【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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今回は長い上に、原作からかなり逸脱した内容になってます。
それではよろしくお願いします!


未来に怒られ、クリスを探し……

「で、緊急事態だからって来たけど、一体何の用事かしら?」

 

 弦十郎と家に帰るつもりだったあたしは、響からの電話でリディアンの寮の前まで呼び出された。

 

「フィリアちゃーん、一緒に未来に説明してよー。隠し事しないでって未来に言われたけど、こんな感じでバレちゃったし……、絶対に未来は怒ってるんだよー」

 

「…………」

 

「…………」

 

「――帰るわ、あたし」

 

 あたしは響に背を向けて帰ろうとした。一大事だと思ってきてみれば、痴話喧嘩に巻き込もうとするなんて。悪いけど、お断りよ……。

 

「そりゃあないよー。あのね、未来はああ見えて、怒ると、もうめちゃくちゃ怖いんだ。未来に嫌われたら、生きていけないよー。お願い、お願いー」

 

 響は本気で未来にビビっているみたいで、切実そうな表情だった。

 

「……だけよ」

 

「へ? 聞こえないよー、フィリアちゃん」

 

「今回だけって、言ってるのよ。もう、二度とくだらない用事で呼び出さないって誓いなさい」

 

 半分くらいは二課にも責任はあると感じたあたしは、彼女の謝罪に付き合うことにした。

 ていうか、あたしも共犯みたいになるわよね……。

 

「ありがとう、今度、すっごく美味しいモノ奢るよ」

 

「はいはい、期待せずに待ってるわ……」

 

 響に手を引かれて、あたしは彼女の部屋に向かった。

 

 

 

「ただいまー、未来。フィリアちゃんも一緒だよー」

 

 響と共に部屋に入ったあたし。未来は机の前で本を読んでいた。

 

「…………」

 

 あー、無視するのね。怒ると黙るタイプって一番やりにくいのよねー。

 翼も似たタイプだけど、余計な気を使うと、またそれが地雷になったりして……。

 

「未来、話を聞いてほしいんだけ――」

 

「どうせ、また嘘つくんでしょ。フィリア先輩も一緒になって、私だけのけ者にして……」

 

 やっぱり、あたしも共犯扱いじゃない。この空気の中に放り込まれるなんて……。大体、こういうのは苦手なのよ。

 友里とか緒川あたりなら上手くやれるんでしょうけど……。

 

「ちょっと、待ちなさい。あたしはあなたに嘘は付いてないわ」

 

「響のこと、知ってて黙ってましたよね? 同じですよ……」

 

「当たり前でしょう。仲間の友人を危険にさらせるわけないじゃない」

 

「危険なんて、どうでもいいです! 私は響に隠し事される方が……、ううん、ただの隠し事なら良かった。私に隠れて響が危険な目にあっているなんて、全部背負い込もうとするなんて、それよりも酷いことってありません!」

 

 未来、愛が重いわよ……。これは、ちょっとフォローしたくらいで何とか出来ないわ……。

 

 なんで、こんな面倒にあたしは首を突っ込んでるのよっ!

 

「未来、あなたは誤解してるわ。響はかなり脅されてたのよ。このことを喋ると、あなたがそれはもう、悲惨な酷い目に遭うってね……」

 

「えっ、響が脅迫? いや、それも嘘に決まってます」

 

 未来は少しだけあたしの言葉に反応した。もうちょっと、押すわよ……。

 

「本当よ、ほら見なさいこれを……。手錠をされて厳しく脅されたの」

 

 あたしは事前に了子から手に入れた、響が手錠で拘束された写真を未来に見せた。

 

「――響……、私がいないときにこんな目に……」

 

 未来の表情から怒りが少しだけ消えたような気がした。もうちょっと揺さぶろうかしら……。

 

「響がどれだけ未来のことを“好き”なのか、知ってる? あたしなんて、もううるさいくらい、あなたとのノロケ話を聞かされちゃったわよ。そんな、未来のことを“大好き”な響はあなたを人質に取られたらどう動くかわかるでしょ?」

 

