織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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今回は原作よりになってます。

ではどうぞ


第21話

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれね。モノはいいけど、高いじゃん」

 

月曜日の朝。クラス中の女子がわいわいと賑やかに談笑をしていた。みんな手にカタログを持って、あれやこれやと意見を交換している。

 

「そういえば織斑君のISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」

 

「これは特注品で男のスーツがないから、どっかのラボが作ったもので元はイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

 

まあ、男のISスーツはまったくないからではあるが聞かれても参考にはならないと思うけどな。その後、山田先生がISスーツについての説明していたがクラスの女子が愛称で呼ばれてあわあわしていた。慕われているのか友達感覚かわからない………。

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

さっきまでの賑やかな感じが一変し、ビシッと静かになる。さすが千冬姉だな、ここが人望のなせる技だなうん。

 

(あ、ちゃんと俺の出したスーツ着てくれてるな)

 

昨日家に帰ったときに夏用スーツを出しておいたのを早速使ってくれたみたいだ。千冬姉はここ数年片付けが出来るようになっていた。というのも簪、刀奈さんと彼女になってから心境の変化かあんまりだらしない生活を送らなくなったみたいだ。まあ、洗濯と料理はからきしだが片付けはまともになった事が俺にとっては大収穫でもある。

 

「今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように、忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着は……無理だな。その時は一度取りに帰らせるからそのつもりでいろ」

 

千冬姉は俺を見て考え直して言ったのだろう、正直に言ってしまえばクラスの女子が下着姿で授業を受けてるのを見たら物凄く気まずい上に本音の情報提供で簪と刀奈さんが嫉妬しまくる事になるのは間違いない。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

連絡事項を言い終えた千冬姉が山田先生にバトンタッチした。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

「え……」

 

『えええええっ!?』

 

いきなりの転校生紹介にクラス中が一気にざわつく。まあ、俺は事前に知っていたので驚く事はない。

 

(はあ、いくらなんでも集中し過ぎだよな……)

 

入学してから半年もしないうちにもう3人が転校生としてくるから、イベントに事欠かないよなと考えていたら、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

「……………」

 

クラスに入ってきた二人の転校生を見て、ざわめきがピタリと止まる。そりゃそうだ。だって、そのうちの一人が――男子だったからだ。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

転校生の一人、シャルルはにこやかな顔でそう告げて一礼した。

 

「お、男……?」

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を――」

 

人なつっこそうな顔。礼儀の正しい立ち振舞いと中性的に整った顔立ち。髪は濃い金髪で首の後ろに丁寧に束ねている。印象は、誇張じゃなく『貴公子』といった感じで、特に嫌みのない笑顔が眩しい。

 

(外見的には上手くごまかしているみたいだな)

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「きゃああああ――――っ!」

 

教室中に歓喜の叫びが響く。耳にきて痛い……。

 

「男子!二人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった〜〜〜〜!」

 

ときゃいきゃいはしゃいでいる中、俺は冷ややかな目で見ていた。

 

(シャルル・デュノア。二人目の男子か……)

 

シャルルを見ながら昨日の事を思い出していた。

 

――――――――――――

 

「転校生?」

 

「ええ、そうよ」

 

昨日の夜、部屋に戻ってきた二人から話しから更に転校生がやってくる事を知った。

 

「それでどういう人が入ってくるんですか?」

 

「フランスとドイツよ」

 

「フランスとドイツですか……」

 

ドイツと聞き、いい気分じゃなくなった……俺にとってもっとも思い出したくない出来事が脳裏にうかぶ。

 

「一夏、大丈夫?」

 

俺の手を握りながら心配そうに様子を伺ってくる簪。俺の顔から何かを感じたのだろうな。

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「ごめんなさい。嫌な事思い出させちゃったわね……」

 

同じように俺の顔から何かを感じたのか刀奈さんは謝ってきた。そんなに罪悪感を感じなくてもいいのに………。

 

