【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします!
「ふん、ガラクタ風情が私に剣を向けるか……。何か妙なことをしてみろ、この男の首を折るぞ……」
了子、いや、フィーネは冷たい視線をあたしに送る。
あたしと弦十郎は調査部の報告から了子がフィーネだという結論にたどり着いていた。
彼女がそろそろ動き出すということも……。だから、彼女の陽動に乗って翼と響を敢えてここから遠ざけたのだ。あたしという戦力のみを残して……。
「こうも早く悟られるとは……、何がきっかけだ?」
「塔なんて目立つ物を誰にも知られずに建造するには地下へと伸ばすしかありません。そんなことが行われているとすれば特異災害対策機動部二課本部、そのエレベーターシャフトこそ《カ・ディンギル》……」
「なんですって、これが《カ・ディンギル》……」
あたしはそこまで頭が追いついてなかったので驚いた。なるほど、それなら合点がいく。
「そして、それを可能とするのは……」
「櫻井了子ってわけね……。大胆にしてやられたってことかしら?」
あたしは緒川のセリフのあとに続けた。
「漏洩した情報を逆手に、上手くいなせたと思ったのだが……」
フィーネがそう言った瞬間、エレベーターは最下層に到着する。
そして、緒川はその瞬間の僅かなスキを見逃さず、フィーネの手から脱出して銃弾を彼女に放つ。
しかし、ネフィシュタンの鎧を纏ったフィーネには銃など通じず、フィーネは彼にムチを伸ばした。
「やらせないわっ!」
あたしは音を置き去りにして、フィーネと緒川の間に入り、彼女の攻撃をミラージュクイーンで弾いた。
「偽物の人形がっ! 私に刃を向けるなっ!」
フィーネはあのときのクリスを遥かに凌駕するスピードでムチを伸ばす。
くっ、あたしがスピード負けしてる? そんなバカな……。
スピードだけはシンフォギアにも勝るはずのあたしの動きを持ってしても、フィーネの攻撃は捌ききれずに、あたしは遂にバランスを崩してしまう。
錬金術を使った大技もフィーネに簡単に受け止められてしまう。
くっ、エネルギーを使い過ぎた。持ってきたお菓子はまだあるけど、食べるスキがない……。
正直言ってジリ貧だった。フィーネの目的はデュランダルだ……。ここを通すわけには……。
あたしは死力を尽くしてフィーネに立ち向かった――。
「姦しい!」
「がっ……」
「フィリア先輩!」
フィーネの攻撃があたしの胸を貫く――。未来が悲鳴のような声を出した。
あたしの弱点は知ってて当然よね……。辛うじて核への直撃は避けたが、身体のエネルギーが一時的に回復に急速に回された影響で動けなくなり、あたしは地面に伏した。
「ダメ……、フィーネ……」
彼女がデュランダルの保存された部屋のドアを通信機で開けようとしている――。
しかし、ドアは開かなかった。
「行かせません!」
緒川がフィーネの通信機を狙撃して破壊したからだ。
「デュランダルの元へは行かせません! この命に代えてもです!」
緒川がフィーネに向かってそう宣言した。ナイスよ、緒川……。今のうちに回復を……。
あたしが何とか身体を動かして、口の中にチョコレートを放り込んだとき、フィーネの殺気が増したのを感じた。
いいわよ、この身体がどんなに千切れようともあなたを倒すわ。
あたしが覚悟を決めて立ち上がった――。
「今度は外さないぞ、ガラクタ――」
フィーネがあたしの胸の穴を見据えてムチを構える。
――そのとき、壁に突然、穴が空き、大男がフィーネの前に立ちふさがった。
「待ちな! 了子……」
風鳴弦十郎がこの場に駆けつけたのだ……。
「私をまだその名で呼ぶか……」
フィーネは弦十郎を睨みつける。
「女に手を上げるのは気が引けるが……。人の娘の体に穴を空けやがって、お前をぶっ倒す!」
弦十郎はあたしの胸の穴を見て怒っているようだ……。
「心配ないわ、もう直るから……」
あたしは弦十郎の隣に立った。
「調査部だって無能じゃない。米国政府のご丁寧な道案内でお前の行動にはとっくに行き着いていた。後は燻り出すため、敢えてお前の策に乗りシンフォギア装者を全員動かしてみせたのさ」
「陽動に陽動をぶつけたか。食えない男だ。だが! この私を止められるとでも? お前と家族ごっこをしてるガラクタ人形じゃ、切り札にもならんぞ」
「応とも! ウチの娘を甘く見るなよ! 一汗かいた後で話を聞かせてもらおうか! いくぞ、フィリアくん! 俺に合わせろっ!」
あたしと弦十郎は同じ構えでフィーネに向かい合う!
