織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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少し長くなりそうなので一旦きりました。

ではどうぞ


第23話

「じゃあ、改めてよろしくな」

 

「うん。よろしく、一夏」

 

夜。夕食を俺とシャルルは部屋に戻ってきた。食堂では二人目の男子転校生という事で相変わらずの女子包囲網&質問攻めにあい、延々と続きそうなそれを適度な頃合いで切り上げてきたのだ。ちなみに部屋割りは俺の隣の部屋にシャルルが入る形になった。最初はシャルルと同室になる予定だったが千冬姉と刀奈さんとの話し合いで別々の部屋にする事を了承することが出来た。

 

(まあ、俺としてはありがたいよな………)

 

そう心の中では安堵している。二人の恋人達と一緒に過ごしていたのに疑わしいやつと一緒に過ごすのは正直抵抗がある。今は食後の休憩をかねて俺の部屋にシャルルを招き日本茶を飲んでいる。

 

「紅茶とはずいぶんと違うんだね。不思議な感じ。でもおいしいよ」

 

「気に入ってもらえたようで何よりだ。今度機会があったら抹茶でもどうだ」

 

ちなみにセシリアは日本茶が苦手らしくほとんど飲まない。どうも色が引っかかっているんだそうだ。まあ、緑色の飲み物は外国では見ないからな……。

 

「抹茶ってあの畳の上で飲むやつだよね?特別な技能がいるって聞いたことがあるけど、一夏はいれれるの?」

 

「抹茶は『たてる』って言うんだよ。俺は略式しか飲んだことがないな。今は駅前に抹茶カフェっていうのがあるんだよ。コーヒーみたいな感覚で飲めるのがあるぞ」

 

「ふうん。そうなんだ。じゃあ今度誘ってよ。一度飲んでみたかったんだ」

 

「ああ、それから案内もいるか?まあ、あたりに詳しい人も知っているから一緒に行動すると楽しいぞ。シャルルはそれでいいか?」

 

「本当?嬉しいなあ。ありがとう、一夏」

 

柔らかな笑みを浮かべるシャルルに、俺は疑惑が深まる。全体的に感じる中性的な印象がそうさせているのか、わからない………。どっちつかずが更に怪しさを際立たせていた。

 

「まあ、出かけるなら人数が多い方が楽しいし。シャルルならすぐに友達になれるかもな」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

俺が疑っている事を悟られないようにさりげなくフレンドリーに話していく。

 

「そういえば一夏はいつも放課後にISの特訓しているって聞いたけど、そうなの?」

 

「ああ。俺は他のみんなから遅れているから、地道に訓練時間を重ねるしかないな」

 

今日は訓練はお休みだ。体を休める事も立派な訓練だし疲労感が残ったままでは怪我をする恐れがあるからである。明日から訓練を再開して実力をつけないとな。なにせ今月には学年別トーナメントがあるからだ………不本意な約束阻止が第一優先だけどな………。

 

「僕も加わっていいかな?何かお礼がしたいし、専用機もあるから少しくらいは役に立てると思うんだ」

 

「それはありがたい話だがいいのか?」

 

「うん。僕に任せてよ」

 

「わかった。よろしく頼む」

 

「ありがとう。それじゃ僕はそろそろ寝るね、おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

俺は手を振り、シャルルはそれに応えて部屋を出ていった。

 

「ふう……どうでした?」

 

深々と息をはき、隠れていた二人を呼んだ。シャルルを観察する為に俺がフレンドリーに話しかけて簪と刀奈さんは嘘かどうかを見極めていた。

 

「パッと見は男だけど……仕草が女性らしいところが目立つ」

 

「私は骨格もそうだけど何かで隠してる感じがするわね」

 

「ではシャルルは……」

 

「ええ、あの子はクロね」

 

「理由は何なんでしょうか?」

 

「それは本人に聞いてみないとね……もう少し調べてみるわ」

 

「一緒に訓練してみて核心が持てたら問い詰める?」

 

