【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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原作6話の中盤くらいまでです。
それではよろしくお願いします。


お見舞いとフラワー

「おいっ、テメー、なんであたしを殺さねぇ? まさか、あのバカみたいに相手は同じ人間とか抜かすんじゃねぇだろうな?」

 

「バカね、あたしは人間じゃないわ。それに、あなたには黒幕の正体を聞かなきゃならないでしょう……」

 

「なるほど、妙な見た目をしてると思ったが、テメーが噂のお人形ちゃんか! だが、やっぱり甘い! これで勝った気になるなんてなー!」

 

 こちらが殺さないと知ると、彼女は思い切りよくムチをこちらに伸ばしてきた。

 なるほど、よく調教されてるみたいね。

 

「どうだっ! もう二度と油断はしねぇ! マグレはもうないぞ!」

 

 そう言いながら、今度はさっきよりも広範囲に《ノイズ》をばら撒く。確かに、情報の入手よりも彼女を殺してでも止めるのが正解だったかもね。

 

 あたしもお人好したちに触発されて甘くなったのかしら……。

 

 ――神焔一閃――

 

 炎を纏ったミラージュクイーンを振るって、大型の《ノイズ》を両断。

 

 そして小型の《ノイズ》は音速を超えたスピードで一体ずつ切り刻む。

 

「人形のくせに人間様に楯突いてんじゃねぇー!」

 

 あたしが《ノイズ》を切り裂く瞬間を狙ってネフィシュタンの鎧からムチを伸ばして攻撃をしてくる。

 

「あら、人間だったのね。ご主人様にしっぽ振ってるワンちゃんかと思ったわよ」

 

 ミラージュクイーンでムチを弾き返しながら、あたしはそう返した。

 

「うっうるせぇ!」

 

 少女はさらに激しく、苛烈にムチをしならせる。

 

「いい加減に、面倒になってきたわね……」

「なっ!?」

 

 あたしはムチを掴んで、引っ張り――思いっきり少女を投げ飛ばした。

 

「――っ! ムチを素手で掴みやがった」

 

「バカね、あなた……。痛みを感じないあたしにムチなんて通用しないわよ」

 

 

 

「――ちっ、テメーの相手をしてる暇はねぇんだ! あたしの目的は、あいつだっ!」

 

 投げ飛ばされたショックで冷静さを取り戻したのか、彼女はひたすら《ノイズ》をこちらに照射してきた。

 

 そして、あたしが《ノイズ》に構っている間に少女は響を狙って、ムチを伸ばして攻撃をする。

 

 響は攻撃に反応して、ジャンプすることで避けたが、少女の蹴りを顔に受けてしまう。

 

 響ではまだ、あの少女の相手をするのはやっぱり厳しいみたいね……。それなら……。

 

 あたしは《ノイズ》を倒しながら響の援護に向かおうとしていた。

 

 だが、そのとき、状況が一変する。

 先ほどのショックの影響なのかアタッシュケースがいつの間にか空いていて、中からデュランダルが出てしまったようなのだ。

 

「あれは、なんなの? まさか、デュランダルが起動したとでも?」

 

 あたしはデュランダルの様子を見て、驚いた。

 なんと、デュランダルは光をまとって、宙に浮いていたのだ。

 

 いけない、あれを奪われては……。

 

 あたしはデュランダルに近付いて奪取しようとした。

 

 しかし、《ノイズ》に行く手を阻まれ、響とネフィシュタンの少女が競り合うのを見守ることしかできなかった。

 

「でぇぇぇい! 渡すものかー!」

 

 響が競り合いに勝ち、デュランダルを掴む。

 

「よくやったわ……」

 

 あたしはようやく周りの《ノイズ》を殲滅して、響に駆け寄ろうとした。しかしっ――。

 

「――!? 響! どうしたのっ!」

 

 あたしは響の掴んだデュランダルがまばゆい光を放出しているのを見て、つい、立ち止まってしまう。

 

「うぁぁぁぁぁっ!」

 

