【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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原作3話の最初の方まで。
最後の方でオリジナル展開に入ります。



新たな適合者

「ありがとうございます……、ふぅ……」

 

「いえ、こちらこそ失礼しました」

 

 腕を愛おしいそうに見つめる響に緒川は非礼を詫びる。相変わらず笑顔は絶やさないのね。

 

「では、改めて自己紹介だ。俺は風鳴弦十郎。ここの責任者をしている」

 

 朗らかな笑顔で弦十郎は自己紹介をする。

 この人は本当に立場の割に偉ぶらないわ。そういうとこ、カッコいいとでも思ってるのかしら。

 

「そして、私は、うふっ、出来る女と評判の櫻井了子。よろしくね」

 

 自称出来る女、了子はウィンクを決める。歳をもうちょっと考えろと言いたい。

 前に似たようなことを言ったら、容赦なく蹴飛ばそうとしたから、緒川を盾にして逃げた。

 

「あっあの、こちらこそ。よろしくお願いします」

 

 ペコリと響は律儀に頭を下げた。

 

「君をここに呼んだのは、他でもない。協力を要請したいことがあるのだ」

 

 弦十郎がようやく用件を切り出す。

 この子もやはり、戦わせるつもりなのね……。

 

「協力? ――はっ、あのっ、教えてください! あれは一体なんなんですか?」

 

 響は協力という言葉からシンフォギアをまとったことを連想したようだ。

 あれが意図的ではないとしたら……、しかも彼女はギアペンダントも持っていない……、奏や翼とはかなり違うケースになるはず。

 

 それをあの了子が――。

 

「あなたの質問に答える前に二つばかりお願いがあるの。一つは今日のことは誰にも内緒。そして、もう一つは――とりあえず、脱いでもらいましょうか?」

 

 了子が響を抱きかかえながらニコリとつぶやく。みるみる響の顔が青くなった。

 

「えっ? ――だから、なぁんでぇぇぇぇ!」

 

 そして、地下深くに響の声が響き渡っていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「翼……、大丈夫?」

 

 響が帰ったあと、あたしは翼に話しかけた。

 

「大丈夫って、何が?」

 

 彼女はあたしの方を向いてそう答える。ああ、聞いたあたしが馬鹿だ。大丈夫なはずない。

 

「あなた、ガングニールのギアを見てから、ずっとピリピリしてたから、ちょっとね」

 

「……そうか。別に何でもない。ただ……、あれは……、あのギアは奏のモノだ……!」

 

 翼は声を震わせて、小さくともはっきりとした声でそう言った。

 

「そうね、ガングニールが帰ってきて、奏が居ないなんて残酷だと思うわ。でも、聞いてほしいの、翼、奏がもしも――」

 

「黙ってくれっ! フィリア、君のことを嫌いたくない。だからっ! お願い……」

 

 翼は悲壮な顔をして、その場から去っていった。

 

 奏……、あなたのギアは戻ってきたわよ。でもね、このままだと翼は……。

 教えて、あなたならどう声をかけたの? 今の翼に……。

 

 

 

 

「はぁ、らしくないことは出来ないか……」

 

「ん、何か言ったか?」

 

 弦十郎と共に帰宅してる最中にあたしはつい思ったことを口に出した。

 

「あら、口に出してたかしら。ごめんなさい。あたしは所詮人形。翼に付き合って学校にまで行ってるけど、結局、あの子の心は癒せなかったって思ってるだけよ」

 

 あたしは自分の心境を彼に話した。随分とあたしもおしゃべりになったものだ。

 

「またそんなことを言っているのか。フィリアくん、そんな優しい理由で悩んでいる君は間違いなく人間であり、俺の自慢の娘だ! 翼には、いつか君の優しさが届く! それは俺が保証する!」

 

 弦十郎は力強くはっきりとあたしにそう言った。ブレないわね、この人は。自慢の娘とか言っちゃって、こっちが恥ずかしいんだから。

 

「……ありがと」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「なっ何も言ってないわよ! ちゃんと前を向いて運転しなさい。国防の要が事故ったらシャレにならないわよ」

 