「気にしないでください。俺は大丈夫ですから」

 

「そう、わかったわ……」

 

何かいいたかったみたいだけど察してくれたのかこれ以上言うのはやめたみたいだ。まあ、俺としてはこの事がきっかけで二人に出会えたからそこはポジティブに変えよう。

 

「それでお姉ちゃん。二人の具体的な事はわかってるの?」

 

「ええ、ドイツは軍の隊長みたいだけど、問題はフランスの方ね」

 

「フランス?」

 

「どういう事ですか?」

 

「これを見ればわかるわ」

 

そう言い書類の一枚を渡されて俺と簪が見ると―。

 

「「えっ?男?」」

 

写真と書いている内容に俺達は驚いた。パッと見では貴公子と言われてもおかしくない容姿に性別欄にははっきりと男と書かれていた。

 

「そうなのよ。でもおかしいと思わない?」

 

「えっ?何故ですか?おかしいところなんてありませんよ?」

 

「まさか、性別を偽っているかもしれないって事なのお姉ちゃん?」

 

「そうよ、簪ちゃん」

 

「どういう事だ簪?」

 

「よく考えてみて一夏。二人目の男性操縦者が現れたら普通は大々的に発表されるはずなのに……」

 

「今まで公表されてなかったがおかしいって事か?」

 

「確かに公にする必要がなかったと言われればそれまでなんだけど……違和感を感じたのは確かよ」

 

「そうですか……」

 

ここは更識家当主である楯無の観察眼による展開だ。

 

「もしかしたら一夏君に接触してくる可能性は大ね」

 

「確かに同じ男同士なら気兼ねなく近寄れるね」

 

「目的は俺ですか……」

 

その話が本当ならば俺としては正直、嫌な気分になる。ここまで手を込んでまで手に入れたいのなら警戒する必要があるな。

 

「とりあえず引き続き調査してみるけど………大丈夫かしら?」

 

「お姉ちゃん。一応、本音がいるからある程度なら大丈夫だよ」

 

「けど心配なのよね……」

 

そう言って、はあとため息をはく刀奈さん。本音はある程度の信頼はおけるが非常時になるとキツイからな……。

 

「この事は千冬さんにも見せてるから多少は安心出来るはずだがら問題ないけど一夏君も気をつけてね」

 

「わかりました」

 

刀奈さんに気をつけるよう促されて俺達は就寝。朝を迎えた。

 

――――――――――――

 

そして今に至る訳だが………。

 

(目的は一体何だ?)

 

いまだにはしゃいでいるうちのクラスの女子一同とは一歩引いた状態で見ていた。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

面倒くさそうに千冬姉がぼやく。仕事というより、こういう十代女子の反応が鬱陶しいんだろう。

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから〜!」

 

山田先生の言葉でようやく静かになる訳だがもう一人の転校生もかなり異端だ。輝くような銀髪。腰近くまで長くおろしてありきれいではあるが整えている風な感じではない。そして左目に眼帯。医療用ではなく黒眼帯戦争映画に出てきそうな感じだな。刀奈さんから見せられた書類からわかるように『軍人』と言われる雰囲気を感じた。小柄だが冷たく鋭い気配が大きく見える。

 

「………」

 

本人は未だに口を開かず、腕組みをした状態で教室の女子達を見ていた。

 

「………挨拶しろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

いきなり佇まいを直して素直に返事をする転校生――ラウラに、クラス一同がぽかんとしていた。異国の敬礼を向けられた千冬は面倒くさそうな顔をした。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

そう答えてラウラはぴっと伸ばした手を真横につけ、足をかかとで合わせて背筋を伸ばしている。――千冬姉の事を教官と呼んでいる事からドイツに教えに行った軍の関係者とわかった。

 

「ラウラ・ボ―デヴィッヒだ」

 

「…………」

 

クラスメイト達の沈黙。続く言葉を待っているのだが、名前を口にしたらまた貝のように口を閉ざしてしまった。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

空気にいたたまれなくなった山田先生が出来る限りの笑顔でラウラに訊くが、返ってきたのは無慈悲な即答だけだった。あらら、山田先生大変ですね、千冬姉しか言うこと聞かなさそうな感じだな。と考えているとラウラと目があってしまった。

 

「!貴様が――」

 

つかつかと俺の方にやってくる。

 

パシッ!

