【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それでは、よろしくお願いします。
「はぁー。朝からハード過ぎますよー」
「あら、もう弱音かしら」
「フィリアちゃんは疲れないから、そんなことが言えるだよー」
「頼んだぞ、明日のチャンピオン」
朝の特訓を終えて、魂の抜けかけた顔をしている響。しかし、組手をしているとわかる。彼女は恐ろしく強くなっていることが。きっとギアを纏うとさらに――。
「はい、ご苦労様。」
「あはっ、すいません! ――んっ、ぷはっー」
響は友里に渡されたドリンクを一気に飲み干す。かなり疲れてたのね……。
「あのー、自分でやると決めたのに申し訳ないのですが。何もうら若き女子高生とか可愛いお人形様に頼まなくてもノイズを戦える武器って他に無いんですか? 外国とか」
響は今さらなことを言ってきた。それが可能ならあたしだって翼だって戦ってないわよ。
あと、誰が可愛いお人形様よっ!
「公式にはないな。日本だってシンフォギアやミラージュクイーンは最重要機密事項として完全非公開だ」
そう、あたしや翼の力は国家機密として守られている。まぁ、諸外国も死にものぐるいで調査はしているけど。
「ええっー。私、あまり気にしないで結構派手にやらかしてるかも」
あたしだって、戦いなんだからみんな細かいこと気にしてないわよ。
「情報封鎖も二課の仕事だから」
「だけど、時々無理を通すから――。今や我々のことをよく思ってない閣僚や省庁だらけだ。特異対策機動部二課を縮め、《特機部二》って揶揄されてる」
「情報の秘匿は政府上層部の指示だってのにね。やりきれない……」
友里と藤尭は国防のための無茶の責任まで押し付けられて不満のようだ。まったく、上は勝手よね。
「どっちにしろ、政府は特にシンフォギアを有利な外交カードにしようと目論んでいるわ。EUや米国はいつも開展の機会を伺っているの。シンフォギアの開発は既知の系統とは全く異なるところから突然発生した、理論と技術によって成り立っているわ。日本以外の他の国では到底真似出来ないから、欲しくて仕方がないのよ」
あたしは諸外国の動きについて響に話した。
「結局やっぱり色々とややこしいなー。フィリアちゃんは大丈夫なの?」
「あたしのミラージュクイーンは情報不足過ぎてそれほど知られてないからね。大したカードにはならないわ」
大体、あたしは生まれてからまだ2年しか経っていない。しかも、了子ですら完全に構造が理解できていない部分もある技術も使われている。
いまのところ、外交のカードにするにはリスクが高すぎていた。
「ふーん。そうなんだぁ。――あれ? 師匠、そういえば了子さんは?」
「永田町さ――」
響は了子がいないことに疑問をもって弦十郎に所在を尋ねた。
「永田町?」
「政府のお偉いさんに呼び出されてね、本部の安全性、及び防衛システムについて関係閣僚に対して説明義務を果たしに行っている。 仕方のないことさ」
響の疑問に弦十郎は了子が防衛システムの説明に向かったと教える。あの人はこういうことは全部把握してるから――。
「ホント、何もかもがややこしいんですねー」
「ルールをややこしくするのはいつも責任を取らずに立ち回りたい連中なんだが……。その点、広木防衛大臣は……。――ん? 了子くんの戻りが遅れているようだな……」
「そうね、確かに遅すぎる……」
了子の戻りが遅いことを不審に思ったあたしたちのもとに、広木防衛大臣が何者かに殺害されたという報告が届いたのは、このあとすぐのことだった。
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「大変長らくおまたせしましたー!」
了子はヘラヘラした表情で呑気そうな声を出しながら帰還した。
「了子くん!」
そんな彼女の元に弦十郎が駆け寄る。
「何よ? そんなにさみしくさせちゃった?」
「そんなわけないでしょ。広木防衛大臣が殺害されたのよ」
「えぇっ? 本当?」
あたしにオーバーなリアクションをとる彼女。腹立つ顔するわね。
「複数の革命グループから犯行声明が出されている詳しいことは把握出来ていない。目下全力で捜査中だ」
あたしの言葉に弦十郎がそう続ける。
「了子さん、連絡も取れないから皆心配してたんです!」
「え? あっ、ほらほら、これ。壊れてるみたいねー」
響がそう言うと、彼女はゴソゴソとスマホを見ながら壊れていると言い放った。このタイミングでなんで携帯が壊れるのよ……。
「あははっ……」
「でも心配してくれてありがとう」
苦笑いする響に微笑みかける了子。なんで、ちょっと嬉しそうなの?
「そして、政府から受領した機密司令は無事よ。任務遂行こそ、広木防衛大臣の弔いだわ」
アタッシュケースを置いて彼女は真剣な顔つきになった。
任務遂行ね……。果たして本当にそれが弔いになるのかしら?
