【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それでは、よろしくお願いします。
「遅くなりました。すみません」
あたしが到着してから数分後、響が到着した。未来には悪いことをしたわね。
「では、全員揃ったところで仲良しミーティングを始めましょ」
了子は狙ってるのかいないのか、どう考えてもギスギスしてるあたしたちに対して、彼女はそんなことを言う。
「「…………」」
あの日から響はもちろん、あたしも翼とは必要最低限以外のことは話していない。
はぁ、翼に前を向いてほしくて煽るようなことを言っちゃったけど、後悔してるわ。
モニターに映し出されるのは、ここひと月の間に発生した《ノイズ》の反応。やはり、多すぎる……。
「どう思う?」
「いっぱいですね!」
弦十郎は響に感想を求め、シンプルな返しをする彼女。もうちょっと語彙力つけなさいよ。
「ハハハ、全くその通りだ。これは、ここ一ヶ月に渡る《ノイズ》の発生地点だ。《ノイズ》について響くんが知っていることは?」
弦十郎はもう少し踏み込んだ話を響にふってみる。
「ええと、まず無感情で機械的に人間だけを襲うこと。そして襲われた人間は炭化してしまうこと。時と場所を選ばずに突然現れて周囲に被害を及ぼす特異災害として認定されていること」
「意外と詳しいな。」
「今、まとめているレポートの題材なんで、フィリアちゃんから、いろいろと教えてもらいました」
あたしはもう少し専門的な話も織り交ぜて話したのだが、今の響の理解度ではこれくらいが限度だった。
「まぁ、いつの間にか、二人はとっても仲良しになっていたのねー」
「別に、仲良くなんて……」
「はい、フィリアちゃんって、すっごく優しいんです」
あたしの否定の言葉をかき消すような大声で響はそんなことを言う。
ちょっと、翼、そんな裏切り者を見るような目でこっち見ないでよ。
「《ノイズ》の発生が国連での議題に上がったのが13年前だけど、観測そのものはもっと前からあったわ。世界中に太古の昔から――」
了子の言うとおり、《ノイズ》自体の歴史は古いみたいだ。
「世界の各地に残る神話や伝承に登場する数々の異形は《ノイズ》由来のものが多いんだろうな」
弦十郎も持論を展開する。
「《ノイズ》の発生率は決して高くないの。この発生件数は誰の目から見ても明らかに異常事態。だとすると、そこに何らかの作為が働いていると考えるのべきでしょうね」
そう、作為的なのは明らか。その目的もおおよその見当はついている。
「作為? ということは誰かの手によるものだと言うんですか?」
響はこの話の論点に気がついたようだ。
「中心点はここ。私立リディアン音楽院高等科。我々の真上です。 サクリストD――デュランダルを狙って何らかの意思がこの地に向けられている証左となります」
翼はあたしたちの推察した結論を話した。
デュランダル……。これも面倒を起こす元凶になりそうよね。
「あの、デュランダルって一体?」
「ここよりも更に下層、アビスと呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下にて我々が研究している、ほぼ完全状態の聖遺物。それがデュランダルよ」
響の問に友里が答える。完全状態の聖遺物なんて、希少価値でいうとギアペンダントの比じゃない。それこそ国宝以上のレベルだ。
「翼さんの天羽々斬や響ちゃんの胸のガングニールのような欠片は、装者が歌ってシンフォギアとして再構築させないと、その力を発揮できないけれど、完全状態の聖遺物は一度起動した後は100%の力を常時発揮し、さらに、装者以外の人間も使用できるだろうと、研究の結果が出ているんだ」
そう、藤尭の言うように完全状態の聖遺物はそれ自体が兵器と言ってもいいくらいの力を秘めている。
「それが、 ワタクシの提唱した櫻井理論! だけど完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲイン値が必要なのよねー」
「んー?」
了子の言っていることに響はピンと来ていないだ。
「あれから2年。今の翼の歌であれば、あるいは……」
「「……」」
あの実験、ネフィシュタンの鎧は発動できたけど、紛失している。あのときも何者かが《ノイズ》をけしかけたとあたしは思っている……。
「そもそも起動実験に必要な日本政府からの許可って下りるんですか?」
友里はそもそもの疑問を口にする。
「いや、それ以前の話だよ。 安保を盾にアメリカが再三のデュランダル引き渡しを要求してきてるらしいじゃないか。 起動実験どころか、扱いに関しては慎重にならざるを得ない。下手を打てば国際問題だ」
