織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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前回、感想を見てアンチタグを着けました。

今回はオリジナル要素を入れての弾と虚の初顔合わせです。

ではどうぞ


第29話

「えっと、水着売り場はここだな」

 

俺達は駅前のショッピングモール、『レゾナンス』の2階にいた。この施設は各種レジャーや食べ物は色々なジャンルも完備し、いろんな物も取り扱っている。

中学校時代によく弾と鈴との3人で放課後繰り出した物だ。ちょっと懐かしい。

 

「さっ、一夏君。私達の水着を選んでね」

 

「わかりました」

 

刀奈さんの声に返事をして水着を眺める…………うん、いっぱいあるな………。

 

「もちろん、虚ちゃんと本音ちゃんのも選んでね」

 

「お嬢様!?」

 

刀奈さんの言葉に虚さんの言葉が上擦った。

 

「わ、私もですか?」

 

「そうよ、“私達”のって言ってたじゃない。当然虚ちゃんと本音ちゃんも対象よ」

 

「そ、そうですか……すみません」

 

そう言い申し訳なさそうにして俺に謝る虚さん。そこまで気を使わなくていいのにな………。

 

しかし、悩むな〜。皆それなりにスタイルがいいのである程度の水着は似合うかもしれないが、そこは俺のセンスにかかっている。

 

『一夏君』

 

どうしょうか真剣に悩んでいると刀奈さんからプライベート・チャネルが入ってきた。

 

『どうしました?』

 

『ずいぶんと真剣に選んでいるみたいだから、私達も選んでいいかしら?』

 

『そうだね、真剣に選んでいると時間が過ぎていっちゃうよ』

 

そこに簪も会話に加わってきた。

 

『そうですね。そうしてくれた方が助かります』

 

『ところで私達の水着のイメージは浮かんでいるの?』

 

『大体は……去年のとは違うのを選ぼうと思います』

 

『去年ので思い出したけどお姉ちゃんの水着、大胆過ぎなかった?』

 

『そう?一夏君は喜んでくれたのは覚えてるわよ』

 

『でも、男の視線を集めすぎたのはちょっと嫌でしたね………』

 

『もう少し露出控えたのにしたら?私、隣歩いててちょっと恥ずかしかった……』

 

簪はそう言うが美少女姉妹が水着姿で歩いていたら嫌でも周りの視線は釘付けになるのは間違いないな……うん。

 

『そうかしら?簪ちゃんはもう少し大胆な水着にしたら?でないと一夏君に飽きられちゃうわよ?』

 

『そ、そそそそそそそそんな事ないもん!そうだよね!?違うよね!?一夏!?』

 

『落ち着け簪。動揺し過ぎだから……後、刀奈さんは煽らないでください』

 

確かに簪が刀奈さんみたいな水着姿になったら似合うかもしれないがちょっと反応に困る………嬉しいけど。

 

『だってねえ……、一夏君が周りの女の子の水着姿に目移りしたら何か嫌でしょ?』

 

『それは……うん』

 

『ちょ、ちょっと待ってください!俺、そこまでひどくないですよ!?』

 

二人の会話に思わず待ったをかけたが――。

 

 

『山田先生の胸を見てたよね』

 

『山田先生の胸を見てたでしょ』

 

『すいませんでした。俺が悪かったです』

 

二人の次の言葉に俺は白旗を立てるしか出来なかった………ぐっ、その話題に触れらるとさすがに返す言葉がない………。

 

「あの、お嬢様達どうしましたか?」

 

俺達の様子を見て気になったのだろう。虚さんが訪ねてきた。ちなみに本音は先に水着選びをしていて離れている。

 

「なんでもないわよ」

 

「なんでもないよ」

 

「なんでもありません」

 

「そうですか」

 

虚さんに俺達はそう返したが納得はしていないみたいだ………。

とりあえず俺達は一端解散してそれぞれ水着を選ぶ事にした。途中で変な女性に絡まれたが刀奈さんが機転を利かせて、追い払ってくれたので助かった。

数十分後、俺が選んだのと刀奈さん達がそれぞれ選んだのを試着してもらい気に入った方を購入してもらうような形にしたが刀奈さん達は両方を購入する事になった。

どうやら俺の選んだのも気に入ってくれたみたいだな……うん、ホッとした。

 

