織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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指摘がありましたので修正版を更新します


第24話

「ど、どうして、僕の本当の名前を………」

 

本名を言われて顔を青ざめるシャルル。

 

「悪いけどあなたの事を調べさせてもらったわ」

 

刀奈さんはパサリとテーブルの上に報告書を置いた。

 

「デュノア社長に息子なんていなかったわ。それにシャルル・デュノアなんて人物も存在しなかった」

 

「そ、そこまで……」

 

「それにもっと調べてみたら、デュノア社長には愛人がいて子供がいた事がわかったの」

 

「それがシャルロット・デュノア………君だよな?」

 

「…………」

 

俺達が言い終えて暫く静かになる。シャルルは俺達とテーブルの上にある報告書を何度も繰り返して見ていた。

 

「………仕方ないよね」

 

諦めたのかシャルルはポツリと呟いた。

 

「ここまで調べられたら言い訳出来ないね……全て話すよ。その前にバスルームに行ってもいいかな?」

 

「何をするのかしら?」

 

「ああ、変な事はしないよ。真相を話すからちょっと待ってて」

 

そう言いシャルルはバスルームに行った。

 

がチャリ

 

「お待たせ」

 

少ししてシャルルはバスルームから出てきた。

 

「やっぱり……」

 

「うん。そうだよ、僕は女だよ」

 

シャルルが出て真っ先に気付いたのが服の上からわかる女性特有の胸の膨らみがあった。

 

「どうして男の格好なんてしてたの?」

 

真っ先に簪がシャルルに一番の疑問をぶつけた。

 

「それは、その……僕の父からの直接の命令なんだよ」

 

シャルルはデュノア社関係の話から表情が曇っている。

 

「命令って……親だろう?なんでそんな――」

 

「愛人の子だからだよ……本妻の子じゃないから僕は従うしかなかったんだ。……生きていく為に……」

 

「生きていくって……母親はどうしたんだ?」

 

「お母さんはすでに亡くなってるんだ……二年前に僕の父親に引き取られて、それからIS適応が高くてテストパイロットになったんだ。それから……」

 

シャルルは俺達に今までの事を話してくれた。父親に会ったのは二回で会話も少なく、本妻には『泥棒猫の娘が!』と罵倒され殴られた。

 

「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの」

 

「デュノア社は量産機ISのシェアが世界三位だったはずじゃなかったのか?」

 

「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発っていうのはものすごいお金かかるんだ。ほとんどの企業は国からの支援があってやっと成り立っているところばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているから、第三世代型の開発は急務なの。国防の為もあるけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ。」

 

「なるほどな……」

 

「それでデュノア社でも第三世代型を開発していたんだけど、元々遅れに遅れての第二世代型の最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで、政府からの通達で予算を大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの」

 

「大体はわかったけど、何で男装する事になったの?」

 

「簡単だよ。注目を浴びるための広告塔。それに―」

 

シャルルは俺達から視線を逸らし、どこか苛立ちを含んだ声で続けた。

 

「同じ男子なら日本で登場した特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体とデータを取れるだろう………ってね」

 

「目的は俺の白式のデータか……」

 

「うん。それを盗んで来いって言われてるんだよ。もし失敗したら僕の体を使って一夏を手込めにしてでもデータを盗めって言われてるんだよ。あの人にね……」

 

マジかよ……いくら切羽詰まっているからと言って、ここまで強要するのかよ……。俺は沸々と怒りが沸き上がる。

 

「とまあ、そんなところかな。もうばれちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まあ……潰れるか他企業の傘下に入るか、どのみち今までのようにはいかないだろうけど、僕にはどうでもいいことかな」

 

シャルルは言いたい事を言い終えたのかもう何もかも諦めたように悟った表情に変わった。

 

「……シャルルは、それでいいのか?」

 

「えっ?」

 

「あなたはそれでいいの?良いように使われて捨て駒みたいに捨てられる人生で終わりたいの?」

 

「そ、それは……」

 

