織斑一夏の恋物語   作:夜光華

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今回はセシリアイベントの回です。

どうぞ


第6話

「ちょっとよろしくて?」

 

「ん?」

 

「ふえ?」

 

二時間目の休み時間、俺は再び参考書とノートを取り出して、本音を呼びISの勉強をしていたところを声をかけられて思わずすっとんきょうな声を出してしまった。

 

話し掛けて来た相手は、地毛の金髪が鮮やかな女子だった。白人特有の透き通ったブル―の瞳が、ややつり上がった状態で俺達を見ている。

 

「訊いてます?お返事は?」

 

「あ、ああ。訊いてるけど………どういう用件ですか?見ての通り俺達はISについての勉強中なんだ手短に頼む」

 

と俺はもっともな理由で回避しようと答えたが目の前の女子はわざとらしく声をあげた。

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話し掛けられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

「「…………」」

 

目の前の女子の態度に思わず俺と本音は顔を見合せた。

正直、この手合いは苦手だというより嫌気がさす。

 

ISを使える。それが国家の軍事力になる。だからIS操縦者は偉い。そしてIS操縦者は原則女しかいない。

 

それをいい事に威張りちらしたり、相手に不愉快な思いや理不尽などをする連中がいるのは少なくない。

 

面倒な事になったな………。

 

「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

 

実際に知らない。自己紹介で色々言っていた気がするが、正直覚えていないし、IS関係の勉強しか頭になかったからクラスメイトの事を覚えるのは後でいいだろうと思っていたが目の前の女子にとってはかなり気に入らないものだったみたいだ。つり目を細めて、いかにも男を見下した口調で続ける。

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

ああ、名前はセシリアなのか………ふーん。

 

代表候補生くらいで威張られてもな………俺の姉は元日本代表でブリュンヒルデだし刀奈さんはロシア代表だからそんなに珍しくないよな。

 

目の前にいるセシリアにちょっとしたイタズラ心が芽生えた。

 

「あ、質問いいか?」

 

「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、織斑先生よりスゴいのか?」

 

「そ、それは……」

 

俺の質問にセシリアの表情は困惑に変わる。

 

「自慢をするつもりはないが俺の姉は元日本代表にして第一回モンド・グロッソにて優勝しブリュンヒルデの異名を取ったんだ。そんなに自慢した態度を取るって事は織斑先生よりスゴいんだよな?」

 

「う……で、ですから……」

 

ククッ、困ってる困ってる俺の質問に悩んでるなセシリアは、ちなみに隣にいる本音は目の前のセシリアの様子を見て笑いを我慢している。

 

「確かに言われてみればそうよね……」

 

「オルコットさん、言い過ぎじゃないかしら?」

 

「千冬様の弟の織斑くんなら代表が当たり前よね……」

 

などなどクラスメイトがひそひそと話をしていたがセシリアの耳に届いていないようだ。

 

まあ、そんな余裕ないよな………俺の質問に答えられないのが屈辱なのかわからないがブツブツと呟いていた。

 

キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン

 

三時間目開始のチャイムがなり、この質問は終了となった。

 

「っ………!また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

え―――っ!?

 

まだ相手しないとダメなのかよ………トホホ………。

 

若干怒り気味で自分の席に戻るセシリアを眺めながらため息をはいた。

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備について説明する」

 

一、二時間目とは違って、山田先生ではなく千冬姉が教壇に立っている。

 

「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

と、ふと思い出したように千冬姉が言う。クラス対抗戦?代表者?

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

 

とざわざわと教室が色めき立つがまあ、クラス長を決めるらしいからたぶん面倒な仕事が多いんだろうな……。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

 

「私もそれが良いと思います―」

 

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか?自薦他薦は問わないぞ」

 

「織斑先生、これって拒否できますか?」

 

「ダメだ。推薦した者を無下にするつもりか?」

 

「ですよね……」

 

仕方ないか………まあ、大抵の理由は物珍しいからかな………正直やりたくないな〜。

 

半ば諦め気味になっていたところに突然甲高い声が上がった。

 

「待ってください!納得がいきますんわ!」

 

バンと机を叩いて立ち上がったのは、セシリアだ

 