さて、簪と本音は臨海学校にはどっちを着てくるのかな?試着した水着姿は見せてもらってないから……ちょっと楽しみではある。

 

――――――――――――

 

「………全く、山田先生は余計な気を使う」

 

「ですね」

 

俺達は水着を買い終えて、次に行こうかと話していたところを千冬姉と山田先生、セシリア、鈴とのメンバーに出会した。

 

………何故か鈴の頭から、でっかいたんこぶがあるのは気になるが……まあ、深くは聞かない事にした。

見ると千冬姉達は水着を買い来たみたいだ。そこで山田先生は何故か気を利かせてしまい俺と千冬姉の二人だけになった。

 

「ふぅ………。言っても仕方がない、か。一夏」

 

「どうしたんだ千冬姉?」

 

下の名前で呼ばれたので俺は普段の姉弟としての接し方に変わる。

 

「さっきまで更識姉妹と布仏姉妹の水着を選んでいただろ。で、一夏。どっちの水着がいいと思う?」

 

そう言って千冬姉が見せたのは専用のハンガーに掛けられた水着2着。

片方はスポーティーでありながらメッシュ状にクロスした部分がセクシーさを演出している黒水着。

もう片方はこれまた対極で、一切の無駄を省いたかのような機能性重視の白水着。どちらもビキニで、肌の露出具合はかなり高そうだった。

 

(これは……黒の方が似合いそうだ)

 

と、そこまで考えてみて悩む。千冬姉はどちらを着ても似合いそうだしな〜まあ、ここは―。

 

「黒の方かな」

 

とりあえず千冬姉に似合いそうなのを選んだ。

 

「ほう。白を選ぶかと思ったが意外だな」

 

「そうかな?」

 

「お前の事だから、余計な事を考えて反対の方を言ってくるかと思ってたがな……」

 

「そこまで考えちゃいないって……」

 

俺はそう言うがさすがに千冬姉。姉弟だから見抜かれていたのが丸わかりだな……。

 

「で、お前の方はどうだ?簪と刀奈との仲は順調か?」

 

「もちろんだって、ケンカする事なく上手くいってるよ」

 

「そうか、それを聞いて安心した」

 

腕を組んでうんうんと頷く千冬姉。心配してくれてるんだな。

 

「そろそろ籍を入れておくか?私は構わないぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ千冬姉!?」

 

いきなりの言葉に思わず突っ込んだ。結婚って早くないか!?いずれするけど。

 

「何だ?二人はもう結婚出来る歳だ。なら問題ないだろ?」

 

「いや俺、後2年必要なんだけど……」

 

「今のお前は無国籍だ。日本の法律には当てはまらんだから問題ない」

 

「いやいや。いくら何でも気が早すぎるって!?」

 

「私は早く甥っ子か姪っ子の顔が見たいのだ。だから頼むぞ」

 

「だから落ち着けって千冬姉!」

 

あまりに気が早すぎて暴走する千冬姉にどうする事も出来なくなってきた……。

 

「だ、大体何でそこまで急ぐ必要あるんだよ!?」

 

「何を言っているんだ?今のお前達の立場を考えたら今の仲を引き離される可能性だってあるんだぞ?」

 

「うっ、それは……」

 

「それにアイツが何を仕出かすかわからんからな」

 

「だよな……」

 

千冬姉が言うアイツとはあの人の事だろう……正直、何を考えているかわからない。

 

「とりあえずお前達の仲をアイツらに話した方がいいな」

 

「アイツらって……」

 

「お前もわかっているだろ?あの4人の事だ」

 

「ああ……」

 

千冬姉の言うアイツらとは箒、ラウラ、シャルロットと後は誰だろうな……?