「あなたには生きる権利があるのにそれを放棄するの?親の命令だからってそれに従って死ぬの?」

 

「そんなの嫌だよ!嫌に決まってるじゃないか!でも……」

 

「安心していいわ。すぐに帰る必要はないわよ」

 

「「「えっ?」」」

 

「忘れたの?特記事項第二十一、の事を」

 

「あ、あの事項を利用するのですか?」

 

「そうよ。IS学園にいれば3年間は身柄を拘束される必要はないわ」

 

「その間になんとかなる方法を考える事が出来るって訳だね。お姉ちゃん」

 

「流石楯無さんですね」

 

「当然よ。生徒会長だもん」

 

俺と簪に誉められて満更でもない顔で胸を張る刀奈さん。

 

「後はシャルルがどうしたいか決めてくれ、今すぐでなくていいぞ」

 

「うん、わかった。よく考えてみるよ」

 

「それじゃ、夕飯にしよう。今日は俺が作るよ。シャルルも食べるか?」

 

「うん。いただくよ」

 

どうやらシャルルの表情は明るくなったようだ。まあ、引き続き調査する必要があるが、今わかった事はシャルルは悪いやつではないとわかっただけでもよしとしよう。

 

(後はラウラか……)

 

もう一人の転校生の事を考えながら夕飯を作りあげる。まあ、近いうちにアクションを起こしそうだが今は様子見しかないな………。ちなみに夕飯を食べたシャルルは何故か落ち込み、その様子を見ていた簪と刀奈さんは肩に手を当てて慰めていた事に苦笑いするしかなかった。

 

――――――――――――

 

「……それは本当なんですの?」

 

「う、ウソついてないでしょうね!?」

 

月曜の朝、教室に向かっていた俺は廊下まで聞こえる声に目をしばたたかせていた。

 

「なんだ?」

 

「さあ?」

 

「さあ〜?」

 

隣にいるのはシャルルと本音である。

 

「本当だってば!この噂、学園中で持ちきりなのよ?月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君と交際でき――」

 

「俺がどうしたって?」

 

「「「きゃああっ!?」」」

 

な、なんだ?クラスに入って普通に声をかけたはずなのに、返ってきたのは取り乱した悲鳴だった。

 

「で、何の話だったんだ?俺の名前が出ていたみたいだけど」

 

「ええ、実は噂で月末の学年別トーナメントで優勝すれば一夏さんとこ―」

 

「「「ちょっと待った―――!!!」」」

 

全部話す前にクラスの中の女子みんながセシリアを黙らせた。

 

「お、おい……」

 

「じゃああたし自分のクラスに戻るから!」

 

「そうだね!私達も席につかないとね!」

 

「んーっ!!んーっ!?」

 

パタパタとよそよそしい様子で女子達は自分のクラス・席へと戻っていったがセシリアは何故か何処かへ連れられて行ってしまった。

 

「……なんなんだ?」

 

「さあ………?」

 

「さあ〜?」

 

俺達は訳がわからずに首を傾げるだけだった。その後余鈴が鳴った時に制服が乱れてヨロヨロ状態でセシリアが帰って来た。その姿を見て回復するまで話はしない事にした。深く追求すれば再び彼女の身に災いが降りかかる為だ。

 

――――――――――――

 

(な、なぜこのようなことに……)

 

教室の窓側列で箒は表面上平静を装いつつも、心の中では頭を抱えていた。近頃なにか月末の学年別トーナメントに関する噂が流れていることは知っていた。

しかし、問題はその内容でる。

 

『学年別トーナメントの優勝者は織斑一夏と交際出来る』。

 

(そ、それは私と一夏だけの話だろうっ!)

