織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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お待たせしました。8月最初の更新です。暑さとの戦いでダウンしながらも頑張っていきます。


第34話

千冬の出撃命令を受けた簪とセシリアは福音と命令違反組が交戦している場所に向かって飛んでいた。

 

「簪さん、そろそろですわ」

 

「うん、わかった」

 

箒達が福音と交戦しているであろうポイントが近付いて来てセシリアが簪に声をかけた。そして目の前に福音が確認出来た。

 

「ぐっ、うっ……!」

 

 

ぎりぎりと福音に首を締め上げられている箒の姿を見付けた。他の専用機達の姿が見えない、おそらくは撃墜されたのであろう……。

 

「セシリア」

 

「ええ」

 

二人は春雷とスターライトを展開、目の前のターゲットに照準を合わせる。

 

「準備はいい?」

 

「もちろんですわ」

 

「では、作戦開始!」

 

簪は号令をかけ、二人は福音目掛けてトリガーを引き攻撃を開始した。

 

――――――――――――

 

ざあ、ざあん……。

さざ波の音を聞きながら、俺は飽きもせず女の子を眺めていた。その歌は、踊りは、何故だか俺をひどく懐かしい気持ちにさせる。

 

(……あれ?)

 

ところが、ふと気が付くと少女の歌は終わっていた。踊りもやめて、少女はじぃっと空を見詰めている。

俺は不思議に思って、座っていた木から離れて少女の隣へと向かう。ざあ、ざあ、と。波打ち際までやって来た俺を、涼しい水の調べが濡らす。

 

「どうかしたのか?」

 

声をかけるが、少女はまだじぃっと空を見詰めたまま動かない。俺も何と無く空を眺めると、ふと少女の声が耳に届いた。

 

「呼んでる……行かなきゃ」

 

「え?」

 

隣に視線を戻すと、もうそこには少女の姿はなかった。

 

――あれ?

 

キョロキョロと左右を見るが、もう人影は見当たらない。歌も、聞こえない。ざあざあと、ざあざあと。波の音だけが。

 

「うーん………」

 

俺は仕方なく木のソファーに戻ろうと体を反転させる。すると――背中に声を投げ掛けられた。

 

「力を欲しますか……?」

 

「え……」

 

急いで振り向くと、波の中――膝下までを海に沈めた女性が立っていた。その姿は、白く輝く甲冑を身に纏った騎士さながらの格好だった。大きな剣を自らの前に立て、その上に両手を預けている。その顔は目を覆うガードに隠されて、下半分しか見えない。

 

「力を欲しますか……?何の為に……」

 

「力、ねえ……ん―……」

 

ざあ、ざあん、と。波だけが俺と女性の間にある。

 

「……そうだな。仲間を、大事な人達を守る為かな」

 

「大事な人達を……」

 

「そう、俺の愛しい人達。まあ、世の中って結構色々と戦わないといけないだろ?単純な腕力だけじゃなくて、色んな事でさ」

 

俺は簪、刀奈さんという大事な人達が出来てより一層二人を守れる力が欲しいと思っていた。

 

「そういう時に、ほら、不条理な事や、道理のない暴力から二人を助けたいし、もちろん家族や仲間と一緒に助け合って戦うんだ。いつか皆で幸せになる為に」

 

「そう……」

 

女性は、静かに答えて頷いた。

 

「だったら、行かなきゃね」

 

「えっ?」

 

また後ろから声を掛けられる。振り向くと、白いワンピースの女の子が立っていた。人懐っこい笑み。無邪気そうな顔で、じぃっと俺を見詰めている。

 

「ほら、ね?」

 

手を取られて、ニコリと微笑みかけられる。俺はひどく照れくさい気持ちになりながら、

 

「ああ」

 

と頷いた。すると、いきなり変化が訪れた。

 

「な、なんだ?」

 