 

「後は鈴もいるぞ」

 

「えっ!?」

 

マジかよ、鈴の事は親友だと思ってたのにな………。

 

「とりあえず臨海学校の時に話す場を設けよう。その時までに心を決めておけ」

 

「わかったよ千冬姉」

 

「では、またな」

 

千冬姉はニヤリと笑いレジの方に歩いていった。そろそろか………早かったな……色々な国事情があるから暫くは簪と刀奈さんと恋人になっている事は黙っておけと言われていたけど、今更ながら大丈夫か心配になってきた。

まあ、きっと何とかなるな。そう考えて刀奈さん達と合流する事にした。

 

――――――――――――

 

「「……………」」

 

ベンチから二人の男女が座っているが重苦しい雰囲気が伝わっていた。

片方は弾。もう片方は虚である。

 

(ど、どうしましょう……わ、私の方が年上だから話し掛けないといけないのかしら?)

 

(や、やべえ……何を話したらいいんだ?見た目よりずっと大人な感じだし、変な事は話せねえぞ……)

 

とそわそわしてしまい、話すきっかけが掴めない。

 

「「あの―」」

 

「あっ、どうぞお先に」

 

「い、いえいえそちらこそ」

 

「「…………」」

 

と延々譲り合いを繰り返しては沈黙してしまい既に30分が経過していた。

 

 

 

「何これ?」

 

俺達は遠くから様子を見ていたが刀奈さんの感想がまずこれである。

 

「やっぱり、急に二人っきりにしたのはマズかったみたいだな……」

 

「そうみたい。どうしたらいいか困っているみたい」

 

俺は刀奈さん達と合流して待ち合わせ場所に移動し、弾と合流、虚さんと会わせる事に成功した。

弾と虚さんがいい雰囲気になったので刀奈さんが二人っきりにして少しでも距離が縮まるように気を使った訳だが………結果はこうなってしまった。

 

「もうっ!じれったいわね一夏君はそっちをお願い」

 

と刀奈さんはしびれをきらしたのか二人の方に行ってしまった。

 

 

 

「はあ……とりあえず弾のところに行くか……」

 

刀奈さんの後ろ姿を見ながらため息を吐きつつ、弾を引っ張っていく。

 

「おい、弾。紹介して欲しいって言っておきながら、あの態度は何だよ?」

 

あれでは虚さんが困ってしまうのは当たり前である。

 

「だ、だってよ。虚さん写真よりずっと大人で美人だから緊張しちまうんだよ」

 

「鈴くらいにフレンドリーに話せばいいじゃねえか。それなら虚さんも話に入りやすいぞ」

 

「あれ(鈴)は妹みたいで異性すら感じてねえから出来んだよ。あの人と一緒にすんな!!」

 

「鈴が聞いたら怒りそうだな……」

 

どうやら虚さんの落ち着いた雰囲気の上に年上もあって弾はそれにのまれて緊張したみたいだ。

 

向こうを見ると刀奈さんも虚さんを引っ張って来てあーだ、こーだと説教している。普段は逆になるのだが、今回は刀奈さんが虚さんにアドバイスする立場だからな………。

 

 

 

「もうっ!何やってるのよ虚ちゃん!」

 

「す、すみません……」

 

「あれじゃ、あの子緊張しちゃって会話にならないでしょう」

 

「で、ですが……」

 

「虚ちゃんの方が年上なんだから、もう少し積極的にいかないとダメよ」

 

「や、やっぱりそうですか……ですが、緊張してしまってダメなんです」

 

「はあ……」

 

虚の消極的な態度に思わずため息を吐く刀奈。

 

「虚ちゃんはあの子の事どう思ってるの?」

 

「え、えっと……」

 

「正直に答えて」

 

「い、異性としてき、気になる方かなと……思います」

 

「そう……」

 

少し曖昧な返答に刀奈は少し困るがとりあえずは納得する事にした。

 

「わかったわ。急に二人っきりにした私達も否があるから今回はフォローしてあげる」

 

「すみません……」

 

「いい、虚ちゃん。今日はお互いにアドレス交換する事が最低条件よ。いいわね?」

 

「えっ?ええ―――っ!?」

 

「でないとお互いに先に進まないわよ。それを見ている私達がじれったく感じちゃうわ」

 

「わかりました」

 

刀奈の言葉に虚は渋々頷いた。その後、皆と一緒に行動し刀奈と一夏が弾と虚の為に話題を振り、会話になるようにフォローし目的である。アドレス交換を成功させた。

 

 

 

「………来ちゃった」

 

一夏達から離れた所で様子を伺う赤毛の少女、弾の妹の蘭だ。

 