「響が……、私を……、えっと“好き”って……」

 

 未来はわかりやすいくらい、顔を紅潮させる。

 

「そうよ、ほら、響もはっきり告白なさい……」

 

 面倒になったあたしは力技で押すことにした。

 

「もっもちろん! 未来のことは誰よりも好きだよっ!」

 

「――っっっ」

 

 未来は顔を押さえて首を振っていた。耳まで真っ赤になっているようだ。

 

「みっ未来?」

 

「ずるいよ響……、私、怒ってたのに……。やっぱり、響にはそばに居て欲しいって、突き放せないよ……」

 

 未来は涙目で響を見つめた……。

 

「私、響が黙っていたことに腹を立てていたんじゃないの。誰かの役に立ちたいと思っているのは、いつもの響だから……。でも、最近は辛いこと苦しいこと、全部背負い込もうとしていたじゃない。私はそれがたまらなくイヤだった。また響が大きな怪我をするんじゃないかって心配してたの……」

 

「未来……、そんなに私のことを……」

 

 未来の素直な気持ちを聞いてハッとした表情をした。

 

「だけど、それは響を失いたくない私のワガママだ……。そんな気持ちに気づいたのに今までと同じようになんて出来なかった……」

 

 この瞬間を好機と捉えて、あたしは手早くスマホにある文面を書いて響に見せた。

 

《抱きしめろ!》

 

「――フィリアちゃん?」

 

《いいから、行けっ!》

 

「未来……、心配かけてごめん……」

 

 響は未来を抱きしめて一緒に泣いていた。

 ふぅ、これで一応解決かしら? 大丈夫よね……。

 

 なんか、未来のウィークポイントに付け込んだ感あったから、ちょっと悪い気もしたけど……。二人ともお互いに想い合ってるんだからいいでしょ。

 

 

 

 

 

 

「…………響ぃ」

「…………未来ぅ」

 

「長いっ!」

 

 かれこれ30分くらいボーッと彼女たちが抱き合っている姿を見てたけど、辛抱強いあたしにも遂に限界が来た。

 

「はっ、フィリア先輩……、すみません。あの、私……」

 

 やっとあたしの存在を思い出した未来は謝罪しようと顔をこちらに向けた。

 

「もういいわ。二人ともお幸せに……、帰るわよ」

 

「フィリアちゃん、ありがとう。付いてきてもらって良かったよー」

 

「はいはい、良かったわね」

 

 はぁ、ようやくこの空間から解放されるわ。クリスと戦うより疲れたわよ……。

 

「あっ、フィリア先輩! 一つだけ教えてください。響を拘束して脅したのって誰ですか――」

 

 ――殺気!? しかも、並大抵の殺気じゃないわ……。

 なんで響が絡むとこんなに怖いのよ、この子は……。

 

 

「おっ緒川……、緒川慎次よ……」

 

「フィリアちゃん?」

 

「だって、緒川が手錠付けたし、ほら色々と説明もしたでしょ? 機密とかの」

 

「うー、それはそうだけど。何だかわからないけど緒川さんに悪いことをしたような……」

 

「きっ気のせいよ……」

 

 あたしは緒川にいろいろと押し付けて、足早に響と未来の部屋を出た。なんか、未来が『緒川慎次』って復唱してたけど気にしないわ。

 

 あー、内蔵なんて無いのに胃もたれする。チョコレート食べよ……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

『《ノイズ》とイチイバルの反応を第六市街地区で検知したようだ。どうやら、交戦したらしい』

 

「ええ、5分で着くわ」

 

 早朝、弦十郎から緊急の連絡が入り、あたしは高速で移動して現場に直行した。

 

 確かにあのときフィーネはクリスを見放したかのようなことを言っていたわ。

 つまり敵対もしくは粛清されようとした可能性が高い……。

 

 反応はこのあたりだったわね……。

 

『どうだ? 見つかったか?』

 

「ええ、ビンゴだったわ。どうやら交戦した結果、消耗して倒れたみたいよ……」

 

 あたしの目の前には路地裏で倒れている雪音クリスがいた。

 かなり弱っているわね……。

 

