ではどうぞ。
「くっ……!」
目の前に迫るビームをかわしながらなんとかしようと思案する簪。
「ちょ、ちょっと離しなさいよ!あたしは戦えるわよ!」
鈴は簪に抱えられている状態に戦う意思を伝えたが―。
「どうやって?シールドエネルギーがほとんどない上に龍砲が使えない状態で戦えるの?」
「うっ……」
簪の指摘に鈴は言葉に詰まる。彼女の言っている事は間違いではない、今の状態で戦えば足手まといになる上に最悪命を落とす事になる。
(何でこうなるのよ!!)
何も出来ない状況で鈴は内心苛立っていた。簪の足手まといになっていて、打開しようにもエネルギーがほとんどない上に援護出来る龍砲は壊されている。
(悔しいわね……)
鈴自身出来る事と言えば、目の前の『全身装甲』の所属不明のISを睨み付けるだけだ。
(このままじゃ……キツイ……)
簪は助けを待ちながら時間を稼いでいた。
自分1人ならなんとか出来るが鈴を抱えた状態では敵の攻撃の餌食になるのは時間の問題だ。
自分のエネルギーはまだ残っているが鈴はエネルギーがない。
ほとんど無防備状態だ……。最悪、自分を盾にして鈴を守らなくていけない……その状況が簪を焦らせる……。
(お姉ちゃん、一夏……早く来て!)
簪は頼りになる姉と最愛の人を想いながら目の前の攻撃に備えた。
――――――――――――
俺達はアリーナステージ中央にいる簪と鈴を救出そして所属不明のISを制圧する為に駆け出していた。
「一夏君、そこを右ね」
「はい」
刀奈さんの誘導で俺とセシリアは後をついていくような形だ。
本当なら壁や扉を破壊して向かいたいがその分エネルギーを消費してしまう。
なので温存して人力でステージ中央に向かっていた。
「待って、この部屋に入りましょう」
刀奈さんが足を止めて、扉の前にたった。
「この部屋ですか?」
「ええ、ここからなら近道よ」
そう言って扉を開けると―。
「あれは……梯子ですか?」
少し広い部屋の中に入り、周りには備品が置いてあり少し離れたところに梯子があった。
「ええ。本来なら裏方用に使う物なんだけどこれを使いましょう」
「わかりました。先にいきますね」
俺は一足早く梯子に手を伸ばして上り始めた。
「えっ?何で一夏さんが先に行くのですか?」
先に一夏が行った事にセシリアは疑問に感じた。
ここの内部に詳しく誘導していた楯無が本来先に行くべきであると―。
「一夏君は気を使ったのよ」
「どういう事ですか?」
「セシリアちゃんはISスーツだけど私は制服よ。それにスカートだもんみえちゃうわ」
「ああ、そうでしたわね」
楯無の説明にセシリアは納得した。梯子に上るなら上を見なくていけない、楯無が先にいけば見上げてしまい必然的にスカートの中が見えてしまう訳だから一夏は先に行ったのだ。
(一夏さんは紳士ですのね)
楯無を気遣い、先行した一夏に感心するセシリア。
「セシリアちゃんは気になるのかしら?」
「な、何がですか?」
「私の、スカートのな・か♪」
そう言い楯無は自分のスカートを両手で掴み少し持ち上げて妖艶に微笑む。
「さ、先に行きますわ!お、お待ちください!一夏さ――ん!」
楯無の妖艶に当てられたのかセシリアは顔を真っ赤にして慌てて梯子を上り始めた。
「ちょっとからかいすぎたかしらね……」
セシリアが梯子を上る様子見ながら舌を出して、いたずらっ子のような笑み浮かべた。
(ちゃんとISスーツは着てるけどね)
楯無は非常時に対応出来るよう予めISスーツを着ていた。
(私のスカートの中を見せるのは一夏君だけよ……なんてね)
そう心の中で呟く楯無ではあるが実は簪の事が心配で仕方ないがそこは更識家の人間、狼狽えないように落ち着くだけだった。
――――――――――――
「うおおっ!」
いち早くステージ中央に着いた俺は白式を展開し、敵ISに斬りかかる。
「ちっ……」
敵ISは俺の斬撃をするりとかわされてしまい思わず俺は舌打ちした。
「「一夏!」」
「簪、無事か!?………鈴も」
「うん。大丈夫」
簪は俺が助けに来てくれた事に笑みがこぼれ安堵した顔になっている。
「あたしはついでに聞こえるのは気のせい?」
