織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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ハーメルンよ!私は帰って来たぞ――――!!

………わからない方は流して結構ですよ。

皆さんお久しぶりです。かなり待たせてしまいましたがこの話で3巻は終了です。

ではどうぞ―。


第36話

「簪さん、大丈夫なのですか!?」

 

我に帰ったセシリアは簪に駆け寄り心配そうに訪ねた。さっきまで重症を負っていただけに不安を隠せない。

 

「うん、大丈夫。それよりもゴメンね。私のせいでボロボロに………」

 

「いえ、わたくしは構いませんわ……簪さんが無事ならそれで……」

 

申し訳なさそうに謝る簪にセシリアは笑顔で答えたが目元は潤んでいる。

 

「それじゃ、反撃しないとね」

 

簪が目線は向けるとそこには別の無人機と戦っている一夏がいた。

 

「今援護するね、一夏」

 

簪は春雷を展開し、無人機に照準を合わせて発射した。

 

 

 

「くそ……っ!」

 

俺は今、非常に焦っていた。セシリア達がピンチで駆け付けたいのに目の前の無人機が邪魔をして、援護に行けずにいた。

 

「いい加減に…しろ!」

 

俺はこの一撃で仕留めようと急接近した、その時―。

 

「!?!?!?」

 

突然、背後から荷電粒子砲がやって来て目の前の無人機の頭を撃ち抜いた。

 

「えっ?今のは……?」

 

無人機が攻撃を受けて、ゆっくりと落ちていくのを見て、唖然となった。援護出来る人は居なかったはずだ……。

 

「まさか……」

 

俺は後ろを振り返るとそこには―

 

「簪……?簪!?」

 

さっきまで重症を負っていたはずの簪がISを展開している姿がいた。

 

「簪!」

 

俺は簪のいる場所に向かう。重症であるはずなのに妙に元気な姿に無理をしているんじゃないかと心配になるが意識を取り戻してくれた嬉しさが勝っていた。

 

「簪、大丈夫なのか!?」

 

俺は簪とセシリアの元にたどり着き声を掛けた。

 

「大丈夫。心配かけてゴメンね」

 

「いや、簪が無事ならいいんだ……」

 

さっきまで重症だったはずの簪だったが表情は明るい。何があったかはわからないが内心ホッとしている。

 

「っ………ちっ!?」

 

このまま簪を抱き締めたくなったがハイパーセンサーで無人機2体が俺達に攻撃をしかけようとしていた。

 

「くそっ、頭が無くても動くのかよ………」

 

「さっきのビームが来ますわ!」

 

「大丈夫、私に任せて」

 

そう言い簪は俺達の前に立ち右腕から爪が現れる。

 

「はああっ!!」

 

そして、そのまま右腕を振り上げるとエネルギー刃が発生し、ビームと同時に頭の無い無人機ごと切り裂いた。

 

「!?!?!?」

 

頭の無い無人機は縦真っ二つに斬られて爆発し、もう片方の無人機は今の事態に混乱している

 

「簪さん、それは……」

 

「これ?私の打鉄弐式がセカンドシフトした時に追加された武装だよ」

 

「俺の雪羅に似ているけど、名前はあるのか?」

 

「ううん、まだ……後で調べてみるね」

 

「そっか、これのおかげで残りは一機だな」

 

「うん。でもこの武装物凄いエネルギーを消費するのが欠点かな……かなり少なくなってきちゃった」

 

「それなら、これを使え」

 

俺は千冬姉から預かったキューブを取り出す。

 

「これは一体何ですの?」

 

「これは俺達専用のエネルギーパックだ。これである程度なら回復するぞ」

 

俺が説明するとキューブは簪とセシリアと俺のISに吸い込まれていく、そして―。

 

「凄い、エネルギーが回復してる」

 

キューブの性能が開放し、俺達のシールドエネルギーが回復していく。

 

「ええ、おまけに武器や弾薬も補給出来てますわ」

 

セシリアはボロボロだった装甲が元の状態に修復し、予備用のライフルを手に微笑んだ。

 

「さあ、いくぞ!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

回復し、反撃の準備を終えた俺達は一気に決着を着けるべく飛び出した。

俺と簪で前衛に立ち、セシリアが後方支援する形だ。

 

「うおおおっ!!」

 

俺は真っ先に無人機に対して斬り込んでいった。

 

 

 

(力になりたい……)

 

