【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
響が弦十郎に弟子入りします。
「かろうじて一命は取り留めました。ですが、容態が安定するまでは絶対安静。予断を許されない状況です」
「よろしくお願いします」
「頼んだわ」
翼を抱えてリディアンに猛スピードで戻ったあたしは弦十郎と合流し、翼は集中治療室で手術を行った。
なんとか、一命は取り留めたが危険な状況は続いていた。くっ、あたしがもっと速ければ……。
「俺達は鎧の行方を追跡する。どんな手がかりも見落とすな!」
弦十郎はネフィシュタンの鎧の捜索へ向かった。
そうね、落ち込んでる暇はないわ。あたしたちには、やらなきゃいけないことがあるんだから――。
響はうつむいて椅子に座っていた。翼が絶唱を使ったのは自分のせいだと思い込んでいるようだ。
「あなたが気に病む必要はないわ。あれは翼が決断したこと、あの子の使命感がそうさせたのよ」
あたしはコーヒーを自販機で買って、響に渡しながら声をかけた。
「フィリアちゃん……」
「知ってるでしょ? 翼は以前、二人でユニットを組んでアーティスト活動をしてたこと」
「ツヴァイウィング……」
響はつぶやくように声を出した。
「その時のパートナーが天羽奏よ。今はあなたの胸に残るガングニールのシンフォギア装者。そうね、あたしにとっても数少ない友人と言っていい人物だったわ……。2年前のあの日、あたしも翼も奏とともに《ノイズ》と戦った。しかし、形勢は不利であたしたちは敗北寸前まで追い込まれたの。だから、 奏は絶唱を解き放った……」
あたしはあの日のことを響に話す。あの日のことは一日たりとも忘れたことがない。
「絶唱――。翼さんも言っていた」
「装者への負荷を厭わず、シンフォギアの力を限界以上に撃ち放つ絶唱は、《ノイズ》の大群を一気に消滅させたわ、でも、その反動で奏は力尽きてしまったのよ。あたしたちの目の前でね……」
あたしは響に絶唱について説明をする。あの光景を思い出すと今も胸が締め付けられる。
「それは、私を救うためですか?」
「そうね、奏が助けたかった命の中にはあなたも含まれていたわ。それに、あたしや翼もね。奏が亡くなって、ツヴァイウイングは当然解散。あたしもだけど、翼は奏の抜けた穴を埋めるため、彼女が救うはずだった命を救うために必死で戦ってきたの――」
思い出すのは翼との戦いの日々、強くなれば強くなるほど、翼は自分を責めて、追い詰めるようになっていたわ。
力がつく度に奏が救えなかった無力感が増幅されたからでしょうね。
「あの子は自分をひたすら追い詰めて、一振りの剣になろうとしてたのよ。人間の彼女が人形のあたしみたいに《感情》を押し殺すなんて、並大抵じゃない。あの歳で彼女は楽しく遊んだり、恋愛で悩んだりなんてそんなこと一切して来なかったわ。そして、あの子は自分の使命を果たすために、命を落とす覚悟で絶唱までしたの……。バカな子なのよ……。まったく……」
「そんなの、ひどすぎる……」
翼の話をすると響は青ざめた顔で感想を述べた。そうね、酷いわよ。本当に……。
「そして私は、翼さんのこと何にも知らずに、一緒に戦いたいだなんて……。奏さんの代わりなるだなんて……」
「そうね、あなたの発言は確実に翼の心を抉った。あたしもムカついたし……。でもね、そんなことより、あなたにして欲しいことがあるわ」
あたしは響に頼みごとをしようとした。
「して欲しいこと?」
「翼にきちんと立花響として、ありのままのあなたとしてぶつかって欲しいのよ。あたしじゃ、どうしても奏のことで負い目があって踏み込めなかった。遠慮のないあなたなら、それが出来るでしょ」
「フィリアちゃん……、全然褒めてないよね?」
「あら、気付いたかしら……。でも、頼んだわよ」
「うん……」
あたしの頼みごとを素直に受け入れてくれた響。奏の代わりにはならないけど、あなたのその前向きさは、あたしたちにはない。