 響は雄叫びを上げて、デュランダルを両手で天に掲げる。

 すると、どうだろうか。デュランダルはみるみる刀身が再生していき、完全な姿を現した。

 

 さらに響の体は真っ黒に染まり、目からは赤い光が迸っていた。

 

 なんなの、ものすごい高エネルギーを彼女から感じるわ。

 

 その上、デュランダルからはとんでもない大きさの光の刃を放出している……。

 

 何か良くない予感がする。あたしの直感はそう言っていた。 

 

「そんな力を見せびらかすなー!」

 

 ネフィシュタンの少女は何に腹を立てたのか、《ノイズ》を次々と響に照射する。

 ちっ、次から次へと面倒なことを……。

 

「えっ、響? あなた、何をしてるの?」

 

 あたしは響の行動が信じられなかった。

 

 響はネフィシュタンの少女のほうを向いて、デュランダルを振り下ろしたのだ……。

 巨大な光の刃が彼女を襲う……。

 

「ちっ、仕方ないわねっ……」

 

 あたしは舌打ちして、自身のスピードを限界まで引き上げた――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 響の振り下ろしたデュランダルは見事に薬品工場を破壊した。

 恐ろしい威力――絶唱並、いやそれ以上だ――。

 

 あたしはあまりのパワーに戦慄していた。

 

「おいっ! テメーっ! なぜ、あたしを助けた! それで、あたしが感謝するとでも思ったか?」

 

 あたしに突き飛ばされて、後ろで倒れていた、ネフィシュタンの少女が大声を出す。

 

「はぁ? あなたに感謝なんてされたいわけないでしょ。バッカじゃないの」

 

「ぐっ……」

 

 あたしの返事に少女は口ごもる。

 

「あの子の――響の手をあなたなんかの血で汚したく無かったからよ。良かったわね、命拾いして……」

 

「うっうるせぇ! ガキの癖に偉そうに……。そっそれに、お前、左肩から下が……」

 

 少女はあたしの左半身を見つめていた。ああ、これを見て声を震わせているのね。

 もしかして、この子は意外と――。

 

「ああ、ちょっと避けるのが遅れたから、千切れちゃったみたいね。何? もしかして心配してるの? 平気よ、あたしは人形だから痛みを感じないのよ――」

 

「痛みを感じない? ――くっ、本当に礼は言わねぇぞっ!」

 

 ネフィシュタンの少女は撤退した。あたしは再生に回すエネルギーしか残っていなかったので、深追いすることを止めておいた。

 

 それに、響やデュランダルを守らなきゃならないしね……。

 

 

 

 

「フィリアちゃん!」

 

 二課による原場の事後処理が本格的に行われ始めたとき、了子から何か話を聞いたらしい響がこちらにやってきた。

 

「あら、響、ようやくお目覚め? 《ノイズ》を倒す動きは良くなってたわよ」

 

 あたしは響の健闘を讃えた。本当に短期間で強くなったわ……。

 

「で、でも私はフィリアちゃんを……」

 

 響はあたしの左腕を見ながら悲しそうな顔をする。

 

「ああ、了子のやつ、余計なことも喋ったのね……。大丈夫よ、ほら、見てのとおりきれいに再生してるでしょ」

 

 あたしはきれいさっぱり元通りになった左腕を見せた。

 

「安心なさい、あなたの手を血に染めさせたりはしない。あなたのその手は希望を掴み取るものだから……」

 

「でも、もうこんな危ないことしないで! 元通りになったとしても、私は痛いよ……」

 

 響は自分の胸を押さえながら悲しそうな顔をした。

 

「そっ、悪かったわね。次は下手打たないように気を付けるわ」

 

 あたしはぶっきらぼうにそう答えて、事後処理の手伝いに向かった。

 まったく……、どこまでも、お人好しなんだから……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「相変わらず、酷い有様……。少しは整頓くらい出来るようになりなさい」

 

「フィリア! 入るならひと声かけてからにして」

 

