【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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ついにフィーネ登場です。
それではよろしくお願いします!


フィーネ

「はっ!  死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといを庇いに現れたか?」

 

「もう何も失うものかと決めたのだ」

 

 翼があたしたちのもとに駆けつけた。

 

「悪いわね、無理させちゃって。あたしだけで終わらせるつもりだったんだけど……」

 

「ふっ、戦友(とも)のピンチに駆けつけられない方が私には無理というものだ……」

 

「そ、ありがとう。翼」

 

「礼を言われるために来たわけじゃない」

 

 あたしと翼は拳を合わせる。

 

「翼さん……」

 

「気づいたか、立花。だが私も十全ではない。力を貸してほしい」

 

「は、はい!」

 

 緒川が響に見舞いに行かせたのは正解だったようね。あいつのおかげと考えると腹立つけど……。

 

「はっ、雑魚の為にまた死にかけるんじゃねぇか?」

 

 クリスは翼を挑発する。

 

「雑魚だと? 読み違っているな。フィリアがお前より弱いはずないだろう。装者の保護を優先して本気を出していないことに、まさか気付いていないとはおめでたいやつめ……」

 

「余計なこと言わないでちょうだい……」

 

 あたしは翼の言葉にツッコミを入れた。確かに大技を控えて守勢に回ったけど……。

 

「はっ、甘いやつ! その甘さが命取りだっ」

 

 クリスが翼に襲いかかる。

 

 翼は巧みな動きでクリスの攻撃を躱して、さらに剣でクリスを斬りつける。

 

 いい動きね……。パフォーマンスは十全じゃない……。けれど、今は後ろにあたしたちがいることを意識して動けてる……。

 

 やっと、前を向くことが出来たのね……、翼……。

 

 

「翼さん、その子は!」

 

「わかっている!」

 

「あたしが陽動するから、あなたが決めなさい」

 

「心得たっ!」

 

 あたしがスピードを最大に上げて、クリスに的を絞らせないように動く。

 

「ちょこまかと、ウゼーっ! くぁぁぁっ!」

 

 苛立つクリスが銃を構える。スキが出来た……。

 

「翼っ!」

 

「任せろっ!」

 

 そのときである、なんと空中から《ノイズ》が降ってきたのだ。

 

 ドリルのように回転して5体の《ノイズ》があたしたちに向かって落ちてくる。

 

 ん? なんで、クリスにまで《ノイズ》が……?

 

 《ノイズ》はあたしとクリスに向かっていた。

 

「この程度、舐めないで……」

 

 あたしは二体の《ノイズ》を切り裂く。

 

 クリスは二体の《ノイズ》に武器を破壊され、バランス崩し、さらに最後の《ノイズ》も彼女を襲おうとしていた――。

 

「クリスちゃんっ!」

  

 響がクリスに向かって飛び出した。

 

「立花!」

「響!」

 

 響は倒れそうになったクリスを受け止めた。この場面で敵を助けられるって……。

 まぁ、あたしも人のこと言えないか……。

 

 

「お前、何やってんだよ?」

 

「ごめん、クリスちゃんに当たりそうだったから、つい……」

 

「――バカにして! お前も前の人形といい、 余計なお節介だ!」

 

 クリスは響に文句を言っている。しかし、どこから誰が《ノイズ》を……?

 

 

 

「命じたことも出来ないなんて……」

 

 声がする方向を見ると、金髪のサングラスをした女が《ノイズ》を繰り出した《あの杖》を持って立っていた。あの女……、どこかで……。

 

「あなたはどこまで私を失望させるのかしら……」

 

「フィーネっ!」

 

 失望したというのはクリスに対してなのか、彼女は明らかに動揺していた。フィーネというのが、あの女の名前なの? ――フィーネ? 心当たりのない名前なのに、あたしの核が熱くなるように反応した……。

 

「くっクリスちゃん?」

 

「こんな奴が居なくたって! 戦争の火種くらいあたし一人で消してやる! そうすれば、あんたの言うように人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」

 

 クリスは響を見てから、フィーネの方を向き、何やら主張をしている。呪いの解放? バラバラになった世界? ダメだ、何かを思い出せそうなのに……、思い出せない……。

 

 

「はぁ、もうあなたに用はないわ」

 

