織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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ではどうぞ


第18話

「キャー、やったわ!簪ちゃん!」

 

簪が勝利した事により、刀奈さんは喜び俺に抱き着いてきた。

 

「あはは……」

 

俺はそれに対して素直には喜べなかった。

アリーナの観客席の方では簪が代表の四組は歓喜に涌き、セシリアが代表の一組はまるでお通夜のように暗くなっている。

 

「あっ、ごめんなさい。一夏君にはあんまりよくなかったわね……」

 

そう言いバツの悪そうな表情で俺から離れる刀奈さん。

 

「いえ、いいんですよ。俺としては簪が勝ってくれた事一番ですから気にしないでください」

 

「そう……わかったわ」

 

俺の言葉に納得してくれたのか刀奈さんはそれ以上は聞かなかった。

 

まあ、これで俺のクラスは優勝がなくなったが簪が優勝する事を期待するだけだ。

 

ここからはダイジェストの展開になるがここは仕方ないと思ってくれ。

 

次の試合は鈴が登場してそのまま圧勝した。クラスメイトから“りんにゃん頑張れ!”の応援が効いてるな。

 

セシリアは簪に負けたとはいえ他のクラス代表を圧倒し勝ち星を重ねていく。

 

一方の簪は危なげなく勝っていくので今のところ全勝だ。

 

そしてセシリア対鈴の対決になった訳だが俺はあらかじめセシリアに鈴の特徴や性格を教えていたのである程度の対応が出来た。

 

試合開始と同時に鈴が近接武装でセシリアを追い詰めていくが俺が考えた作戦を実行。

 

セシリア、鈴の禁句を言う→鈴怒り爆発→攻撃が雑になる→セシリアは距離を取り射撃のシャワーを降らせて勝利した。

 

しかし、鈴の怒りは治まらずセシリアに掴みかかろうとしたが千冬姉の出席簿に沈んだ。

 

俺が揺すって起こすと復活した鈴は俺に対して

 

「何であんたが出ないのよ!!」

 

と捨て台詞をはいて去っていったがそろそろ俺がクラス代表じゃない事に気付けよな………。

 

ちなみにこの戦いを見ていた千冬姉はと言うと―

 

「あんな無様な試合をして……あいつ、本当に代表候補生か?」

 

呟かれるほど酷評でした。まあ、俺の幼なじみ達の怒りの沸点は低いからな〜。鈴の場合、怒れば動きが単調になりやすい性格なのでそれを利用させてもらった感じだ。

 

鈴の禁句とは“貧乳”……理由は察してくれ……。

 

これで全勝は簪、一敗でセシリア、鈴が並んでいる。

 

そして優勝を決める最終試合になった。

 

――――――――――――

 

『それでは両者、規定の位置まで移動してください』

 

「あんたは……なるほどね」

 

鈴は対戦相手を見て、表情は引き締まる。

 

最終試合の対戦カードは簪対鈴。

 

ここで簪が勝てば文句なしの優勝。一方負ければ、待機しているセシリアと三つ巴戦になる。

 

「あなたには負けない。勝って優勝するんだから」

 

「さっきは油断したけど勝ってさっきの金髪とあんたを纏めて倒してあげるわ」

 

鈴は先程の怒りが治まったのかお得意の挑発的な笑みを浮かべている。

 

「そう、でも私が勝つ」

 

『いいわ、それで賭けしない?』

 

『賭け?』

 

『そう。あたしが勝ったら部屋を代わりなさいよ』

 

『何言ってるの?』

 

プライベートチャンネルに切り替えた上に鈴の要望に簪は眉をひそめた。

 

(まだ諦めてなかったんだ……)

 

千冬にあれだけやられても鈴は一夏と一緒の部屋に入りたい事を簪は理解した。

 

『だからねあんたから千冬さんに言ってよ。それなら問題なしね』

 

『……負けたらどうするの?』

 

『はんっ、あたしがあんたに負ける訳ないじゃない。さっさと荷物を纏めて部屋を代わる準備してなさいよ』

 

と鈴は胸を張り簪を見下した発言した。

実際鈴が簪を見てからの第一印象からこいつなら勝てると考えたのだろう。

しかし、簪は千冬から指導されていて実力はかなりある事を鈴は知らない。

 

(くだらない……!)