セシリアは一夏と簪が無人機に攻撃を仕掛け、後方支援をしながら、思っていた。

 

先程まで大怪我を負った簪を守るべく自らが盾になっていたが今は違う。友としてあるいは仲間として2人の為に力を願った。

 

「お願い、ブルー・ティアーズわたくしの想いに応えなさい!」

 

セシリアはライフルの引き金を引き。ライフルからビームが放たれる、その先には一夏と簪がいた。このままでは二人に当たり誤射になるが―

 

「!?!?」

 

ビームは曲がり二人を避けて無人機目掛けて貫いた。BTエネルギー高稼働率時のみ使える偏向射撃。まさしくセシリアの想いにISが応えた結果であった。

 

「まだまだこれからですわ」

 

セシリアは自身の想いに応えてくれたISに笑みを浮かべて、ライフルは構えながら再び引き金を引くのであった。

 

 

 

「!?!?」

 

俺達の攻撃とセシリアの援護射撃によって無人機の装甲はボロボロになり、かなりのダメージを与えていた。

 

「決着を着けるぞ!」

 

「うん!」

 

瞬時加速を使い、俺と簪は無人機に近付き斬撃を与えていき一気にダメージを与えて弱らせていき、そして―。

 

「これで!」

 

「「終わりだよ!(ですわ!)」」

 

最後に俺と簪の荷電粒子砲とセシリアのビームによる一斉射撃を無人機に向けて発射し―

 

ドカァァァン!!

 

無人機は俺達の攻撃を受けて爆発し、消滅した……。

 

「終わったの………?」

 

「わからない………」

 

それぞれ呟き周囲を警戒した。さっきの事があるだけにお互いに背中を預けた形にしてから少しの時間が経ち。

 

「帰りましょう。一応、警戒だけは忘れずに」

 

「ああ」

 

「うん」

 

セシリアの言葉に俺と簪は頷き帰路についた。俺達はこれ以上の襲撃者が現れない事を祈りつつ、周りを警戒しながら、旅館に帰還する事にした。

 

――――――――――――

 

「「「…………」」」

 

俺と簪とセシリアが戻って来ると千冬姉が腕組みをして先に戻っていた4人に正座を命じて、大広間で説教をしている光景に俺達は固まった。

 

「あ、あの、織斑先生。もうそろそろそのへんで………。お、織斑君達が帰ってきましたよ」

 

「ふん……まあ、いいだろう」

 

怒り心頭の千冬姉に対して、おろおろわたわたとしている。さっきから救急箱を持ってきたり、水分補給パックを持ってきたりと忙しい。

 

「じゃ、じゃあ、一度休憩してから診断しましょうか。ちゃんと服を脱いで全身見せてくださいね。――あっ!だ、男女別ですよ!わかってますか、織斑君!?」

 

俺に気付いて慌てて言う山田先生だが―

 

「すいません山田先生。急いで簪を!簪を診てください!」

 

俺は優先的に簪を診て貰うために山田先生に頼んだ。

 

「えっ?ど、どうしてですか?」

 

「先程の戦闘にて簪は胸を刺されています。今はわからないですが重症かも知れません急いでください!」

 

「ええっ!?」

 

「何っ!?」

 

俺の説明に驚く千冬姉と山田先生だが今は簪が心配なのだ、構っている余裕はない。

 

「そ、そうですわ!ここまで元気でしたから気付きませんでしたが簪さんは胸を刺されて重症でしたわ!」

 

セシリアもハッと気付いて簪を心配し出した。

 

「ほら、早く診てもらえ簪!」

 

「えっ?えっ?わ、私は大丈夫だよ、それよりもセシリアを先に診て上げてください!私を庇って大怪我を負っているはずです!」

 

簪は自分は大丈夫だとアピールしながらセシリアを気遣い始める。

 

「まずはセシリアから先に行って!」

 

「わ、わたくしは大丈夫ですわ!それよりも一夏さんは大丈夫なのですか?先程まで大火傷の重症だったはずです。先に診て貰うのは一夏さんですわ!」

 

セシリアは簪の気遣いに遠慮し、今度は俺の事を心配してくる。

 

「い、いや俺は大丈夫だ。まずは簪が先だ!」

 

「ううん、セシリアが先だよ!」

 

「いいえ、一夏さんが先ですわ!」

 

