織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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深夜ですが更新です。

急に暑くなって大変です。ちょっとペースが落ちぎみかな


第30話

「海っ!見えたぁつ!」

 

トンネルを抜けたバスの中でクラスの女子が声をあげる。臨海学校初日、天候にも恵まれて無事快晴。陽光を反射する海面は穏やかで、心地よさそうな潮風にゆっくりと揺らいでいた。

 

「ふぁ……」

 

俺はというとさっきの女子の声で目を覚ました。バスでの移動中ずっと寝ていたからだ……いわゆる、寝不足。

 

何故なら昨日の夜、刀奈さんに激しく求められたからだ。

俺の安全面の為に臨海学校に同行したかったが(それは建前で本音は別)学園の安全面を考慮して刀奈さんは待機となり、お留守番という訳になった。

なので二泊三日で会えない寂しさからか、俺との夜の運動になった訳だ………それを見て、簪も便乗してしまい俺を求めてしまって、二人を満足させる為に頑張り、次の日を迎えてしまって寝不足になった訳で……おかげでバスの移動中は熟睡モードに変わり、外の景色を楽しめなかったが………まあ、よしとしよう。

二人が喜んでくれればこれくらいなら我慢しようではないか。

 

「んにゅ〜……」

 

バスでの俺の隣の席に座っているのは本音だ。しかも、寝ている。まあ、正直に言えば本音で良かったと思える。他の女子が隣だったら気を使うし、眠る事すら出来なかっただろう………まあ、セシリアは気を使ってくれそうだが……。

 

「ふゅ〜……」

 

しかし、よく眠るな……。

 

「むにゃむにゃ〜、寝る子は〜育つ〜……」

 

スゲエ………寝言でむにゃむにゃ言ってるよ。

色々とサポートしてもらってるから疲れているのだろうな………多分……。

 

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」

 

千冬姉の言葉で全員がさっとそれに従う。指導能力抜群であった。

言葉通り程なくしてバスは目的地である旅館前に到着。四台のバスからIS学園一年生がわらわらと出てきて整列した。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

 

「「「よろしくお願いしま―す」」」

 

千冬姉の言葉の後、全員で挨拶する。この旅館には毎年お世話になっているらしく、着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

 

歳は三十代くらいだろうか、しっかりとした大人の雰囲気を漂わせている。仕事柄笑顔が絶えないからなのか、その容姿は女将という立場とは逆に凄く若々しく見えた。

 

「あら、こちらが噂の……?」

 

ふと、俺と目が合った女将が千冬姉にそう尋ねる。

 

「ええ、まあ。今年は一人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

 

「いえいえ、そんな。それに、いい男の子じゃありませんか。しっかりしてそうな感じを受けますよ」

 

「感じがするだけですよ。ほら、挨拶をしろ、お世話になるのだからな」

 

千冬姉に促されるまま俺は前に出た。

 

「織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「うふふ、ご丁寧にどうも。清洲景子です」

 

そう言って女将さんはまた丁寧なお辞儀をする。その動きは先程と同じく気品のあるもので、こういう大人な女性に耐性はあっても少し緊張してしまう。

 

「うちの弟の為にご迷惑をおかけします」

 

「あらあら。織斑先生ったら、弟さんには随分と厳しいんですね」

 

「いえ、公私混同しないだけです。そこは弟も理解しております」

 

まあ、その通りだよな。学園では教師と生徒だし、厳しくしておかないと周りがえこひいきと取られかねないからな………。ちゃんと気遣ってくれるけどな。

 

「それじゃあ皆さん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用なさってくださいな。場所がわからなければいつでも従業員に訊いてくださいまし」

 

女子一同は、はーいと返事をすると直ぐ様旅館の中へと向かう。とりあえずは荷物を置いて、そこからなんだろう。ちなみに初日は終日自由時間。食事は旅館の食堂にて各自とるように言われている。

 

「ね、ね、ねー。いっちー」

 

俺も旅館の中に行こうとしたら本音に呼び止められた。

 

「いっちーの部屋どこ〜?一覧に書いてなかったー。かんちゃんと一緒に遊びに行くから教えて〜」

 

その言葉で周りにいた女子が一斉に聞き耳を立てるのがわかった。二人が遊びに来てくれるのはこちらとしては大歓迎だ。

 

