【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします!
「あの子たちは何をやっているのよ……?」
「そりゃあ、響が……」
イライラしながら響と未来の到着を待つ翼。どうせ、響が寝坊したのよ。
「はあ、はあ、すみません、翼さーん、フィリアちゃーん」
「「遅いわよ!」」
あたしたちは声を揃えて文句を言った。先輩を待たせるとはいい度胸してるわ。
「すみません。お察しのこととは思いますが、響のいつもの寝坊が原因でして……」
未来は響と頭を下げながら思ったとおりすぎる遅刻の原因を正直に話す。この子は期待を裏切らないわね……。
「「あっ!」」
そして、顔を上げたときに翼の気合の入った格好に気付き声を上げた。
この子は割と楽しみにしてたのよ……。ずっとソワソワしてたんだから。
「時間がもったいないわ。急ぎましょう」
そして、翼は早足で先に行こうとする。
「すっごい楽しみにしてた人みたいだ……」
「みたいじゃなくて、してたのよ。それはもう、今朝からこの子は……」
「誰かが遅刻した分を取り戻したいだけだ! フィリアも余計なことを喋るな!」
響のつぶやきにあたしが答えると、翼は顔を赤くして怒鳴った。だって、楽しみで仕方なかったのは本当でしょう。
「翼イヤーはなんとやら……」
「いや、あなた、割と声大きいから気をつけなさい」
あたしは響にそう忠告してあとに続いた。
ショッピングモールにたどり着いたあたしたちは響たちの普段の遊びとやらに付き合った。
まずは雑貨屋で小物を見に行った。ふーん、このカップ良いわね……。
そして、映画館で安っぽい感動モノの映画を鑑賞……、ってあらみんな泣いているのね……。余計なことをいうところだったわ。
ソフトクリーム屋で買ったソフトクリームはまぁまぁ美味しかった。覚えておいてあげる。
アパレルショップは店員に子供服のコーナーを案内されて不愉快だったわ。
あと、翼の存在がバレて騒ぎになったから大慌てで逃げ出した。なんで、あんなに堂々とポーズがとれるのよっ。
そしてゲームセンターで……。
「翼さんご所望のぬいぐるみは、この立花響が必ずや手に入れてみせます!」
「期待はしているが、たかが遊戯に少しつぎ込みすぎではないか?」
「きぇぇぇぇぇっ!」
響は翼がかわいいと言ったぬいぐるみをUFOキャッチャーで取ろうと散財していた。
そんなに力んだら逆に取りにくいでしょう……。
「変な声出さないで」
「やっぱりバカね、この子……」
しかし、何とかなるものなのか、UFOキャッチャーのアームはブサイクなネズミのぬいぐるみを掴んで持ち上げた。
まぁ、結局落っこちたんだけど……。
「くっ、このUFOキャプチャー壊れてる! 私呪われてるかも……。 どうせ壊れてるならこれ以上壊しても問題ないですよね! シンフォギアを身に纏って!」
「アホなこと言ってないで貸してみなさい」
激高して訳のわからないことを叫ぶ響を見かねて、あたしはUFOキャッチャーにお金を入れた。
そして――。
「あっ、簡単にとれた……。うむ、取ってもらえて嬉しいのだが……、これでは立花が……」
「フィリア先輩、すごーい」
あたしは人間よりも精密な動きをすることに優れている。こんな玩具を自在に操るのは訳なかった。
「ううっ、フィリアちゃん、こんなに簡単に取れるんだったら、なんでもっと早く交代してくれなかったの?」
涙目の響が恨めしそうにあたしを見てきた。そんな顔しても一生懸命に頑張ってたから、声をかけづらいじゃない。
「えっ、あたしってほら、口下手だから……」
「絶対に嘘だよぉ。やっぱり、呪われてる私……」
「まぁまぁ、良いところ連れてってあげるから、元気出して、響!」
未来がフォローしてくれて、あたしたちはカラオケに行くことになった。
「おぉー! すごい! 私たちってばすごい! トップアーティストと一緒にカラオケに来るなんて!」
響は翼とカラオケに行くことが出来てとてもはしゃいでいた。
あたしは忘れがちになるけど、翼って一応どころか、ガッツリ芸能人なのよね……。
そして、演歌のイントロが流れた。
「ん? 響?」
「未来?」
お互いに指を差して首を振る二人。
「まさか、フィリアちゃん?」
「違うわよ……。この歌は……」
立ち上がり、マイクを持ったのは翼。彼女はこの曲が好きだった。理由はわからないけど……。