それから、程なくして、特異災害対策機動部二課は政府より任務を与えられた。
完全聖遺物である、デュランダルという名の剣。これを永田町地下の特別電算室。通称記憶の遺跡まで移送する任務が我々二課に課せられたのだ。
政府が、《ノイズ》の発生が頻繁しているのは、我々の本部の地下にあるデュランダルを狙ったものだと結論づけたからである。
そして、響とあたしは襲撃が来ることが予測されたので護衛として同行する仕事を預かった。
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「あたたかいものをどうぞ」
いつもの張り付いた笑顔で緒川が缶コーヒーを差し出してきた。
「はぁ、何度も言ってるでしょ、あたしは飲み物はいらないって。あなただけよ、あたしに飲み物を渡すのは。まぁいいわ、いくらだったの?」
あたしは緒川から缶コーヒーを渡されたので、財布から小銭を出そうとした。
「たまには僕から奢らせてくださいよ。――翼さんですが、一番危険な状態から脱しました」
笑顔で翼の容態が良くなったという知らせを緒川はあたしに伝えた。
「そう、良かったわ……。まぁ、あたしは翼に嫌われちゃったから、彼女に言葉をかけることは出来ないけど――。翼のこと、よろしく頼むわね」
あたしは缶コーヒーに口をつけてから、緒川に翼のことを頼んだ。なんだかんだ言って、彼女が一番気を許しているのは彼だからだ。
「そう言わずに、もう少ししたらお見舞いに行ってあげてください。翼さん、悩んでいたんですよ。あの日、フィリアさんに嫌われてしまったと、本気で相談されましたから。響さんに、フィリアさんを取られたと思ってたみたいです」
「そんなバカな……」
緒川の発言にあたしは驚愕した。あたしがあなたを嫌うはずないのに……。
「ちょっと離れてみて気が付いたみたいです。フィリアさんが自分のことをどれだけ大事に想っていてくれたことにね」
「はぁ、じゃあ、あたしたちは二人とも自分が嫌われたって思い込んでいたってこと? それって、あたしたちがバカみたいじゃない」
「まぁ、否定はしませんが。――ぐふっ、何をするんです」
ムカつく笑顔で毒を吐く緒川に弦十郎譲りの正拳を放つ。
「そういうことはもっと早く言いなさいよ!」
「ですから、容態が安定してすぐに伝えたじゃないですか」
「あーもう、うるさいわね! 屁理屈言ってんじゃないわよ! あなたが密かに翼をバラエティ番組に出演させてそのうち、マルチタレントにしようと目論んでいることバラしてやる!」
「なんで、それをフィリアさんが知っているんです?」
「珍しく焦った顔をしたわね。それくらいここで培った調査能力を使えば造作もないのよ」
「友里さんと何かしているとは思ってましたが、まさかそんなことを調べているなんて……。職権乱用ですよ」
「あなたに言われたくないわね」
しばらく緒川と言い争ったあと、彼は響にも翼の容態を告げると言って、どこかに行ってしまった。
まったく、あの忍者は……。
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いよいよデュランダルの移送が始まった。
響は了子と同じ車両に乗ってデュランダルを護衛する。
車より早く動けるあたしは外から身を隠しつつ、護衛にあたっている。
『防衛大臣殺害犯を検挙する名目で検問を配備! 記憶の遺跡まで一気に駆け抜ける!』
『名付けて、天下の往来独り占め作戦』
弦十郎が作戦内容を話して、了子はダサい作戦名をつける。
了子の車を中心に護衛の車両が4両。了子の車の後部座席に、デュランダルを置いて出発する。
上空からヘリコプターで弦十郎は指示を出す形をとっている。
予想通りというか、予想以上の早さで《ノイズ》の襲撃は起こった。
橋が壊されたり、マンホールから水が吹き出したりして、護衛の車は次々と離脱していった。
しかし、やけにピンポイントで狙うわね。
『さっきから護衛車を的確に狙い撃ちされているのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう制御されていると思われる! 狙いがデュランダルなら、敢えて危険な地域に滑り込み攻め手を封じるって算段だ!』
弦十郎はデュランダルがこちらにある以上、逆に危険なところに行けば攻撃の手が緩むと読んで指示を出した。
また、無茶なことを言うわね。この人は……。
『勝算は?』
『思いつきを数字で語れるものかよ! フィリアくん、《ノイズ》を操っている者は見つかりそうか?』
「ええ、発生場所からいくつか割り出して潰してるわ。そこまで時間はかからないと思う」
あたしは《ノイズ》を操っている者の捜索を任されていた。オペレーターと連携を取りながら場所を特定して音速を超えるスピードで潰していく。
そんな中、大きな爆発が起きて響たちは煙の中に姿を消して安否が一時確認できなくなる。
今のあなたならこれくらい大丈夫よね。信じてるわよ。
あたしは《ノイズ》の発生源をさらに捜索することにした――。
そのあとすぐに吉報が届いた。
響は無事でシンフォギアを纏い戦いを始めたようだ。
しかも、今までとは格段に違う動きで《ノイズ》を圧倒しているみたい。
まぁ、当然だけど……。
さて、あたしも仕事を終わらせにかかるわよ。響の頑張りを無駄にしないわ。
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「こいつ――戦えるようになっているのか?」
「あら、高みの見物とはいい身分ね。ネフィシュタンの鎧、そして、その杖みたいなものが《ノイズ》を操るのね……」
あたしは響を観察しているネフィシュタンの鎧を身に着けた少女の背後に立った。
「おっお前、何者だ!? どうやってここを!」
少女は問答無用で杖ようなものから《ノイズ》を繰り出してきた。なるほど、完全聖遺物の装備に、《ノイズ》を操る力。
この子が翼を絶唱まで追い詰めたのね……。
「コード、ミラージュクイーン……、マナバースト……」
――雷霆陥――
広範囲に雷の刃を落として、出現したノイズを一掃する。
「やるじゃねぇーか。だけど、スキだらけだー」
少女はあたしに猛スピードで蹴りを加えようとする。なるほど、完全聖遺物の力でパワーが上がっているのね。
しかし、彼女の蹴りは空を切った。
「なっ、消えやがった。どういうことだ!?」
「あなたの蹴りつけたのは、あたしの残像……。悪いわね、あたしって結構強いのよ」
あたしはネフィシュタンの鎧の少女の首元にミラージュクイーンを突きつけた。
フィリアVSネフィシュタンのクリスです。
弦十郎に教わった技を使って素早い動きで残像を残す……、書いてて割と緒川の忍術っぽい感じがしなくもないですが、武術ってことで。
次回はデュランダル覚醒とかいろいろって感じです。