鈴はやや不満気に言ってくるが気にしない、気にしないっと。
「大丈夫簪ちゃん!………鈴ちゃんも」
遅れて刀奈さんとセシリアがISを展開してやって来た。
「大丈夫だよお姉ちゃん」
「良かったわ……」
簪が無事だと確認出来て安堵する刀奈さん。
「あの、皆さん」
「「「はい?」」」
「鈴さんをかまってあげませんか……ほら」
とセシリアが指差した先には―。
「いいもんいいもん……かまってくれなくてもいいもん……今のあたしは役立たずだもん……マスコットのりんにゃんだもん……」
座り込んでのの字を書いて拗ねている鈴でした。
「とりあえず、一夏君は鈴ちゃんを安全な所に連れて行ってね」
「わかりました」
「簪ちゃんはまだ戦える?」
「大きなダメージはないけど、エネルギーを補給しないと無理かな」
「じゃ、一夏君は二人をお願い。セシリアちゃんは援護して!」
「はい!」
「わかりました。ほら鈴いくぞ!」
「あっ、ちょ―」
刀奈さんの指示通りにして俺は鈴を抱えて開いているピットに向かう。
「さっ、いくわよ」
「お行きなさい!ブルー・ティアーズ!!」
刀奈さんとセシリアは俺達に攻撃が及ばないように敵ISの目線を反らす為に攻めていく。
そのおかげもあって無傷でピットに鈴を運ぶ事が出来た。
「ほら鈴、着いたぞ」
「う、うん……」
抱えていた鈴を下ろしたら妙にしおらしい態度に変わっていた。
「俺はか、じゃない楯無さんとセシリアの援護しにいくから先に行くな」
「うん。エネルギーを補給したら私も行く」
「あたしも」
「鈴、お前は安全な所に避難してろ」
のけ者にされまいと名乗りをあげる鈴に俺は非情な通告した。
「な、何でよ!?あたしも戦えるわよ!」
「龍砲が壊れてるのにか?」
「うっ……」
「別に鈴の事をのけ者にしてる訳じゃないんだ。武装が壊れた状態じゃ危ないから無理しないでくれって言ってるんだ」
「わかったわよ、大人しくしてる」
俺の説得が効いたのか鈴は渋々引き下がってくれた。
「よし、じゃあ―」
「一夏ぁっ!」
俺は刀奈さんとセシリアの援護しようとピットから出ようした時にアリーナのスピーカーから箒の大声が聞こえた。
「「「えっ?」」」
中継室を見ると審判とナレーターがのびていた。ドア開けた時に気絶させたのかよ……。
「男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」
大声。キーンとハウリングが起こる。ハイパーセンサーで見ると怒っているかわからないがふんぞり返っている顔が見えた。
はい。3、2、1
「「「アホか――――!!!」」」
箒の行動に関して俺達の気持ちが同じになり、シンクロして叫んだ。
「バカじゃないの!?ねえ、バカじゃないの!?」
「あいつ、自殺志願者だった訳!?」
「本当にあれが幼なじみだと思うと目眩がしてきた……」
簪と鈴が箒に対して辛辣なコメントを言っているが俺もそう思ってしまった。
アイツ(箒)は何考えてるんだよ……全く、訳がわからないよ……。
ヤバい!気がつくと、敵ISは今の館内放送で発信者に興味を持ってしまった。
刀奈さんとセシリアがこちらに興味をひかせようして攻撃をしているがうまくいかない。
「くそっ!間に合うか!?」
俺は慌てて敵ISに向かって突撃していく。
箒はどうでもいいが中継室にはまだ審判やナレーターがのびていて逃げられない!
このままでは大惨事だ!
突撃していく先には今にも砲口のついた右腕を中継室に向けて射とうとしている。
「――オオオッ!」
自然と雪片を握る手に力が入る。鞘に納めて居合いの構えのままスピードを更に上げていく。
「間に合えぇ――!!」
―斬!
俺は敵IS目掛けて雪片を抜刀してからの一閃。
「……!?!?!?」
再び雪片を鞘に納めると敵ISは腕ごと体を真っ二つになった。
ああ……この手が赤くなっちまったな………。
非常時といえ敵ISの命を奪った事に罪悪感が沸き上がるが――。
「一夏君!まだ終わってない!!」
刀奈さんの声に我に返り敵ISの方に目を向けると―
「なっ!?」
敵ISはまだ動いていた!あれで終わったはずじゃないのか!?
