効になったぞ」
「はあ?どういう事よ!?」
俺の発言に納得がいかない表情の鈴だ。
「あれ?覚えてないのかその後の事を?」
「え、えっと……わかんない……」
「その約束の返事の前に聞いたんだよ。それってプロポーズか?ってそしたら鈴何て言ったか覚えてるか?」
「う、ううん……」
「顔を真っ赤にして“嘘嘘!冗談冗談!忘れて忘れて”って言ったんだよ」
「ええっ!?そ、そんな事言ったの!?」
動揺する鈴の表情からするとそこまで覚えてないな………。
「俺は鈴に真意を聞こうとしたら“いいから忘れなさいよ!!”って鬼気迫る顔で言ってたから。からかわれたんだなって感じたな」
「ガ―ン!」
「俺さ、鈴から(異性としては意識してないけど)そう言ってくれ嬉しかったんだぜ……でも、違うみたいだから親友として接しようと決めたんだ」
ゴン!
俺の言葉を聞いて鈴は壁に頭をぶつけた。
?何してんだ?
「あたしの……バカ……あの時のあたし死ね…」
「お―い、鈴大丈夫か?」
「あたし自分の部屋に帰る……」
そう言い鈴はとぼとぼと部屋の扉の方に歩き出した。
「そうか、気をつけて帰れよ。迷子になっても俺達の部屋には泊めないからな」
「わかってるわよ!それじゃあね!!」
バタンと言う音を立てて部屋を出ていったが―。
「うわぁぁん!!あたしのバカ―――――!!!」
泣き叫びながら走り去っていった。
まあいっか、明日には元気になってるだろうしな。
そう考え、俺は恋人達と一緒にゆっくりと眠りにつく事にしたのだった。
――翌日、生徒玄関前廊下に大きく張り出された紙があった。表題は『クラス対抗戦日程表』。うちのクラスの最初の対戦相手は簪だった。
どうでしたか?