織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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皆さんお久しぶりです。
1ヶ月とちょっとぶりに更新です。

今まで、仕事と身内の不幸でバタバタしていてましてここまでかかってしまいました。

なのでちょっと半端な所で終わってしまいました。

ではどうぞ


第35話

「簪から離れろぉぉ―ーっ!!」

 

俺は簪を助けようと急接近して所属不明のIS目掛けて雪片を振り下ろす。

 

「…………」

 

所属不明のISは簪から刃を引き抜き、俺の攻撃をかわす。簪はアーマーを強制解除され、ISスーツのまま海へ落ちていく。

 

「くっ……!」

 

俺は簪を助けようと向かおうとしたが所属不明のISが立ち塞がった。

 

「そこをどけえぇぇ―――っ!!」

 

立ち塞がる所属不明のISを振り払おうとするがかわされて反撃してくる。

 

「ちっ……くそぉ!」

 

俺は反撃をかわしながら、何とか簪の元に向かいたいが所属不明のISはそれを阻止しようとしてくる。

 

(簪……!)

 

白式のハイパーセンサーからパシャンという音を立てて海に沈んでいくのがわかり、俺は焦りだした。このままではマズイ!刺された所はわからないがこのまま沈んでいけばいくらISでも助けられない深さに沈めば命はない………。

 

「お前、何者だよ!?」

 

「……………」

 

所属不明のISはこちらの呼び掛けには答えない。目的は何だ!?何故、簪が狙われなければならない!?しかも、今まで何処にいたんだ!?今の状況よりも簪の事が気になってしまい焦りがマトモな思考を奪う。

 

「くっ………」

 

俺は再び簪を助けようと海に向かうが案の定、所属不明のISが立ち塞がる。

そこまでして俺の邪魔したのかよ!自然と雪片を握る手が強くなる。

 

「………!?」

 

そんな俺の背後からレーザーが飛び交い、所属不明のISを怯ませる。

 

「一夏さん!」

 

「セシリア!どうしてここに!?」

 

セシリアが俺の所にやってきた。どうやらレーザーを撃ったのはセシリアのようだ。

 

「話は後です。わたくしが敵ISの相手をしますわ。一夏さんは簪さんをお願いします」

 

「わかった。セシリア頼む!」

 

「ええ、任せてください」

 

セシリアはスターライトを手に所属不明のISに目掛けて撃ち、レーザーの雨が俺の邪魔をしないように牽制していく。

 

(待っててくれ簪!)

 

セシリアの助けもあり俺は瞬時加速を使い海に向かいそして―

 

バシャン!!

 

そのまま簪が沈んでいく海に飛び込んだ。

 

――――――――――――

 

ざぁ……。ざぁぁん……。

 

(ここは……?)

 

遠くから聞こえる波の音に誘われるまま、簪はどこともつかぬ砂浜の上を一人歩いていた。足を進めるたび、さく、さく、と足下の白砂が澄んだ音を立てる。

足の裏に直接感じる砂の感触と熱気。海から届く潮の匂いと波の音。それに心地よい涼風と、じりじりと照りつける太陽。

 

(ここは……どこ……?)

 

ここがどこで、今がいつなのかわからない。

簪はさっきまでISスーツだったが何故か制服を着ていて、素足のまま砂浜を歩いている。手には、いつ脱いだのか靴がある。

 

「――。―――♪〜♪」

 

ふと、歌声が聞こえた。とてもきれいで、とても元気な、その歌声。簪は無性に気になって、声の方へと足を進める。

 

さくさく。さくさくと。足下の砂が軽快に鳴る。

 

「ラ、ラ〜♪ラララ♪」

 

少女は、そこにいた。波打ち際、わずかにつま先を濡らしながら、その子は踊るように歌い、謡うように躍る。その度に揺れる白い髪。輝き、眩いほどの白色。それと同じワンピースが、風に撫でられて時折ふわりと膨らんでは舞った。

 

(えっと………)

 

簪は声をかけようとは思ったが歌声に惹かれてやめると近くにあった流木へと腰を下ろす。その木はずいぶん前に打ち上げられたのか、樹皮は剥げ落ち、色も真っ白になっていた。白いいびつなソファーに座って、簪はぼーっと少女を見つめた。

ざあざあと波の音が聞こえる。時折吹く風は心地よく、簪はただただぼんやりと目の前の光景を眺めた。

 

(あれ?何かあったのかな…………?)