 あたしは思わず口に出した言葉をごまかした。

 はぁ、おしゃべり、直さなきゃ……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「それではー、先日のメディカルチェックのぉ、結果発表ー」

 

 参考人とか言って再び拘束した響を翼とともに本部に連れてきて、了子は彼女の体を調べた結果を話しだした。

 

「初体験の負荷は若干見られるものの、体に異常は()()見られませんでしたー♪」

 

「ほぼ……ですか?」

 

 楽しそうな了子に対して「ほぼ」が気になる響。まぁ、それは気になるわよね。

 

「うん、そうよね。あなたが聞きたいのはこんなことじゃあないわよね?」

 

「ええ、教えてください。あの力のことを」

 

 当然そんなことはわかっている了子に対して響はシンフォギアの力について説明を求める。

 

 そして、弦十郎と了子は彼女に翼の天羽々斬を例にシンフォギア・システムについて説明を開始した。

 

 力の源が聖遺物に由来するということ、ギアペンダントには聖遺物のごく一部の欠片が使われているということ。そして、その欠片の力を増幅に必要なものが歌の力だということを……。

 

「そっそういえば、あのときも胸の奥から歌が浮かんできたんです」

 

 響には思い当たることがあったらしい。

 

「うふっ、歌の力で活性化した聖遺物を一度エネルギーに還元し、鎧の形で再構成したのが翼ちゃんや響ちゃんが身にまとう、アンチノイズプロテクター、シンフォギアなの」

 

 了子はシンフォギアの正体を響に明かした。なんか、この説明を理解できてなさそうなんだけど、大丈夫かしら?

 

「だからとて、どんな歌、誰の歌にでも聖遺物を起動する力が備わっているわけではない!」

 

「「…………」」

 

 辛そうな顔をしてそんなことを言う翼から、あたしたちは奏を思い出してしばらく黙ってしまう。

 

 

「聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏う歌を歌えるわずかな人間を、あたしたちは適合者と呼んでいるのよ。それが翼であり、あなたなの」

 

 黙っていても仕方ないので、あたしが話を戻す。

 

「えっと、フィリアちゃんは?」

 

「あたしは適合者以前に人間じゃないわ。特殊な塗料で人間のように見せてるだけの人形よ。説明は面倒だから生きた人形とでも思ってちょうだい」

 

「ほぇー」

 

 あたしは自分のことを聞かれたので、手短に答える。響は感嘆したような声を出したが、気味悪がったりはしなかった。

 ニ課の連中といい、この子といい、本当にわからないわ。

 

「どう?  あなたに目覚めた力について少しは理解してもらえたかしら?  質問はドシドシ受け付けるわよ」

 

 了子は響に理解できたかどうか確認する。出来てたらこんなポカンとした顔しないと思うわ。

 

「あのっ!」

 

「どうぞ、響ちゃん」

 

「全然わかりません……」

 

 響の最初の質問は思ったとおり全くわからないというものだった。

 

「だろうね」

「だろうとも」

 

 友里と藤尭は二人ともやれやれという表情で納得する。まぁ、あれだけで理解できるほど利発そうな子じゃなさそうだし、仕方ないわよ。

 

「いきなりは難しすぎちゃいましたね。だとしたら、聖遺物からシンフォギアを作り出す唯一の技術……。櫻井理論の提唱者が、このわたくしであることだけは覚えてくださいね」

 

 説明をぶん投げた了子はドヤ顔で有能アピールする。この人もブレないわね。こういうところが苦手なのよ。

 

「はー、でも私はその聖遺物という物を持っていません。なのに何故?」

 

 響はようやく気になる点を質問する。それはあたしも気になっていたわ。

 

 すると、了子は響のレントゲン写真を見せたきた。何、この心臓の部分に突き刺さっている破片みたいなものは……。

 

「お? ――あっ!」

 

 響は破片のある部分を見て思い出したような声を出した。

 

「これは何なのか、君にはわかるはずだ」

 

「はい! ニ年前の怪我です。あそこに私も居たんです」

 

 弦十郎は破片について響に問いかけると、彼女は二年前の怪我だという。

 

