【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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時系列的には原作の9話の中盤くらいまでです。
それではよろしくお願いします!


不器用な父娘

「そう、未来が協力して民間人を……」

 

 あたしは未来が響を追って外に出ていき、《ノイズ》から逃げ遅れた民間人を響と共に救出したという報告を弦十郎から聞いた。

 

「まぁ、彼女には民間協力者という立場で響くんを助けてもらおうと思っているが……」

 

「そういうところは柔軟よねウチの組織は……。だったら、さっさとそうしたら良かったのよ。それなら、私もあんな痴話喧嘩に巻き込まれずに済んだのに……」

 

 あたしは弦十郎に不満を漏らした。まぁ、そんなことをすると歯止めが効かなくなるのはわかっていたけれど……。

 

「そうだったんですね。僕にも詳しく聞かせてください。フィリアさんが小日向未来さんに何を話したのか……。僕の名前を聞くと物凄い殺気を飛ばしてきて、ずっと響さんを庇うような仕草をしていたのですが……」

 

「…………なんの話かしら?」

 

 あたしは緒川から目を逸らして、知らん顔をした。

 

「はぁ、僕がいつ響さんを手錠攻めにして、激しく脅迫したのですか? フィリアさん、観念してください」

 

「えっと、あたしはそこまでは言ってないわよ」

 

「しかし、未来さんの中ではそうなっているのですよ。フィリアさんから訂正してください」

 

「嫌よ、あたしが嘘つきみたいになっちゃうじゃない」

 

「嘘つきみたいじゃなくて、嘘つきなんですよ――」

 

 あたしと緒川がしばらく言い争っていたら、弦十郎にいい加減にしろって怒られたわ。

 男なら小さいことは気にしないくらいの度量を持ちなさいよ、まったく。絶対に訂正しないわ……。

 

「それで、フィリアくん。雪音クリスくんのことだが……」

 

「彼女、やっぱり人を信じることが出来なくなってるわね。でも……、心の底では信じたいと思っている気がする……」

 

 弦十郎はやはりクリスのことをかなり気にかけているみたいで、あたしに様子を聞いてきた。

 

「ふむ、そうか。心の傷は深いということか……。それでは、俺が会えるようになるにはまだかかりそうだな」

 

「あたしもそう思ったんだけどね。弦十郎、あなたとは一度話してみたいらしいわよ。人形を娘にした酔狂な人間に興味があるんだって」 

 

 別れ際にクリスに言われたことをあたしは弦十郎に話した。

 正直言って意外でしかなかった。まぁ、彼女にとっては動物園のゴリラを見てたいくらいの感覚なのかもしれないが……。

 

「それは、本当か? よし、会おう。いつならいい?」

 

「さぁ、それはあとで聞いてみるわ。このあと、彼女の家に寄るから……」

 

 あたしは弦十郎にそう告げて、クリスのマンションに足を向けた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「悪いわね、夜分にお邪魔しちゃって」

 

「お前、合鍵も作ってねぇのかよ。あたしにわざわざ鍵を開けさせて……」

 

 クリスに呆れた顔をした。えっ、合鍵って普通は作らないわよね……。恋人じゃあるまいし……。

 

「プライバシーって大事よね?」

 

「ん? ああ、そりゃそうだけどよ。あたしの部屋だけど、お前が金出してるんだから、普通は何かのために合鍵くらい作るんじゃねぇか?」

 

「そう、わかったわ。あなたが嫌じゃないなら検討しとく」

 

「別に嫌じゃねぇよ。飯も旨かったし……」

 

 クリスは合鍵を作っても嫌じゃないらしい。最後にボソボソ何かを言っていたけど聞き取れなかったわ。

 

「あと、司令、いや弦十郎のことなんだけど……。本当に会ってくれるの? 別に気を使わなくていいのよ。あなたが嫌なら無理に……」

 

「お前の親父さんに会うだけなら、問題ねぇよ。だからといって今さら、仲間になるつもりもねぇけどな……」  

  

 クリスは照れくさそうに頬を触りながらそう言った。

 

「ええ、わかっているわ。あなたの心の傷はそんなに浅くないもの……。じゃあ、あたしは帰るわね……」

 

「そっそうか、帰っちまうんだな……」

 