 

簪は目の前の相手に沸々と怒りが沸き上がる。こんな人を一夏の側に置くわけにはいかない!と簪の心に火が灯る。

 

『一夏をフッた人が偉そうにしないで!』

 

『し、失礼ね!フッてないわよ!』

 

『一夏はあなたの事は親友って言ってたから、もう諦めたら?』

 

今度は簪がお返しとばかりに胸を張り鈴を見下した。

 

『ムッカ―!あったまきたボコボコにしてやるから覚悟してなさいよ!』

 

『それはこっちのセリフ!』

 

売り言葉に買い言葉、すでに両者の額には怒りマークが浮かび上がっていた。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

鳴り響くブザーとアナウンスで試合開始した。

 

ガギィンッ!!

 

お互いに近接武装を展開して打ち合う音がアリーナ内に響く。

簪は薙刀、鈴は青竜刀それぞれの刃でのつばぜり合いでの力勝負は互角だ。

 

「やるじゃない。けど!」

 

つばぜり合いをやめて、鈴は一旦距離を取った。

 

「逃がさない!」

 

簪は鈴を逃すまいと接近するが―。

 

「甘いわね」

 

簪が近寄ってくるの見て鈴は笑みを浮かべる。

 

「っ!?」

 

簪は鈴の表情から嫌な感じ察して、身構える。

 

「きゃっ!」

 

鈴の肩アーマーがスライドして開く。中心の球体が光った瞬間、目に見えない衝撃が簪を襲う。

 

「今のはジャブだからね」

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべる鈴、ジャブの後からやってくるのは強烈なストレート。

 

「くうっ!」

 

強烈な衝撃を来るのを簪は薙刀を円のように振り回して衝撃を和らげる。

だがダメージを食らっている事は間違いなかった。

 

――――――――――――

 

「あれは一体……?」

 

ピットからリアルタイムモニターを見ていた俺は呟いた。

それに答えたのは、同じくモニターを見つめるセシリアだった。

 

「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す兵器ですわ」

 

すらすらと説明していくセシリア。三つ巴戦を想定してISスーツの上に制服を羽織っていた。

 

モニターには苦戦している簪の姿が映し出されている。

 

(簪……)

 

鈴の攻撃にダメージを受けていく姿に正直目を反らしてしまいそうだ……。

 

「大丈夫よ、簪ちゃんなら負けないわ。ほら顔はまだ諦めてないじゃない」

 

「そうですね」

 

俺の肩を叩いて、そう鼓舞してくれる刀奈さんに少しだけ気持ちが軽くなった。

 

(簪…頑張ってくれ)

 

俺は心の中で応援するしか出来ないもどかしさ感じたが勝利する事を信じるだけだった。

 

――――――――――――

 

「よくかわすじゃない。衝撃砲《龍砲》は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに」

 

そう言い簪を褒める鈴、全方位から衝撃砲に防ぐだけだったが終盤からかわせるようになった。

 

「あなたの攻撃はだいたい読めた。もう当たらない」

 

「いったわね。これでどうよ!」

 

簪の言葉に鈴は挑発してると感じ、衝撃砲を射つ。

 

「見切った」

 

簪は来るであろう場所から素早く移動してかわす。

 

「なっ!?」

 

「まぐれだと思うならやってみたら?」

 

「やってやるわよ!」

 

鈴は衝撃砲を連発して簪を狙い射つが―。

 

「あまい……今度はこっちの番」

 

簪はそれをかわして荷電粒子砲を展開、鈴を狙い撃つ。

 

「きゃあ!?や、やるじゃないのよ!」

 

「その武器封じる!」

 

簪は荷電粒子砲を連射、鈴の龍砲を破壊する。

 

「なっ!?龍砲が!」

 

