【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします!
「それだけ食欲があるんだったら、大丈夫そうね。味には満足してもらって、安心したわ」
「まっ不味くなかっただけだ。調子に乗んな」
クリスはそっぽを向いて布団に潜る。
それにしても――。
「でも、意外だった。毒でも入ってるとか警戒するものだと思ってたから」
「テメーがあたしに何かしようと思えば、やり放題だっただろ? 別にそれだけだ――」
彼女はそう答える。まぁ確かにそうなんだけど……。
「そ、わかったわ。冷蔵庫に適当に飲み物とか入れといたから。あとで、電子レンジの使い方とか教えるわ。晩ごはんも作っておいたから、今日の夜はとりあえずそれを温めて――」
「おいっ! 本気であたしを一人でここに置いとくつもりか!?」
あたしが晩ごはんの話をすると、クリスが驚愕した顔でこちらを向いてきた。
だから、さっきからそう言っているわよね?
「ええ、だってあたしにはあたしの家があるし……」
「それはさっき聞いた! 普通、もっと何かを聞き出そうとか、監視しようとかするだろっ?」
「ああ、そういうのって苦手なのよ……。友達に友達っていうのにも二年かかっちゃったし……。コミュニケーション下手っていうか」
そう実際あたしは困っていた。思い付きで行動したのはいいものの、どう接していけばいいのかわからなかったのである。
「友達か……、テメーにはそう呼べるやつがいるんだからいいじゃねーか」
「そうね。それは否定しないわ」
「……」
「……」
「おいっ、マジで会話が続かないじゃねぇか! テメーはあたしと違って一人じゃなかったんだろ? なんか喋れよっ!」
よく分からないけど、まだ帰って欲しくないってことかしら? まぁ、学校休んでるからいいけど……。
「そうね、とりあえず、あたしの名前から教えるわ。風鳴フィリアよ」
「ん? ああ、さすがに名前くらいあるよな。ふーん、フィリアっていうのか」
「…………」
「…………」
「なんか、悪いわね。よく知らない人と雑談ってどうやってするのかしら?」
「お前、それでよくあたしから信じられるようになろうとか思ったな。正直言ってあのどんくせぇのより酷いかもしれねぇぞ……」
クリスが本気で呆れた顔でそんなことを言われた。響より酷いって、それはあんまりじゃない……。
「そうそう、あの子と言ったらこの前ね、友達との喧嘩の仲裁を頼まれて――」
響以下の認定は避けたかったので、あたしは必死で先日の痴話喧嘩の話をしてみた。
「――ふーん、友達同士のケンカか……。あたしにはよくわからないことだな」
「わからない?」
「友達がいないからな、地球の裏側でパパとママを殺されたあたしは、ずっと一人で生きてきたから……、友達どころじゃなかった」
そういえば、この子はあたしに『友達がいて良かった』と言っていた。過酷な環境は友人すら許さなかったんだわ……。
「そうよね、ごめんなさい。そういうつもりであたしは……」
あたしは軽率な発言を詫びた。
「ああ、別にお前を責めてるんじゃない。ただ、たった一人理解してくれると思った人も、あたしを道具にするだけだったし、誰もまともに相手をしてくれなかったと思っただけだ」
「クリス……」
「大人は、どいつもこいつもクズ揃いだ。痛いと言っても聞いてくれなかった。やめてと言っても聞いてくれなかった。あたしの話なんて……、これっぽっちも聞いてくれなかった……」
これがクリスの心の傷……。大人はクズ揃いか……。中には頼りがいのある大人も居るって言っても信じそうになさそうね。
「……そう。とりあえず、チョコレート食べる?」
あたしは携帯してる板チョコを差し出した。
「なっ、なんでいきなりチョコ? お前、あたしの話をちゃんと聞いてたのかよっ?」
クリスはチョコレートは受け取ったが、憮然とした表情だった。
「だって、あなたの心の傷が大きくて、あたしじゃどうにもならないかもって思ったから……。あたしなんか、友達にしても嬉しくないと思うし、どうすることも出来ないから、せめて甘いものでもって思ったのよ……」
「はぁ? お前、今、何か変なこと言わなかったか?」
クリスはあたしの発言に何か引っかかったみたいだ。
「せっせめて甘いものをって……」
「ちげーよ、その前だ」
「あたしなんかと友達になっても嬉しくないってとこ? だってそうでしょう? あなたの最初の友達が人形だなんて」
翼には奏がいたし、やっぱり可哀相じゃない。人間の友達がいないから、人形を友達にするって……。
「いいよ、人形で……」
「えっ?」
「いいって言ってんだ、バカっ! なんで、ここまでやっといて、変なところで気を使うんだよっ! いいよ、お前くらいしかいねーし、喋れそうなやつ……」
クリスは顔を赤くしてそんなことを言ってきた。
えっと、ホントに良いのかしら? まぁ、この子が良いならそれでいいけど……。
「そう、じゃあ、今からあたしたちは友達と言うことで……」
「おっおう。そうだな……、友達か……」
「…………」
「…………」
「ねぇ、クリス。友達って何を話すのかしら」
「だから、あたしが知るわけねぇっつーの」
二人の中に沈黙が暫く流れた……。
そして、この沈黙は《ノイズ》出現の警戒警報の音で破られた。
『フィリアくん、《ノイズ》を検知した。それもかなりの数だ』
「わかったわ。ええ、すぐに現場に向かうわね」
あたしは弦十郎からの出撃命令を受けて現場に向かうことにした。
