【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

22 / 99
今回は一気に原作の11話の序盤まで話が進みます。
それではよろしくお願いします!


OTONAの持つ夢

「何がどうなっていやがんだ……」

 

「あら、クリス。ここに居たの? ひどい有り様ね」

 

 フィーネのアジトらしき城の場所を突き止めたあたしたちがその場所に行ってみると、中には武装した欧米人らしい死体とクリスが居た。

 

「フィリア、違う!  あたしじゃない!  やったのは――」

 

 クリスは動揺しながら、あたしに弁解しようとした。わかってるわよ、それくらい。

 そんなクリスの横を通り過ぎ、弦十郎の率いる二課のエージェントも現場に入って捜査を始める。

 

「あっ……」

 

 弦十郎は困った顔をしているクリスの頭にポンと手を乗せた。恥ずかしげもなく、よくやるわ……。

 

「誰もお前がやったなんてこと、疑ってはいない。全ては君や()()()()傍に居た彼女の仕業だ」

 

「えっ?」

 

 クリスは訳がわからないといった表情だ。

 

「風鳴司令!」

 

 そんなとき、エージェントの一人が弦十郎に声をかける。

 

「むっ?」

 

 弦十郎の視線とあたしの視線がそのエージェントの方に向く。

 死体の上に紙が貼られている。

 紙には――《I Love You SAYONARA 》と書かれていた。なんで、サヨナラはローマ字?

 

 そんなどうでもいいことを考えていた刹那――ベリっとエージェントは紙を剥がした。

 

 すると――。

 

 

 あたり一面で爆発が起こり、建物が崩れだしたのだ……。

 

 

 

「くっ、すみません。フィリアさん」

「うぅ、危ないところだった」

 

 咄嗟に近くのエージェントを爆発から庇ったあたし。

 

 

「どうなってんだよ、コイツは……」

 

「衝撃波は発勁でかき消した」

 

 そして、巨大な瓦礫を片手で受け止め、謎の力で衝撃波を消してクリスを守った弦十郎。

 また、クリスを抱きしめてるし……。

 

 

「そうじゃねえよ!」

 

 クリスは怒鳴りながら弦十郎の腕を振りほどいた。

 

「何でギアを纏えない奴があたしを守ってんだよ!?」

 

 そして、弦十郎をキッと睨みつけて疑問をぶつける。

 

「俺がお前を守るのは、ギアのあるなしじゃなくて、お前よか少しばかり大人だからだ」

 

 弦十郎はまっすぐにクリスを見つめて、堂々と答えた。

 

「大人だとっ? あたしは大人が嫌いだ! 死んだパパとママも大嫌いだ!   とんだ夢想家で臆病者! あたしはあいつらと違う!  おセンチで難民救済?  歌で世界を救う?  いい大人が夢なんて見てるんじゃねえよ!」

 

 クリス……。あなた、それは本心なの? あたしには彼女のセリフからは哀しみしか伝わらなかった。

 

「大人が夢を、ね……」

 

 弦十郎はクリスのセリフをつぶやく。

 

「本当に戦争を無くしたいのなら戦う意志と力を持つ奴を片っ端からぶっ潰していけばいい! それが一番合理的で現実的だ!」

 

「そいつがお前の流儀か。なら聞くが、そのやり方でお前は戦いを無くせたのか?」

 

 クリスの極論に弦十郎はストレートな疑問をぶつける。

 

「くっ! それは――」

 

「いい大人は夢を見ないと言ったな。そうじゃない。大人だからこそ夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだってちっとは増える。子供の頃はただ見るだけだった夢も大人になったら叶えるチャンスが大きくなる。夢を見る意味が大きくなる 」

 

 言いよどむクリスに、弦十郎は大人だからこそ夢を見る価値があると語った。大きなことを成し遂げるだけの力があるからこそ、意味があるのだと。

 

「お前の親は、ただ夢を見に戦場に行ったのか?」

 

「うっ……」

 

「違うな。歌で世界を平和にするっていう夢を叶える為、自ら望んでこの世の地獄に踏み込んだんじゃないのか?」

 

 クリスの両親も力を尽くすことで、大きな夢を叶える意志を持って戦場に行ったのではないかと弦十郎は問いかけた。

 

「なんで、そんなこと――」

 

「お前に見せたかったんだろう。夢は叶えられるという揺るがない現実を! お前は嫌いと吐き捨てたが、お前の両親はきっとお前のことを大切に思っていたんだろうな」

 

「うっ、ぐっ……」

 

 両親の想いを感じとり、クリスは涙を浮かべた。

 そして、弦十郎は彼女を力いっぱい抱きしめた。

 

「うっうっ……ぐすっ……」

 

 クリスは泣いた……。抑えていたモノが爆発したように。子供のように泣きじゃくる。

 涙を流しながら……。

 