 

簪は何故ここにいるのか?あの後どうなったのか?を思い出す事が出来ずにただただ少女の歌と踊りに見いられていた。

 

ただ簪が座っている流木は先程まで一夏が座っていた事は知るよしもなかった………。

 

――――――――――――

 

「ぷはっ!」

 

沈んでいく簪を見つけてそのまま抱き上げて海から上がり息を吐いた。

一応、絶対防御がある訳だから息を止める必要はないのだが条件反射でしてしまった。

 

「簪!しっかりしろ簪!」

 

俺は簪を揺すりながら声を掛けたが………。

 

「…………」

 

簪は何も答えない、いや答えてくれない………。

更に全体を見ると胸には先程刺さっていた刃の傷から流れた血がISスーツを真っ赤に染めていた。

 

「簪………くっ……」

 

顔は青ざめて力なく、ぐったりとした姿に無性に悲しみと怒りが沸き上がる。

 

(許さねえ……)

 

簪をこんな目にあわせた敵ISに怒りと共に殺意が目覚めた………許さねえ……絶対に許さねえぞ!!

 

「一夏さん!」

 

そんな所にセシリアが再び俺の所に合流した。

 

「簪さんは大丈夫なのですか?」

 

「わからない……ただこのままじゃマズイ事は確実だ………」

 

「―っ!?だったら急いで旅館に戻りませんと―」

 

セシリアは簪の姿に驚き、思わず悲鳴を上げそうなのをこらえながらもそう言った。

 

「他の皆は?」

 

「皆さんのISの損傷が激しくて足手纏いになりそうなので撤退させましたが……」

 

「ただ?どうかしたか?」

 

「箒さんがまだ戦えるとタダを捏ねてましたので仕方なく気絶させてお帰り願いましたわ」

 

「そうか……」

 

セシリアの言葉に静かに頷いた。これなら……問題ない!

 

「すまない。簪を連れて旅館に急いでくれ、頼む!」

 

「ですが!」

 

「俺達二人で逃げても時間がかかるし、俺よりセシリアの方が戻るのが早い。ならば俺が敵ISを引き付けてセシリアが旅館に戻る方が得策だ」

 

「………わかりました。ですがこれだけは約束してください。必ず生きて帰る事を忘れずにお願いします」

 

「わかった、約束する」

 

俺は簪をセシリアに渡して敵ISに顔を向ける。

 

「いくぞ!」

 

セシリアが簪を抱えて旅館に向かうと同時に俺は瞬時加速で敵ISに斬り込んでいく!

 

「………」

 

敵ISは雪片の刃をかわして反撃にでようとするが―

 

「させるか!」

 

素早く蹴りを放ち、体勢を崩した所に拳を振り上げてぶん殴る!

 

「!?!?」

 

俺の攻撃が効いているのか敵ISの装甲が剥がれていく。

 

(俺の怒りはこんなもんじゃねえぞ!)

 

俺はこれだけでは満足せずに追撃を開始しようとした。その時―

 

ドオオオオンッ!!!

 

突然の俺の背後から爆発音が聞こえた。

 

「なっ!?」

 

爆発した方を見るともう1体の所属不明ISがセシリアを攻撃している所だった。

よく見るとセシリアのISはボロボロになっていて、今にもヤバい事だけはわかる。

 

「くっ!あくまでも狙いは簪かよ!」

 

セシリアがもう1体の所属不明ISの攻撃から簪を庇うようして受けている事から、完全に狙いは簪だ。

 

「くそっ!最初から敵の罠にかかっていたのかよ!」

 

よくよく考えれば、最初から敵ISが1体だけだと決め付けていたのがそもそもの間違いだった事に悔しくなりギリッと歯噛みをした。

 

「―って、あれはまさか!あの時の!?」

 

セシリアを襲っている所属不明のISはクラス対抗戦に乱入して来た無人機に似ていた。 ただ違うのは背後の部分に何かのパーツと両腕に着いているビーム砲口が大きくなっている事だ。

 

「今、助けに―くっ!?」

 

セシリアに向かおうとしたがさっきまで戦っていた敵ISの刃が降り下ろされるのを慌ててかわす。

 

「邪魔すんじゃねえ!」

 

雪片は横に切り払うもかわされる。こいつもさっきから動きが不規則気味だ、もしかしたら無人機の可能性が高いが………今はそんな事を考えている時間はない。

 

セシリアと簪の所に駆け付けたいのに何も出来ずにもどかしい時間だけが過ぎていく……。

 

(ちきしょうっ!)