「一度こういうの、やってみたかったのよね」
「渋い……」
お辞儀をして歌いだそうとする翼に未来はそう呟く。
曲は恋の桶狭間……、タイトルの意味がまずわからない……。
「くぅー、かっこいいー」
響は熱唱する翼をカッコいいと聞き惚れている。
でも、あたしは翼が『裏切ったら切り刻む』とか言っている歌詞を高らかに歌う姿を見て、彼女の将来が心配でならなかった。
「フィリアちゃんは、何を歌うの?」
「えっと、あたしは――」
あたしは手早く知ってる曲を入力した。
って、ダメじゃない、この曲は……。
「《ORBITAL BEAT》……、ツヴァイウイングの……」
「だって、翼たちの曲くらいしか知らないから……、あたし……。響、一緒に歌ってちょうだい」
イントロの最初に反応した響にあたしは懇願した。よりによって、好きだからと言って、あの事件が起きた時の曲をなんであたしは選んだのよ……。
「フィリアちゃん、でも翼さんが……」
「一回、フィリアとも歌ってみたかったわ。いいでしょ?」
「翼……」
《ORBITAL BEAT》の奏のパートをあたしは歌う……。胸の核が熱くなる……、でも、あたしは確かに奏を実感出来た……。
そうよね、あなたはまだあたしの
「「――を越えてー♪」」
あたしと翼は《ORBITAL BEAT》を歌い終える。この曲を一緒に歌うなんて思ってなかったわ……。
「ごめんなさい、翼……。やっぱり奏みたいには力強く――」
「楽しかった……。また、フィリアと歌ってみたいわ」
翼はニコリと微笑んであたしを見つめてそんなことを言う。
歌うことが楽しい……、そうね、それがあなたの好きなことよね……。
「翼さーん!」
「疲れないフィリアはともかく、二人とも、どうしてそんなに元気なんだ?」
普段から鍛えていて体力には自信のある翼だったが、今日は疲れているみたいだ。
「翼さんがへばりすぎなんですよ」
「今日は慣れないことばかりだったから」
響の無礼な発言に未来がフォローを入れる。
「防人であるこの身は常に戦場にあったからな」
「遊びに行くって聞いたときは、本気で耳を疑ったわよ……」
翼とは二年以上の付き合いだが、奏を失って以来、遊びという言葉が飛び出したのは初めてだった。
そして、あたしたちは小高い場所にある公園に足を踏み入れた。
「本当に今日は知らない世界ばかりを見てきた気分だ」
翼は新鮮なものを見たという表情をしていた。
「そんなことはありません」
「お、おい、立花……、何を?」
響は翼の手を引いて走り出して、街が一望できる場所まで連れて行った。
「あっ……」
「あそこが待ち合わせした公園です。皆で一緒に遊んだ所も遊んでない所も全部翼さんが知ってる世界です。――昨日に翼さんが戦ってくれてから、今日に皆が暮らせている世界です。 だから、知らないなんて言わないでください」
そう、《ノイズ》から守ってもらった命がこれだけある。この景色は間違いなく翼の剣が守った世界だ。
「――そうか……。これが奏の見てきた世界なんだな……」
「そうね、奏の救った命も、あなたが救った命も繋がっているのよ。救うということは未来に繋げるってことだから……」
「うん……」
翼の顔は何かを決意したように見えた。
その翌日、あたしは翼から『あの事件』があったライブ会場で10日後に復帰ステージをやるという報告を受けた。
「過去は乗り越えられるって立花に言われたよ」
「ええ、そろそろ前を向かなきゃ、奏に笑われるわよ」
「そうね。それに、私は歌うことがやっぱり好きだから……、自分のために、皆に、世界中の人に歌を聞いてもらえるように頑張りたい」
「……そう思えるのなら、良かったわ」
あたしは翼からチケットを受け取って、彼女の心境の変化に安堵した。
これで翼は未来に向かって歩ける。
そして、時間はあっという間に過ぎて、翼のライブ当日になった……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「なんか悪ぃな、晩飯まで作ってもらって……」
「別に気にしなくていいわ。これから、出かける場所の近くだから寄っただけだし」
あたしはライブ会場に行くついでにクリスの部屋に寄って夕飯を作った。
弦十郎の代わりに彼女を見ているのだから、あたしはできるだけ時間を取って彼女の様子を見に行っている。