「二年前!?」

 

 あたしは響の言葉に反応した。

 二年前にあそこって……、まさか、あなたはあの時の……。奏が命を懸けて守った……。

 

 翼も辛そうな顔をしている。気づいたのね……。

 

「心臓付近に複雑に食い込んでいるため、手術でも摘出不可能な無数の破片……。調査の結果、この影はかつて奏ちゃんが身に纏っていた第3号聖遺物――ガングニールの砕けた破片であることが判明しました」

 

「やっぱり……」

「くっ……」

 

 破片の正体が予想通りのもので、翼はさらに顔を歪める。

 

「奏ちゃんの置き土産ね……」

 

「――はっ」

「ちょっと、翼! 待ちなさい!」

 

 翼は耐えきれなかったのか、部屋を出ていってしまったので、あたしは翼を追いかけた。

 

「翼、あの日のことを思い出したのね……。でも、あなたの気持ちはわかるけど――」

 

「……聞きたくない。私の気持ちはフィリアにだってわからない」

 

「……そう。悪かったわ」

 

 そして、再び沈黙がこの場を支配した。

 

 

 

 自動ドアが開いた音がしたので、あたしたちはそちらを振り向く。

 

「私、戦います」

 

 響が出てきて、シンフォギア装者として戦うと宣言した。そう、覚悟があってのことなら良いんだけど……。

 

「慣れない身ではありますが頑張ります。一緒に戦えればと思います」

 

響は翼に向かって手を差し出しだした。

 

「ちょっと、翼……」

 

 翼は響の手を無視する。

 

「あ、あの……。一緒に、戦えればと……」

 

 自信なさ気な顔をして、響はもう一度翼に声をかける。なかなか勇気のある子じゃない。

 

 そんな中、けたたましいアラームが鳴り響いて、周りの照明が暗くなる。

 

「「!?」」  

 

「ぼさっとしないで、行くわよ」

 

 あたしは二人に声をかけて司令室へ向かう。

 

 

「《ノイズ》の出現を確認!」

 

 藤尭が解析をしながら報告する。

 

「本件は我々二課で預かることを一課に通達!」

 

 弦十郎が真剣な顔で指示を出す。

 

「出現位置特定!  座標出ます! リディアンより距離200!」

 

 友里が《ノイズ》の場所を特定する。かなり、ここから近いわね……。

 

「近い!」

 

「迎え撃ちます!」

「そうね、被害が拡大する前に行きましょ」

 

 弦十郎の言葉に翼とあたしが返事をする。

 

「あっ……」

 

 響はあたしたちに付いてこようとする。

 

 

「待つんだ!  君はまだ……」

「そうね、何の訓練も受けてないあなたじゃ、まだ足手まといかしら」

 

 弦十郎は響を止めようとする。あたしも立ち止まって彼女を諌める。

 

「私の力が誰かの助けになるんですよね?  シンフォギアの力でないとノイズと戦うことは出来ないんですよね? だったら行きます!」

 

「……っ。この目は……、奏の……。司令、この子のお守りはあたしがやるわ。だから、同行を許可して」

 

 あたしはなぜか響の目が奏にダブって見えてしまい、弦十郎に同行の許可を求めた。

 

「仕方ないな。フィリアくん、響くんを頼んだぞ!」

 

 弦十郎はやれやれという表情で響の同行を許可する。

 

「言われるまでもないわ」

 

「フィリアちゃん。わー、ありがとう!」

 

「ちょっと、抱きつかないで!」

 

 馴れ馴れしく、くっついてくる響にうんざりしながら、あたしたちは翼を追う。

 

 

『日本政府特異災害機動部よりお知らせします。先程、特別警報が発令されました。速やかに、最寄りのシェルター、または退避所へと避難してください』

 

 翼に追いついたとき、彼女の目の前の《ノイズ》は次々と溶け出して融合を開始して、スライム状の巨大な《ノイズ》になった。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 聖詠を唱えて翼はシンフォギアを纏う。

 

 スライム状の《ノイズ》は体の一部を分裂させて翼に飛ばして攻撃する。

 