それどころか残っている砲口の左腕が俺を狙っている。
「くっ……!」
一体何が何だかわからないが敵ISは最大出力形態に変形させて俺を狙っている。
「一夏さん!逃げてください!」
セシリアの悲鳴に近い声が俺に逃げるように促すが集中力が切れた状態ですぐに動く事が出来ない。
無情にもビームが迫ろうとしていた。
無理か……覚悟を決めるか……。と半ば諦めていると―。
「山嵐!」
ミサイルの雨が敵ISの頭上に降り注ぎ今度こそ制圧した。
簪、間に合ったんだな……。
ホッとしたせいか気が抜けてしまい座り込んでしまった。
――――――――――――
「お前達よくやったぞ」
俺達は千冬姉の元に戻り労いの言葉をかけられた。
「まずは織斑。最後まで気を抜かない事だ、更識妹が助けてなかったらとんでもない事になってたぞ」
「はい…」
微笑みから一転真剣な眼差しで俺を見据えての注意をしてきた。
「これは私の予想だが、敵ISの命を奪ったと思い罪悪感が沸き上がって動く事が出来なかった。違うか?」
「いえ、合ってます……」
「敵ISを調べたのだが人は乗っていなかったぞ」
「えっ?」
「「「「なっ!?」」」」
千冬姉の言葉を聞いて俺をのぞく皆が驚きに変わる。
「そんな、ISは人が乗らないと動かないはずなのに……」
「それどころか動いていて一夏を狙おうとしてたわね」
「確かに考えてみれば人が乗っていれば大量に血が出てもおかしくありませんわ」
「それでも動いているのなら納得ね……」
確かに皆が言うようにISは人が乗って初めて動くのだ。
この事は最初の時に教えてもらっていたらこそ、あの時に初めて命を奪ったと罪を感じた。
「まあ、詳しい事は話せないが織斑が気に病む事はないとだけは伝えておく」
「そうですか」
そう言い千冬姉は俺の肩をポンと叩いた。どうやら励まされたみたいだな………。
「あの……千冬さん」
「凰、織斑先生だ。何だ?」
「あいつ、いえ篠ノ之箒の処分はどうなるのですか?」
鈴は千冬姉に箒の事を訪ねた。確かに今回は自らの身を危険にさらし、誉められた行動をとった訳ではないからな。
「あいつならあそこにいるぞ」
と親指でクイッと指差した先には――
「〜っ〜っ」
「篠ノ之さん大丈夫ですか?」
大きなたんこぶをこしらえて山田先生に氷のうで冷やされている箒の姿がいた。
(((((うわぁ……)))))
俺達は箒の姿に思わずドン引きした。そうとう怒ってたんだなこりゃ………。
「全く、無謀と勇気を履き違える馬鹿で本当に疲れる」
「本当ですね……」
「本来なら自室で謹慎処分
にするところなんだが………こいつは反省する気なしだからな……」
はあと、ため息吐く千冬姉。箒に手を焼かされているからこそ余計な疲労が出るんだよな………。
「仕方ない……あれをするのが悔やまれるがやむを得ないか……」
「ああ、あれですか?」
「そうだ。篠ノ之、お前は今日から特別観察処分者だ」
「何ですかそれ?」
「特別観察処分者は問題児の更正プログラムの一環として取り入れた物だ。これから学園の奉仕活動や教師達の手伝いがメインとなる。しっかりとやるんだぞ」
千冬姉は箒に対してものすごい、いい笑みを見せてきた。
「では、話はここまでにしよう。後は各自ゆっくり休め、解散!」
千冬姉の掛け声で俺達はそれぞれ行動を開始した。
――――――――――――
「おわっ!?」
部屋に帰ってた途端、いきなり二人に抱き付かれた。
「簪?刀奈さん?」
いきなりの事に戸惑うが二人の体が震えているのに気付いた。
「ばかばかばかばか」
「心配っ、したんだから!」
簪と刀奈さんは今に泣きそうな声で俺をギュッと強く抱き締める。
「うん。心配かけてごめん……」
俺はそんな二人に謝った。
確かに気を抜いてしまって敵ISにやられそうだったからな……仕方ないか……
「許さない。キスして」
「私もよ、一夏君」
「仰せのままに」
俺は二人を抱き締め返してキスをしていく。
しばらく抱き締めて二人が落ち着くまでこうしている事にした。
(俺はまだまだだな………)
改めて、自分の未熟さを痛感した瞬間だった。
最愛の人達を泣かせる訳にはいかないし、やっぱり笑っていて欲しいからだ。
俺はそう心の中で決意して二人のぬくもりを感じながらゆっくりとした時間を過ごした。
――――――――――――
「ほら、簪。あーん」
「あーん」
「どうだ?」
「んっ、美味しい」
四組が優勝したのでデザートのフリーパスをゲットし、早速それを使い俺に食べさせてもらっている簪。
「ごふっ!あ、あまいわ……」
「ぶ、ブラックコーヒーを……」
「な、なんてうらやましい……きいい――っ!」
俺達の光景を見て、外野はそれぞれ騒ぎ出しているがきにしない。
簪は頑張ったご褒美だ、その権利はあるからな。
「一夏。次、食べさせて」
「ああ。はい、あーん」
「あーん」
まっ、俺も少し気恥ずかしいけど幸せなんだよな。
だって可愛い彼女が喜んで食べている姿を見ているだけで癒されるもんな。
しばらくはこうしてようっと
「「ぐぎぎぎ………」」
一夏の元に突っ掛かりたいが千冬に監視されている為動けない箒。
同じく一夏の元に突っ掛かりたいが簪に試合で負けた上に助けが来るまで守られた貸しがある為動けない鈴。
「良かったわね簪ちゃん……後で私もやってもらおうっと」
妹と彼氏の幸せそうな顔に微笑ましくしている刀奈。
「簪さん幸せそうですわ。いつか私も素敵な方と巡り会いたいですわ」
簪を見て、いつか自分もと憧れるセシリア。
一巻、最後のシーンは次話に入れます。