 あたしが帰ろうとすると、クリスがなぜか寂しそうな顔をした。

 

「あなた、まさか寂しいわけじゃないでしょ?」

 

「――っ! そんなわけ……、ねぇだろ。ただ、一人でこんな部屋に住んだことねぇから、落ち着かねぇんだよ」

 

 クリスは今までの生活とのギャップに混乱しているみたいだ。

 それは、あたしの配慮が足りなかったみたいね……。

 

「じゃあ泊まって行ってもいいのかしら?」

 

「おっおう、泊まるのは構わねぇけど……。寝床はどうすんだ? まさか、同じベッドで寝る気じゃ……」

 

「大丈夫よ。あたしは寝ないから。この身体になってから睡眠を取ることが無くなったの」

 

「…………」

 

「…………」

 

 そして、何度目かの沈黙が流れる……。

 

 

「お前、その身体は辛くないのかよ? 痛みも眠気も感じないんだろ?」

 

「別に……、もう慣れちゃったから……。クリスは、その、辛いわよね。信じてた人に裏切られて……」

 

「そうだな。フィーネはあたしの全てだった……。あいつの言うとおりにしたら、争いも全部無くなるって信じてたんだ……」

 

「あの女はそんなことを……」

 

 あたしはクリスはかなり心の深いところまで洗脳されていたのだと思った。

 そして、フィーネという女の非情さは警戒せねばならないとも……。

 

「フィリア、あたしはお前を信じちまっていいのかな……。お前にも裏切られたら……、あたしは……」

 

 クリスは不安からなのか急にそんなことを言い出した。裏切るつもりなんて無いけど、口でこの子を納得させるなんてあたしには――。

 

 

 

「――そうね、もしもあたしが、あなたを裏切るようなことがあれば……、躊躇わずに、ここを狙いなさい」

 

 あたしは自分の胸を抉り、身体の中の核をクリスに見せた。銀色の球体――聖遺物の欠片で出来たあたしの核は鼓動に似た動きを脈々と行い、あたしを動かすエネルギーを送っていた。

 

「おっお前、それっ……。ばっバカなことはやめろっ!」

 

「これはあたしの核。あなたのギアペンダントよりも小さいけど心臓のようなものよ。さすがにこれが壊れちゃうと、あたしは死ぬんだって……。だから、この場所をよく覚えるのよ」

 

 あたしはクリスをまっすぐに見据えてそう言った。

 

「バカ! そこまでしろとは言ってねぇ! んなことしねぇでも、あたしは――」

 

「ちょっと待ちなさい。再生が始まるから、食べ物を……」

 

 あたしは用意していたチョコレートを食べながら、胸を再生した。

 

「お前、なんであたしのために、そんなことが出来るんだ? 前もその、デュランダルから敵のあたしを守ってくれたし……」

 

「大したことないわよ。だってこう見えて、本当に痛みも何も感じないのよ。だから――」

「あたしが痛ぇんだよっ!」

 

 クリスの問いに答える前に彼女は大声を出した。

 あたしは口下手だから、器用に安心させるようなこと言えない。だから行動で示そうと思ったんだけど……。引かせちゃったみたいね……。

 

「そう……、悪かったわ。あなたはもう寝なさい。疲れてるでしょ」

 

「…………ああ、そうしようかな。会話も続かねぇし……」

 

 こうして、あたしとクリスは一夜を同じ部屋で過ごした。

 弦十郎、この子は良い子よ……。だから、あなたが大人の強さを見せてあげて――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「――で、何て言ったらあの子が出ていくようなことになったわけ?」

 

 翌日、あたしは弦十郎とクリスを引き合わせた。

 あたしは学校に行ってて、少し遅れて彼と合流する予定でマンションに足を踏み入れたのだが……。

 

 窓ガラスは割れて、クリスは居なくなっていた。

 

「彼女を……、雪音クリスを救いたいと言った――。それが俺の……、大人の務めだと……。少し焦ってしまったようだ……」

 

 弦十郎はやり切れなさが顔に出ていた。

 彼らしく、真正面からぶつかったのね。

 器用に言葉巧みに説き伏せるなんて彼には無理なことだろうから……。まったく不器用な人ね……。

 あたしも人のこと言えないけど……。

 