「逃げられるかはぐらかされるかだな……」

 

「とりあえず、何かわかったら教えるわね……とりあえずは泳がせてみてね」

 

「わかりました」

 

刀奈さんの言葉に頷き、この日はお開きになった。

 

――――――――――――

 

「……ねえ、一夏」

 

「なんだシャルル?」

 

「一夏って本当に初心者?」

 

「そうだけど、何でそんな事を聞くんだ?」

 

シャルルが疑わしい目でみてくるので俺はそう答えた。シャルルが転校してきてから5日が経って、今日は土曜日だ。土曜日はアリーナが全開放なのでほとんどの生徒が実習に使う。それは俺も同じで、今日もこうしてシャルルに軽く手合わせをしてもらった後、それを見ていた刀奈さんからIS戦闘に関するレクチャーを受けていた。

 

「一夏がここまで強いだなんて思わなかったよ!僕、全然勝てないじゃないか!!」

 

「そ、そうか……?」

 

シャルルの言葉に思わず首をかしげた。あれ―?おかしいな?

 

「いや、てっきり手加減してるのかと思ってた」

 

「違うよ!手加減しようと思ったのは最初だけで後は本気でやってるんだよ!」

 

「そ、そうなのか?」

 

シャルルのカミングアウトに思わずあ然となった。まさか全勝するから、わざと負けてるかと思ったがまさか本気だったとは………。

 

「攻撃はあっさりかわされるし、しかも牽制しても銃弾を弾いて近寄ってくるから恐怖でしかないよ」

 

「ISの性能じゃないのか?簡単に出来ると思うぞ」

 

「出来ないよ!一夏が凄すぎるんだって!!」

 

「そういうものかな?」

 

シャルル若干怒り気味に言ってくるので俺はそういうしかなかった。

 

「仕方ありませんわ。一夏さんは才能がありますし、なにより生徒会長から指導を受けてますから実力がついている事に気付かないだけではなくて?」

 

今まで俺とシャルルのやりとりにセシリアが入ってきた。ちなみにここにいるメンバーは俺、簪、刀奈さん、セシリア、シャルル、本音だ。

 

「僕が教える事なんて何もないじゃないか……むしろ教えて欲しいくらいだよ……」

 

とぶつぶつ何かを呟きながら落ち込んでしまうシャルルでした。

 

「ねえ、ちょっとアレ……」

 

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

 

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

 

急にアリーナ内がざわつきはじめだした。俺はシャルルに声をかけようとしたが視線を感じて注目の的に視線を移した。

 

「…………」

 

そこにいたのはもう一人の転校生、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだった。転校初日以来、クラスの誰ともつるもうとしないどころか会話さえしない孤高の女子だ。俺は敵対視されている相手には話しかけたりはしない、そこは千冬姉が何かしらのアクションは起こすはずだ。

 

「おい」

 

ISのオープン・チャネルで声が飛んでくる。初対面があれだったのだから、その声は忘れもしない。ラウラ本人の声だ。

 

「……何か用か?」

 

気が進まないが無視しても進展はしないだろうから返事をしてみる。言葉を続けながらラウラがふわりと飛翔してきた。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「断る。戦う理由がないし、意味もない」

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

「………」

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」

 

ああ、そうかよ―。千冬姉の教え子ということから、その強さに惚れ込んでいるだろう。だから、千冬姉の経歴に傷を付けた俺が憎い、か………俺もあの時ほど自分が憎かったさ……けどな、試合を放棄して俺を助けに来てくれた千冬姉の事を誇りに思うし、尊敬出来るんだよ!千冬姉の事をわかったような感じで言うラウラに腹がたった。

 

「また今度な」

 

しかし、それはそれ。これはこれ。俺とラウラが戦う理由にはならない。少なくとも、俺は戦う必要がないからだ。

 

「ふん。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

言うが早いか、ラウラはその漆黒のISを戦闘状態へシフトさせた。刹那、左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いた。

 

「!」

 

ゴガギンッ!