 

一夏が言いふらしたとは考えられないので、どこからか情報が漏れたのだろう。今にして考えると、あの時の声はやや大きかったかもしれない。それでもふたりだけの秘密ということで安心していた面もある。

 

「………」

 

しかし、現実にはもうほとんどの女子が知ることとなっているらしく、さっきも教室にやってきた上級生が『学年が違う優勝者はどうするのか』『授賞式での発表は可能か』などとクラスの情報通に訊きに来ていた。

 

(まずい、これは非常にまずい……)

 

と自分以外が一夏と付き合うことに激しい抵抗感があるのは言うまでないがしかし、箒自身一夏に恋人達がいる事はまだ知らない為の花盛りの十代乙女、溢れる情動の暴走を誰が止められる訳がない。

 

(と、とにかく、優勝だ。優勝すれば問題ない)

 

そう決意するが悲しきかな、箒の実力は他のクラス女子と同じくらいであり、優勝には程遠い事はまだ知らない。

 

――――――――――――

 

「はあっ!?」

 

昼休みになり、回復したセシリアと本音、簪、それと途中で合流した刀奈さんを連れて屋上に行き先程の話の途中からの内容を訊き唖然とした。

 

「その様子だとご存知なかったみたいですわね」

 

「当たり前だよ。何だよそのふざけた噂は………」

 

俺は額に手を当ててため息をはいた。

 

「確かにそんな噂は聞いていたけどここまで拡がるだなんて思わなかったわ………」

 

「うん……まるで一夏が優勝商品みたいな扱いに聞こえるよ……」

 

刀奈さんは困った顔をし、簪は不機嫌な顔をしながらそれぞれ言った。

 

「噂とはいえ、何も知らない状態では一夏さんもお困りでしょうからお話いたしました」

 

「ありがとうセシリア。ったく誰だよ、こんな噂を流したのは?」

 

「確かにそうよね。何か心当たりない?」

 

「そういえば〜、きよきよ達がそんな話してたよ〜」

 

「本音、どんな内容?」

 

「何でもある女子がいっちーの部屋の前で月末の学年別トーナメントで優勝したら交際する約束を叫んでいたって」

 

「あっ。あれか……」

 

「何か心当たりがあるんですの?」

 

「ああ、実は……」

 

セシリアに尋ねられて俺は先日の事を話した。

 

「そう、そんな事が……」

 

「噂の原因は篠ノ之さんからでしたのね……」

 

「ああ、いい迷惑だよ……」

 

「だよね〜……」

 

「うん……」

 

俺の話を聞いて皆が不愉快気味な表情を浮かべた。

 

「前々から気になっていたのだけど、あの子って一体何を考えているかしら?」

 

「この前のクラス対抗戦の時にはわざわざ危険なところに向かう方ですし、わたくしには理解出来ませんわ」

 

「何か一夏だけしか見ていない気がするのは気のせい?」

 

「当たりだ、簪。あいつは俺しか見てないよ」

 

「どういうこと〜?」

 

「篠ノ之さんから一方的な好意を向けられてるんだよ。それを俺は断っているんだが……諦めが悪いんだよな……」

 

「それって物凄い質性が悪いじゃないの?」

 

「そうなんですよ。あいつは自分の良いように解釈してしまうので困ってるんですよ」

 

「なるほど、だから織斑先生の態度が厳しいのがわかりましたわ」

 

「とは言え、なんとかしないとねえ……」

 

「うん……」

 

「たとえ俺が優勝しても上級生の優勝者に交際迫られたら本当に大変ですよ」

 

「二年は私が優勝すればいいし、三年は虚ちゃんに頑張ってもらうしかないわね……」

 

「完全にトラブルに巻き込まれた感じですわね……」

 

「「「「はあ………」」」」

 

俺達は思わず深いため息を吐いた。俺が知らないうちにここまで噂が進展してしまった事に頭を悩ませることとなった。

 

――――――――――――

 

「相変わらず距離が長いな……」

 

学園内に男子が使えるトイレが三ヵ所しかない現状、まあ元々は女子校だけにあんまり文句を言える立場じゃないから仕方ないと思い諦める。

 

「なぜこんなところで教師など!」

 

「やれやれ……」

 

ん?ふと曲がり角の先から声が聞こえたので思わず足を止めて声のする方に耳を傾ける。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