 やっぱり、弦十郎、あなたに任せてよかったわ……。

 

 

 

 でも……。

 

 

 

 

「長いわよっ! 弦十郎、いつまで抱きしめてんのよ、クリス、いい加減に泣き止みなさいよ!」

 

 エージェントたちはとっくに撤収して、あたしはさすがに友人と父親を放って置くわけにはいかないと思って静観していた。

 

 この人たちはあたしが見てるのを忘れていたんだろう。30分くらい、このままだった。

 

 

「えっ、あっ、フィリア……! あっあたしは別に……」

 

 クリスはあたしがずっと見ていたことに気付いて、真っ赤に顔を染めて、身振り手振りで何かを否定しようとした。

 

「フィリアくん、このくらいの時間は問題なかろう」

 

「問題しかないわよ! 父親が若い女の子を抱きしめてるのを数十分見させられるって結構な地獄よ!」

 

「すっすまん……。だが……、いや、悪かった」

 

 弦十郎は言い訳を諦めて謝った。

 まぁ、これでクリスも少しは大人を信用するでしょう。

 

 

 

 

 

「まだ、心の整理がつかねぇから――」

 

「それなら、いくらでも待つさ。フィリアくんの友人をな」

 

 クリスを二課に誘ったが、心が追いつかない部分もあるから待ってくれと言われた。

 これでも、大きな進歩だ。

 

「お前はもうひとりぼっちじゃない。お前が行く道を行く道にはフィリアくんだけじゃない、俺たちも遠からず共に行く道となるだろう」

 

「そうかもな……。とりあえず、友達の親父の顔くらい立ててやるよ、手ぶらじゃ格好付かないだろ? 《カ・ディンギル》……、この言葉を調べてみろ……。」

 

「ん?」

 

 クリスは聞き慣れないキーワードを口に出した。

 

 

「フィーネが言ってたんだ。《カ・ディンギル》って。そいつが何なのかわかんないけど、もう完成している、みたいなことを……」

 

「《カ・ディンギル》……、聞いたことないわね……」

 

 あたしも弦十郎も首をひねる。しかし、フィーネの計画を知るための重要な言葉らしい。

 

「後手に回るのは終いだな。こちらから打って出てやる。行くぞ、フィリアくん」

 

 何かを決意した弦十郎は車を出そうとする。

 

「ええ……。クリス、じゃあ、この前渡した携帯にまた連絡するわ」

 

「ん? ああ……。わかった…… 」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 あたしと弦十郎は司令室に戻り、翼と響に通信を繋げた。

 

『はい、翼です』

 

『響です』

 

 翼と響が通信に出た。

 

「収穫があった。了子くんは?」

 

「まだ出勤していません。朝から連絡不通でして……」

 

 友里は弦十郎の問にそう答える。なるほど、朝からねぇ……。

 

「そうか……」

 

 弦十郎は小さく返事をした。

 

『了子さんならきっと大丈夫です。何が来たって私を守ってくれた時のようにドカーンとやってくれます』

 

 響が何やらおかしなことを言っている。了子があなたを守った?

 

『いや、戦闘訓練もロクに受講していない櫻井女史にそのようなことは……』

 

『え? 師匠とか了子さんって人間離れした特技とか持ってるんじゃないんですか?』

 

「そんなわけないでしょ。司令だけよ、人間をやめたのは」

 

「おいおい……」

 

 あたしのツッコミに弦十郎が困った顔をこちらに向けた。

 

『あれっ、了子さんだ……』

 

 了子から通信が繋がった。SOUND ONLY……、音声だけ? 何があったの?

 

『やぁっと繋がった。ごめんね、寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良くなくて……』

 

「無事か?  了子くん、そっちに何も問題は?」

 

 いつもの軽い口調の了子に弦十郎は何かあったのかと、気にかける。

 

『寝坊してゴミを出せなかったけど、何かあったの?』

 

『良かったー』

 

「ならばいい。それより聞きたいことがある」

 

 了子の安堵する響と、話を進める弦十郎。

 

『せっかちね、何かしら?』

 

「《カ・ディンギル》、この言葉が意味するものは?」

 

 弦十郎はフィーネの作ったという《カ・ディンギル》について了子に質問した。

 

『《カ・ディンギル》とは、古代シュメールの言葉で高みの存在……、転じて、天を仰ぐほどの塔を意味しているわね――』

 

 天を仰ぐほどの塔? そんな建造物なんて作れるかしら?