――空が、世界が、眩いほどに輝きを放ち始める。その真っ白な光に抱かれて、目の前の光景が徐々に遠くぼやけていく。夢の終わり、なんて言葉がふいに浮かんだ。

 

(ああ、そういえば……)

 

あの女性は、誰かに似ていた。

 

白い――騎士の女性。

 

――――――――――――

 

「ん………」

 

ゆっくりと目を開けて目の前の光景に思わず。知らない天井だ……と呟いてしまいそうになるが俺は体を起こした。

 

「ここは……えっと……」

 

「……いっちー?いっちー―――!!」

 

「わぷっ!?」

 

俺はどうにか思いだそうとしていたところを誰かに抱き着かれた。

 

「ほ、本音?」

 

「良かった〜心配したんだよ〜」

 

本音は俺を抱き締めながら嬉しそうにそう言ってくるが目が潤んでいる。

 

「えっと、俺は確か船を守る為に盾になって、それから……あっ!?」

 

「いっちー?」

 

「本音。あれからどうなったんだ!?」

 

俺はふと思い出して、目の前の本音の肩を掴んで問い掛ける。

 

「ごめん……私には何も……」

 

「そうか……」

 

何か知ってるであろうと考えて聞いてみたが本音は生徒会メンバーとはいえ、一般生徒だ。詳しい内容を聞いている訳ではないか………。

 

「ただね……」

 

「ただ?」

 

「かんちゃんとセッシーがさっき出撃していったよ」

 

「何だって!?」

 

本音の話を聞いて、俺は思わず声をあげた。

 

「ま、まさか追撃命令が出たのか?」

 

「ううん、ちょっと違うみたい……」

 

「ちょっと違う?」

 

「うん。さっき千冬さんがちょっと怒った様子でやって来てセッシーに出撃命令を言って来て。それをかんちゃんが名乗り出て一緒に出撃していったよ」

 

「そうか……」

 

簪が名乗り出たのであれば、恐らくは福音を撃墜するのだと考えた。まさか俺の為にか………そう考えると嫌な胸騒ぎがする。

 

「わかった。ありがとう本音、俺も今すぐしゅ―」

 

「待っていっちー!」

 

立ち上がり、部屋から出ようとした俺の腕を取り本音が止めてくる。

 

「どうした?」

 

「無断で出撃しちゃダメだよ。千冬さんに怒られるよ」

 

「うっ……」

 

「それに出撃するにしても場所わかるの?ただやみくもに探してたらエネルギーが無くなるよ」

 

「た、確かに……」

 

本音の指摘に俺は冷静になった、このまま無断出撃したら千冬姉に怒られるのはもちろんだが交戦場所がわからないままで探しても効率が悪い。最悪エネルギーが無いままで福音と戦う事になれば足手まといだ。

 

「ありがとう本音。とりあえず千冬姉の所に行ってみる」

 

「うん。かんちゃんを安心させてあげて」

 

「ああ、もちろんだ」

 

本音にそう返して俺は部屋を後にした。

 

「頑張ってね、いっちー!」

 

背後から本音の応援する声に手を上げて応えた。

 

――――――――――――

 

バン!

 

「織斑先生!」

 

俺は千冬姉達がいるであろう作戦室にたどり着き戸を開けた。

 

「お、織斑!?」

 

「織斑君!?」

 

千冬姉と山田先生は俺の姿を見て、驚いた顔をしていたが構っている訳にはいかない。

 

「すいません、今の状況を教えてください!」

 

俺は千冬姉達から、近況を教えて貰おうと頭を下げた。

 

「……お前が撃墜された後篠ノ之、凰、デュノア、ボーデヴィッヒが無断で出撃していった」

 

「はあっ!?」

 

「そいつらを連れ戻す為に更識とオルコットに出撃してもらったのだ」

 

「マジかよ……」

 