「えっ? なんだよ、それ!」

 

 フィーネの右手が光り始めると……、ネフシュタンの鎧が光輝き復元して、彼女の元に回収されていった。あの光……、ぐっ……、あたしは……。あの女を知っている……。

 懐かしいような、恐ろしいような……。

 

 とにかく、あたしの核は確実に“フィーネという名”を意識している。

 

 あたしは堪えられなくなって、フィーネの元に駆け出した。

 

「フィリア!」

「フィリアちゃん!」

 

 駆け出したあたしに、あの杖を向けるフィーネ。《ノイズ》ごとき、あたしには――。

 

 “――ドクンッ”

 

「かっ身体が……」

 

 あたしはフィーネに近づいた瞬間に胸の核から供給されるエネルギーが急に乱れて身体が硬直して動かなくなってしまった……。

 

 ダメっ……、避けられないっ……。

 

 フィーネが繰り出した《ノイズ》によって――あたしの腹が貫かれた――。

 

「フィリアーっ!」

 

 翼の悲痛な声が聞こえる……。まったく、あたしがこれくらいで死なないくらい知っているでしょう……。

 

「――フィーネ……、なんだっていうの……」

 

 大量のエネルギーが回復に向かってしまい、身体が動かないあたしは補給することも出来ず……、意識を失った……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「気が付いたー? フィリアちゃんがここまで、やられちゃうなんて久しぶりねー」

 

「――了子?」

 

 あたしがベッドで目を覚ますと、了子がムカつく笑顔であたしを見ていた。

 

「前にあれだけ言ったでしょ。回復にはエネルギーが大量に消費されるから、何か食べるものを持ち歩いて、動けなくなる前に食べなさいって」

 

「面倒をかけたわね。ちょっと、今までにない感覚になって驚いたら、身体が動かなくなっちゃって」

 

 あたしは了子なら何かわかるかもしれないと思って彼女にあの時の感覚を話した。

 

「へぇ、そのフィーネって人を見ると身体の核が反応して、そして、動けなくなったと……。何かされた訳じゃないのね?」

 

「ええ、何かされたような感じじゃないわ。あたしはフィーネを知っている……、それだけじゃない、もっと深い何か繋がりを感じたの……、人形のあたしが言うのも変だけど……、そう……、肉親のような……、そんな感覚……」

 

 あのときの違和感と気配はそう、とても近い感覚だった。

 だからこそ、身体が混乱して動けなくなったのだ。

 

「――あら、そうなの。肉親ねぇ、フィリアちゃんの前の情報があれば辿れそうだけど……。うーん……、とぉっても面白いわねー」

 

 了子は意地の悪い笑顔をあたしに向けた。

 

「あなたに相談した、あたしが馬鹿だったわ……」

 

 真剣な表情から、コロッと人をおちょくるような表情でニヤニヤと笑う了子を見て、あたしは話をしたことを後悔した。

 

「それじゃ、失礼するわね。助かったわ」

 

「いえいえ、どうもー。でも良かったじゃない。何か自分のことが分かる手がかりが見つかって。私も協力するわよ、フィリアちゃんの正体探し!」

 

 メディカルルームを出ようとするあたしに了子はそんな声をかける。

 

「あら、了子は結婚相手を探す方が先でしょ。いい女なんだから、自分の幸せを掴んでからお節介しなさい」

 

「ふふ、フィリアちゃんがそんなことを言うなんて、もう少し異常を調べたほうがいいかしらー」

 

「必要ないわ……」

 

 あたしは了子の戯言を聞き流して、部屋の外に出た。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「フィリア、もう歩いて大丈夫なのか?」

 

 あたしが司令室に向かう道中に、ちょうどこちらに向かってくる翼から話しかけられた。

 

「ええ、大丈夫よ。穴も塞がったし、自己修復にエネルギーを使いすぎただけだから……」

 

「そっそうか。なら良かった……」

 

 翼は歯切れが悪そうな感じだった。この子は昔から悩むとこんな顔をする。

 

「翼、あの子と関わって、心境の変化に戸惑っているのね?」

 

「なっ、どうしてフィリアはいつも私の心の中を読んでくるのだ?」

 