「いや、俺も知らない。まあ、ある程度の予想は出来るけどな」

 

「だよね〜。いっちーには安全な場所が用意されてるんじゃないのかな〜?」

 

女子と寝泊まりさせる訳には行かないという事で俺の部屋はどこか別の場所が用意されるという事は山田先生から聞いていた。

 

「織斑、お前の部屋はこっちだ。ついてこい」

 

ここで千冬姉からのお呼びの声に俺は本音と別れる。

 

「ここだ」

 

「え?ここって……」

 

ドアにバンと張られた紙は『教員室』と書かれている。

 

「最初は個室と言う話だったんだが、それだと絶対に就寝時間を無視した女子が押し掛けるだろうと言う事になってだな」

 

はあ、とため息をついて千冬姉が続ける。

 

「結果、私と同室になった訳だ。これなら、女子もおいそれと近づかないだろう」

 

「賢明な判断ですね……」

 

これなら、問題は減るだろうな……いくら何でも夜這いしてくる人物はいない。

 

「一応言っておくが、あくまで私は教員だと言う事を忘れるな」

 

「わかりました」

 

「それでいい」

 

そうして部屋に入り、注意事項や入浴時間など聞きそこへ山田先生がやって来て仕事の時間となり、俺は自由時間を楽しむ事にした。

 

 

 

「………」

 

(やべっ!?)

 

俺は更衣室のある別館へ向かう途中で箒を見つけ、慌てて隠れた。

 

(何を見ているんだ?)

 

物陰から様子を見ると箒が見ているみたいだ……。

 

(あれはウサミミ?)

 

そう、道端にウサギの耳が生えているのだ。箒プラスウサミミイコール良い事はないなと脳内で計算してもう少し様子を見ていると箒はすたすたと歩き去っていった。

 

「はあ……」

 

俺はため息をついて携帯を取り出して千冬姉に連絡、あの危険物を撤去して貰おう。数分後、千冬姉がやって来てウサミミを処分して事なきを得た。

 

 

 

(うーん、それにしても……)

 

別館の一番奥の更衣室に向かう途中、中から聞こえるきゃいきゃいとした黄色い声に気まずさを感じてしまう。

 

「わ、ミカっば胸おっきー。また育ったんじゃないの〜?」

 

「きゃあっ!も、揉まないでよぉっ!」

 

「ティナって水着だいた―ん。すっごいね〜」

 

「そう?アメリカでは普通だと思うけど」

 

…………。

そう、こういう話題が平然と飛び交っているのだ。そして、俺は正直これが苦手だ。彼女達持ちの俺としてはあんまり耳に入れたくはない………。理由は察してくれ………。

やや早足でその場を立ち去り、更衣室へ。手早く済ませて海へ。

 

「あ、織斑君だ!」

 

「う、うそっ!わ、私の水着変じゃないよね!?大丈夫だよね!?」

 

「わ、わ〜。体かっこい〜。鍛えてるね〜」

 

「織斑くーん、後でビーチバレーしようよ〜」

 

「ああ、時間があればいいぜ」

 

更衣室から浜辺に出てすぐ、ちょうど隣の更衣室から出てきた女子数人と出会う。各人、可愛い水着を身につけていて、その露出度にやや照れてしまう………いかんいかん、冷静にならねば………。とはいえ、女子だらけの水着姿では正直目のやり場困るな……とりあえず首から上に目線をあげよう。

 

「よっ、と……」

 

とりあえず準備運動を始める俺。足がつって溺れても格好悪い。準備運動しながら簪が来ないかな〜と待っていると――

 

「い、ち、か〜〜〜〜っ!」

 

俺の待ち人ではない声が聞こえて来たので咄嗟しゃがむ。

 

「ふぎゃ!?」

 

砂にダイブして、カエルが潰れたような声をあげる鈴がいました。

 

「何で!避けるのよ!?」

 

ガバッと起き上がり俺に詰め寄る鈴。そういえば水着になると飛びついてきたからいつの間に避けれるようになったんだな……成長したな〜俺。ちなみに鈴の水着はスポーティーなタンキニタイプでよく似合っている。

 

「いや〜、何となく?」

 