俺達は譲り合いに発展してしまった。三人共かなりのダメージを負っているだけに気遣った訳だが一向に決まらない。

 

「ええい、鬱陶しい!お前達三人はさっさと診て貰え!山田先生、三人を案内してください!」

 

俺達のやり取りに業を煮やした千冬姉が一喝し、山田先生に俺達を医者の所に案内するよう促す。

 

「残ったコイツらは私が診よう。ふむ………異常なし。さっさと部屋に帰れ」

 

「「「「ヒドッ!!!?」」」」

 

千冬姉は腕を組み箒、鈴、シャルロット、ラウラを診てそう言うと4人は非難の声を上げた。

 

「……冗談だ。お前達もちゃんと診察してやる感謝するんだな」

 

「では、織斑君達はこちらに来てください。診断しますからね」

 

「3人の診察が終わるまで私とじっくり話し合いをしようか、もちろん正座でな」

 

俺と簪とセシリアは山田先生に促されて医者が待機している部屋に移動し、診察を受ける事になった。後ろで顔を青ざめさせながら俺達に助けを求める箒達の視線を受けたが気にしない。

 

とりあえず、今回の戦いは終わった。考えなければいけない事、整理しなくてはいけない事が山程あったが、とりあえず――

 

(まだまだ力不足だな………俺は……)

 

理想とする強さに程遠い事を痛感する瞬間だった。

 

――――――――――――

 

「ね、ね、結局なんだったの?教えてよ〜」

 

「………ダメ。機密だから」

 

お膳を挟んで向かい側、ぱくぱくと夕食を食べるシャルロットに一年女子が数名群がってあれやこれやと訊いている。おそらく一番取っ付きやすいシャルロットになら訊けると思ったのだろうが、それは判断ミスってやつだ。多分あの子は専用機持ちの中でも責任感が強い。それは間違いない。

 

「シャルロットさんに聞いてもムダでしょうに………」

 

「うん。好奇心で聞いたら大変な事なのに………」

 

俺達は離れたテーブル席でその様子を見ていた。

正座の苦手なセシリアと俺達の体調を気遣ってくれた山田先生がわざわざ用意してくれたのだ。ちなみに俺と簪が隣同士、向かい席はセシリアと本音だ。

 

「ところで一夏」

 

「ん?何だ?」

 

「お姉ちゃんに連絡した?」

 

「へ?」

 

簪の言葉に訳が解らずに首を傾げた。

 

「そうだね〜。いっちーの事を知って〜お嬢様は心配してるんじゃないのかな〜」

 

「マジかよ……」

 

訳が解らなかった俺に本音の説明で納得した。確かに撃墜されてケガすれば心配してるだろうな………。

 

「だから連絡してお姉ちゃんを安心させて」

 

「そ、そうだな……」

 

簪の頼みに食事を中断して席を立った。

 

「って、楯無さんに連絡して大丈夫なのか?」

 

「気になるのであれば一度織斑先生に訊いてみたらよろしいかと思いますわ」

 

「わかった。ありがとう、連絡してくる」

 

俺はセシリア達にそう言い千冬姉の元に向かい刀奈さんに電話していいかの許可を取り、了解を得て連絡して安心させる事が出来た。

 

――――――――――――

 

ざあ……。ざぁん……。

 

「ふうっ……」

 

海から上がって、俺はとんとんと頭を叩く。右に左に首を傾けて耳の中の水を抜くと、俺は近くの岩場に腰を下ろした。

食事の後、俺は軽い休憩を取ってから旅館を抜け出して夜の海へと繰り出した。

満月の今日は、真夜中であっても明るい。俺は穏やかな波の音を聞きながらぼんやりと空の月を見上げた。

 

(綺麗な月だ………、簪と一緒に見たいな……)

 

せっかくの景色を1人で見るのは勿体無く感じてプライベートチャネルを展開して簪に連絡して会う約束をして待つ事にした。

 

(それにしても―)

 

簪を待つ間、俺はさっき刀奈さんに電話した時の内容を思い出していた。

俺が刀奈さんに連絡するとすぐに出て、慌てた様に俺の事を何度も聞いてきた、あまりの必死さに罪悪感を感じながらも何とか落ち着かせる事が出来た。

 

『ねえ、一夏君……』

 

「はい」

 

『会いたいよ……』

 

「刀奈さん……」

 

『声を聞いてるだけじゃダメなの……会って抱き締めて安心したい……寂しいの……』

 