 

「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」

 

ラウラは千冬姉の現在の仕事についての不満や思いの丈をぶつけているみたいだな。

 

「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」

 

「ほう」

 

「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません」

 

「なぜだ?」

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている。そんな程度の低い者達に教官が時間を割かれるなど――」

 

「――そこまでにしておけよ、小娘」

 

「っ……!」

 

凄みのある千冬姉の声。さすがにラウラは黙ってしまうか……まあ、ある意味わがままを言っているようにも聞こえなくはないが……。

 

「少し見ない間に偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「わ、私は……」

 

千冬姉の威圧感にのまれたのかラウラの声は震えている。嫌われてしまうかもしれない恐怖を感じているようだ。

 

「さて、授業が始まるな。さっさと教室に戻れよ」

 

「………」

 

千冬姉がせかして、ラウラは黙したまま早足で去っていった。

 

「そこの男子。盗み聞きか?異常性癖は感心しないぞ」

 

「わかってますよ……ただ気になっただけです織斑先生」

 

「そうか……」

 

「織斑先生、ラウラはドイツでの教え子なんですね」

 

「今は織斑先生はいい。その通りだ。ラウラは私がドイツで教導した教え子だよ」

 

「やっぱり……でも、ここまで千冬姉に執着してるとは思わなかった」

 

「ああ、アイツは私が一番手塩にかけて育てたからな……」

 

そう言って腕を組み顔を曇らせる。

 

「私を慕ってくれるのは嬉しいが、度が過ぎてしまうのも困るのだがな……」

 

「あの様子じゃあ暫くは千冬姉にドイツに来てほしいって言いそうだ」

 

「まったく、困ったものだ」

 

額に手を当ててため息をはいた。

 

「じゃあ授業が始まるので教室に戻ります」

 

「わかった。それと一夏」

 

「何か?」

 

「もし月末トーナメントでラウラと当たったら遠慮はいらん。完膚無きまでに叩き潰せ」

 

「教師がそんな事言っていいのかよ?」

 

「仕方のない事だ。このままいけば必ず間違った方向に傾くことは想像できる。だから一度負けてちゃんと教えるつもりだ」

 

「わかりました。それでは」

 

「ああ、気をつけてな」

 

俺と千冬姉は会話を終えてそれぞれの教室に向かうのだった。

 

――――――――――――

 

「「あ」」

 

ふたり揃って間の抜けた声を出してしまう。時間は放課後。場所は第三アリーナ。人物はセシリアと鈴だ。

 

「奇遇ね。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」

 

「そうでしたか。わたくしも特訓しに来ましたわ」

 

鈴はセシリアをライバル視するがセシリアは優勝には興味がなく、噂を払拭させる為に一夏達に協力する事を優先にしていた。

 

「ちょうどいい機会だし、この前の実習のことを含めてどっちが上かはっきりさせとくってのも悪くないわね」

 

「どちらが上かなんて興味はありませんが、お互いに実力を高め合うのならわたくしは受けて立ちますわ」

 

ふたりはメインウェポンを呼び出して構える。

 

「では――」

 

――と、いきなり声を遮って超音速の砲弾が飛来する。

 

「「!?」」

 

緊急回避のあと、セシリアと鈴は揃って砲弾が飛んできた方向を見るとそこにはあの漆黒の機体がたたずんでいた。

 

「………どういうつもり?いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない」

 

とん、と連結した《双天牙月》を肩に預けながら、鈴は衝撃砲を準戦闘状態へとシフトさせる。

 

「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。……ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」

 

いきなりの挑発的な物言いに、鈴の口元を引きつらせる。逆にセシリアは冷静にラウラを見ていた。

 

「何?やるの?わざわざドイツくんだりからやってきてボコられたいなんて大したマゾっぷりね。それともジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってんの?」

 

「鈴さん、あんまり挑発に挑発で返すのは良くありませんわ。しかもドイツをバカにした発言は止めた方がよろしいかと思いますわ」

 

ラウラの全てを見下すかのような目付きに不快感を抱いた鈴が怒りのはけ口を言葉に見いだそうとしたのをセシリアは注意した。

 

「はっ……。ふたりがかりで量産型に負ける程度の力量しか持たぬものが専用機持ちとはな。よほど人材不足と見える。数くらいしか能のない国と、古いだけが取り柄の国はな」

 

ぶちっ――!