「小賢しい!」
フィーネは弦十郎にムチを伸ばすが、弦十郎はあたし以上のスピードでそれをジャンプして躱して天井を蹴ってさらに加速し、ミサイルのようなパンチを繰り出す。
「くっ――」
フィーネはかろうじて、それを掠らせて避けるが――。
「ダメじゃない、あたしから気をそらしたら――」
――掌底勁打――
弦十郎の攻撃を避けたスキを突いて、あたしは最大出力のエネルギーを込めて、フィーネに掌打を与える。
「かはっ――」
弦十郎の掠った攻撃と、あたしのクリーンヒットした掌打がネフィシュタンの鎧にヒビを入れる。
「この私をこうも簡単に捉え、完全聖遺物を傷つけるとは……」
「お前は家族ごっこだと馬鹿にするが、俺とフィリアくんには血よりも強い絆があるっ! それは信頼だっ! 言葉など無くても俺には彼女の動きがわかる!」
「弦十郎……」
フィーネの動揺に弦十郎は当然のような顔をして、あたしとの信頼関係の強さを語った。
恥ずかしいから、大声でそんなこと言わないでほしい。
「ふん、そんな繋がりなど脆く断ち切れる! お前は何も知らぬから、そこのガラクタを信じられるのだ……。冥土の土産に教えてやろう。お前がこの女の父親と言うのなら、母親は私だ――」
フィーネが突然、あたしの母親だと言い出した。この女、何を……。
「――何をいい加減なことをっ! あなたの娘があたしなら、身元なんてすぐに分かったでしょう? ていうか、あなた独身じゃないの?」
あたしは信じることが出来ずに反論した。でも、フィーネの名から感じる懐かしさ、そして、繋がり……、これらがあたしの反論の邪魔をする。
「お前を腹を痛めて産んだ母など居ない。お前の人間時代の体は私に創られた、私のクローンだ」
「くっクローンだとっ!?」
フィーネはあたしを自らのクローン人間だと言い放った。あたしが……、そんな……。
「フィリア計画、被験体、第一号……。聖遺物と融合をした場合、私の体がどうなるのか知りたくてな……、自らのクローンを作って研究をしていたのだ。表向きは孤児として拾われた子の一人としてな……」
フィーネはあたしを自分の知識の糧にするためだけに実験用に生み出したと説明した。
「そんな、あなたの実験の為だけに、あたしは生まれたっていうの? じゃあ、人形になったのは……?」
それなら、あたしを人形にしたのはフィーネということなのだろうか。あたしは声を震わせた……。
「それは知らん。早く実験をするために10歳程度の身体まで成長を急加速させて作った結果、私の力を1割も引き継いでない欠陥品として生まれたからな。実験は諦めて、捨てる場所にも困ったから米国の研究機関に売り払ったんだ。だから、お前に埋め込んだ浄玻璃鏡の欠片から痕跡を見つけなかったら気付かなかっただろう。思わぬ再会をした上に、面白いことになっていたんでな、今日まで生かしてやってたんだ」
「あたしが……、クローン……。そうか、記憶なんて戻っても、あたしは……」
そう、人形以前にあたしはまともな人間ではなかったのだ。ずっとモノとして利用され続けただけだったようだ。
よく考えたら、まともな人間が簡単に人形にされるはずがない……。
「ふっ、どうだ? これは実験用のモルモットみたいなモノだぞ。人格なんて私の残りカスを与えてやっただけのものにすぎん。こんなモノをお前は信じられるのか?」
フィーネはあたしが道具として創られたことを弦十郎に語った。
「言いたいことは――それだけかっ! フィリアくんの出生など関係ないっ! この子は誰よりも優しい俺の自慢の娘だっ! これ以上、俺の娘をモノ扱いするなっ!」
「まだ言うか! 愚か者めっ! 肉を削いでくれるっ!」