 

「……そこまでよ」

 

「なっ!?」

 

横合いから割り込んできた簪が実弾を弾き、それと同時にラウラにランスを突き付ける刀奈さん。

 

「悪いけどいきなり戦闘を始めようとするのはやめてくれないかしら。ここには他に訓練してる人達もいるのよ?あなたの攻撃で巻き込まれて怪我させたいの?」

 

「貴様……」

 

ギリと歯噛みして刀奈さんを睨み付けるラウラ。俺をターゲットにしているからっていきなりやってくるとはよっぽど憎いんだな……。

 

「大人しく退きなさい……でないとあなたを排除するわよ」

 

そう言うと刀奈さんから殺気が溢れ出す。

 

「っ!?」

 

ラウラも刀奈さんの変化に気付いたのだろうビクッと身構えた。今は優しい刀奈さんではなく更識家当主楯無になっている。だから威圧感と殺気が見える。

 

「……ふん。今日は引こう」

 

横槍を入れられたらなねかもしくは刀奈さんには勝てないと考えたのかラウラはあっさりと戦闘態勢を解除してアリーナゲートへと去っていった。

 

「一夏、大丈夫?」

 

「ああ。大丈夫助かったよ」

 

ついさっきまでラウラを睨み付けていた簪は元に戻り、心配げに俺の顔をのぞき込んでいた。

 

「アリーナの閉館時間が迫ってるし、今日はここまでね」

 

「わかりました。じゃあ先にいってるなシャルル」

 

「あっ、うん。わかったよ」

 

刀奈さんが終了の言葉を言ったので俺は更衣室に向かう事にした。シャルルはIS実習後の着替えを一緒にしたがらないので表向きは恥ずかしがり屋か?とか見られたくない傷痕でもあるのか?と言っておいた。

 

(まあ、それがかえって疑惑を深めるだけなんだけどな………)

 

裏向きはもしシャルルが女だとしたら、一緒に着替えたくはないな。性別がバレてしまえば終わりだし、何より俺が恥ずかしい思いをしたくないからだ。

 

「ふう……」

 

更衣室に着き、俺はベンチに座り一息ついた。

 

(シャルルに……ラウラか……)

 

着替えながら俺は二人について思考を深める。

 

(シャルルはもう……クロと考えた方がいいな……いつまでもごまかせる訳ではないからな)

 

いずれシャルルは刀奈さん達の元、正体がはっきりするはずだ。

 

(シャルルの事は問題ないとしてラウラか……)

 

今日の行動からして俺が憎いと言う事を再認識された。刀奈さんのおかげで引いたが次は何をするかわからない……。俺の身近な人を傷付けるなら、容赦はしない!

 

(その前に千冬姉が釘をさしてくれればいいけどな……)

 

あんまり期待は出来ないけど最悪な事も想定しておこう。

 

「あのー、織斑君とデュノア君はいますか!?」

 

「はい?織斑だけいます」

 

ドア越しから呼んでいる声が聞こえたので思考を中断した。声の主は山田先生のようだ。

 

「入っても大丈夫ですかー?まだ着替え中だったりしますー?」

 

「大丈夫です。着替えはすんでますよ」

 

「そうですかー。それじゃあ失礼しますねー」

 

パシュッとドアが開いて山田先生が入ってきた。

 

「デュノア君は一緒ではないんですか?今日は織斑君と実習しているって聞いていましたけど」

 

「まだアリーナの方にいます。どうかしましたか?大事な話なら呼びますけど」

 

「ああ、いえ、そんなに大事な話でもないですから、織斑君から伝えておいてください。ええとですね、今月下旬から大浴場が使えるようになります。結局時間帯別にすると色々と問題が起きそうだったので、男子は週に二回の使用日を設けることにしました」

 

「そうですか……」

 

「何か嬉しくないみたいですね……」

 

「あっ、いえ……」

 

山田先生は俺の返事と態度が気にさわったのか上目遣いで怒ってますアピールをしてきた。

 