「………」

 

刀奈さんの悲痛な想いが俺の心を苦しめる……心配かけすぎてしまったかな……。

 

「大丈夫ですよ。明日ちゃんと帰りますから、ねっ」

 

『本当に?嘘じゃないよね?』

 

「嘘はつきません。刀奈さんは安心して待っててください」

 

『……わかったわ。待ってる……ちゃんと帰ってきてね』

 

俺は刀奈さんを励まして、電話を終わらせた。

 

(帰ってきたら、デートや埋め合わせしないとな……)

 

俺は待っているであろう恋人のご機嫌取り方法を考えていると―

 

「い、一夏……?」

 

突然名前を呼ばれて、俺は振り向く。

月明かりに照らされて姿が浮かんだのは、水着姿の箒だった。

 

「し、篠ノ之さん……」

 

待ち人ではない相手の水着姿に顔を反らした。

 

白い水着――それも、箒にしては珍しく、絶対に着なさそうなビキニタイプ。緑の方に黒いラインが入ったそれは、かなり肌の露出面積が広く、普通の男子であれば十二分魅力的である事は間違いないだろう。

 

(い、いかん。これは予想外の展開だ………)

 

恋人達がいる俺にとっては全くの予想外だし、箒が水着姿で現れてもドキドキはしないが別の意味で落ち着かなかった。

さらに1メートルほど間を開けて隣に座った箒がどうしても気になってしまっていた。

 

(簪が勘違いしないといいが……)

 

何も知らないやつが見れば俺と箒との仲を良さげと思われるのも嫌だし、簪がこれを見て浮気と取られる事はもっと嫌である。

 

「…………」

 

「…………」

 

無言で静寂が流れる。波の音だけが耳の中に入ったくるだけだ。

 

「そ、その一夏……」

 

「な、なんだ?」

 

どうにかしてこの場を後にしようと思案していると箒から話しかけてきた。

 

「そ、その……だな。お、お前は大丈夫なのか?その、ケガしていただろう」

 

「ん?あー、なんか、治ってた」

 

「な、なに?」

 

「目が覚めていたら、治っていたぞ」

 

「ば、馬鹿なことを言うな!そんな事がありえる訳――」

 

そう言って箒は俺の肩を掴むと、グイッと背中を月光へと向ける

 

「消えている……。本当に、なんともないのか……?」

 

「ああ、治っていたな。簪の看病のおかげかな?」

 

「…………」

 

俺がそう言うとおそるおそる箒は俺の体に触れ、そこに傷がない事を指先で何度も確かめる。そのたびに「おかしい、おかしい」と呟いていたのが、おかしかった。

 

「そろそろ離れてくれないか?くすぐったいんだけど……」

 

「あっ、す、すまない……」

 

いつまでも箒に触らせる気はないので指摘するとパッと離れた。

 

「そ、その……す、すまなかった」

 

「はい?」

 

「わ、私のせいで一夏に迷惑をかけてその上ケガをさせて……本当にごめんなさい」

 

と箒は深々と頭を下げて謝罪してきた。今までそういう事がなかっただけに戸惑いを隠せない。

 

「いいって、俺は気にしてないよ……」

 

「だが、私は……」

 

「自分が悪いって気付いたんならその悪い所を直せばいいだからさ……なっ」

 

「一夏……」

 

俺の言葉を聞いて箒は目元を潤ませる。

 

「一夏は優しいんだな……こんな私を見捨てないなんて」

 

と箒は感極まっているが実は内心は違う。ここで突き放してほっとくのは簡単だが後々面倒事に発展しかねないから、ここは優しく諭して何とか修正してもらうしかない。その為に相手をしているだけである。

 

「それじゃ、俺はこの辺で―」

 

俺は岩場から立ち上がり、箒から立ち去るべく歩きだそうとしたら。

 

「やっぱり……やっぱり諦めきれん!」

 

「はあ?」

 

突然大声を上げた箒に思わず立ち止まり振り向く。

 

「私は一夏が好きだ!この想いは絶対に諦めないぞ!」

 

「おいおい……」

 

箒の告白と宣言に右手で頭を抑えた………。

 

「あのさ……俺には恋人達がいるんだからその想いを受け取るのは無理だから」

 

「既に二人いるのだろう。なら私を3人目の恋人にしてくれ!!」

 

「何言ってんだよ!!」

 

箒は頼みに思わず俺は声をあげた。

 