「和食も作れるんだけど、なぜか洋食のほうが得意なのよね……」
「お前、記憶がねぇって言ってたけど、マジで料理のプロか何かじゃねぇーか? うちのママはこんなに上手じゃなかったぞ」
「別にレシピどおり作っただけよ。司令もよく褒めてくれるけど……」
クリスはなぜか料理はとても喜んで食べてくれる。最初は『不味くない』と言っていたくらいだったのに、最近はこうやって『美味しい』って遠慮なく言うようになった。
簡単に作った、手の込んでない料理で大袈裟なことを言うものだから、彼女の人生がよほど不憫なものだったということは、それだけで予想がつく。
「特にこの前のケーキは美味かったぞ」
「あー、あのリンゴのケーキ? あれ、簡単に作れるのに二課でも評判良いのよね。すぐに出来るから、また作るわよ」
あたしは暇つぶしの一環で菓子を作ることがある。そして処理に困るので二課のみんなに配っていた。
最近は響がやたら食べるので、彼女の分は別に用意していたりする。
藤尭なんかは料理が趣味だからレシピを聞いてくるのだが、これだけはレシピはない。
なんとなく目分量で思いついたままに作っているのだ。だから、あたしに残っている数少ない記憶の一部なのかもしれない……。
ケーキを作る約束をクリスとした直後に、あたしのスマホに司令からの着信が入る……。
はぁ、嫌な予感がするわね……。
『《ノイズ》の出現パターンを検知した』
弦十郎の非情な報告を受けて、あたしは静かに怒りを燃やした。
「最初に言っとくけど、翼には連絡しないこと。あたしと響で殲滅させるわ」
『ふっ、響くんにもそう言われたよ』
「翼の晴れ舞台を穢すモノは許さない……。すぐに終わらせる……」
あたしは現場に向かおうと玄関に足を向けた。
「《ノイズ》が出たんだろ? あたしも行くぞ」
「……助かるわ」
短く答えてあたしとクリスは現場に急行した。
「コード、マナバースト」
あたしは補給をしながら、錬金術を駆使して《ノイズ》を切り刻む。
数が多い……。そして、あの要塞のような巨大な《ノイズ》……。
「うわぁっ!」
クリスは大量の《ノイズ》の集中攻撃と巨大な《ノイズ》の砲撃を受けて、吹き飛ばされる。
「クリスっ!」
さらに《ノイズ》の凶弾がクリスを襲おうとしたので、あたしはクリスの元に急いだ。
「でやっ!」
しかし、あたしより先に響が砲弾を蹴り破ってクリスを助けた。
「響っ!」
「あれ? フィリアちゃん、クリスちゃんと一緒だったんだ」
あたしとクリスの関係を知らない響は不思議そうな顔をしていた。
「そんなことより、敵の数が多い上に、あの巨大な《ノイズ》は一筋縄ではいかないわ。まずは一気に雑魚を殲滅して、大技であのデカブツを沈めるわよ!」
あたしは響に指示を出す。エネルギーを最大に上げてあいつを叩くわ……。
「フィリアちゃん、すごく怒ってるね」
「当然でしょ、翼の歌が聞けなかったんだから」
「うん!」
そして、あたしは音速を超えるスピードで次々と敵を撃破し、響も猛スピードで《ノイズ》を蹴散らす。
途中、響は巨大な《ノイズ》の砲撃を受けそうになったが、クリスのガトリング砲の援護を受けて事なきを得た。
「これで貸し借りはなしだっ!」
意外と律儀なクリスの人の良さを感じながら、あたしたちは一気に小型の《ノイズ》を全滅させたのだ。
「フィリアちゃん、あの《ノイズ》の動きを止められる?」
響は右腕に凄まじいエネルギーを集中していた。
「誰に向かって言ってるの? いいわ、トドメは譲ってあげる――。クリスっ!」
「そいつの前で馴れ馴れしくすんなって」
クリスはそんなことを言いつつ遠距離から砲弾を打ち出して、《ノイズ》を怯ませる。
――氷狼ノ一閃――
すべてを凍らせる冷気の一閃が巨大な《ノイズ》を凍りつかせる。
「今よっ! 響っ――!」
「うんっ! うぉぉぉぉっりゃぁぁぁぁっ!」
――すべてを貫く無双の槍のごとく
巨大な《ノイズ》は響の拳に身体を貫かれて崩れ去った……。
翼……、あなたの
だから、安心して突き進みなさい……。
崩れゆく《ノイズ》を見て、あたしは奏との約束をこの先も守り続ける決意を固めた――。
フィリアは暇な時間が多いので割と多趣味です。
いよいよ、フィーネとの対決が近づいてきました。
ここから、フィリアが何者なのかという話も絡めますので、ぜひよろしくお願いします!