「やられたらやり返す。倍返しだよ!!」

 

簪は装甲を展開し、ミサイルポット装着する。

 

「マルチロックオン、山嵐………ファイアー!!」

 

簪から計48発のミサイルが鈴を襲う。

 

「くっ、この……!」

 

鈴は青竜刀でミサイルを切り落とすが数が多いので裁ききれない。

 

「きゃああぁぁっ!!」

 

龍砲を封じられて青竜刀では間に合わず、鈴はミサイルの雨を食らう。

 

「ま、まだ……」

 

「これで終わりだよ!!」

 

ボロボロになっても立ち上がる鈴に簪はとどめの一撃を食らわせる。

 

『試合終了、勝者更識簪。よって優勝は一年四組です』

 

試合終了のブザーとアナウンスで簪の優勝が決まった。

 

「ふう……」

 

簪は勝てた事に安堵した。観客席での四組は優勝した事に盛り上がっている。

 

「負けたわ……完敗よ」

 

「ううん。私もまだまだだと感じさせられた」

 

「一夏と一緒の部屋にはいるのは諦めるわ」

 

「そう。いい試合だったよありがとう」

 

そう言い鈴に握手を求めようとしたが―。

 

ズドオオオオン!!!

 

突然大きな衝撃がアリーナ全体に走る。

 

「「え?」」

 

突然の出来事に固まる簪と鈴。

 

ステージ中央からもくもく煙があがり、アリーナの遮断シールドを貫通して入ってきた衝撃波だ。

 

「な、何!?」

 

「な、なんかヤバイわよ!」

 

――ステージ中央に熱源。所属不明のISと断定。ロックされています。

 

「「ええ――っ!?」」

 

ISのハイパーセンサーから緊急通告に思わず声をあげた。

 

試合終了していた為二人ISは消耗しており、鈴のシールドエネルギーはほとんどないに等しい状態なのでいわばピンチだった。

 

「ど、どうしよう……」

 

「本気でマズイわね……」

 

目の前の所属不明のISに冷や汗が流れ落ちるのだった。

 

――――――――――――

 

『凰さん!更識さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生たちがISで制圧に行きます!』

 

突然乱入して来た機体に山田先生は簪と鈴に逃げるように連絡していた。

 

「マズイわね……」

 

「ええ、かなりヤバイ展開ですね」

 

乱入して来た機体はアリーナのシールドを破壊して来た訳だから観客席にも被害がおよぶ可能性は大だ。

 

「それに簪ちゃんが危ないわ」

 

「早くいかないと大変ですね」

 

「ああ、更識妹には荷が重すぎるな」

 

「あの―、あそこには凰さんも居るんですよ。忘れてませんか?」

 

「「「あっ……忘れてた」」」

 

「ちょっと――!!更識さんの事だけ考えてる場合じゃないですよ!ふざけないでください!!」

 

「「「すいません……」」」

 

山田先生の怒りの声に俺達は平謝りだ。

 

けどしょうがない俺は恋人だし、刀奈さんは大事な妹、千冬姉は将来の義妹だから心配するんですよ。

 

「更識、織斑」

 

「「はい」」

 

「すぐに出撃だ。あの所属不明の機体を制圧してくれ」

 

「「わかりました」」

 

「待ってください!わたくしも出撃できますわ」

 

「だがな……」

 

「織斑先生、鈴のISのエネルギーはほとんどありません。なので救出する為にも人手は必要です」

 

「そうか……わかった。オルコットお前も出撃だ」

 

「はい!」

 

俺の進言で千冬姉は納得し、セシリアも出撃となった。

 

「今、遮断シールドがレベル4で扉がロックされているが最悪壊しても構わないがなるべく壊す箇所は少なくしてくれ」

 

「わかりました」

 

「よし、ではいけ!」

 

「「「了解!」」」

 

千冬姉の指示で俺達はアリーナステージ中央に向かい走りだした。

 

待っててくれよ簪、今助けにいくからな。

 

逸る気持ちを抑えながら簪の無事を祈った。




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