 あたしは集中治療室から出た翼の見舞いにきた。

 翼は異常に整理整頓や掃除が苦手で、入院中の部屋は嵐が通りすぎたように散らかっていた。

 

「調子はどう? 無理に動いて看護師さんを困らせたりはしてないでしょうね?」

 

「どうして知っているの? フィリアはいつも見てきたようにそんなことを言う」

 

 あなたの性格を考えたら大体察しがつくからに決まっているでしょう。どうやら、少しは気分は落ち着いたようね。

 

「でも、フィリアが来てくれるなんて、思ってなかった……。もう見捨てられたとおもってたわ……」

 

 翼はベッドから身を起こして、寂しそうに笑っていた。

 

「バカね、見捨てるわけないじゃない……。別に奏と約束したからじゃないわよ。あなたもあたしの数少ない友人だから……。だから、あなたの未来はあたしにとって大事なものなの」

 

 あたしは泣きそうな顔の彼女を見て、恥ずかしいけど自分の思っていることを吐き出した。

 

「えっ? フィリアは私のことを友人だって思ってくれてるの?」

 

「――思っているわよ。悪かったわね……」

 

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、キョトンとあたしを見つめる翼。確かにそう言ったことはないかもしれないけど、普通言わないものでしょう。

 

「ううん。嬉しいわ……。私は随分とあなたに酷いことを言ったのに。あなたの優しさに私はずっと甘えてた。奏を失っていつの間にか一人で戦ってるつもりになっていた。意地になっていたのよ。夢で奏に笑われたわ――真面目がすぎるぞって……」

 

 翼は奏の分も戦わなくてはならないという義務感でずっと自分を研磨し続けていた。

 あたしは強く止めるなんてできる立場じゃないから、見守ることしか出来なかった。そんな、あたしが優しいわけないじゃない。

 

「いいじゃない、真面目でも――。奏は不真面目すぎるし、二課の連中だってそうよ」

 

「でも、このままだとポッキリ折れるぞって奏が……。だから、私は少しは不真面目にならないと……」

 

「折れないわ。折らせやしない、あたしがあなたを守るもの。あんな不真面目のバカの言うこと真に受けちゃダメよ。あなたはあなたのままで無理に変わらなくてもいいの。だからクソ真面目って言われるのよ。変化なんていつの間にか起こってるんだから」

 

 あたしは翼の愚直さは長所だと思っている。確かに危ういところはあるけど、そんなの関係ない。

 それを補うのがあたしや弦十郎、それに緒川だったりするんだから。

 

「フィリア……、ありがとう」

 

「何度も言っているけど、お礼が言われたいからやってるわけじゃないのよ」

 

「わかってるわ。でも私は友人にお礼が言いたかったの」

 

 翼はそう言って、ニコリと微笑んだ。随分とスッキリした顔しちゃって、心配したあたしがバカみたいじゃない。

 

 そして、しばらく雑談した後に、あたしは緒川からの伝言を思い出して帰ることにした。

 あの子とは二人きりで話したほうが良さそうね。

 

「じゃあ、そろそろ失礼するわ。しばらくはあたしと響で何とかなるから、大人しく医者の言うこと聞くのよ」

 

「わかってるわ。あなたの力は信じてる」

 

 翼はまっすぐにあたしに視線を送った。

 

「そっ、あーこの部屋の様子は……。まぁいいか。この方が親しみやすくなるかもしれないし……」

 

「えっ?」

 

「何でもないわ。それじゃ、この辺で」

 

「ちょっと、フィリア。待ちなさい! 何か企んでるでしょ」

 

 翼は一生懸命立ち上がり、追いかけようとするが、あたしに追いつけるはずもなく、すぐに諦めた。

 

 あら、我ながらいいタイミングね。響、翼の心の壁に踏み込んでちょうだい……。

 まっすぐなあなたなら出来るでしょ?

