【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
よろしくお願いします!
あたしのミラージュクイーンと翼のアームドギアが衝突する。
「素直に引くのなら、許してあげるわよ」
「あら、ありがたいわね。でも、あたしは自分より弱い子に背中を見せる趣味はないの……」
顔を近づけて力比べのようにつばぜり合いをしながら言葉を交わす。
「私より強いつもりか!? フィリア!」
「それ以外に聞こえたのならあたしの言い方が悪かったのね」
「ほざけっ!」
――逆羅刹――
翼は逆立ちと同時に横回転し、展開した脚部の刃であたしを襲う。
「くっ、前よりもキレが良いじゃない」
「それはそうだ! 最近は本気を出すまでもないからな!」
そして、あたしのミラージュクイーンは弾かれて飛ばされてしまう。
「ふっ、ここまでだな! これで終わりだっ!」
翼が剣で鋭い突きを繰り出した。
――震脚――
地面を強く踏み、アスファルトを隆起させて翼の剣を止める――。
「こっちが武器を失ったと見ると、もう油断? 甘いわね」
「くっ、これは司令の……」
「こっちはもう二年もつまらない映画を見せられて、映画談義させられてるのよ! 《ノイズ》相手じゃなければ素手でもこれくらいは――」
――
体内のエネルギーを爆発させるイメージと共に背中からの体当たり――。
弦十郎の好きな名前も知らない拳法の技を翼に繰り出す。
「なっ、シンフォギアをまとっている私を吹き飛ばすなんて――」
翼は飛ばされながらも着地して、こちらに突撃してくる。
あたしもミラージュクイーンを拾って彼女と再び剣を――。
「いい加減にしろ! 二人とも熱くなりすぎだ!」
弦十郎があたしと翼の間に割って入ってあたしの腕とアームドギアを素手でグイッと掴み、それごと持ち上げて投げ飛ばす。
投げ飛ばされたあたしと翼は地面に激突して倒された。
くっ、いつも思うけど何なのこの人は……、正直言ってあたしよりもずっと化物よ……。
なんで、生身の人間がこんなに強いの……。映画のマネばかりしてるだけの癖に!
間に入ったとき物凄い勢いで地面を踏んだのか、アスファルトにクレーターが出来て、地面が剥き出しになり、地下水が吹き上がっていた。あたしの震脚とはケタ違いね……。
「あー、こんなにしちゃって……。何やってんだ、お前たちは……、この靴、高かったんだぞ!」
まるで、あたしたちが現場を荒らしたような言い方じゃない。ほとんどあなたでしょ。
「一体何本の映画を借りられると思ってるんだ?」
「ちょっと、余計なことしないでくれる?」
あたしは弦十郎に文句を言った。
「まぁ、そういうな。フィリアくんも止めるのを忘れて熱くなっていただろう」
「否定はしないわ。悪かったわね……」
痛いところを突かれてあたしはそっぽを向く。
「らしくないな、翼。普段ならこんなに見境なく戦うようなことはしないだろ。んっ? お前――泣いてるのか?」
「泣いてなんかいません! ――涙なんて流していません。風鳴翼は、その身を剣と鍛えた戦士です。だから――」
「ふむ……」
泣いてないと言いつつも、翼の声は震えていた。ガス抜きをすれば少しは気が晴れると思ったけど、逆効果だったかもね。
「翼さん……、私、自分が全然ダメダメなのはわかっています。だから、これから一生懸命頑張って――奏さんの代わりになってみせます!」
そんな翼に対して響は言ってはならないことを言ってしまう。はぁ……、この子は悪意なく人の地雷を踏むタイプだわ……。
あたしが庇った意味がないじゃない。
「このっ!」
翼は怒りの形相で響を平手打ちした。我慢できるはず――ないか。
「あっ……」
響は翼が泣いていることに気づいて声を出していた。
翼……、早く気付きなさい。奏はあたしたちの――。
「響、ちょっといいかしら?」
「えっ? フィリアちゃん。――痛っ」
「奏の代わりになるって、あたしも結構イラッとしたのよ」
あたしは響の手の甲をグイッと抓った。
「ごっごめんなさい。フィリアちゃんも奏さんを――」
「あたしには謝んなくってもいいわよ。翼には、いえ、あの子にも――とにかく、今のままじゃ、本当にダメよ。死にたくなかったら、力をつけなさい」
あたしは響という人間に危うさを感じていた。先ほど、見境なく突っ込んだような、考えなしのところは死にたがりにも見えた。
奏が命を張って守った命なんだから、死なせないわ。翼はどう考えているか、わからないけど、あたしはこの子は守らなきゃならないと思っている。
「フィリアちゃんって、優しいんだねー」
「はぁ? なんでそうなるのよ?」
あたしは思いもよらない言葉をかける響の心がわからなかった。
「私、頑張りたい。この力で誰かを助けられるのなら、それに翼さんも助けたい、だから――」
本当に、甘い子ね……。仕方ない子だわ……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うわぁぁっ」
「ほら、また力が分散してるからそうなるのよ。例え、アームドギアが使えなくても、こうやって――」
あたしはミラージュクイーンで《ノイズ》を一体ずつ突き刺す。
「一点に力を集中することが出来れば、あのくらいの《ノイズ》なら消滅する」
「ほえー、フィリアちゃんってすごいんだねー」
「この前、学校でも教えたんだけど、あたしは先輩よ。未来のように、先輩って言いなさいよ」
「いやー、最初に会ったときの感じが忘れられなくてつい……。フィリアちゃんだって結構長い間、放置してたし……」