「お前。自分で何言ってるのかわかってるのかよ!?」

 

「そんな事はわかってる!私だって、こんな事は言いたくはない!でも、諦めきれないのだ!」

 

「だからってそんな事出来る訳ないだろが!」

 

これは本当だ。簪、刀奈さんという素敵な彼女を持っている俺にとって、箒の願いを叶えてやる事は出来ない。いくら何でも異性として意識するなんてもう無理だ。

 

「ど、どうしてもダメなのか……?」

 

「ああ、諦めてくれ……」

 

「くっ……ならば……」

 

「って、おい!何しようとしてんだよ!?」

 

俺の言葉が本気だとわかった箒は自らの水着に手を掛けながら迫ってきたのを慌てて止める。

 

「私には魅力がないのか!?これだけしても一夏は見てくれないのか!?」

 

「だからやめろって!そんな事しても気持ちは変わらないし、このままじゃ俺が悪者になるじゃないかよ!」

 

尚も脱ぎながら迫ろうとする箒を必死に止める。そこまで諦めきれないのかよ!

 

「そうよ、諦めてたまるもんですか!」

 

「鈴!?」

 

俺と箒のやり取りに乱入するかの如くやって来たのは鈴だった。しかも水着姿である。

 

「あたしだって一夏の事諦めきれないのよ!だからね……」

 

そう言って一時の間を置き。

 

「あたしを一夏の恋人にして!そして、あたしの作る酢豚を毎日食べなさい!」

 

ビシッとそう宣言する鈴。ってお前もかよ………。

 

「いや、無理だからな!もう鈴は親友と決めてるから今更、もう無理だからな!」

 

諦めきれない恋する乙女part2かよ!

 

「そうだよ!僕だって諦める訳にはいかないんだ!」

 

「シャルロット!?」

 

更にシャルロットまで乱入して来た。しかも水着姿である。

 

「僕も一夏の事が好きなんだよ!僕を一夏の恋人にして!」

 

「おいおい……」

 

「それが無理だったら、愛人でもいいよ。二人にマンネリ化したらいつでも言ってね」

 

「ちょっと待てい!!」

 

満面の笑みでそう言うシャルロットに思わず待ったをかけた。

 

「お前、その境遇で辛い目にあっているのに、そっちに堕ちるなシャルロット!」

 

「ふふふ……。不思議だよね何だか体が軽いよ。お母さんも同じ気持ちだったのかな?」

 

いやいやいやいや絶対に違うと思うぞ、多分絶対……。

 

「そうだ!私も諦めないぞ!」

 

「ラウラ!?」

 

クネクネと悶えるシャルロットの後に乱入してきたのはラウラだった。水着姿で……。

 

「私は一夏が好きだ。お前を私の婿にする!異論は認めん!」

 

「アホか――――!!」

 

ラウラの宣言に思わず叫んだ。

 

「お前に鷹月さんがいるだろうが!お互いに恋人いるじゃねえかよ!」

 

「ふん、そんなものは関係ない。それに日本でこういう事があるということを聞いた」

 

「な、何だよ……?」

 

「気に入った相手に恋人がいるなら、寝取ってしまえと教えてくれたのだ!」

 

「誰だ――――!!こいつ(ラウラ)に変な事を教えたやつは!?」

 

ラウラの言葉を聞いて思わず叫んだ俺。今度千冬姉と一緒に絶対にシバく!と固く心に誓った。

 

「それはいい名案ね」

 

「うん、それはいい名案だ」

 

「いい名案だね」

 

「はあ?」

 

ラウラの寝取る宣言に箒、鈴、シャルロットが賛同してしまった……や、ヤバいかも………。

 

「あっ、俺。千冬姉に呼ばれてたんだっけな、さらばだ!」

 

嫌な予感がした俺は直ぐ様撤退するべく逃げ出した。

 

「「「「待て――――!!」」」」

 

「待つか――――!!」

 

追いかけて来た4人に走るスピードを上げていく、もし捕まったら最後俺は簪、刀奈さんに会わす顔がなくなってしまう展開になってしまうのは間違いない。

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバい……」

 

背後から迫る危険にひたすら逃げるしかない。このままでは体力が尽きるのは時間の問題だ………。少しだけ心が折れそうになりかけた、その時―

 

「あれは、千冬姉!」

 

やった!助かった!俺は千冬姉の元に向かった。

 