「《ノイズ》が現れたから、ちょっと仕事に行ってくるわ。冷蔵庫のものはなんでも――」
「あたしも行く……、これはあたしのせいだ……、あたしのせいで、関係ねぇ奴らが……」
クリスは自分も同行すると言ってきた。
少しは回復してるとはいえ……、でも、放置する方が危険よね……。
「仕方ないわね……、本調子じゃないんだから無理しちゃダメよ」
「はっ、約束は出来ねぇな」
あたしとクリスは現場に共に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
避難が完了して誰もいなくなった商店街にあたしたちは辿り着いた。
「コード、ミラージュクイーン」
あたしはミラージュクイーンを片手にノイズたちを殲滅する。確かに数が多いわね。
響も別の現場だし、翼はまだ出撃できない。
消耗の激しい錬金術は使用を控えなきゃ……。
そう思った矢先、《ノイズ》が集団で一斉にあたしとクリスに襲いかかった。
「下がってなさいクリス。ここはあたしが……」
あたしは《ノイズ》たちに突進した。
「誰がお前の後ろに! ちっ……、Killter Ic……、ごほっ、ごほっ……」
しかし、クリスは言うこと聞かずに前に出た、そして聖詠を唱えようとしたが……、咳き込んでしまい、失敗したのである。
《ノイズ》たちの攻撃が容赦なくクリスを襲おうとする。
「――クリスっ!」
あたしは振り返ってクリスを助けようとした――。
その刹那――。
「奮っっっっっ――!」
聞き慣れた気合の入った声と共にアスファルトが大きく隆起して《ノイズ》の攻撃からクリスを守る。
まさか、あなたが現場に来るなんて……。随分と久しぶりじゃない。
「破っっっっっ――!」
さらにアスファルトが砕け散り《ノイズ》目掛けて飛んでいった。
まったく、相手が《ノイズ》じゃなかったらとっくに終わっている戦いね。
「珍しいわね。司令自ら出陣とは……。そんなに、あたしが信じられなかったかしら?」
あたしは駆け付けてきた弦十郎に声をかけた。
「ははっ、たまには娘の活躍を生でみたくなったまでだ……。――奮っっっっ!」
朗らかに笑った顔を見せたかと思うと、再び《ノイズ》の攻撃からクリスを守り、人間離れした跳躍力でビルの屋上まで彼女を抱えて飛び跳ねた。
あたしもとりあえず、彼を追ってビルの上まで跳躍した。
「大丈夫か……?」
「…………っ」
クリスは弦十郎に話しかけられ、パッと距離を置いた。
「あーあ、ダメじゃない。娘の前で若い女を急に抱きしめるなんて普通しないわよ」
「いやっ、フィリアくん……、あれはだな……」
弦十郎は気まずそうな顔をする。まったく、真面目なんだから。
「娘? そういや、このおっさんもそんなことを……。じゃあ、おっさんがフィリアの……」
クリスは驚愕した表情で弦十郎を見た。
「ん、ああ。俺が風鳴フィリアの父、風鳴弦十郎だ。娘と仲良くしてやってくれ……」
弦十郎は大きな体を小さくして、クリスに頭を下げた。
「…………っ、だからって、お前らと仲良く手を繋ぐ気はねぇからなっ! あたしは大人を信じねぇんだ! ――Killter ichiival tron……」
クリスは弦十郎にそう言い放つと聖詠を唱える……。
そして、彼女はイチイバルのシンフォギアを纏った。
「フィリア! こいつらっ、ぶっ倒すんだろっ? こんなところで油を売ってて良いのかよっ!?」
クリスはボウガンでこちらに迫りくる飛行型の《ノイズ》を撃ち落として、あたしに声をかけた。
「言われるまでもないわ……、コード、マナバースト」
あたしはシンフォギアを纏ったクリスの戦力を計算して、錬金術を解禁した。
――
錬金術で錬成した炎をジェット噴射の要領で吹き出して、空中に舞い上がる対空用の技。
しかし、対空時間はそれほど長くない。
あたしもクリスにならって、空の《ノイズ》から殲滅を開始した。
「なかなか、面白ぇ技を使うじゃねぇか。おっさん、ご覧のとおりだ。あたしらがここの連中をやっつけるんだから、他の連中の救助に向かいな」
クリスとあたしは周辺の《ノイズ》を次々と倒していった。
遠距離戦が得意なクリスと近距離戦が得意なあたしは妙に戦い方が噛み合って、初めて一緒に戦ったにも関わらず、上手く効率よく戦うことができた。
そして、おびただしいほどの数が居た《ノイズ》たちは、またたく間に全滅したのだ。
「はぁ、エネルギーをかなり使っちゃったわね。あむっ……」
あたしは持ってきたチョコレートを食べながらそう言った。
「お前、菓子好きなんだな。こんなとこまで持ち歩いて……」
「ああ、あたしのエネルギー源だから、これ。これさえ食べとけば腕や足が千切れたり、腹に穴が空いても平気なのよ。あなた、先に帰ってなさい。あたしは事後処理とかあるから……」
あたしはクリスに鍵を手渡した。あと、もうひと仕事片付けなきゃ……。
「あのさ!」
クリスはあたしを呼び止めた。何かしら……?
「お前はあのおっさんのこと、本当に父親だと思っているのかよ?」
「――思ってるわよ。あたしを本気で娘だと言ってくれて、大事にしてくれてるんですもの……。彼だけは絶対に信頼できる人だって言い切れるわ」
「へぇ……」
このクリスの『へぇ』がどんな意味を込めたものなのかわからないが……、あたしは弦十郎に対する気持ちを素直に話してしまったことを猛烈に後悔していたのである。
こういう時だけは、表情に出ない人形の身に少しだけ感謝したいところね……。
クリスとフィリアのかけ合いはいかがでしたでしょうか?
そろそろ無印編も終わりが見えてきました。
次回もよろしくお願いします。