千冬姉の説明に思わずそう呟く。箒達が無断で出撃したのを連れ戻すって言ってもあの二人………箒と鈴は言うこと聞かなさそうだよな……多分いや、正直不安しかないな……まさか、連れ戻すなんて事は考えずに簪は福音を撃墜するつもりなんじゃ………。

 

「織斑先生、お願いがあります」

 

「何だ?」

 

「俺に出撃命令をください!」

 

「ええっ!?無理ですよ!織斑君は大怪我を負ってたじゃないですか!許可出来ません!」

 

山田先生が驚いた顔をして出撃に反対した。やっぱりそうなるよな………。

 

「俺は大丈夫です!出撃出来ます!」

 

「で、ですが……」

 

「……織斑、出来るのか?」

 

なおも俺を引き止めようと渋る山田先生に対して千冬は静かにそう言った。

 

「織斑先生!?」

 

「はい、出来ます!」

 

「織斑……いや、一夏」

 

千冬姉はゆっくりと俺の元に近付いてきた。

 

「なあ、本当に大丈夫か?本当に大丈夫か?本当に大丈夫か?」

 

千冬姉は俺の両肩をグッと掴み真剣な眼差しを向けて問い掛けてきた。だが千冬姉の瞳から不安と心配が伺える。

ここは重要だな……もしこれで目を背けたり顔を反らしたら、そのまま待機させられる……それだけは絶対に避けたい。

 

「はい、大丈夫です!いけます!」

 

「………わかった。出撃を許可しよう」

 

「織斑先生!?いいんですか!」

 

「私は織斑の意志を尊重した。それを信じる」

 

「ありがとうございます」

 

千冬姉の決断に俺は感謝した。

 

「ただし、無理はするな。危ないと思ったら、更識とオルコットを連れて無事に逃げ帰ってこい」

 

「はい!」

 

「それと、これを持っていけ」

 

千冬姉は俺に四角い何かを手渡した。

 

「これは?」

 

「お前達の専用機のエネルギーと弾薬と武装を補給するパックだ。急だから3つしか用意出来なかったが使え」

 

「ありがとうございます」

 

「蒼色はオルコット、灰色は更識のだ間違えるなよ。後、場所はお前のISに送った確認しておけ」

 

「わかりました。織斑一夏出撃します!」

 

俺は千冬姉達に深々と頭を下げて部屋を後にした。

 

「えっと、場所は……あれ?」

 

海に向かう途中白式を確認すると見慣れない武装が着いていた。

 

「これが俺の新しい力か……」

 

さっきの夢がそうさせたかわからないが今の状況からして正直ありがたい。

 

「よし、待っててくれ簪!セシリア!」

 

俺はそう言って白式・雪羅を纏い。福音のいる場所に向かった。

 

――――――――――――

 

「……ゲホッ…ゲホッ…」

 

「とりあえず無事みたい……」

 

「そうですわね……」

 

簪とセシリアの攻撃を受けて福音は箒を掴んでいた手を離す。福音の手から解放された箒は咳き込んでいた。

 

「お〜ま〜え〜ら〜」

 

「「ん?」」

 

「今、私ごと狙って撃ったたな!!」

 

助けられたのに怒り心頭で二人に詰め寄る箒。

 

「「さあ?」」

 

「とぼけるな!私は見てたぞ!」

 

「気のせいだよ……」

 

「気のせいですわ……」

 

「私の目を見て言え!」

 

あからさまに顔を反らして言う簪とセシリアに怒鳴る箒。

 

「そう言われましてもわたくし達は織斑先生から箒さん達を連れて帰れと命令されてますし」

 

「言っても頑固だから全く聞いてくれなさそうだし、無理なら撃墜して連れて帰ろうかと考えてた」

 

「ちょっと待て!私達の扱いがひどくないか!?」

 

「仕方がないじゃないですか、元々貴女達が命令無視して出撃している時点で扱いが悪くなるのは当たり前です」

 