翼がそれに気付けば、きっと――。
その後、あたしたちはミーティングで弦十郎たちと意見交換をすることになった。
「気になるのはネフシュタンの鎧を纏った少女の狙いが響くんだということだ」
弦十郎が疑問を口に出す。そう、それはある事実を指し示す。
「それが何を意味しているのかは全く不明。」
了子はそんなことを言う。でも――。
「いいや、そんなことはない」
「え?」
弦十郎の言葉に了子は反応する。
「個人を特定しているならば、我々二課の存在も知っているだろうな」
「内通者がいるってことでしょ。それなら全ての辻褄が合うもの……」
あたしは弦十郎の言葉から、結論を話す。
「うむ、考えたくないがな……」
そして、弦十郎はそれを肯定した。内通者の正体を想像したとき、あたしはある人物を想像していた。――あり得ないと信じたいけど……。
「私のせいです。私が悪いんです。2年前も、今度もことも。私がいつまでも未熟だったから、翼さんが。シンフォギアなんて強い力を持っていても、私自身が至らなかったから」
「だから、あなたが気に病むことはないの。あれは翼が――」
あたしが口を挟もうとするが、響は止めなかった。
「翼さん、泣いていました。翼さんは強いから戦い続けてきたんじゃありません。ずっと、泣きながらも、それを押し隠して戦ってきました。悔しい涙も、覚悟の涙も誰よりも多く流しながら、強い剣であり続けるために……。ずっとずっと、戦ってきたんです――。――私だって守りたいものがあるんです! だから!」
響の目に何か闘志のようなものが宿るのを感じた……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「たのもぉぉぉ!」
「なんだ、いきなり?」
「あら、本当に来たのね。」
先日、響はあたしにもっと強くなりたいと懇願してきた。だから、あたしは今日の朝にここに来るように伝えた。
「私に戦い方を教えてください!」
「この俺が、君に?」
「はい! フィリアちゃんの武術の技を教えたのは弦十郎さんだって、聞きました。だから、私にも教えてほしいんです!」
あたしが素手で翼を吹き飛ばすのを見て、アームドギアが使えない彼女は自分に武術の稽古をつけてくれと、あたしに言ってきた。
だったら、あたしより強い彼に聞いたほうが早いとあたしは弦十郎に戦い方を習うように勧めたのだ。
「ふむ……。フィリアくん、君はちゃんと伝えたのか?」
「えっ、何をかしら?」
「俺のやり方は厳しいってことだ。響くん、付いてこれるか?」
「はい!」
弦十郎は響に稽古をつけることを承諾した。あー、これであたしは面倒から解放されるわ。
「もちろん、フィリアくんも手伝うだろ? それに、君にも新たな技を教えよう」
「はぁ? あたしが技を使えたところで《ノイズ》には……」
そんなあたしの心を見透かしたように弦十郎は待ったをかける。
「もしかしたら、ネフィシュタンの鎧とまた戦うかもしれん。その可能性を考慮するなら、君も手札を増やす意味が出てくるだろう」
「フィリアちゃんも、一緒なら心強いよ」
「仕方ないわね……」
こうして、あたしは響の修行に付き合うことになった。 あー、この人の変な特訓って気疲れするのよね。
「ときに、響くん。君はアクション映画とかは嗜む方かな?」
「はい?」
「フィリアくん!」
「はいはい、適当に見繕ってくるわよ」
あたしは自分の部屋に置いている、弦十郎のコレクションのDVDを取りに行った。
「この足の角度に気をつけろ!」
「こっこうですか?」
「フィリアくん、手本を見せるんだ」
「なんで、あたしが……」
「これで、どうかな?」
「はぁ、顔のマネまでしなくていいのよ……」
DVDを鑑賞しながら動きをマネするあたしたち。こんな姿は絶対に翼に見られたくないわ。というより、あたしは一体なにをしてるのかしら……。
「よしっ、ラスト10キロだ!」
「ふひぃー」
「腹筋、あと百回!」
「腕立て伏せ、残り百!」