(今朝からお兄の様子が変だったし、やたらと服を真剣に選んでいたから気になって後を着けて来たら、一夏さん達がいるなんて……)

 

蘭は弾が普段とは違う様子を見て気になり、何か面白い事があるのかと思い尾行して来た先に一夏達がいた事に驚いた。

 

先日、一夏が遊びに来てくれて喜び、自分が出来る精一杯の背伸びをしてのおしゃれで気を引いて貰おうとしたが結果は惨敗、一夏に彼女がいる事を知り、告白する前に失恋してしまっていた。

 

(お兄の隣にいる人、凄い美人だ……)

 

ベンチに座ってそわそわしている虚を見て蘭はそう感じた。

 

(上手くいくといいな………)

 

普段女っ気のない兄を気遣う蘭。自分は失恋したばかりなので上手くいって欲しいと祈るばかりだ。

 

(それに………)

 

ちらりと一夏達のいる方に目線を向け、そこにいた刀奈と簪を見詰める。

 

(一夏さんの彼女達、スッゴい美人だし……それにスタイルもいい……)

 

自分と見比べてかなり落ち込む蘭。

 

(私じゃダメだったんだ……ううっ)

 

そして、失恋の傷が痛み涙が溢れ出す。

 

「どうしたの〜?」

 

「えっ?」

 

突然後ろから声を掛けられて蘭は慌てて振り返るとのほほんと少女がいた。本音である。

 

「泣きそうな顔してたから〜声を掛けたんだよ〜」

 

「そ、そうですか……」

 

「何かあったの〜?ずいぶんと落ち込んでみたいだけど〜」

 

「そ、その……えっと……」

 

本音から訪ねられて蘭は戸惑う、見知らぬ人に話していいものかと考えてしまった。

 

「話したら楽になるよ〜。ねっ」

 

「わ、わかりました…」

 

蘭は本音に促されてポツリポツリと話し始めた。もちろん名前を伏せておいてが前提である。

 

「そっか〜失恋ね〜」

 

「はい。恋した人のライバルに勝ち目なくて諦めるしかないんです……」

 

「ん〜。でも、奪ってやる気持ちはないのかな?」

 

「ありません。あの人達の幸せそう顔をしてたら……そんな事出来ません」

 

本音の問いかけに蘭はそう答えた、いくら何でも他人の幸せをぶち壊してまで一緒になりたくないと思ったからだ。

 

「そっか、それはいい心掛けだね〜」

 

「そ、そうですか?」

 

「うん。いい女になれるよ〜。それで恋した人よりずっといい人をゲットしなよ〜、見返してやる〜って感じで」

 

「ぷっ」

 

本音の言葉を聞いて蘭は思わず吹き出して笑みがこぼれた。

 

「ありがとうございます。おかげで元気が出ました」

 

「すっきりした?」

 

「はい!」

 

「そっか〜それは良かったね〜」

 

「はい。あの、お名前を聞いてもいいですか?」

 

「私は〜布仏本音だよ〜」

 

「私は五反田蘭です。今日はありがとうございました」

 

「またね〜」

 

「はい」

 

本音はブンブンと手を振り、蘭はペコリと頭を下げて、立ち去っていった。

 

「ふう……これで〜いいのかな?いっちー」

 

本音は蘭が居なくなって一息つき、自身の後ろにいた人物に声を掛けた。

 

「悪いな本音……」

 

「本当だよ〜、今度何か奢ってね〜」

 

「わかった……」

 

本音に言わて一夏は仕方ないと言わんばかりに頷いた。

 

 

 

(頑張ってね、いっちー。かんちゃんとお嬢様と一緒に幸せにならなきゃ許さないんだから)

 

その表情は普段ののほほんした雰囲気ではなく、更識家従者としての顔に変わっていた。

 

(その前にお姉ちゃんかな〜?まっ、私も手伝わないとね〜)

 

若干、ギクシャクした感じの二人を眺めながら、本音はそう思う。

 

何はともあれ、弾と虚の恋物語は始まったばかりである。




ここの話のセシリアと本音のポジションがマトモになっていく………あれ?狙ってる訳じゃないですよ、多分……
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