「それにどんな形であれ、貴女達を連れて帰るのが目的だから撃墜されてる状況を想定されてもおかしくないし問題ない」

 

「ぐっ……」

 

セシリアと簪の言葉に箒は反論出来ない。

 

「ところで他の専用機達はどうしたの?」

 

「説明していただけますか」

 

「わ、わかった……」

 

箒は簪とセシリアにここまでの事情を話した。

先程の任務に失敗して落ち込んでいる所に鈴がやって来て叱咤、激をとばして一夏の敵討ちを決意。そこへラウラとシャルロットが現れて作戦を計画、場所はラウラが予め探っていた。

そして四人は福音の場所を襲撃して見事撃退し、海に墜ちていったが何と福音は『第二形態移行(セカンド・シフト)』を行い圧倒的な戦力になすすべもなく次々と撃墜されて最後に箒が残った形だ。

 

「貴女達は一体何をしてますの……」

 

「なっ!?そんな言い方はないだろう!」

 

説明を聞いてジト目で見るセシリアと簪に対して納得がいかないと言わんばかりの態度をとる箒。

 

「これじゃ、逃げると言う選択肢がなくなったね……」

 

「ええ、ここで上手く逃げたとしても福音がわたくし達を追いかけられでもしたら、旅館に到達して襲撃されてしまいますわ………」

 

簪とセシリアは最悪な事態を想定して表情を曇らせた。まさか、ここまで良くない事態に進んでいるとは思ってもいなかった。

 

「この状況は流石に厳しいですわ……」

 

「うん。やりにくいね……」

 

目の前の福音に対してどうするか悩む簪とセシリア。

 

「…………」

 

だが福音はそんな様子などお構い無しにこちらに向かってきて身構える。

 

とそこへ―

 

「おおおおっ!」

 

『!?』

 

突然、福音は何かの衝撃を受けて吹き飛んでいく。

 

「どうやら、間に合ったな………」

 

福音を吹き飛ばしたのは白式を纏った一夏だった。

 

 

 

「一夏っ、一夏なのだな!?「「一夏(さん)!!」」………おわぁ!?」

 

俺の元にやって来ようとした箒を吹き飛ばして、やって来る簪とセシリア。

 

「すまない。二人共心配かけた……」

 

「本当ですわ……簪さんが一番心配していましたわ」

 

「簪、ゴメンな……迷惑掛けちまって」

 

「ううん。私は一夏が目を覚ましてくれた事が嬉しい……」

 

俺の姿を見て、涙ぐむ簪にそっと優しく頭を撫でてやる。

 

「感動の時間は後で、とりあえずは福音を落とそう」

 

「うん」

 

「ええ」

 

「最初の時に話した作戦でいくぞ!」

 

「「了解!」」

 

「それじゃ――再戦と行くか!」

 

雪片を手に、俺は正面から福音に斬りかかっていった。

 

「私はのけ者か……のけ者なのか………」

 

遠くから箒の呟きが聞こえたが目の前に集中する事にした。

 

「一夏さん!私と簪さんが隙をつくります」

 

スタ―ライトとビットを駆使して福音を攻撃するセシリア。

 

「一夏は一撃で倒す事に集中して!」

 

同じく山嵐と春雷を駆使して福音に攻撃する簪。

 

俺達は作戦変更前に考えていたのは一撃で決められない場合、全方位攻撃がかなり厄介である事がわかっていたので簪、セシリアの攻撃で牽制して隙を作りながら俺が決めるというシンプルな作戦だ。

 

「逃さねえ!」

 

俺は《雪羅》を展開、エネルギー刃クローで斬り、追撃で雪片で斬りつける。

シールドエネルギーに阻まれていたが、ダメージを与える事は出来ている。

 

『敵機の情報を更新。攻撃レベルAで対処する』

 

エネルギー翼を大きく広げ、さらに胴体から生えた翼を伸ばす。そして次の回避の後、福音の掃射反撃が始まった。

 