「あのー、フィリアちゃん。全然苦しくないの?」
「当たり前でしょう。人形なんだから、疲れるはずないわよ。その代わり筋力も付かないけど……」
「じゃあ、なんで一緒にこれもやらされてるの?」
「司令に聞きなさい……。あたしだって全然分からないわよ」
体操服を着せられて、響と一緒に体力作りのトレーニングをさせられてるあたし。弦十郎の考えが理解できないわ……。
「はっ、やぁっ、とぉっ!」
「甘いわね。動きをマネするだけじゃ……」
「うわぁっと!」
「すぐに足元を掬われるわ。頭で考えずに感じるのよ。相手の動き、自分の力の流れを……」
「言ってること全然分からないよ、フィリアちゃん」
そして、あたしと響は組手をするようになった。純粋というか、素直なこの子に弦十郎の特訓は合っているみたいで、数日特訓しただけなのに、ドンドン強くなっていった。
ギアをまとわずにサンドバッグ吹き飛ばしたときには戦慄したわ……。
「よし、今度は俺とフィリアくんが組手をするから、響くんは見ているんだ」
「ちょっと、あたしはいいでしょ」
「まぁ、そういうな。本気の俺と組手できるのは君しかいないんだから」
「あなたが本気なんて出したら、あたしはバラバラになってるわよ……。はぁ、少しだけよ」
あたしはそう言って構えを取る。弦十郎とあたしは好きな映画の趣向は若干異なる。
あたしは合気などの相手の技を受け流したり、素早い動きで翻弄するタイプの武術の方が美しいと思っている。
しかし、弦十郎は見た目どおりの脳筋格闘が好みみたいで、火力重視の拳法を好む。
弦十郎の拳法は《ノイズ》以外なら無敵って思えるくらい強い。以前、あたしと翼が二人がかりで戦っても瞬殺されたくらい。
まぁ、あれがキッカケであたしは弦十郎と映画談義のついでに身体の動かし方を覚えようと思ったんだけど。
やってみると、自分の身体は精密に動かすことが出来るので、ものすごく武術の修得に適しているということがわかった。
だから、最近は映画を見て菓子を食うだけで鍛錬してるような気分になっている。
「――いくぞ、フィリアくん」
そう言い放った直後にはすでに弦十郎の右拳が目前に迫っていた。
ホントに加減しないのね……。
あたしは彼の拳を左手で受け流し、更に掴んで投げ飛ばそうとした。
「おっ、腕を上げたな」
しかし、すでにあたしの後頭部に彼の回し蹴りが迫っていたので、上体をそらして躱し、バク転して距離を取り、その勢いで跳ね上がり、空中に避難する。
そこからは地獄だった。人間離れしたジャンプ力であたしの更に上まで跳ね上がった弦十郎は、上から拳の雨を降らせてきた。
あたしはかろうじて受け流していたが、着地の瞬間にバランスを崩す――そして……。
「ふむ、ここまでか……」
あたしの顔の一ミリ手前で寸止めする弦十郎。本当にあたしを壊す気かしら?
「ここまでか、じゃないわよ! 何これ、大惨事じゃないの。地面が穴だらけよ!」
「すまん、つい。ここまでの格闘には誰も付き合ってくれないんでな」
「当たり前でしょ! 国防の要が殺人犯になっちゃうじゃない!」
弦十郎との組手の跡は……、ミサイルが何発も落ちた跡みたいになっていた……。まさか拳圧だけで、クレーターが出来るなんて……。どうかしてるわよ、まったく。
「師匠、私もこれができるように頑張ります!」
そして、この大惨事を見ても真剣にそんなことを言うバカな子が一人……。
「あなた、人間やめる気なの?」
あたしはため息を交えてそう言った。
あたしは響との特訓で、翼と鍛錬を積んだ日々を思い出していた。
翼、この子は前を向いて歩いてるわよ。だから、あなたも――。
フィリアは八極拳のような武術も使いますが、合気や柔術も好んで使います。
それでも、弦十郎にはまったく及びませんが、短時間の組手には付き合えるぐらいの強さです。
響とは組手をしているので、彼女の姉弟子みたいな関係になってます。
次回はデュランダル移送くらいまでを予定しております。