「あなた、割と表情のバリエーションが少なくてわかりやすいわよ……。あなたは、剣になるって意気込んでいたから黙ってたけど……」

 

「そっそうなの? 私はただ、奏が何のために戦ってきたのか、今なら少しわかるような気がして、それを理解するのは正直怖いというか、人の身ならざる私に、受け入れられるのか心配で……」

 

「思ってたよりもバカな悩みでホッとしたわ」

 

「ばっバカ? 私がか? 立花じゃなくて?」

 

 ナチュラルに響をディスる翼。それをあたしの前で悩みごととして話すのって感じよ。

 

「こんな身体のあたしだって、あいつらから人間扱いされてるのよ。あなたなんて、涙も流すんだから、どう見たって人間じゃない」

 

 私は関節の継ぎ目を翼に見せてそう言った。

 

「うむ、そう言われると返す言葉もない……」

 

 翼は言葉がつまったようだ。

 

「それに、変化なんて気にしなくていいのよ。変わる前も、変わったあとも、あなたはあなたなんだから。全部、風鳴翼としてあたしは受け止めるわ。だから、恐れずに前を歩きましょ」

 

「そうは言うが……、前を歩くと言われても、何をすれば……」

 

 翼は俯きながら、困ったような顔をした。

 

「はぁ、こういうときなら、奏はなんて声をかけると思う?」

 

“好きなことすればいいんじゃねーか?  簡単だろ?”

 

 多分、二人とも同じセリフを頭に思い浮かべてると思う。

 

「好きなことか……」

 

「ええ、きっと彼女はそういうでしょうね。翼には自由に生きてほしいと思って、あなたの未来を救ったのだから……」

 

 翼は少しだけスッキリした表情を見せて、立ち去っていった。

 もう心配なさそうね……。

 

 

 

 あたしはその後、司令室に入り、弦十郎にメディカルチェックを終えたことを伝える。

 

 

「フィリアくん、大丈夫なのか? 翼の話だと避けられないはずがないような攻撃をまともに受けたと聞いたが……」

 

「ええ、問題ないわ。体内の聖遺物がいつもと違う反応をして驚いただけだから……」

 

「うむ、そうか……」

 

 弦十郎はそれ以上なにも聞かなかった。聞かれたところで、あたしにもよくわからないことなので、答えようはないが……。

 

「それより悪かったわね。雪音クリスの保護を優先して動くべきだったのに……。あなたのやり残した仕事を助けられなかったわ」

 

「ん? ああ、覚えてたのか? 俺の愚痴を……」

 

「ええ、あなたが愚痴を言うなんて珍しかったもの。で、やり遂げるつもりなんでしょ? あなたの仕事……」

 

「もちろんだ」

 

 バシッと拳を手のひらにぶつけて、彼は力強く頷いた。

 

 弦十郎は二年前に行方不明になった雪音クリスを保護する任務にあたっていた。

 しかし、任務にあたった人間はことごとく死んでしまい、生き残ったのは彼一人となってしまう。

 それだけにこの仕事は彼にとって大きな心残りになっていたのだ。

 

「今回はあたしも協力してあげるわ。感謝しなさい」

 

「ふっ、それは心強いな……」

 

 弦十郎は静かに微笑んで、そう呟いた。

 雪音クリスからフィーネの情報を聞き出したいあたしは、彼とともに彼女を探すこととなった。

 

 フィーネは響を狙ってた。弦十郎の話によると、響の心臓に癒着しているガングニールは融合率がさらに上がっているらしい。

 

 聖遺物と肉体の融合とやらが、あの響の力を生み出しているのなら――彼女はそれを狙っているのかもしれないわ……。

 

 そういえば、あたしの核も聖遺物……。そして、その核をエネルギーにしてあたしは動いている。

 身体と聖遺物の融合という意味では、あたしと響は共通しているのだ。

 あたしの場合は身体は人形なんだけど……。

 

 だからといって何だって話なんだけど、あたしが作られた理由に関係があるような気がしてならなかった。

 

 それに、フィーネについて知れば、自分の身についての真相に近づけるという漠然とした自信だけは、あたしの中に強く残っていた――。




フィリアの過去にフィーネが絡んでいるみたいです。
そして、次回もいろいろとオリジナル展開を絡める予定です。





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