「千冬姉!」

 

「織斑?どうした?」

 

「助けてください!」

 

「はあ?一体何を………そう言う事か……」

 

助けの声に千冬は一瞬、呆気に取られるが後から追いかけてくる者達を見て納得してくれた。

 

「わかった、後は私がなんとかしよう。お前はどうするんだ?」

 

「簪と会う約束をしてる」

 

「そうか、遅くならない内に部屋に帰れよ」

 

「わかった、それじゃ」

 

この場を千冬姉に任せて俺は簪との待ち合わせ場所に向かって行った。

 

途中、後ろから悲鳴を聞こえたが気にしないでおいた。

 

――――――――――――

 

箒達から逃れて、簪との待ち合わせ着き。ホッと一安心して待っていると―。

 

「お待たせ、一夏」

 

呼ばれる声に、俺は振り向いた先には水着姿の簪だった。

 

「この水着どうかな?」

 

とはにかんだ笑みで聞いてくるが俺は簪の水着姿に見惚れていた。

 

昨日着ていたワンピースタイプとは違い、水色のビキニにパレオを腰に巻いていた。簪は肌を露出する服はあまり好んでは着ないが俺の為に大胆なのを選んだのだろう。だから――

 

「綺麗だ……」

 

自然と口からそういう言葉が出た。

 

「あ、ありがと……」

 

簪は頬を紅く染めて、俺達は近くの岩場に座った。

 

「…………」

 

「…………」

 

俺と簪は何も言葉を発しないままゆっくりと月を眺めていた。

 

「月、綺麗だね……」

 

「ああ………」

 

簪の言葉に俺は同意して彼女の横顔を見詰めた。月の光に照らされた簪の顔は昼間とは違い、妖艶な美しさに見える。

 

「どうしたの?私の顔に何か着いてる?」

 

俺の視線が気になったのか簪は俺にそう訪ねてきた。

 

「簪が綺麗でずっと見惚れた」

 

「バカ……」

 

俺の言葉に恥ずかしさを感じたのか立ち上がり、海に向かって走り出した。

 

「きゃっ!冷たい」

 

波打ち際で海水が足に浸かりながらはしゃぐ簪。パレオを手にしてパシャ、パシャと水の音が聞こえた。

 

「……………」

 

月の光に照らされる簪を見て、綺麗に感じたがそれと同時に何処かへいなくなってしまいそうな感じがして俺はそのまま簪に近付き。

 

「ふえっ?」

 

気が付けば簪を抱き締めていた。

 

「ど、どうしたの急に?」

 

突然の事に簪は驚いているが俺はより強く抱き締める。

 

「ま、待って一夏。く、苦しいよ!」

 

抱き締める強く簪は苦しげに身をよじるが俺は構わない。

 

「良かった……」

 

「えっ?」

 

「簪が無事で……」

 

「一夏………」

 

「あの時簪が刺された時、俺は心臓が止まりそうだった……簪がいなくなるんじゃないかって……」

 

あの時、簪が命を落としていた。俺は無力に嘆いていたかもしれない。

 

「私が死んだらどうなるの?」

 

「俺と刀奈さんと一緒にわんわん泣いてるかもな」

 

「ぷっ」

 

俺の返答に簪は吹き出した。

 

「笑うなよ……」

 

「ごめんなさい。想像したらつい……でもね」

 

簪はギュッと俺を抱き締め返し。

 

「私は何処にもいなくならないよ。一夏とお姉ちゃんと一緒に幸せになるまで絶対に死なないよ」

 

「簪……」

 

「一夏……」

 

俺達はお互いに見詰め合いゆっくりと顔を近付けてキスを交わす。

 

「ん……」

 

そのさい、簪の吐息が漏れたがゆっくりとそして深いキスを交わしていく。

 

「一夏……もっとキスして……」

 

「ああ……」

 

簪のお願いに応える様に再び深いキスを交わしていき、俺と簪は時間が許す限り、二人だけの時間を楽しんだ。

 

――――――――――――

 

「よし、乗っていないやつは居ないな?では―」

 

翌朝。朝食を終えて、すぐにIS及び専用装備の撤収作業を行い、全員がクラス別のバスに乗り込み千冬が自分のクラス全員がいるかの確認をしていた。

 

「先生!織斑くんと布仏さんがいません!」

 

「それに2組の凰さんがいます!」

 