「そう何度も食らうかよ!」

 

俺は避けようとはせず、左手を構えて前へと飛ぶ。

 

――雪羅、シールドモードへ切り替え。相殺防御開始。キンッ!という甲高い音を鳴らして、左腕の雪羅が変形する。それから光の膜が広がって、福音の弾雨を消していく。

 

「うおおおっ!」

 

強化され、大型四機のウイングスラスターが備わった白式・雪羅は、二段階瞬時加速を可能にしている。複雑な動きをする福音も、最高速での回避が可能な訳ではないのだから、これで十分追い付ける。

 

『状況変化。最大攻撃力を使用する』

 

福音の機械音声がそう告げると、それまでしならせていた翼を自身へと巻き付け始める。それはすぐに球状になって、エネルギーの繭にくるまれた状態へと変わった。

 

――まずい。嫌な予感がする。

 

それは、最悪な事に的中した。翼が回転しながら一斉に開き、全方位に対して嵐のようなエネルギーの弾雨を降らせる。

 

(くっ!守りきれるか――!?)

 

俺は直ぐ様、後ろの二人の盾に走ろうとするが、それを大声で蹴飛ばされる。

 

「一夏さん!心配はご無用ですわ!」

 

「一夏は福音を倒す事に集中して!」

 

「簪…セシリア…わかった!」

 

仲間と恋人を信じる。今の俺にはそれしかない。けれども、不安よりも安心感があるからどこまでも信じて前にいける。俺は雪片と雪羅を手に再度福音へと飛び込んだ。

 

――――――――――――

 

(一夏が駆け付けてくれた……!)

 

それはもう、嬉しいを飛び越えていた。心が躍動する。熱を持って、跳ねる。そして戦う一夏の姿を見て、何よりも強く願った。

 

(私は、共に戦いたい。あの背中を守りたい!)

 

強く、強く願った。そして、その願いに応えるように、紅椿の展開装甲から赤い光に混じって黄金の粒子が溢れ出す。

 

「これは……!?」

 

ハイパーセンサーからの情報で、機体のエネルギーが急激に回復していくのがわかる。

 

――『絢爛舞踏』、発動。展開装甲とのエネルギーバイパス構築……完了。項目に書かれているのはワンオフ・アビリティーの文字だった。

 

(まだ、戦えるのだな?ならば、行くぞ!紅椿!)

 

赤い光に黄金の輝きを得た真紅の機体は、夕暮れの空を裂くように駆けた。

 

――――――――――――

 

「ぜらあああっ!!」

 

零落白夜の光刃がエネルギー翼を断つ。しかし、両方の翼を斬るのは至難の業で、またしても二撃目を回避されてしまう。そうしている間に失った翼は再度構築されて、こちらへと強力無比な連続射撃を行ってきた。

 

「くっ!」

 

――エネルギー残量20%予測稼働時間、3分。

 

(くそっ!このままじゃ……)

 

リミッター無しの軍用ISがどれほどのエネルギーを持っているのか、見当もつかない。対して自分の機体は稼働限界が近付いている。それは焦燥へと変わって、じわじわと俺の心を焼いていく。

 

(どうする……千冬姉から貰ったパックを使うか……?)

 

ここで使うべきか否かを判断に迫られていた。

 

「一夏!」

 

「篠ノ之さん!?何か用か?」

 

「いいから!それよりも、これを受け取れ!」

 

箒の――紅椿の手が、俺の白式の手に触れる。いきなり手を触られて条件反射で身構えしまった………。

 

「……何かあるのか?何にも起こらないぞ?」

 

「何だと!?そんなバカな!」

 

箒の紅椿から赤い光に混じって黄金の粒子が溢れ出してはいるが俺の白式に何の変化が無い為そう告げた。

 

「そんなバカな!『絢爛舞踏!』、『絢爛舞踏』!」

 