「何よ、それ!?」

 

後頭部に手を当てながら、誤魔化すが鈴はご立腹のようだ。

 

「何をしてますの?」

 

と、そう言ってやってきたのはセシリアだ。手には簡単なビーチパラソルとシート、それにサンオイルを持っている。こちらは鮮やかなブルーのビキニ。腰に巻かれたパレオがちょっと優雅で格好いい。モデルみたいだな。

 

「鈴が俺の背後から飛びついてきたのを避けたら、何故か怒ってるんだよ」

 

「………何をしてますの鈴さん?」

 

俺の説明を聞いて、呆れた顔をするセシリアは鈴に非難の視線を向けていた。

 

「何よ!?あたしは一夏とスキンシップをしようとしたのよ!それを避けるなんてヒドイじゃない!!」

 

「色々と気になる事はありますが……いきなり飛びついてくるのはやめた方がいいですわよ。はしたなく感じますわ」

 

「何ですって!?」

 

セシリアの注意に鈴の怒りは更に増していくが………。

 

「あっ、りんにゃん発見!」

 

「いたわ!みんなこっちよ!」

 

と、他の女子達がバタバタとやってきた。何だ?何だ?

 

「な、何よ……?アンタ達は?」

 

突然の事で鈴の怒りが飛んでしまい、戸惑いの表情に変わる。

 

「んっ、ふっふっ……じゃあ―ん!」

 

と取り出したの猫耳とその他諸々の小道具にカメラだった。一体何するんだ?

 

「皆さん、それで何をするんですか?」

 

「勿論、りんにゃんの水着versionでの撮影よ!」

 

「にゃあぁぁぁ!?」

 

あー、なるほどね。鈴は今水着姿になっているから、せっかくだからりんにゃんで撮影しようとしたんだな。

 

「と、言う訳で早速やるわよ!」

 

「何が!?って言うかやらないわよ!!」

 

「甘いわね………私達から逃れられないのだよりんにゃん」

 

「ちょ、冗談じゃないわよ!!」

 

鈴は女子達の表情から、危険を察知して慌てて逃走し出した。

 

「待て――っ!」

 

「逃がさないわよ―――っ!」

 

「諦めて私達の手に堕ちるのだ―――っ!」

 

「いやぁぁぁっ!!」

 

鈴は必死になって逃げるが女子達の包囲網と統率力は凄まじくあっさりと捕まれてと何処かへ連れ去られて行ってしまった………。南無、頑張れよ。

 

「…………」

 

「…………」

 

俺とセシリアは鈴と女子達がいなくなってから少しの時間が流れ。

 

「俺、ちょっと歩いてくるわ」

 

「ええ、どうぞ。わたくしはゆっくりしてますわ」

 

それぞれ行動する事にした。さーて、簪は何処かな?

 

「あっ、一夏」

 

「簪」

 

ビーチパラソルの下に座っている簪が俺の姿を見付けて声をかけてきた。

 

「ど、どうかな?似合ってる?」

 

簪はスクッと立ち上がりくるんと1回転して俺に魅せてくる。髪と同じ水色のワンピースタイプの水着だ。って、これは―。

 

「うん。一夏が選んでくれたのだよ」

 

「そっか、ありがとう。似合っているよ簪」

 

俺の選んだ水着を着てくれた事が嬉しくもあり、笑顔で誉める事にした。

 

「えへへ、ありがとう一夏」

 

簪はちょっとだけ頬を紅く染めてはにかんだ笑みを魅せた。うん、可愛いな。

 

「かんちゃ〜ん〜、いっちーここにいたんだ〜」

 

「本音」

 

俺と簪の元にやってきたのは狐の着ぐるみ着た本音だった。何だろう……見ていて暑く感じるのは気のせいか?

 

「相変わらずだな本音」

 

「うん。そこは変わらないね」

 

と、俺と簪はそれぞれ言うが本音の寝間着は着ぐるみなので普段から見慣れているので大体は予想できた。

 

「ふっふっふ〜。今日の〜わたしは〜一足違うのだ〜」

 

そう言って着ぐるみに手を掛け、そして、そのまま脱いだ!?

 

「「ほ、本音!?」」

 

突然の本音の行動に俺と簪の声が上擦った。な、何をするんだ?