 

何かが切れる音がして、鈴は装備の最終安全装置を外す。

 

「ああ、ああ、わかった。わかったわよ。スクラップがお望みなわけね。――セシリア、あたしが先にやるわよ」

 

「鈴さんお待ちください!こんな私闘はやめるべきです!」

 

完全に堪忍袋の緒がキレた鈴を慌てて宥めようとセシリアは制止の声をあげた。

 

「はっ!ふたりかがりで来たらどうだ?一足す一は所詮二にしかならん。下らん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか」

 

「ラウラさんもおやめください!さっきから他国を侮辱したり場にいない人間の事まで悪くいったら織斑先生が黙ってませんわ!」

 

「「っ!!」」

 

セシリアの言葉に今にも戦う寸前だった鈴とラウラはピタッと止まる。

 

「ちょ、ちょっとセシリア……嫌な事言わないでよ、せっかくアイツをボコるチャンスだったのに……」

 

「ただの喧嘩でしたら止める必要はありませんが、私達は代表候補生。国を背負っている事を忘れてISでの私闘などしたら国際問題に発展しますわ」

 

「うっ……」

 

セシリアの言葉に鈴の表情は曇る。セシリアの正論に何も言い返せないからだ。

 

「ラウラさんもです。この前の事といい。今といいいきなり攻撃するのは一体何ですか!その攻撃に巻き込まれて怪我をさせたらどう責任をとるおつもりですか!」

 

「そ、それは……」

 

セシリアの言葉にたじたじになるラウラ。千冬の名前が出た途端にさっきまでの挑発的な態度が鳴りを潜めてしまう。

 

「ラウラさん、あなたは織斑先生が怖くないですか?いくら何でも目につく行動ばかりとっていれば怒られますわ」

 

「怖くないかだと?……そんなの怖いに決まってるじゃないか!」

 

セシリアの問いにダーッと涙を流すラウラ。千冬に対する恐怖を思いだしたようだ。

 

「それでも私闘をなさりたいのならもう止めませんわ。後はお好きにどうぞ、織斑先生が来てもわたくしはフォローしませんのでそのつもりで……」

 

そう言い二人から去ろうとしてピットに体を向けると――

 

「ちょっと待て―――!!」

 

「ちょっと待ってよ―――!!」

 

セシリアを呼び止めようと鈴とラウラが叫んだ。

 

「何か用ですか?わたくしは別メニューをしようとしてましたのに」

 

「お願い見捨てないでセシリア!!」

 

「そうだ!私達に死ねと言うのか!!」

 

涙目になり必死にセシリアを止めようと詰め寄る鈴とラウラ。

 

「そう言われましてもわたくしには関係ありませんし、お二人の問題ではなくて?」

 

「いやよ。千冬さんの模擬戦と言う名の処刑なんて受けたくないのよ」

 

「そうだ。私達に逃げ道すら与えてくれないのだぞ!」

 

「だったら私闘など止めればいいだけの話ではないですか」

 

「「うっ……」」

 

鈴とラウラは再び言葉に詰まりお互いに顔を見る。

 

 

「「………」」

 

そのままにらみ合い、ふっと表情が和らいだ。

 

「やめましょう。こんな事やって千冬さんに怒られたくないもん」

 

「そうだな……私もやり過ぎた。こんな事すれば、教官怒るのは当然だ」

 

「わかってくれて何よりですわ」

 

「すまなかった。この勝負は学年別トーナメントでつけよう」

 

「そうね。そうしましょう」

 

鈴とラウラはお互いに頷き、私闘は回避されたのだった。

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