【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
今回からオリキャラを増やしますが、受け入れられるかどうか少し不安です。
それではよろしくお願いします!
黒いガングニール、そして……
「悪かったな、フィリア。緒川さんの代わりに付いてきてもらって……」
「別に構わないわよ。任務も響とクリスが元々担当であたしは待機だったし。それにしても、緒川が風邪引くなんて初めてね」
「後で何か見舞いの品でも買おう」
「そうね……。でも、今はライブを成功させることだけを考えなさい」
今日は翼のライブなのだが、普通のライブではない。
《マリア=カデンツヴァナ=イヴ》――デビューからたった二ヶ月で全米ヒットチャートの頂点にまで上がった超大物アーティストとのコラボレーションライブなのだ。
もちろん、緒川がマネージャーとして同行するはずだったのだが、彼が突然、風邪を引いて寝込んだ。熱くらいで動けなくなる彼ではないが、翼に感染すわけにもいかないので、彼の休暇中にマネージャー業を代行してた私が翼に同行することとなった。
「しかし、立花たちは上手くやっているだろうか?」
「あら、こんなときまで、後輩の心配とはあなたらしいのね。大丈夫よ。彼女たちだって、もう一人前なんだから、信じてあげなきゃ」
「ふっ、そうだな。少々彼女らに失礼なことを言った……」
立花響と雪音クリスは今、任務にあたっている。
特異災害対策機動部と、米国連邦聖遺物研究機関F.I.S.が協力体制をとり、最優先の調査対象としている《サクリストS》、つまり《ソロモンの杖》を米軍岩国ベースまで搬送する任務を彼女らは預かっているのだ。
《ソロモンの杖》とは、フィーネが使っていた《ノイズ》を召喚する、あの杖の名称である。
F.I.S.の研究者で生化学者のジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス博士――通称ウェル博士によれば、《ソロモンの杖》の解析こそが、《ノイズ》への新たな対抗手段発見への近道とのことである。
あたしはこのウェル博士との面識はないが、顔写真は見た。
うーん、どっからどう見てもあの大馬鹿者にそっくりなのよね……。まぁ、世の中には似ている人間が三人は居るって言うけれど……。
で、今回の搬送任務にはこのウェル博士とやらの護衛も含まれているらしく、響たちは目下任務遂行中なのである。
「それより、翼……」
あたしが翼に話しかけようとしたその時である。
ノックの音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
あたしは返事をすると扉が開き、二人の女性が入ってきた――。
一人は本日の主役のひとり、マリア=カデンツヴァナ=イヴ。ピンク色のロングヘアに青い目の凛とした表情のスタイルの良い女性だ。
もう一人は銀髪のポニーテールで琥珀色の目をした女性。黒いスーツに白いシャツを着ていて彼女のマネージャーのように見えた。彼女もマリアに劣らずスタイルがいいわね。なんか、ムカつくわ……。
二人とも翼よりも長身で、欧米人って感じだった。
「きゃー、マリアちゃん。本物の風鳴翼よ、ツバサが目の前にいるなんて、興奮しなーい?」
「フィアナっ! はしゃぐな、みっともない! あなたは仕事をキチンとしなさい」
「はいはい。もうマリアちゃんはノリが悪い子なんだからぁ。本日、共演させていただきます、マリア=カデンツヴァナ=イヴと、その美人マネージャーのフィアナ=ノーティスでーす。今日はお互いにいい仕事をしましょー」
フィアナはニコニコしながら、名刺を翼に渡した。
「これは、ご丁寧に。風鳴翼です」
翼は名刺を受け取り挨拶を返す。
「ツバサちゃんって、実物で見るほうが断然可愛いのねー。モテるでしょー?」
「いえ、私は別に……」