 

「じゃあ〜ん!どうだ〜」

 

と、言いながら現れたのはオレンジ色のビキニ姿の本音でした。

 

「な、何で……」

 

「これは〜いっちーがわたしに選んでくれた水着だよ〜。どうかな〜?」

 

本音は俺に向かってポーズを決めてきた。確かに俺は本音が似合いそうだけど着ないだろうなと考えながら選んだやつだけに驚きを隠せなかった………しかも、本音は胸がデカイ……普段はダボダボな服に隠されているからな……ばっちり胸の谷間が出来ている。

 

「あ、ああ似合っているぞ本音。まさか着てくれると思わなかったな」

 

「いっちーが選んでくれたからね〜。着ないともったいないもんね〜、それにお嬢様から頼まれてるんだ〜」

 

「お姉ちゃんに頼まれた?」

 

「うん。他の娘の水着姿に惑わされないように〜かんちゃんと一緒に水着姿でいっちーを誘惑しなさいって言われてるんだ〜」

 

本音のカミングアウトに思わず泣きたくなった……いくら何でも心配だからってやり過ぎですよ!刀奈さ―――ん!!

 

優しい気遣いなのか信頼ないのか複雑な気持ちになった。あれ?そういえば―

 

「簪は何とも思わないのか?」

 

「ううん。別に……」

 

何も反応しない簪に聞いてみたら、それほど気にしてないみたいだ。あれ――?

 

「他の娘なら嫌だけど、本音なら許す。私の大事な幼なじみだもん、怒らないよ」

 

「えへへ〜、ありがと〜かんちゃん」

 

きゃいきゃいと二人がはしゃぐ姿をみて、ため息しか出なかったな……。

 

「お前達ここにいたか」

 

「あっ、織斑先生」

 

「ああ」

 

俺達の元に更にやってきたのは千冬姉だった。例の水着を着ている。黒の水着をばっちりと身に纏い、そのスタイルのいい鍛えられた体を惜しげもなく陽光に晒している。流石だな〜、このままモデルデビューしてもおかしくないな。

 

「素敵です、千冬さん」

 

「とっても〜お似合いですよ〜千冬さん」

 

「似合っているよ千冬姉」

 

俺達はそれぞれ千冬姉の水着姿に感想を述べた。

 

「織斑先生な。それから誉め言葉は受け取っておくぞ」

 

千冬姉軽く注意したが表情は満更でもないようだ。

 

「そら、お前達はゆっくり遊んでこい」

 

「先生は?」

 

「私は僅かばかりの自由時間を満喫させてもらうとしよう」

 

「後でビーチバレーしませんか〜?」

 

「考えておこう。楽しんでこい」

 

「「「はい」」」

 

俺達は千冬姉に促されて、その場を離れた。そして俺達は泳いだり、ビーチバレーしたりゆっくり昼食を食べたりして自由時間を楽しんだ。

 

そして、夕飯前に千冬姉に呼ばれ、今日の夜に俺と簪の仲を話す事になった。

いよいよか………緊張するな。でもこれで1つのけじめは着けないとな、その前に腹ごしらえをしなきゃな。夕飯が何が出るのかちょっとだけウキウキしていたのは内緒だ。




おまけ

その頃のお留守番組は―

「暇ね〜」

「暇って、ちゃんと仕事してくださいお嬢様」

「失礼ね、もう終わってるわよ」

「えっ?嘘?」

虚は楯無の言葉が信じられずに書類をチェックしてみるが―。

「ほ、本当に……終わってます……」

「当たり前でしょ。一夏君と簪ちゃんに何かあったら、いつまでも駆け付けられるようにしておかないとね」

「あ、あの量を終わらせるなんて………」

虚は今日1日では終わりそうにない量だとわかっていたが終わらせてしまった事に唖然となった。

「昨日から一夏君に元気と愛をもらったからこんなの簡単よ」

「お、恐るべし愛の力……」

「それよりも虚ちゃんはちゃんとしてるのかしら?」

「な、何を言ってるんですか!?」

「だって、あんまり話してくれないからどうかな?ってアドバイスくらいならするわよどう?」

「是非ともお願いします」

刀奈は虚の恋の相談もといアドバイスをして時間を潰すのでした。
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