「わざわざ俺達の為にそんな事をしてくれて嬉しいやら、申し訳ないやらでいっぱいなんですよ」

 

「あー、そうでしたか……」

 

俺の言葉にぽんと手を叩いて納得してくれた。

 

「これも仕事の内ですよ。生徒の事を気遣わないと教師じゃないですからね。織斑君とデュノア君の為に頑張りました」

 

そう言い自慢気にえっへんと胸を張る山田先生。そのさいに大きな胸が揺れるので思わず見入りそうになるのを慌てて目線をそらした。

 

「……一夏?何してるの?」

 

「ああ、シャルルか。山田先生が俺達に用件があったから待ってたんだよ」

 

シャルルが更衣室に戻ってきたので俺はそう返した。

 

「そうなんだ。待たせちゃったかな?」

 

「いえ、ついさっきでしたので大して待ってませんよ」

 

「男子の大浴場使用許可が認められそうだ。シャルルは湯船に浸かるのは好きか?」

 

「うーん。僕は大体シャワーで済ませちゃうからどうかな……」

 

「それなら、大浴場を是非とも使ってみてください。広いし、設備も良いですし最高ですよ」

 

そう言いシャルルの手を取り大浴場に入る事を進める山田先生。

 

「そ、そうですか……あ、あはは……」

 

山田先生の行動に困惑したのか俺に助けを求めるようにチラチラと視線を向けてきた。

 

「ああ、忘れるところでした。織斑君にはもう一件用事があるんです。ちょっと書いて欲しい書類があるんで、職員室まで来てもらえますか?白式の正式な登録に関する書類なので、ちょっと枚数が多いんですけど」

 

「わかりました。じゃあシャルル先に行ってるな」

 

「うん。わかった」

 

「じゃ山田先生、行きましょうか」

 

俺は山田先生の後に着いていきながら更衣室を後にした。

 

 

 

「……で以上よ」

 

「やっぱりですか……」

 

「うん。そうみたい……」

 

書類の手続きが終わり部屋に戻ると真剣な表情の刀奈さんと簪が出迎えた。聞けばシャルルの正体がわかったので渡された書類を見ると本当に女だとわかる……。

 

「それじゃ、シャルルを呼びますね」

 

俺は二人にそう聞くと簪と刀奈さんは頷いたのを確認するとプライベート・チャネルでシャルルを呼び俺の部屋に来るように言った。

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

「入るよ一夏」

 

数分経たない内にシャルルがやってきた。

 

「あれ?あの二人は?」

 

「ああ、俺のルームメイトだよ。更識楯無さんと妹の簪だ」

 

「そうなんだ。よろしくね」

 

「ええ、よろしく」

 

「よろしく」

 

「それで僕に大事な話って何かな?」

 

「まあ、立ち話も何だから座って話そうか」

 

「う、うん……」

 

シャルルは戸惑いを隠さずにイスに座った。

 

「はい。お茶よ」

 

「ありがとうございます」

 

「それで話って言うのはシャルルの事だ」

 

「僕の事?」

 

「ああ、そうだ。何か隠してる事はないか?」

 

「な、何もないよ!何言ってるのさ!」

 

隠し事と言うとシャルルは動揺しだした。

 

「なあ、……お前は一体誰なんだ?本当は男性操縦者ではないんだろ?」

 

「ぼ、僕はシャルル・デュノアで男だよ!」

 

俺の問い掛けにシャルルは気にさわったのか怒り気味に声をあげる。

 

「もう隠し事は出来ないわよ。シャルル・デュノア君……いえ、シャルロット・デュノアちゃん」

 

「っ!?」

 

刀奈さんから自分の本名を言われ、シャルルはビクッと驚き息を飲んだ音が聞こえる。

 

(この反応間違いないな……)

 

さあ、正体を暴かせてもらうぞ。

 

 

シャルル・デュノア……いやシャルロット・デュノア……。




次回はシャルルの正体暴きます
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