俺の言葉が信じられないのか手をギュッと握りながら叫ぶが特に変わった様子は………なかった。

 

「箒さん!何をふざけていますの!?」

 

「邪魔するなら離れて!」

 

箒の行動は妨害と感じたのか、セシリアと簪は批難気味に叫ぶ。

 

「ふ、ふざけてはいない!私は一夏のエネルギーを回復しようとして……」

 

「それで一夏の手を握る必要あるの?」

 

「ええい!これでどうだ!」

 

簪のジト目を嫌ったのか俺は諦めて簪とセシリアに触れた。

 

「あ、あら?エネルギーが回復してますわ!」

 

「本当だ。私のも回復してる」

 

セシリアと簪のISのエネルギーが回復していく。

 

「ほら、どうだ。私の言った事は間違ってないだろう!」

 

「でも一夏のは回復してないよね……」

 

「くっ……」

 

「もしかしたら一夏さんの機体だけ対象外っていうオチではないのですか?」

 

「………冷やかしか嫌がらせなら邪魔しない距離まで離れてくれないか?」

 

「そんな………」

 

俺の言葉にショックを受けてガックリと肩を落とす箒。

 

「とりあえず一夏、私のエネルギー少し分けてあげるね」

 

「わたくしも少しお分けしますわ」

 

「ありがとう。助かる」

 

箒が回復したエネルギーを二人が仲良く分けてくれてこちらはやり易くなったな。

 

「さあ、決着をつけるぞ!」

 

意識を集中させ、雪片を握る手が力が入る。

 

「うおおおっ!」

 

福音は俺の横薙ぎを縦軸一回転して回避、こちらを再び視界に捉えると同時に光の翼を向けてくる。――かかった!

 

「簪!セシリア!」

 

「任せて!」

 

「お任せください!」

 

俺の方に向けられた翼を、ブルー・ティアーズのレーザーと打鉄弐式の荷電粒子砲で破壊する。

 

「絶対に逃がさねえ!」

 

急加速で福音の懐に入り、その勢いのまま回し蹴りを食らわせる。予想外の攻撃に大きく姿勢を崩した福音を、俺は下から上へと返す刃で光翼をかき消した。そして、最後の攻撃を繰り出そうとする俺に、福音は体から生えた翼全てで一斉射撃を行ってきた。

 

(ここまで来たら、後は決めるのみ!)

 

エネルギー弾をギリギリかわしながら、俺は福音の胴体へと零落白夜の刃を突き立てた。

 

「おおおおおっ!!」

 

エネルギー刃特有の手応えを感じながら、さらに俺は全ブースターを最大出力まで上げた。押されながらも、俺の首へと手を伸ばす福音。その指先が喉笛に食い込んだ所で、銀色のISはやっと動きを停止さた。

 

「お、終わったか……?」

 

アーマーを失い、スーツだけの状態になった操縦者が海へと墜ちていく。

 

「しまっ――!?」

 

俺はとっさに手を伸ばそうとしたが下から鈴がキャッチしたので大丈夫だ。

どうやら、撃墜されたダメージが回復したみたいだ近くにシャルロットとラウラがいる。

 

「終わったね」

 

「ああ……。やっと、な」

 

俺と簪は肩を並べて、空を見た。あれほどまでの青さを誇った空はもうすでになく、夕闇の朱色に世界は優しく包まれていた。

 

 

 

ザシュ!!

 

「えっ………」

 

ホッとしていた所に突然、何か鈍い音がしたのでそちらを見ると

 

「な………っ!?」

 

俺の目の前には所属不明のISが簪の背後から刃を突き刺している胸を貫通している光景だった。目の前の事が理解出来ずに信じられなかった。

 

「か、簪ぃぃ――――っ!!」

 

 

 

 

戦いは……まだ、終わらない………。




3巻の内容は後2、3話くらいで終わるかな?
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