 

「なっ!?」

 

「何しようとしてるのかな?」

 

俺に平手打ちを食らわそうしていた手を本音が受け止めていた。いきなり殴るのかよアイツは!

 

「貴様!邪魔をするな!!」

 

「いきなり人を殴るのは感心しないよ。ドイツではそれが挨拶なのかな?」

 

受け止められた事で怒りを感じたラウラは本音に言うがその本人は意に返さずに言い返す。普段ののほほんとした雰囲気が一変して、怒りを感じる。

 

「ならば、貴様から排除してやる!」

 

今度は空いている手で本音に目掛けて殴ろうとしていた。危ない!?

 

パシッ!

 

「くっ!貴様!」

 

「おっと、これ以上は黙ってる訳にはいかないな」

 

今度は俺がラウラの腕を止めた。せっかく本音が助けてくれたのを無下にはしたくないな。

 

「教室で暴れるのは感心しないな。おとなしくしたらどうだ?」

 

「そうだよ、おとなしくしなよ」

 

俺と本音がラウラの両腕を抑えながら、落ち着かせようと声をかけた。

 

「くっ!離せ!離せ貴様ら!!」

 

ラウラは俺の言葉を聞いてくれるどころか更に暴れまくり俺達の拘束を解こうとしていた。

 

「離さないのならば……これで!」

 

ラウラは業を煮やし、ISを展開しようとしていた。って、マジかよ!?そこまでするのか!!

 

「やめんか!馬鹿者!!」

 

スパァンッ!!

 

さすがにマズイと感づいたのか千冬姉の出席簿がラウラの頭上に振り下ろされた。

 

「くうっ……!な、何故ですか教官?」

 

頭を抑えてプルプルと震えているラウラは千冬姉に聞いてきた。

 

「教室で暴れようとしていた馬鹿者を鎮圧しただけだ。さっさと席につけ」

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

パアンッ!

 

「いいから座れ。二度は言わんぞ」

 

俺に対して捨て台詞のごとく言ってきたが再び千冬姉の出席簿が振り下ろされた。こいつも要注意だな、これは……。

 

「ううっ……」

 

出席簿の餌食になったラウラは涙目になりながら頭を抑えて空いている席に座った。

 

「では、HRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

パンパンと手を叩いて千冬姉が行動を促す。その合図で俺は立ち上がるこのままクラスにいると女子と一緒に着替えなくてはならなくなる為ここから移動しなくてはならない。

 

「織斑。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

千冬姉に呼び止められて俺は止まる。まあそうだよな。

 

「わかりました」

 

「それと……気を付けろ。何かあるかもしれんぞ」

 

千冬姉はシャルルに聞こえないように近くに寄ってそう言った。

 

「はい」

 

「よし、では行け」

 

千冬姉も何かを感じているのだろう。表では男子の扱いをしているみたいだが違和感があると考えているみたいだ。

 

「君が織斑君?初めまして。僕は――」

 

「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」

 

説明すると同時に行動に移す。俺はいち早く教室を出た。それにつられてシャルルも教室を出る。

 

「とりあえず男子は空いているアリーナ更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから、早めに慣れてくれ」

 

「う、うん……」

 

さっきまでとは違って妙に落ち着かないようだな……。しかし、確証が得られない今はとりあえず男子として接するか。

 

「はやく行くぞ」

 

バタバタと階段を下って一階へ。速度を落とすわけにはいかないのだ。なぜなら――

 

「ああっ!転校生発見!」

 

「しかも織斑君と一緒!」

 