藤尭はやれやれという口調で現状を話す。そうね、アメリカが絡んでいる可能性も高いのね……。
「まさか、この件、米国政府が糸を引いてるなんてことは?」
友里の推察はあたしも考えていることだった。ただでさえ、シンフォギアという強力なカードを日本は手にしている。さらに完全聖遺物も、となると黙っていないだろう。
「調査部からの報告によると、ここ数ヶ月の間に数万回に及ぶ本部コンピューターへのハッキングを試みた痕跡が認められているそうだ。さすがにアクセスの出処は不明。それらは短絡的に米国政府の仕業とは断定出来ないんだ。――もちろん痕跡は辿らせている。本来こういうのこそ俺たちの本領だからな」
弦十郎はハッキングの痕跡から、敵の正体を探らせているみたいだ。しかし、妙ね。痕跡をわざわざ数万回も残すようなことをして……。
まさか……。いや、そんなはず……。
「風鳴司令」
「あ、そろそろか」
緒川の言葉に弦十郎は反応する。
「今晩は、これからアルバムの打ち合わせが入っています。」
「へ?」
「表の顔では、アーティスト風鳴翼のマネージャーをやっています」
そう、緒川は翼のプライベートの面倒の傍ら、マネージャー業をやっている。
というか、最近は異常に力を入れていて、どっちが本業かわからないくらいだ。
「おー! 名刺もらうなんて初めてです。これはまた結構なものをどうも……」
響は物珍しそうに名刺を見ている。
「緒川、あんまり翼に仕事を詰め込まないようにしなさいよ。あなたの仕事には彼女のケアも含まれてるんだから」
「ははっ、気をつけます」
あたしが一言文句を言うと、緒川はいつもとおりの笑顔で誤魔化した。
そして、二人は仕事へ向かった。
「私たちを取り囲む脅威は《ノイズ》ばかりではないんですね」
「うむ」
「どこかの誰かがここを狙ってるなんて、あんまり考えたくありません」
響が言うとおり、人間の悪意のほうがときに《ノイズ》よりも恐ろしいものとなる。
だからこそ、いつも警戒心を持っていなければならない。
「大丈夫よ。なんてたってここはテレビや雑誌で有名な天才考古学者櫻井了子が設計した、人類至高の砦よ。先端にして異端のテクノロジーが悪い奴らなんか寄せ付けないんだから」
了子は自信満々の表情を浮かべた。悔しいけど彼女は本当に天才。じゃないと、あたしは人形になったその日に干からびている。
「よろしくお願いします」
「うん」
響は了子に素直に頼りにしているという素振りを見せた。
ミーティングが終わってあたしたちは雑談をしていた。
「どうして私たちは……、ノイズだけでなく、人間同士でも争っちゃうんだろう? どうして世界から争いは無くならないんでしょうね?」
「それはきっと、人類が呪われているからじゃないかしら?」
響が珍しく真剣な顔で話をしてると思っていたら了子は響の耳に噛み付いた。
「ひゃぁぁぁぁぁっ!」
「あら、おぼこいわね。誰かのものになる前に、私のものにしちゃいたいかも」
「うぅ……。フィリアちゃん、お嫁に行けなくなっちゃったー」
絶叫する響に対して全く悪びれない了子。何やってるのよ本当に。
響はあたしにもたれかかっている。
「アホなこと言ってないで、さっさと結婚相手見つけなさい」
「んー? フィリアちゃーん、何か言ったかしらー」
「って藤尭が言っていたわよ」
異常な殺気を感じ取りあたしは藤尭に罪をなすりつけようとした。
「えっ、あっ、違いますよ! 違いますって」
藤尭、ごめんなさい。骨は拾ってあげるわ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、数日後の放課後。あたしはリディアンの近くのクレープ屋に立ち寄っていた。
エネルギーはこまめに補給しとかなきゃ。
「フィリアちゃーん」
「フィリア先輩もここのクレープを?」
あーあ、穴場だと思ってたのによりによってこの子らに見つかるなんて……。
「そうよ、あたしがクレープ食べてちゃ悪い?」
「誰も悪いなんて言ってないよー。むしろ可愛いし、似合ってるよ!」
響は満面の笑みで恥ずかしげもなくそんなことを言う。
「全然嬉しくないわ……」
あたしはうんざりとした口調で返事をした。
「ここって、友達が美味しいって言ってたので、次の予定までの暇つぶしに寄ったんです」
「あー、獅子座流星群って今日だったわね。星なんて見て楽しいのかしら?」
「未来と見るから楽しいんだよー。フィリアちゃん」
「もう、響ったら……」
あたしのそれとない一言に返事をした響だったが、未来は頬を桃色に染めて満更でもない表情になっていた。