 

俺は内心苛立ちを隠せないまま、敵ISを倒す為に雪片を握り直して攻撃を開始した。

 

――――――――――――

 

「はあ……はあ……」

 

ブルー・ティアーズはボロボロになり、セシリアの息がすでにあがっていた。

 

 

一夏の頼みを受けて、旅館に戻ろうとしている途中。

 

「きゃあ!?」

 

突然、セシリアの背後から衝撃が伝わりダメージを受ける。

 

「な、何が……っ!?」

 

セシリアは攻撃があった場所をハイパーセンサーから見て思わず驚いた。

 

「あれは……クラス対抗戦の時の!?どうしてここに!」

 

目の前には深い灰色の全身装甲のISがおり、その姿は一度見ていたセシリアは驚いた。しかも右腕をこちらに向けていたからさっきの攻撃はこのISからである事がわかる。

 

「…………」

 

そんなセシリアの動揺を知ってか知らずか敵ISはビーム砲撃を放つ。

 

「くっ……」

 

セシリアはビームをかわして、なんとか逃げようと距離を離そうとしたが―

 

「なっ!?」

 

ブルー・ティアーズからの警告音と共に目の前から弾雨が襲う。

 

「あれは!?まさかビット兵器なのですか!?」

 

セシリアは自分のISに搭載されているビットと似たような武装に動揺してしまい。

 

「くううっ!」

 

ビット兵器からの射撃をまともに喰らってしまい、装甲にダメージを負ってしまう。

 

「スターライトが!?」

 

ビット射撃の弾雨から簪を守ろうと盾にしていた主武装が壊れてしまう。

 

「…………」

 

敵ISはセシリアの状態に追撃を開始し、更に追い込んでいく。

 

「ああああっ!」

 

盾になるものがなくなり、セシリアは簪を庇うようにして自らが盾になって敵ISの攻撃を受けてしまう。

 

「うっ……くっ……」

 

セシリアは苦痛から声が漏れる。既にブルー・ティアーズから警告のアナウンスが流れており、これ以上は危険にだとわかっていたが―。

 

(絶対に、守ってみせますわ!)

 

セシリアの瞳にはまだ光が残っていた。簪という親友の為に一夏の頼みを果たす為に自身の心を奮い立たせる。

 

がしかし―

 

「………」

 

敵ISはドドメと言わんばかりに両腕の砲口から最大出力のビームが無情にも発射された。

 

「ひっ……」

 

目の前に迫る巨大なビームにセシリアは絶望に晒される。

 

(避けられない……)

 

ボロボロの状態では回避しようにも出来ずにビームがまるでスローモーションの様に迫り来る。

 

(………一夏さんごめんなさい、約束を破ってしまいましたわ………せめて簪さんだけでも!)

 

セシリアはギュッと簪を抱き締めて必死に守ろうとビームから背中を向ける。

 

(………っ!!)

 

これから来るであろう衝撃と苦痛に目を閉じて身構えた。

 

スドオオオオン!!!

 

敵ISのビームがセシリア達に命中した。

 

――――――――――――

 

ざあ、ざあん……。

さざ波の音を聞きながら、簪は飽きもせずに女の子を眺めていた。その歌は、踊りは、何故だか簪をひどく懐かしい気持ちにさせる。

 

(……あれ?)

 

ところが、ふと気が付くと少女の歌は終わっていた。踊りもやめて、少女はじぃっと空を見詰めている。

簪は不思議に思って、座っていた木から離れて少女の隣へと向かう。ざあ、ざあ、と。波打ち際までやって来た簪を、涼しい水の調べが濡らす。

 

「どうかしたの?」

 

声をかけるが、少女はまだじぃっと空を見詰めたまま動かない。簪も何と無く空を眺めると、ふと少女の声が耳に届いた。

 

「あれ?……どうしてここにいるのかな?」

 

「え?」

 

少女はを見ると開口一番に簪に向かってそう言った。

 

「ここはあんまり入れる所じゃないんだよね」

 

「ここ?」

 

「うん。もしかして呼ばれたのかな?」

 

「呼ばれた?」

 

少女の言葉に簪は訳が解らずに首を傾げた。

 

「さっき、変なのが入ってきたから気持ち悪くて拒否しちゃったんだよね」

 

「えっと……」

 

少女の言っている意味が解らず、簪の頭には?マークが飛び交う。

 

「まっ、いいや。後ろのあの子が呼んでるよ」

 

「えっ?」

 