「うっそー、駄目よ、女の子は恋してそして、美しくなるのよっ。――っ、痛ったーい。何するの? マリアちゃん」
ズイッと顔を近づけて、訳のわからないことをまくしたてるフィアナを見かねたマリアは彼女の頭を小突いた。
「余計なことを言わないっ! ――今日はよろしく。せいぜい私の足を引っ張らないように頑張ってちょうだい」
髪をなびかせながら高飛車な態度をとるマリアからは大物のオーラを感じた。
さすがは全米トップに登りつめたアーティストね。
「ごめんねー。マリアちゃんったら、ケータリングが美味しかったら急に強気になるのよぉ」
「本当に黙りなさい」
「ああん、ツバサさんともっとお話したいのにー」
フィアナはマリアに引きずられるようにして、退室して行った。なんか、強烈だった。いろんな意味で……。
「で、どうだった? 今夜のもう一人の主役の第一印象は?」
あたしは翼にマリアの印象を尋ねてみた。
「なんというか、こう、可愛いタイプだな」
「ん? 可愛いタイプ? そうかしら?」
翼の印象にあたしは首をひねる。
「彼女はこう、散らかった部屋を片付けられずに、べそをかいているような――手がかかるけれど、かわいいタイプに違いない」
「何それ? 似たもの同士ってこと?」
どう考えても、それは翼自身というような印象だったのであたしはそんなことを言ってしまった。
「うっ……、そっそれは……。しかし、私が気になったのはマネージャーの方だ。彼女はフィリア、君に実に似ている」
「はぁ? 全っ然違うわよ。そりゃあ髪の色と目の色は同じかもしれないけど、性格は全く別でしょ」
あたしは不本意なことを翼に言われて反論した。
「いやいや、内面も似てるぞ。世話焼きで、優しいところとか。余計なひと言が多いところとか……」
「あなたがあたしのことをどう思ってるのかはよーくわかったわ。あんな、マネージャーのことはどうでもいいから、マリアに負けないように頑張りなさい」
あたしは腑に落ちないが飲み込んで、翼に檄を飛ばした。
「ああ、彼女と歌で通じ合える。そんなステージにしたいものだ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『この盛り上がりは皆さんに届いていますでしょうか? 世界の主要都市に生中継されているトップアーティスト二人による夢の祭典! 今も世界の歌姫マリアによるスペシャルステージにオーディエンスの盛り上がりも最高潮です!』
「状況はわかったわ。翼には……」
『そうだな。《ノイズ》の襲撃と聞けば今日のステージも放り出しかねない』
「ええ、あたしはいつでも出られるように準備しておくわ」
あたしは弦十郎からの電話を切った。まさか、《ソロモンの杖》を搬送した米軍基地に《ノイズ》が襲撃とは……。
嫌な予感がするわね……。
「司令からは一体何を?」
「今日のステージを全うして欲しい、と言ってたわよ」
あたしは翼の質問をはぐらかした。今日は彼女に仕事を放棄させるわけにはいかない。
「はぁ、お前は自分の表情の変化に乏しいと思っているかもしれないが……。その瞳に宿る力の変化に長年の付き合いの私が気付かないはずがなかろう」
一瞬で翼に嘘がバレた。まったく、あなたくらいよ、そんなことがわかるなんて……。
「ふぅ、かなわないわね。お手上げよ。でも……」
「お時間そろそろでーす。お願いしまーす」
あたしが口を開いたとき、係の人が翼にスタンバイをお願いした。
「はい。今行きます。あっ……」
そして、翼は反射的に返事をする。やっぱり、あなたは……。
「今日はあなたの歌を聞きに来た人たちに歌を捧げる風鳴翼でいてあげて。こっちはあたしに任せなさい」
「不承不承ながら了承しよう。詳しいことは後で聞かせてもらうぞ、フィリア……」
あたしが声をかけると、翼は覚悟を決めた表情でステージの方へ向かった。
ええ、今日は思いっきり楽しんで、みんなに希望を与えなさい!