激高した弦十郎にムチを伸ばすフィーネ。
弦十郎はムチをガッチリ掴んで、とんでもない力で引っ張って、フィーネを引き寄せる。
そして、フィーネの腹に向かってミサイル以上の火力の一撃を与える。
「またも、完全聖遺物を退ける――? どういうことだ!?」
「知らいでかっ!? 飯食って映画見て寝る! 男の鍛錬はそいつで十分よ!」
弦十郎はフィーネの疑問に無茶苦茶な理屈をぶつけた。
「なれど人の身である限りは!」
フィーネがあの杖で《ノイズ》を繰り出そうとした。
「させるかっ!」
しかし、弦十郎は大きく踏み込むことで瓦礫を浮き上がらせて、それをさらに蹴り飛ばす。
見事にそれは杖に命中し、弾き飛ばされて天井に。
「ノイズさえ出てこないのならっ!」
弦十郎はこの瞬間を好機だと捉えてフィーネに肉迫する。
「これをお前が娘だと言うのならっ」
「きゃっ……」
フィーネは密かにあたしの近くまで伸ばしていたムチで、あたしの身体を巻き付けて、盾のようにして弦十郎の前につき出した。
弦十郎の拳が止まった。
「司令、あたしの身体なら大丈夫よ。知ってるでしょ、再生するんだから――」
「甘い男だっ!」
フィーネは弦十郎の体をムチを使って貫いた!
「がはっ――」
弦十郎はあたしの目の前で大量の血を流して倒れてしまった。
「――とっ父さんっ! くっ、離せっ! お前は絶対に許さないっ!」
「煩い人形だ……、完全聖遺物と融合を果たした今、お前のような欠陥品に用はない」
フィーネがそう言った瞬間、あたしの胸の核が彼女のムチによって掴まれて……、抉り出された……。
そして、あたしの意識はこれまでにないほど深い暗闇へと叩き落とされた――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
真っ暗な闇――あたしは――死んだのかしら……。
「死んだのかしら……、だって? 笑わせないでくれ。君には大いなる力が眠っている。なんせ、僕が創り出したんだから!」
暗闇の中であたしは、あたしを人形にした大馬鹿者の声を聞いた。
「あなたはいつかの大馬鹿ね……、そんな力があったとしても意味ないわ。もう手遅れよ……。あのときと一緒、あたしは何も守れなかった……」
「馬鹿は君だ、フィリア。これは君が欲した力だぞ! なぜ忘れる!? 君は憧れていたじゃあないか――シンフォギアにっ! 僕は君の望みを叶えたんだ! そりゃあ不可抗力でちょっとばかし身体に変化はあったかもしれないが、性能は完全聖遺物ごときに負けるはずがないじゃないか!」
白髪の大馬鹿者はあたしがシンフォギアに憧れていたとか、訳のわからないことを言う。
「さぁ、纏うがいい! 聖遺物に僕の
気持ち悪い口調で捲し立てる大馬鹿者……。
「コード、ファウストローブ……、これが君を神域に昇華する……。目にもの見せてやれ、君を道具としてしか見なかった哀れな母親にっ!」
最後にそれだけ言い残して白髪の大馬鹿者の声は消えた。
何よ、勝手なことばかり言って……。
大体、もうあたしは核を抉り出されて……。
あたしの意識はまた途切れそうになった……。
しかし――。
――フィリアくん、フィリアくん……。
暗闇の中で次に聞こえたのは……、あたしを娘だと呼んでくれた、父の声……。
弦十郎の声……、えっ、弦十郎?
「とっ、父さん……」
「無事かフィリアくん!」
あたしが目を開くと目に入ったのは精悍な父の顔――。
あたし、まだ、生きてたんだ――。
フィリアの人間時代の秘密の一部が明かされました。
しかし、肝心の部分はまだ謎のままです。
少しずつこれから明らかになりますので、その点もぜひ見守ってあげてください。