 それを翼は空中にジャンプしてすべて躱すが、飛ばした部分はブーメランのように戻ってきた。

 

 彼女は足の部分からブレードを出してソレを切り裂く。

 

 着地した翼を背後から《ノイズ》が襲いかかる。

 

「つっ翼さん!」

「待ちなさい! 大丈夫よ!」

 

「たあああああああっ!!」

 

 あたしの制止も聞かずに響は《ノイズ》に蹴りを食らわせる。

 

「翼さん!」

 

「ちっ!」

 

「えへへっ」

 

 《ノイズ》に吹き飛ばされた響を横目に跳び上がる翼。響、なんだか嬉しそうね……。

 

「はあああああっ!」

 

 そして、翼はアームドギアを巨大化させる。

 

 ――蒼ノ一閃――

 

 巨大化させたアームドギアで一閃――《ノイズ》は両断される。

 

 さすがにあの程度の敵には苦戦しないわね。

 

「翼さーん! 私、今は足手まといかもしれないけれど、一生懸命頑張ります! だから、私と一緒に戦ってください!」

 

 響はあれだけ冷たくあたられても、再び翼にアタックする。本当にめげない子……。

 

「そうね……」

 

「翼さんっ」

 

 翼は彼女を肯定するような一言を述べた――しかし……。

 

「あなたと私、戦いましょうか?」

 

「えっ?」

 

 翼は響に剣を突きつける。ちょっと、何を考えてるのよ……。翼……。

 

「そういう意味じゃありません。私は翼さんと力を合わせて……」

 

「わかっているわ……、そんなこと」

 

 響はきちんと意味を説明するが、別に翼はそんなことはわかっていた。翼、あなたは……。

 

「だったら、どうして……?」

 

「私があなたと戦いたいからよ」

 

「え?」

 

 翼のセリフに響は訳が分からないという表情をする。

 

「私はあなたを受け入れられない。力を合わせ、共に戦うことなど風鳴翼は許せるはずがない。 あなたもアームドギアを構えなさい。それは常在戦場の意思の体現。あなたが、何者をも貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば――胸の覚悟を構えてごらんなさい!」

 

 そうなのね。あの日からあなたはずっと、ずっと、時間が止まったままなのね……。

 

「か、覚悟なんて、そんな……。私、アームドギアなんてわかりません……。わかってないのに構えろなんて、それこそ全然わかりません」

 

 響は混乱している。無理もないわ。翼が何が許せないなんて彼女に分かるはずがない。

 

「覚悟を持たずにノコノコと遊び半分で戦場に立つあなたが、奏の――奏の何を受け継いでいると言うの!?」

 

 翼の殺気――あのバカ……。本気じゃない。

 

「翼さん……」

 

「はっ!」

 

 翼が跳び上がり剣を投げつける。

 

 ――天ノ逆鱗――

 

 剣は、徐々に巨大化して、響に肉薄する――。

 

「邪魔するの? フィリア……」

「ふうぁっ、フィリアちゃん」

 

 あたしはミラージュクイーンの出力を最大に上げて、翼の剣を受け止める。

 

「あなたが人に向かって、仲間に向かってアームドギアを向けるとは思わなかったわ……。奏も哀しむでしょうね」

 

「奏を語るな!」

 

 翼は激昂する。そうね、奏を失った原因のひとつはあたし。こういう、口出しはしたくなかった。

 

「いつまでも子供みたいに拗ねてるんじゃないわよ! あの日からちっとも成長してないじゃない! あたしは奏にあなたの未来を託された。これじゃ、あたしも顔向け出来ないって言ってるの!」

 

「黙りなさい!」

 

 

 ――蒼ノ一閃――

 

 翼のアームドギアから強力な一撃が放たれる。

 

 

「ちょっと、お仕置きが必要ね……。コード、マナバースト……」

 

 ――神焔一閃――

 

 錬金術から成る灼熱の業火をまとったミラージュクイーンによる一撃――。

 

 翼の蒼い剣とあたしの紅い剣が交錯した――。

 




翼VSフィリアが勃発です。
弦十郎は出鼻を挫かれて出るタイミングを物陰から見守っています。
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