少女が指差した方を振り返るとそこには―

 

「…………」

 

黒髪をポニーテールにした巫女服を着た女性が立っていた。

 

「……あの」

 

「初めまして、主」

 

「主?」

 

「お気付きならないのですか?いつも貴女と共に戦っています」

 

「まさか……打鉄弐式なの?」

 

「はい」

 

簪は絶句した。目の前にいるのが自身のパートナーであるISがこうして現れるのが信じられないのだ。

 

「驚かれるのは無理もありません……ですが、貴女の力になりたくて協力して貰ったのです」

 

「うん。まさか私達の世界にやって来るとは思わなかったな」

 

少女は巫女服の女性の言葉に笑みを浮かべて言った。

 

「主、貴女は力が欲しいですか……?」

 

「えっ……。」

 

巫女服の女性は簪を真剣な眼差しで見詰めながら問い掛ける。

 

「力を欲しますか……?何の為に……」

 

「力……」

 

簪は考えている間。静寂の中にざあ、ざあん、と。波の音が入る。

 

「……そうだね。仲間を、そして大事な人達を守る為かな」

 

「大事な人達を……」

 

「うん、私の大事な人達。将来共に幸せに生きたいから、どんな事に一緒に戦える力が欲しい」

 

簪は大事な人である恋人にである一夏と姉である刀奈と一緒に幸せになりたい為により一層二人を守れる力が欲しいと思っていた。

 

「でも、私に出来る事は少ないけど想いは誰にも負けないよ。もちろん家族や仲間と一緒に助け合って戦うんだ。いつか皆で幸せになる為に」

 

「そう……ですか」

 

巫女服の女性は、静かに答えて頷いた。

 

「うん、これなら大丈夫だね」

 

「えっ?」

 

「主、貴女になら更なる力を使いこなせます」

 

「うん。私の力を合わせればあなたの望む強さになれるよ」

 

「あ、ありがとう………」

 

簪の答えに納得がいったのか少女は笑みを浮かべ、巫女服の女性は微笑んだ。

 

(認めてくれたのかな……?)

 

「じゃ、そろそろ急がないとね?」

 

「ええ、いきましょう」

 

二人は簪の手を取るといきなり変化が訪れた。

 

「えっ?ええっ?」

 

――空が、世界が、眩いほどに輝きを放ち始める。その真っ白な光に抱かれて、目の前の光景が徐々に遠くぼやけていく。夢の終わり、なんて言葉がふいに浮かんだ。

 

「頑張ってね。私達のマスターをお願い」

 

少女はニコニコと微笑み簪にそう言った

 

(あれ?)

 

簪は何かに気付いて振り向くと、波の中――膝下までを海に沈めた女性が立っていた。その姿は、白く輝く甲冑を身に纏った騎士さながらの格好だった。

 

「…………」

 

騎士の女性は簪の視線に気付くと笑みを浮かべて、手を振った。簪はそれを見届けると真っ白い世界から覚めていくのだった。

 

――――――――――――

 

「………ん……っ!?」

 

簪は目を覚ますと何かに体に巻き付いている感覚を得た。

 

(えっ?セシリア!?)

 

簪はよく目を凝らすとセシリアが自分を抱き締めていた事に驚いたがすぐに落ち着く。

 

(あれはビーム砲!私達を狙っているんだ)

 

迫り来るビームに対して簪は不思議と焦りは来なかった。

 

(おいで、打鉄弐式!)

 

そう心の中で念じてISを展開させると右腕に新たな武装が追加されていた。

 

「これは……うん、大丈夫かな」

 

打鉄弐式からの情報で新たな力だというのがわかる。右腕から爪が現れ、その爪からエネルギーを纏うとそのまま

 

「ああああっ!!」

 

簪は地面から掬い上げるように爪を振るうとエネルギー刃が発生し、ビームを切り裂いた。

 

スドオオオオン!!

 

ビームは簪の前から真っ二つに割れてそのまま爆発が起きる。

 

「………かん、ざしさん!?」

 

セシリアは目の前にいる簪の姿に驚きを隠せないでいた。先程まで重症を負っていたはずなのにと―。

 

「うん、打鉄弐式がセカンドシフトしたみたいだね」

 

簪は自身の纏うISを確認すると所々変わっているのがわかった。

 

「さあ、ここから反撃開始だよ」

 

そう言う簪の瞳にはしっかりと戦う意思があり、凛々しくあった。




次で3巻終わりにいけるかな?
先に短編を更新予定です
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