あたしは出撃があれば、なるべく響の側について《ノイズ》の倒し方を教えていた。
そして、学校でこの子が友達と歩いてるところでばったり会ったときに、二年生だということを伝えた。
しかし、一切、態度を改めなかった。
「ふぁー、どーしよー。また、課題やってないよー。このままだと、課題に埋もれて死んじゃう。翼さんも一言も口を利いてくれないし、私って呪われてるのかなー?」
「翼のことは自業自得でしょ。でも、課題は確かに気の毒ね。こんな仕事やらなきゃ、課題くらい――いや、あなただったら、どのみち終わらせられないか……」
「あー、そりゃあないよー。フィリアちゃん」
「ホントに自信があるわけ」
「もちろん、自信は――あれ?」
機密保持の性質上、二課の管轄であるリディアンだが、彼女の生活リズムが崩れてもフォローを入れることはしなかったので、響は課題をこなすことが出来ずに悩んでいた。
さらに翼はあれから響を完全に無視しており、それも彼女を悩ませていたのである。
「わかったわよ。あたしが少しだけ手伝ったげるわ」
「えっ、フィリアちゃんが? 悪いよー、だってフィリアちゃんも課題とか溜まってるんでしょー」
「あなたと同じにしないで頂戴。あたしは人形だからあなたたちみたいに疲れたり、眠ったりしないから時間に余裕があるのよ」
「おおーっ、フィリアちゃんって寝ないんだねー。私なんて、寝てばっかりでこの間なんて授業中に寝ちゃって、そこで先生が――」
手伝うと一言いうと、彼女はペラペラと楽しそうに話しだした。まったく、あたしと会話なんてしても面白くないでしょう。
「もう、いいかしら。じゃあ、結局手伝いはいらないのね」
いい加減に長話が終わらなくてイライラしたあたしは話を切ろうとした。
「ええっー! お願いだよー、フィリアちゃん。ちょっとだけ、手伝ってー」
そんなわけで、あたしは響の寮に課題を手伝いに何度か行くこととなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「フィリア先輩、いつもすみません。響ったら、授業中もボーッとすることが多い始末で」
まるで母親のようにすまなそうな顔をして、あたしに謝罪するのは小日向未来。
黒髪で大きな白いリボンをつけている彼女は響の親友でルームメイトだ。
「別にあなたが謝る必要はないわよ。この子が、もうちょっと授業を聞いていればもっと素早くこなせてただけだから。――ほら、ここは基本だって昨日言ったじゃない。授業はともかく、あたしの言ったことも適当に聞くとはいい度胸ね」
「ふぇー、フィリアちゃんって、見た目によらず厳しいなー」
響の成績は思ったよりも危機感を覚えるレベルであり、あたしは容赦なく叱咤して課題をこなさせていた。
「当たり前でしょう。あたしが教えて、あなたが不合格だったり、補習だったりしたら、こっちの面目が立たないのよ。もう、また同じところで間違ってる……」
「未来ー、やっぱり私、呪われてるよー」
「もう、そんなこと言ったら駄目じゃない。そのおかげで、この前も先生に授業態度の割には課題はしっかり出来てるって褒められたでしょ」
「それはそうなんだけどー」
響はかろうじて期限以内に課題を提出して、それなりの評価を貰っているようだ。まぁ、あたしが教えたんだから当然だけど……。
あら、着信? はぁ、二課ももうちょっと生徒に気を使ってほしいわねー。あたしはマナーモードにしていたスマホのバイブでニ課からの呼び出しに気が付いた。
そして、あたしが呼び出されたということは当然――。
「今の音はなに? まさか朝と夜を間違えてアラームセットしたとか?」
未来は響のスマホの着信音に反応して質問する。
「いやー、えっと……」
「こんな時間に用事?」
「あはは……」
気まずそうな顔をした響に対して、未来は大体のことを察したようだ。
「はぁ、夜間外出とか門限とかは私で何とかするけれど……」
「うん、ごめんね……」
いろいろと未来には迷惑かけてるのね。このままだと、彼女の生活にも支障が起きそう。
今度、弦十郎に相談しようかしら?
「こっちの方は何とかしてよね」
未来は獅子座流星群の記事を響に見せてきた。
「一緒に流れ星を見ようって約束したの、覚えてる? フィリア先輩のおかげでせっかく課題は順調に片付いているのに、こんな呼び出しがまたあったら……」
「ごめん、それだけは何とかするから……」
響は困った顔と笑顔が混濁したような表情で美来を見ていた。
この子もこの子で悩みが尽きないわね。だから、子供を戦わせるのは――。
「あら、響はこれから用事があるのね。だったら、あたしはこれで失礼するわ」
あたしは白々しい態度だとは思いながらも立ち上がる。
「すみません。せっかく先輩が来てくれたのに……」
「ごっごめんねー。フィリアちゃーん」
真剣に謝罪する未来と目が泳いでいる響。
まったく、下手な演技しちゃって……。
こうして、あたしは一足早く二課のミーティングに到着して、少し遅れて響も到着した。
くだらない呼び出しだったら覚悟しなさいよ、弦十郎……。
弦十郎のDVD鑑賞に付き合うことで、拳法が使えるようになったフィリアは実は《ノイズ》相手より装者などの人間やオートスコアラーを相手にした方が強さを発揮できます。
課題をきちんとこなしてる響なので、少しは先生からの風当たりは弱くなっている感じです。
しかし、任務だけはどうにもならないので未来は順調に病んでます……。
次回もオリジナル展開を挟む感じです。