1組の女生徒達が手を挙げてこのクラスに居るべき人物達と居てはいけない人を指して訪ねた。

 

「織斑と布仏は4組のバスに乗っている。それに凰は昨晩問題行動を起こして私が監視する為に1組のバスの乗せたのだ!――以上!」

 

千冬の説明に1組の女生徒達は黙るしかなかった。

 

色々聞きたい部分はあるが鈴達の顔は真っ青でプルプルと震えている様子にこれ以上はヤバいと感じたからだ。

 

ヘタにつつけば自分もああなると………。

 

「何をしていますの、貴女達は?」

 

そんな鈴達の様子を見ながら呆れた表情で訪ねるセシリア。

 

「し、仕方ないでしょ。一夏の部屋に突撃したら千冬さんがいたのよ!」

 

「まったく予想していなかったから、大目玉をくらい説教地獄だ……」

 

「………そのおかげでこうなっているのだ……」

 

上から鈴、箒、ラウラの順である。

昨晩、一夏を寝取ろうとして迫ったが千冬に制裁食らって撤退したが諦めきれずに今度は一夏の部屋に突撃し、夜這いを仕掛けようとしたが彼女達の大きな誤算は千冬であった。

 

大激怒でメガシンカし、鬼神に進化、彼女達を鎮圧と説教を喰らわせたのだ。そのさいに巻き込まれた一夏は睡眠不足の為に本音と一緒に簪の4組のバスで帰る事となった。

 

「……まったく、懲りない方々ですわね……」

 

「そうだね。あの時にやめてれば良かったんだよ」

 

セシリアのため息混じりの愚痴に同意するシャルロット。

 

「って、シャルロット!アンタ!アタシ達と一緒に一夏に夜這いに行ったクセにいつの間に逃げたのよ!」

 

「さあ、なんの事かな?」

 

鈴の怒りの非難に知らぬ顔のシャルロット。

 

(危なかったな……一夏の部屋に織斑先生がいたのに気付いて、慌ててラウラ達を身代わりにして逃げて良かったよ)

 

そう、シャルロットは一夏に夜這いを仕掛けようとラウラ達と一緒に行ったまでは良かったが部屋に入る直前で嫌な予感がして、一番最後に入ると千冬の姿を見付けて、慌てて逃走し間一髪逃れたのである。

 

(うーん。一夏を落とすのは手強いな……でも、絶対に僕は諦めないからね!)

 

とぐっと手を握り締めて心にそう決意をするのだった。

 

「よし、誰も乗っていないヤツは居ないな?では出発する」

 

千冬は皆が居る事を確認し、IS学園へ帰るべくバスを発車させた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

「ただいま」

 

「お姉ちゃん帰ったよ」

 

バスに揺られて、IS学園に着いたのは夕方から夜に差し掛かる間に到着して、解散。俺達は自分の部屋に帰り、待っているであろう刀奈さんに声を掛けた。

 

「あれ?」

 

「どうした?」

 

「お姉ちゃん寝てる」

 

簪が指差した先にはテーブルに腕を置いてその上に寝ている刀奈さんがいた。

 

「そのままにしておきたいけど風邪ひいちゃうね」

 

「そうだな、起こすか」

 

俺は刀奈さんに近付き、肩を揺する。

 

「刀奈さん、刀奈さん起きてください」

 

「……ん……」

 

俺の呼び掛けに刀奈さんはゆっくりと目を覚ました。

 

「……一夏君?……簪ちゃん?」

 

目を擦りながら体を起こして俺と簪を交互に見詰め。

 

「一夏君!?簪ちゃん!?」

 

「うわっ!」

 

「ひゃっ!」

 

驚いた声をあげると直ぐ様ガバッと俺達に抱き着いた。

 

「刀奈さん?」

 

「お姉ちゃん?」

 

刀奈さんは体を震わせて抱き締めたまま離さないまま少しの時間が過ぎた。

 

「おかえりなさい」

 

ゆっくりと体を離して、刀奈さんは満面の笑みで俺達を出迎えた。

その顔は凄く綺麗に見えた。

 

「「ただいま」」

 

俺と簪は刀奈さんに答え、帰って来たなと実感を感じた。

 

何にせよ、長く短い臨海学校は終わったのだった。




長い間のスランプと久しぶり感でいっぱいいっぱいでしたが何とか出来ましたね。

次は番外編か4巻に突入です。短いかも………
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