『そうか……、すぐにこちらから応援を回そう』

 

《うるさいっ! 分かり合えるものかよ人間が!  そんな風に出来ているものか!》

 

「…………」

 

 あたしはあの後、雪音クリスについて調べた。

 彼女は政変以来国交の途絶したバルベルデ共和国で八年前にNGO活動中に殺されたバイオリニスト、雪音雅律とソネット=M=ユキネの娘である。

 事件後、クリスはその行方が掴めない状態が続いていた。

 そして、二年前に国連軍の介入で彼女は救出されてニ課に保護される予定だった。

 

 南米の過酷な環境で親を殺されて小さな子供が生き抜くってどんなに悲惨だったのかしら……。

 

《戦争の火種くらいあたし一人で消してやる!》

 

『フィリアくん、どうした?』

 

「待ってちょうだい!」

 

『フィリアくん……?』

 

「この子は人間を信じていないわ……。おそらく、何か大きな心の傷が彼女にはある……。だから――」

 

 あたしは雪音クリスが悪人だとは思えなくなっていた。

 あたしが腕を失ったときの表情(かお)

 響の呼びかけに対しての態度……。

 

『ふっ、分かったよ、フィリアくん。君にしばらく彼女を預けよう。しかし、どうするつもりだ?』

 

「そうね、この子は居場所が無いでしょ。とりあえず――」

 

 あたしはこれからすることを弦十郎に話した。彼は快く了承してくれた。

 

「いいの? こう言っては元も子もないけど、あたしは取り返しのつかないことをしてるかもしれないのよ」

 

『ははっ、娘のやる事だ。信じて待つさ。俺は君の補助に回ろう』

 

「まったく、バカな人ね……」

 

 あたしは《雪音クリス》を回収して……、路地裏から姿を消した――。今日は学校は休むしかなさそうね……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ん……、はっ……」

 

「あら、ようやくお目覚めかしら……」

 

 ベッドで寝せていたクリスが目覚めたみたいだったので、あたしは彼女に声をかけた。

 

「てっ、テメーは人形っ! よりによって、テメーらに捕まるなんてっ! ――痛っ!」

 

「ほら、無理に動いちゃだめよ。安静になさい。拘束なんてしてないでしょ」

 

 あたしはクリスにお粥を作って持っていった。

 

「なっ、どういうつもりだっ!? あたしを捕まえて拷問でもかけるつもりじゃねぇのか?」

 

「そんなことするわけないでしょ。貴重なシンフォギア装者に……」

 

「はっ、そういうことか。あたしに媚を売って、お前らに付けって勧誘するってか? ご苦労なこった」

 

 クリスは顔を背けてそう言った。

 まぁ、この前まで敵だったんだからそんな態度になるわよね。

 

「まぁ、あなたの保護はあたしのプライベートで勝手にやったことだから、別に此処から出ていくのも自由なんだけど……」

 

「はぁ? 意味わかんねぇ」

 

「だって、あなたは人間を信じて無いんでしょ? そんなあなたを味方にしようって言っても無理じゃない」

 

「確かに人は信じねぇって言った。味方になるつもりもねぇ。じゃあ、テメーは何を企んでいるって言うんだ?」

 

 クリスはあたしの意図が読めないみたいだ。別に難しい意図は無いんだけど……。

 

「だから、信じて貰えるまで待つのよ……」

 

「へっ、頭ん中お花畑かよ。一体ここはどこなんだ! こんな下らねぇ茶番に付き合えるか! あたしは出ていく……痛っ」

 

「だから、安静にしなさいって言ってるでしょ。大丈夫よ、ここはあなたのマンションだから――。出ていくならあたしの方になるわね」

 

 あたしは乱れた布団をかけ直して、彼女にそう伝えた。

 

「はぁぁぁ? あたしのマンション? トチ狂ったこと言ってんじゃねぇっ!」 

 

「ほら、これがここの鍵だから無くさないようにね。家賃ならあたしの口座から引き落としになってるから気にしなくて良いわよ」

 

