どうぞ
「ふう………」
放課後、今日の授業の内容を纏めたノートを見直して一息ついた。
「しっかし、ISってこんなに難しいんだな………」
そう、普段ISに関わる事のない俺にとってはここまで大変だとは思わなかった。
予想していたのよりも専門用語のオンパレードで正直全く勉強してなければ大惨事を招き兼ねないくらいにヤバかった。
ああ、俺の恋人達と虚さんと本音が救いの女神に見える………。
簪と刀奈さんは俺の女神だけどな………ハハッ、なんちゃって………すいません、調子に乗りました………。
にしても―
(放課後までも押し掛けてくるのかよ……はあ……)
教室の外に上級生や他クラスの女子達のきゃいきゃいとはしゃいでいる姿を見て初日とはいえ、うんざりな気分になる。
昼休みに本音から簪が四組にいる事を聞いて一緒に昼食に行こうと思ったら女子達が着いてくるので迷惑をかけられないと思い。泣く泣く断念した。
ここまで物珍しく思われても正直対応に困るのがオチだがな…………。
「ああ、織斑くん。まだ教室にいたんですね。良かったです」
「山田先生?どうかしたんですか?」
呼ばれたので顔をあげると副担任の山田先生が書類を片手に立っていた。
「えっとですね、寮の部屋が決まりました」
そう言って部屋番号の書かれたキーを渡された。
はい?寮の部屋?
「俺の部屋がまだ決まってなくて1週間は自宅から通学するって聞いてましたけど……」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです……」
はあ……やっぱりか……まさかここまでしてもらう事になるとはね………。
虚さんの言ってた通りになったな………。
まあ、自宅通学も1人じゃ危ないから更識から護衛を出すって言ってたし、もし変なのに捕まったら最後、モルモットにされるかあの世逝きのどちらかだろうって聞いた時は正直ゾッとした事は覚えている。
「わかりました。とりあえず荷物を取りに行きたいので一回家に帰っていいですか?」
「あっ、いえ荷物なら――」
「私が手配しておいた。ありがたく思え」
「どうもありがとうございます」
「ずいぶんと手際のいい荷物の纏め方をしていたな。誰の入れ知恵だ?更識か?布仏か?」
最後の方は俺に聞こえるくらいの小声で聞いてきた。
「虚さんです」
「そうか、いい先輩に恵まれたな。困った時は聞いておけ、もちろん私達にもな」
そう言って千冬姉はポンポンと俺の肩を軽く叩いて笑顔を魅せた。
千冬姉の気遣いが身に染みるな、少なからず俺の境遇には同情してくれているようだ。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間がありますけど……えっと、その、織斑くんは今のところ使えません」
「仕方ないですね。使えるようになったら教えてください」
「わかりました」
「あ―……それからなんですが寮の部屋は1人部屋ですか?それとも相部屋ですか?」
そう。これは俺にとっては大事な問題だ。1人部屋なら気が楽だし気軽に簪や刀奈さん、本音や虚さんを呼んで相談出来るのが強みだが相部屋は相手によるからな………ハニートラップを仕掛けて来る相手や男と一緒の部屋は嫌とかで拒否されると本当に困る。
「すいません……相部屋なんですよ……」
「そう……です……か……」
なん……だと……?マジか!?
予想していただけにショックはショックだな………って―。
「それでルームメートは誰なんですか?もし相手が篠ノ之さんでしたら俺は速攻で荷物を片付けて、自宅か更識家に帰らせていただきます」
と俺は息をつかずに言い切った。
箒と一緒だったら1週間も持たずに倒れる自信があるぞ……。
「安心しろ、お前が篠ノ之の事が苦手な事はわかっているから一緒にしてはいない」
「そうですか」
千冬姉の言葉を聞いてホッと一息ついた、よっしゃ―――!!最悪な未来は回避出来たぞ―――!!