「このような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

言いたい放題だな……まあ、今の社会に染まっている人達にすれば当然か。

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

ひどい理由だな、だったら立候補すればいいのに……しかも俺、猿扱いかよ。

 

まあ、先祖は猿なんだから当たり前だがここまで酷評とはな………。

 

すでに怒りは通り越して呆れているのは事実である。それに千冬姉が若干怒り気味になっていたのを見ていたのですでに頭は冷めていた。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

興奮冷めやらぬ――というか、完全に自分がクラス代表だと言わんばかりに熱弁してるな………まっ、俺には興味ないな。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――」

 

もしも―し!とんでもない発言してますよ――!!ああ、もうダメか………。

 

「どうして何も言い返さないのですの!?」

 

教壇から怒りのオーラが出ているにも関わらず、無関心な俺に矛先を変えて来たセシリア。

 

「いや〜ずいぶんと勇気あるな〜と思ってさ……」

 

「何を言ってますの?これだから男は嫌なのですわ」

 

俺が言っている事に気付いてないのかセシリアは悪態つき出した。

 

「はあ……そろそろ教壇の方を見たらどうだ……?警告はしたからな……」

 

「はあ?どういうこ……ヒイイィィィィィィッ!?」

 

俺の警告に呆れ気味に教壇を見た途端に恐怖に悲鳴をあげて後ずさるセシリア。

 

それもそうだ、千冬姉が怒り心頭になって威圧感を放っているからな………ちなみに近くにいたクラスメイトは気絶している。

 

「オルコット」

 

「は、はははい!?」

 

「その発言は私に対して挑戦状を叩き付けていると受けていいのだな?」

 

「ち、ちちちち違います!こ、これは……」

 

千冬姉の言葉に顔を青ざめさせて必死に弁解するセシリア。

 

「まあ、現役を引退したからな……勝てると思われたか………ずいぶんとナメられた物だな………ふふふ」

 

「で、ですから私は……」

 

セシリアはなんとかしようとするものの千冬姉の威圧感に呑まれてしまい完全に萎縮している。

 

表情から『やってしまいましたわ――――!!』言わんばかりだ。

 

「いいだろう。この私が直々に相手してやる、“遺書”の準備は出来たか?」

 

あらら、ぶちギレモードの千冬姉が降臨か哀れだな………。

 

「あ、ああ………」

 

「まあ、本来ならこのままアリーナに連行していくところだがあいにく手一杯でな命拾いしたなオルコット」

 

そう言ってニタリと笑みをこぼす千冬姉に対してセシリアは今にも気絶しそうなくらいに顔色が悪い………。

 

セシリアもさっさと気絶していれば楽なんだけど千冬姉がそうならないよう上手く調整しているから一種の拷問だな。

「さて、クラス代表の件は織斑とオルコットの2人のどちらかにしようと思う。そこで1週間後の月曜の放課後、第三アリーナで勝負を行い勝者がクラス代表になる。それぞれ準備しておくように。それからオルコットは放課後、職員室に来るようにな」

 

クラス代表をかけての勝負が決まり、千冬姉はセシリアを名指しした。

 

「私達は教師だ。生徒を正しい道に導くのも仕事の1つだ。山田先生も協力してもらい代表候補生としての振る舞いについてたっぷりと補習をしてやる嬉しいだろ?ああ来なければ迎えにいくからそのつもりでな、逃げても隠れてもムダだぞ………覚悟しておけ、ふふふ」

 

言いたい事を言いきったい切った千冬姉はスゴいいい笑顔だ。

 

 

セシリア……御愁傷様……。

 

俺は心の中で合掌しておいた。

 

「それでは授業を始める」

 

パンと手を打って千冬姉は話を締めた。

 

そして三時間目の授業が遅れ気味にスタートしたのだった。

 

ふと視線を感じたので見ると半泣き状態で俺を睨んでいるセシリアがいた。

 

恨みがましい気持ちがあるようだが俺はこの言葉を送りたい。

 

『自業自得』だと――

 

こうして、セシリアはしばらくの間千冬姉と山田先生による補習を受ける事になり精神的ダメージを喰らう事となり、色んな意味で有名なった。

 




次回は寮に入ります
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