「ん、ああ。って、おかしいだろっ! なんで人形の借りた家にあたしが住まなきゃいけねぇんだ。はぁ、はぁ……」

 

 クリスは叫びすぎて息を切らせていた。

 

「あなたが人が信じられないからよ!」

 

「――っ」

 

「だったら、人じゃないあたしが世話するしかないでしょ。あなたは行くところが無いんだから。ほっとけないじゃない」

 

「ほう、人形ってのは嘘はつかねぇのか?」

 

「いや、付くわよ。だって、あたしは元々人間だもん」

 

「じゃー、信じられねぇよっ!」

 

 クリスは忙しそうにツッコミを入れる。だんだん可愛く見えてきたわね……。

 

「つーか、テメーは人間だったってどういうことだよ!? どう見ても人じゃないじゃねーか」

 

 クリスは今さらなことを聞いてきた。彼女にはフィーネのことを聞くつもりだし、質問くらいには答えときましょう。

 

「まぁ、記憶が全部飛んでるから詳しいことはほとんど知らないんだけど、ある日起きたら人形にされてたのよ、身体をね……。それでも、あなたの受けたであろう仕打ちよりはマシな気がするわ……」

 

 あたしはクリスを着替えさせるときに、彼女の体に刻まれた無数の痣を見た。そして、やはりこの子は恐ろしいほど過酷な体験をして生きてきたということを悟っていた。

 それに比べたら、記憶のないあたしの方が本気でマシに思えていた。

 

「人形にされただと? お前、そんなことされて、あいつらと友達ごっこしてられるのかよ」

 

「んー、だからかもしれないわね。あの子たちは、こんな身体のあたしでも人間として接してくれてるから……。世の中にはこんな人形を養子にして、娘だと呼んでくれるバカもいるのよ」

 

「――テメーを娘だと? ははっ、そりゃあ確かにバカ野郎だ。じゃあこの部屋から出てけと言えば出ていくんだな? あたしが出たら追ったりしないんだな?」

 

 あたしが弦十郎の娘になった話はクリスには面白い話だったらしい。

 

「ええ、いつでも出て行くし、あたしが信用できなきゃ、出ていけばいい。一応、お金は持って行きなさい」

 

 あたしは適当に財布から十枚ほど万札を出して封筒に入れて、ベッドの横の椅子の上に置いた。

 

「本当に何考えてんだ? それにこんなに置いて良いのかよ?」

 

「実家暮らしだから、給料が貯まってく一方なのよ。あなたも《ノイズ》倒す仕事したら割りと稼げることに驚くわよ」

 

「いや、それは聞いてねぇ。こんなこと独断でやっていいのかって聞いてんだよ……」

 

 今度はあたしの心配してるの? 割りとお人好しなのかしら?

 

「あなたに心配されることは何もないわ。一応、好きにやっていいって司令から許可は取ってるから、大丈夫なのよ」

 

「ふーん、まぁいい。一応、信じといてやるよ。テメーには一度助けられた。恩人の顔くらい立ててやろうじゃねぇか」

 

 ああ、あのときのこと、恩には感じてたのね……。

 

「そっ、信じてくれるのね。じゃあ、お腹空いてるでしょ? 消化にいいお粥を作ったからゆっくり食べなさい……」

 

「へぇ、テメーが作ったのかよ。不味かったら残すからな……。ガツガツ……」

 

 まったく、ゆっくり食べろって言ったじゃない……。

 ふぅ、少しだけお行儀が悪いのは、目をつぶってあげるわ。でも、キチンと完食するなんて、可愛げがあるわね……。

 

 こうして、あたしはクリスにマンションの一室を与えて彼女が人を信じられるようになるまで待つことにした。

 あたしが変わったように、彼女の閉ざされた心も開くと信じて――。




今までがシリアス多めだったので、未来さんには申し訳ないのですが、コミカルパートに利用させてもらいました。
クリスに部屋をドーンと与えるフィリアは給料やら残業代やらが貯まっているので、自由にできるお金が多いのです。
次回からもオリジナル多めになりますが、よろしくお願いします。





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