「すまない。せっかくフィリアくんにクリスくんが心を開いたというのに……」

 

「別に、謝らなくても良いんじゃない? 次にあなたの気持ちをストレートに伝えれば、きっと大丈夫よ」

 

「次か……、そうだな。クリスくんの捜索を再開しなくては……」

 

 弦十郎は気持ちを切り替えたのか、目にはっきりとした意志が宿っていた。

 

「再開もなにも、彼女は戻ってくるわよ……、ここに」

 

「まさか……、シンフォギアを纏ってまでして逃げ出したんだぞ」

 

「それは、多分、葛藤したのよ。あなたを信じたい気持ちもそれなりに大きかったからこそ、今までのことがそれを邪魔して、頭が混乱したのね……。まったく脈無しなら、あなたを追い出して終わりにしてたわよ」

 

 あたしは事前にクリスに弦十郎にはあなたが帰ってほしいと告げればすぐに帰ることを約束させていると話していた。

 無理に説得や勧誘は行わないとも……。

 

 そんなことも忘れて飛び出したということは、何かしら彼の言葉が響いたのに違いないのだ。

 

「そういうものか?」

 

「そういうものよ」

 

 弦十郎は完全に納得はしていなかったが、とりあえず一晩だけあたしからの連絡を待つと告げて去っていった。

 

 はぁ、窓ガラス掃除して直さなきゃ……。

 

 

 

 あたしが掃除をしたり、晩ごはんを作ったりしていると、案の定、クリスは少しだけ気まずそうな顔をして、「腹が減った」と一言だけあたしに告げて部屋の中に戻ってきた。

 

「すまねぇ、フィリア。あたしはどうしても大人は信じられねぇみてぇだ……」

 

 寂しそうな表情で晩ごはんを食べながらクリスはそれだけをあたしに伝えた。

 

「無理に変わらなくったっていいわよ。心境の変化なんて勝手に起こるものなんだから」

 

 あたしはそう言い残して彼女の部屋を出た。

 翼のときと同じで結局見守ることしか出来ない自分の無力さを噛み締めながら……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 家に帰る途中にあたしのスマホに翼から着信があった。確か、彼女のメディカルチェックの結果が出るのは今日だったわね。

 そのことかしら? 何か悪いところでも?

 

 あたしは翼からの電話に出た。

 

『フィリアか、たっ頼みがあるのだが……』

 

 翼の口調から言い出しづらいことということが察せられる。やはり、何かあったのね……。

 

「どうしたの? 何でも言いなさい。あたしなら大丈夫だから」

 

 あたしは何を聞いても驚かないように身構えた。

 

『あの、フィリア! わっ私とデートしてくれっ!』

「はぁ?」

 

 あたしは予想外すぎる発言に変な声が出てしまった。

 この子は戦い一辺倒で色恋も何も知らずに生きてきたけど、こっこれはどういうことなの?

 

「ちょっと、待ちなさい翼。確かにあなたは戦いに没頭しすぎて、今は周りに緒川とかしか男が居ないから焦ってるかもしれないけど、だからといって女に、いや、女だからダメとかじゃないのよ。だけど取りあえず、手近なところで済まそうとするのは……」

 

 とりあえず、あたしは翼を変なプレッシャーから解放しようと早口で話した。

 

『フィリア、何を言っているんだ? 私は君を遊びに誘っているんだ。立花がその……、今どきの女子高生が友達を誘うときは、こうするって……』

 

「えっ、そっそうだったの。まさか翼があたしを遊びに誘うなんて、それはそれでびっくりだけど……」

 

 どうやら、響と未来にオフの日に遊びに誘われて、あたしも一緒にという話になったらしい。

 翼はもちろん鍛錬に誘うことはあっても遊びに誘うなんてしたことはなかったから、響にやり方を質問したらしい。

 

 とりあえず、響は後で説教してやる……。

 

 そんなわけで、なぜか翼たちと次の休みに出かけることとなった。

 

 翼、良かったわね……。

 




次回はデートからスタートです。
フィリアは自分で自分の胸を強引にガバッと抉じ開けて、クリスをドン引きさせました。
こういう部分は危ういのかもしれません。




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