まぁ、何度か彼女らの部屋に行けば誰だって未来のただならぬ響への愛情に気づく。それが、友情を超えたものだということを……。
もちろん、響本人は気付いてないが……。
「で、どの味にするの。注文するから」
「「えっ?」」
響と未来が顔を見合わせる。
「後輩に目の前でサイフ開けさせるはずないでしょ。早くなさい」
私は財布を開いて、彼女たちにどのクレープが欲しいのか、早く決めるように急かす。
「おー、フィリアちゃんってカッコイイー」
「ありがとうでしょ、響。ありがとうございます、先輩。それでは、お言葉に甘えさせてもらいますね」
こうして、あたしは二人にクレープを奢った。
まったく、この子らはクレープより甘ったるいんだから。
「ふふーん、得しちゃったね」
「ふふっ、美味しい」
楽しそうにクレープを食べている二人を横目で見ていたら、あたしのスマホに着信が入る。
あたしはこっそりと二人から離れて電話に出た。
「あたしよ。用件は……。はぁ、わかったわ。で、場所は? 規模がそのくらいならあたしで十分よ。ええ、響が出る必要はないわ」
電話を切って、二人の元に戻る。まぁ、今日くらい休んだって問題ないわよ。
「ちょっと、用事があるから、先に行くわね。夜道は気をつけるのよ」
あたしは二人にそう声をかける。
「はい、ごちそうさまでした。先輩」
「あっ、フィリアちゃん……」
頭を下げる未来と何かを察した響。
「楽しみにしてたんでしょ? 流れ星、見れるといいわね」
「うん! クレープありがとう! フィリアちゃん!」
響はあたしに抱きついてきた。ちょっと、やめなさい。未来から殺気が出てるから。
さて、人類の敵を殲滅しに行きましょうか。翼も仕事中だから、あたしは一人で出撃……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ミラージュクイーンを片手にあたしは《ノイズ》を駆逐する。本当に最近は遠慮がないわね。
『もうひとつの地点でも《ノイズ》が発生した。そちらの様子はどうだ?』
「あと、10分てとこかしら。分裂するやつがいるから、少し時間はとられるわ」
『わかった、響くんに出撃要請をだそう』
「ちょっと待ちなさい――」
『ん? どうした?』
「いえ、何でもないわ……」
くっ、これじゃ響は小さな約束すら守れないじゃない。確かに人命と比較するなら小さすぎる約束だけど……。
「《ノイズ》……、あたしってこんな人形だけどね……。《怒り》の感情は持っているのよ――」
――
ミラージュクイーンの出力を最大に引き上げて突きと共にエネルギーの塊を放出して《ノイズ》たちにぶつけて、錬金術により凍らせ、破裂させる。
――雷霆陥――
ミラージュクイーンを上段に構えて振り下ろすと、雷で出来た刃が宙から降り注ぎ広範囲に渡って《ノイズ》を殲滅させる。
「まったく、どこの誰が! 人の小さな約束まで踏みにじっているのよっ! あなたたちに何の権利があるっていうのよ!」
あたしは技を連発して、《ノイズ》を蹴散らしていった。
ほとんどの《ノイズ》を消し去ったとき、巨大な芋虫形の《ノイズ》が5体ほど現れる。今日はやけに多いわね……。響は大丈夫かしら――。
――神焔一閃――
全力で放った灼熱の剣技で巨大な《ノイズ》をすべて両断した。
はぁ、持ってきたチョコレート、すべて食べきっちゃったじゃない。
思ったより時間がかかったわね。
響は翼と合流して、上手くやってるかしら?
『フィリアくん、急げるか? 翼と響くんがピンチだ――』
あたしは弦十郎から二人の現状を知り、最高速度まで加速して現場をめざした。
まさか――ネフィシュタンの鎧が今ごろ……。
翼! 絶唱だけは――早まらないで!
遅かった――あたしがたどり着いたとき、辺りは絶唱の影響で土は吹き飛ばされ、《ノイズ》は一体も残っておらず、例のネフィシュタンの鎧の人物は撤退したあとだった。
そして、翼は目や口や胸からおびただしい量の血を流し、直立していた。
「翼ーっ! あなた……、そんな、命を捨てるようなマネ……」
「フィリア、これは私の覚悟……、人類を救うための防人としての……。見損なわないで、あなたと鍛練を積んだ私は、これくらいで、折れる――剣ではない……」
そう言い残すと、翼は、あたしの腕のなかに倒れた……。
なんで、あなたはここまで……。奏――ごめんなさい。あなたとの約束――守れなかったわ……。
意外と後輩にはきちんと奢る甲斐性のあるフィリアです。働いてるので金には余裕が結構あります。
フィリアはネフィシュタンのクリスと接触出来ませんでしたが、最初に彼女と会うのはいつになるのか……。