「まあ、政府の連中は篠ノ之と一緒にしろと言っていたが私が強引に引き離した。アイツらの態度には正直イラついているからな………」
そう言って怒りを隠さない千冬姉を見ながらも気を使ってくれた事が嬉しかった。
まあ、俺が誘拐された時も政府はその事を隠して千冬姉を決勝戦に送り込もうとしてたから、頭に来る。
人の命より名誉が大事かよ!?って叫びたかった。この事を教えてくれたドイツ軍には感謝しているが正直話が上手く行き過ぎてるような気がするな………。
この件はいくら考えても確証がとれないけどな………。
「ルームメートはお前と私が信頼出来る者と一緒にした……まあ、後は自分で確かめるといい」
誰だ?信頼出来る者って?うーん………。
「えっと、それじゃあ私達は会議があるので、これで。ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」
と山田先生はそう言うが正直自信がないな………だって後ろからぞろぞろと女子達が着いてくるんだぞ、軽くホラーだって………。
「それからオルコットの補習の準備もしておかないとな」
「はい、頑張りましょう」
千冬姉の言葉に山田先生は返事をするが多分2人の考えている内容は絶対に違うよな………。
と考えながら2人の後ろ姿を眺めつつ、俺は寮に向かう事にした。
――――――――――――
「えーと、ここか。1001室だな」
俺は部屋番号を確認して、ドアに鍵を差し込んで開けた。
ガチャ。
「おかえりなさい。ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」
パタン
目の前の光景を見て、思わずドアを閉めてしまった。
部屋の中から何か声が聞こえるが気にしない………。
今の刀奈さんだったよな……しかも裸エプロン姿だし俺の見間違いだよな、ハハッ。
そうだそうだ。俺の恋人はこんなエロい格好なんてしないよな〜と自己完結してもう一度ドアを開けた。
ガチャ。
「お、おかえりなさい…。ご飯にします?お風呂にします?そ、それともわ、わ・た・し?」
今度は簪が裸エプロン姿が俺を出迎えてました………。
しかも隣には刀奈さんがいる。
とりあえず、うん。
俺はドアを閉めて、鍵を掛けて2人を抱きしめた。
「きゃっ!」
「ひゃっ!」
2人が小さい悲鳴をあげるが俺は構わずに抱きしめながら自分の心を落ち着かせる。
「簪、刀奈さん」
「「何?」」
「その格好で出迎えてくれるのは嬉しいのですが……初日からは勘弁してください」
「「え〜っ」」
脱力感に襲われながらもそう言うと2人は不満の声をあげた。
――――――――――――
「それで俺のルームメートは2人だったんですか」
「そうよ」
「うん」
俺の質問に2人は返事を返した。あれから簪と刀奈さんには着替えてもらい今は制服姿になっている。
正直、あのままの格好でいたら俺の理性が保てる自信がない。2人は俺の為にやってくれているのであまり強くは言えないがもう少し慎みもってくれ………。
「本当は篠ノ之箒さんが一夏君と一緒になる予定だったから、生徒会特権を使って部屋を一緒にするつもりだったんだけど千冬さんが私達と一緒の部屋にしてくれるように計らってくれたのよ」
「そうでしたか………」
ギャア―――――!?マジかよ!!箒と一緒にされたら俺の未来はもう真っ暗だ!もう一度言うぞ、真っ暗だよ!!
千冬姉、マジで感謝するわ本当にもう、今度美味い物作って差し入れしよう。
とそう心に誓い、今の幸せを噛み締めた。
「それと本音から聞いたけどイギリスの代表候補生にケンカ売られたんだって?」
「ああ、まあな……」
簪から聞かれて、返事をした。
確かに嫌な感じはしたけどまあ、今となってはどうでもいいよな………。
だって千冬姉の怒りを買ったし、俺の出番ないしな。
「話を聞いたら、随分と面白い事を言ってたみたいじゃない。一夏君の事を極東の猿扱いなんて許せないわ」
そう言って笑み浮かべているが正直怖い……。
「私達の彼氏に暴言や侮辱した罪でちょ―っとO☆HA☆NA☆SHIして来なきゃね」
「ちょ、ちょっと刀奈さん!」
と立ち上がり、部屋を出ようとする刀奈さんを慌てて止めようと声をあげる。
「待ってお姉ちゃん」
「何?簪ちゃん」
「それはダメ、そんな事したら許せない」
「簪……」
簪の言葉を聞いて、俺は思わずジーンと来たが―
「やるなら私も一緒に混ぜて」
「わかったわ」
だああああっ!?
俺は思わずズッコケた、止める気はないんだ………。
どうやら俺の恋人達はかなりご立腹のようです。
「2人共待ってくれ!俺の為にそんな事はしないでくれよ!」
「でも……」
「私達までバカにされてなんか悔しいじゃない……」
「それに千冬姉がきっちり処分してくれるから大丈夫だって」
「そう……」
「なら安心ね」
と、千冬姉の名前を出したら納得して俺の両隣に座ったの確認してため息をはいた。
俺がらみで血をみる事は正直勘弁してほしいです。
つまらない事でのもめ事は嫌なだもんな、静かに過ごしたいのは本当だもんな。
その後、2人と一緒にゆっくりと過ごし、そして就寝となり、ようやく初日を終える事になったがこの学園で三年間無事に過ごせるかどうかはわからないが2人の恋人達と一緒なら、大丈夫だろうと思い眠りについた。
さあ、明日も大変だぞ………。
おまけ
その頃のオルコットさんは補習室にて―
「…………」
「どうしたオルコット?まだ補習は終わってないぞ」
「そうですよ。まだ半分も終わってませんよ」
机に突っ伏してぐったりしてセシリアに声をかける千冬と真耶。
それもそのはず
(何でこんなに分厚いんですの―――――っ!?)
渡された補習用の教科書を見て、冷や汗だらだらになった。
電話帳二冊を合わせた厚さの内容は代表候補生の振る舞いやそれに対する事例を纏めた物だった。
「全く毎年毎年、こういう調子に乗ったガキどもは減らないな」
「そうですね。代表候補生に上り詰めたからと言って胡座をかいて傲慢なる人が多いですよね」
2人はそう言うがセシリアはもう限界だった。
(す、すでに二時間……休みすらないんですか……)
千冬が疲れたら真耶。真耶が疲れたら千冬に交代するのでぶっ続けに補習をする為セシリアは全く休めずにいた。
「ほら起きろ。今日は半分は終わらせるぞ」
「そうなると後2時間頑張りましょうね」
「ちょ、ちょっと待ってください!今日で終わりじゃないのですか!?」
「当たり前だ。お前がきちんと理解するまで毎日するぞ」
「そうですよ。でないと後悔するのはオルコットさんなんですからね」
「では続きを始めよう」
「はい。ちょうど100ページからですねでは―」
と千冬の号令と共に真耶は補習を再開した。
(誰か……助けて……ください……)
セシリアはそう心の中で呟き、次から余計な事を言わないようにしようと心に誓ったのだった。