そう。HRが終わったのだ。早速各学年各クラスから情報先取の為の尖兵が駆け出してきている。これに捕まったら最後、質問攻めにあい授業に遅刻する事は決定的になり、千冬姉からキツイ指導を受けてしまう。

 

「いたっ!こっちよ!」

 

「者ども出会え出会えい!」

 

何でしょうね。この統率力の物凄い良さは……これが軍隊なら誉められるわなこれは………ただ、もの凄い不純な動機の結果だけどな……。

 

「織斑君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」

 

「しかも瞳はエメラルド!」

 

「日本に生まれて良かった!ありがとうお母さん!今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」

 

もう、どうでもいいや……何もツッコミません。

 

「な、何?何でみんな騒いでるの?」

 

状況が飲み込めないのか、シャルルは困惑顔で訊いてくる。

 

「そりゃ男子が俺達だけだからだろ」

 

「……?」

 

「いや、普通に珍しいだろ。ISを操縦出来る男って、今のところ俺達しかいないからだよ」

 

「あっ!――ああ、うん。そうだね」

 

意味がわからないって顔をしているシャルルに説明したら慌てて納得した顔に変えた。やっぱりおかしいな、普通の男なら騒がれる事にある程度は理解しているがシャルルはわかってない感じがはっきりととれた。

 

「ま、何にしてもこれからよろしくな。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

「うん。よろしく一夏。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「わかった、シャルル」

 

とりあえずシャルルに警戒されないようにしつつ様子を伺うしかないな。

 

「到着!」

 

校舎を出て、予定より更衣室に着いた。さっさと着替えるか、俺は制服のボタンを一気に外して、ベンチに投げて一気にTシャツを脱いだ。

 

「わあっ!?」

 

「?」

 

俺が脱いだ途端声を上げるシャルルだが今は授業に間に合うようにしないとな。

 

「何してるんだ?早く着替えないと遅れるぞ」

 

「う、うんっ?き、着替えるよ?でも、その、あっち向いてて……ね?」

 

「わかった。早く着替えろよ」

 

俺はシャルルから距離を離して着替える。まあ、今日は実習があるからISスーツを着ているがあそこまで反応されると余計にあやしく感じた。

 

(問い詰めたいが……はぐらかされるな)

 

ロッカーの鏡からちらりとシャルルを見ながら俺は考える。心なしか視線を感じるな。

 

「シャルル、着替えたか?」

 

「えっ?う、うん。着替えたよ」

 

気になり視線を向けると、シャルルはこっちに向けていた顔を慌てて壁の方にやって、ISスーツのジッパーをあげていた。

 

「うわ、着替えのが早いな。なにかコツでもあるのか?」

 

「い、いや、別に……って、一夏も着替える早いよ」

 

「あらかじめ着ているだけだよ――よし、行こうぜ」

 

「う、うん」

 

お互いに着替え終わって更衣室を出てグラウンドに向かう途中で改めてシャルルを見る。

 

「そのスーツ、なんか着やすそうだ。どこのやつ?」

 

「あ、うん。デュノア社製のオリジナルだよ。ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品」

 

「デュノア?デュノアって、あの大企業のデュノア社か?」

 

「うん。僕の家だよ。父がね、社長をしてるんだ。一応フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う」

 

「そうか。シャルルは社長の息子って訳かなるほどな」

 

「そんなにいいものじゃないよ。社長の息子って肩書き」

 

「肩書き……ねえ」

 

シャルルの言葉に俺は聞き逃さなかった確かにそうだよな、俺も織斑千冬の弟なんて肩書きなんてあるからそこは同情せざるをえないよな。

 

「ああ、気にしないでくれ悪気はないからよ」

 

「うん。わかった」

 

シャルルと軽く会話をしながら第二グラウンドに向かった。多少あやしい点はあるがそこは刀奈さんに任せよう。今、俺に出来る事は目の前に集中するだけだ。決して千冬が授業担当するからじゃないぞ、うん。




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