 

「何者かがそんな塔を建造していたとして、何故俺たちは見過ごしてきたのだ?」

 

 弦十郎も同様の疑問を口にする。大きな塔なんて目立つものがあたしたちの目に入らないはずないからだ。

 

『確かに、そう言われちゃうと……』

 

 響は訳がわからないという表情だった。

 

「だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな!」

 

『了解です』

『了解』

 

 弦十郎は最後の戦いが近いと読んで、みんなに司令官として檄を飛ばした。

 

『ちょっとヤボ用済ませてから私も急いでそっちに向かうわ』

 

 了子もこちらに向かうとのことらしい。ヤボ用が気になるけど……。

 

 

 

 

 二課の総力を結集して《カ・ディンギル》について情報を集めているが有用なものは中々見つからない。

 

 

「些末なことでも構わん。《カ・ディンギル》についての情報をかき集めろ!」

 

 弦十郎がそう指示を出す中、《ノイズ》出現を知らせる警報が鳴り響いた。

 相変わらず、嫌なタイミングね……。

 

「飛行タイプの超大型ノイズが3体――いえ、もう1体出現!」

 

 藤尭がすばやく報告する。

 

「すぐに、あたしが出るわ! 弦十郎、響と翼に連絡を!」

 

 しかし、あたしが司令室を出ようとすると、弦十郎があたしの腕を掴んだ。

 

「フィリアくんはここで待機するんだ。やってもらいたいことがある……」

 

「待機ですって? そんな悠長なこと言っていると……」

 

「ここは、響くんと翼を信じるんだっ!」

 

 弦十郎は苦渋に満ちた顔であたしにそう伝えた。この人が無意味なことを言うはずがないわね……。

 

「わかったわ。ちょっと、電話だけさせてもらうわね……」

 

 あたしはスマートフォンを取り出してある番号に電話をかけた――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「学校が……、 響の帰ってくるところがっ! 《ノイズ》? 響……、もう私……」

 

 リディアン音楽院の廊下でシェルターに逃げ遅れた未来が三体の《ノイズ》に襲われていた。

 

 ――神焔一閃――

 

 あたしは素早く錬金術で剣に炎を纏わせて、《ノイズ》を切り裂いた。

 

「無事でよかったわ、未来……」

 

「フィリア先輩? 先輩、その体は……」

 

 あー、そういえば未来はあたしが《ノイズ》を倒せるのは知ってたけど、あたしが人形ってことは言ってなかったわね……。

 

 

 結果的に弦十郎の判断は正しかった。

 響と翼、そしてあたしが助っ人を頼んだクリスが《ノイズ》を撃退してる頃、リディアン音楽院もまた、大量の《ノイズ》に襲われてしまっていた……。

 

 あたしは《ノイズ》を撃退していたがさすがに数が多すぎて校内への侵入を許してしまった。

 そして、倒しきれずに学校内に潜り込んだ《ノイズ》を追ってここまでたどり着いたのだ。

 

「とにかく、ここを離れるわよ! 緒川っ!」

 

「分かりました、僕がエレベーターまで未来さんを護衛します。さぁ、こちらに」

 

「…………」

 

 ちょうど、近くにたどり着いていた緒川に声をかけて、彼に未来を連れて逃げるように指示を出した。しかし、未来は緒川を無視する。

 

「未来、この人は緒川慎司じゃないわ。彼の双子の兄の緒川慎太郎よ」

    

 あたしは先日のことを思い出して、咄嗟にでまかせを言った。

 

「えっ、フィリアさん? くっ、――初めまして、慎太郎です……。三十六計逃げるに如かずと言います。付いてきてください」

 

「はい……」

 

 あたしは手早く追ってくる《ノイズ》を撃退して、緒川たちの後を追いエレベーターに乗った。

 

 

『《ノイズ》は大体始末したわ。これから緒川と共に、未来をシェルターまで案内する』

 

「わかった。気をつけろよ」

 

 あたしが弦十郎に現状を報告した。

 

『それよりも司令……』

 

 緒川はあたしから通信機を受け取り弦十郎に話しかける。

 

『むっ?』

 

「《カ・ディンギル》の正体が判明しました。」

 

 なんと、緒川は《カ・ディンギル》の正体を掴んだと言ってきた。なんだかんだ言って仕事は出来るのよねこの人……。

 

『なんだとっ!?』

 

「物証はありません。ですが、《カ・ディンギル》とはおそらく――かはっ――」

 

 驚く弦十郎に《カ・ディンギル》のことを告げようとしたその時……。

 

 超スピードで通信機は破壊され、空からネフィシュタンの鎧を着た女が降ってきて、緒川の首を締める――。

 

「まさか、いきなり降ってくるとは思わなかったわよ……。随分と趣味の悪い格好ね、了子……。いや、フィーネ!」

 

 あたしは未来を後ろに下げて、ミラージュクイーンをフィーネに向けて構えた。




フィリアは司令室に待機して《ノイズ》の撃退してましたが、一人では時間が殲滅に時間がかかってしまったので、それなりに被害は出てます。原作よりはマシですが……。
そして、ついにフィリアVSフィーネが幕を開けます。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。