 

 あたしは病室の前で驚いた顔をしている黄色い髪の少女に友人の心を託した……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ごめんなさいね。未来……。あなたとの約束があるって知らなくて……」

 

「いいんです。先輩にはお世話になっていたんで、響も言い出せなかったんだと思います」

 

 今、あたしは小日向未来とフラワーというお好み焼き屋に来ている。

 翼の見舞いを緒川が響に今日頼むことを知っていたが、まさかその前に未来と約束ごとがあったなんて……。

 

 この前もしし座流星群を見る予定がこっちの都合で壊れているし、なんとも間が悪い。

 

 その上、未来は翼の病室に響が行っているところを見たらしく、かなり落ち込んでいた。

 

 一応、従姉妹の翼を元気づけるために、私から響にお見舞いを頼んだということを未来に伝え、彼女との約束があったことを知らずに悪いことをしたと侘びたところだ。

 

「今日は随分と可愛らしいお連れさんだねー。誰かの妹かい?」

 

 このお好み焼き屋の店主はさっそくあたしの地雷を踏んだ。

 

「いえ、違うんです。彼女は私の先輩で」

 

 あたしが不機嫌になったのを感じ取って、未来は苦笑いを浮かべる。

 

「おや、失礼したねぇ。じゃあ、特別サービスに負けたげるよ」

 

「あら、悪いわね。でも、あたし結構食べるわよ」

 

「あははっ、望むところだねぇ」

 

 そう言って店主はキャベツをたっぷり使ったお好み焼きを作り始めた。

 

「ねぇ、フィリア先輩。友達に隠し事とかってしたことありますか?」

 

 待っている間、未来はあたしにそんなことを聞いてきた。

 

「そりゃ、一つや二つあるんじゃないかしら。知られたくないこともあるし……」

 

 あたしは当たり障りのないことを言った。

 

「隠された方のことって考えたことありますか? 辛い気持ちになるだろうなとか、こう、罪悪感を感じるとかって……」

 

 未来は踏み込んで話を聞いてきた。

 あたしは事情を知ってるだけに答えにくい……。

 

「さぁ、どうでしょうね。あなたはどうなの? 隠し事をする側の気持ちは考えたことある?」

 

「――っ」

 

「あなたが誰のことをどれだけ想っているかは短い付き合いだけどわかるわ。でも、これだけは信じてあげなさい。あなたの想いと同じだけ、相手もあなたのことを想っている。そんな子が隠し事をするんですもの。それが何のためなのかくらいは察することが出来るんじゃないかしら?」

 

 響は未来を誰よりも大事に想っている。だからこそ、危険から遠ざけるために、似合いもしない隠し事をしている。

 まぁ、どっちにしろ彼女に秘密を話させるわけにはいかないのだけど……。

 

「――フィリア先輩。ありがとうございます。少しだけ……、楽になりました」

 

「そっ、なら良かったわ。ほら、冷めると美味しくないでしょう。早く食べなさい」

 

「失礼な子だねぇ。冷めても美味いに決まってるでしょう」

 

「それは、失礼したわね……」

 

 このあとしばらく、未来の愚痴に付き合って彼女とともに帰宅することなった。

 

 

 

 

「それにしても驚きました。フィリア先輩が響より食べるなんて」

 

「粉モノは炭水化物が多いから、割と好きなのよ」

 

「くすっ、絶対にそれ、女の子が言ったらいけないセリフですよ。それにすみません、またご馳走になってしまって――あっ、響だ! 響ーっ!」

 

 こちらに向かって走ってくる響に向かって未来は駆け寄ろうとする。

 

「――着信? 司令から!? まさか!」

 

「来ちゃだめだー!」

 

 未来の手前でムチが炸裂して地面を抉り――彼女は吹き飛ばされた――。

 

 そして、跳ね上がった車が未来に直撃しようとしている。

 助けなきゃ――。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron……」

 

 響――あたしに気付いていない!? 今、ギアを纏ったら――。

 

 響は未来の目の前でギアを纏い、車を弾き飛ばした――。

 

 まったく、仕方ない子ね……。

 




自分のことはからっきしなのに、他人にはしたり顔でアドバイスしたりするフィリアです。
次回はクリス戦からです。





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