――QUEENS of MUSIC――
“Maria & Tsubasa”
イントロが流れてきてライブの始まりを告げる。
『3、2、1 Ready go Fly!』
爆音とともに翼とマリアが派手に登場する。
『果てなき――♪ 譲れない――♪ ――不死なる――』
出だしから会場は大盛り上がりで、この場に遅れている響とクリスが可哀想なくらいだ。
サビまで行くと、熱気が舞台裏まで届いて最高潮の盛り上がりを見せた。
『――Phoenix so――♪』
そして、一曲目の不死鳥のフランメを二人は歌い終えた。
「ありがとう、みんな!」
「「ワァーッッッ」」
翼の言葉に大歓声が返事をする。
「私はいつもみんなからたくさんの勇気を分けてもらっている。だから今日は私の歌を聞いてくれる人たちに少しでも勇気を分けてあげられたらと思っている」
「「ワァーッッッ」」
翼は観客たちに感謝の気持ちを告げている。やっぱりあなたの歌には素晴らしい力があるわ。
「私の歌を全部世界中にくれてあげる! 振り返らない、全力疾走だ! ついてこれる奴だけついてこいっ!」
「「ワァーッッッ」」
マリアも負けじとマイクパフォーマンスをする。彼女の歌も凄い力を感じた……。
「今日のライブに参加出来たことを感謝している。そしてこの大舞台に日本のトップアーティスト風鳴翼とユニットを組み、歌えたことを――」
リップサービスなのかもしれないが、彼女は翼を称えるような言葉を発していた。
「私も素晴らしいアーティストと巡り会えたことを光栄に思う」
翼もマリアを認めて、二人は固い握手をする。
「私たちは世界に伝えていかなきゃね。歌には力があるってことを……」
マリアは歌の可能性について語り始めた。
「それは世界を変えていける力だ」
翼もそれに同調する。翼の言うとおり似た者同士だったのかもしれないわね……。
「そして……、もう一つ!」
マリアがスカートを翻す……。
「なっ……、まさか、どうして?」
あたしは目を疑った。なんと、ステージの周りに次々と《ノイズ》が召喚されたのだ。
当然、観客席はパニックになる……。なんてことをしてくれたの……。
「うろたえるなっ!」
マリアはそう言い放つ。
くっ、《ノイズ》が動かないってことは制御出来てるってこと。つまり、観客は全員人質……。これじゃ迂闊に攻撃できない。
あたしは何とかこの状況を打破できないか思案した……。
そうだ……、あの、マリアを《ノイズ》をけしかけるよりも、疾く取り押さえることが出来れば……。あたしのスピードなら、何とかできるはず。
「コード……」
「おっとぉ、駄目よぉ、お嬢ちゃん。妙なことをすると……、わかってるでしょぉ」
背後にはフィアナが立っていて、あたしにゆっくり忠告する。
ちっ、あたしの情報も漏れてるってこと? 翼、無茶したらダメよ……。
あたしは翼に取り付けている通信機がオンになったのを確認して、向こうの様子を音声を聞きながら見ていた。
『怖い子ね。この状況にあっても私に飛びかかる気を伺っているなんて、でも逸らないの。オーディエンスたちがノイズからの攻撃を防げると思って?』
『くっ……』
翼はマリアに反撃する機会を伺っていたようだ。
『それに、ライブの模様は世界中に中継されているのよ。日本政府はシンフォギアについての概要を公開しても、その装者については秘匿したままじゃなかったかしら? ねぇ? 風鳴翼さん』
『甘く見ないでもらいたい。そうとでも言えば、私が鞘走ることを躊躇うとでも思ったか?』
いや、あなたが全世界にシンフォギア装者ってバレるわけにはいかないわ……。
『ふふっ。あなたのそういうところ、嫌いじゃないわ。あなたのように誰もが誰かを守るために戦えたら……。――世界はもう少しまともだったかもしれないわね』
『なんだと……? マリア=カデンツァヴナ=イヴ、貴様は一体……?』
本当に何が目的なの? この子たち……。
『そうね。そろそろ頃合いかしら? 私たちはノイズを操る力を持ってして、この星の全ての国家に要求する!」
『世界を敵に回しての口上!? これはまるでっ!』
「宣戦布告ってことかしら?」
「ピンポーン、大正解でぇす」
フィアナはニヤニヤ笑いながらそんなことを言ってくる。
イラっとするわね……。
『そして……』
マリアはマイクを放り投げた。
『Granzizel bilfen gungnir zizzl……』
『バカなっ!?』
「嘘でしょ……。まさか、聖詠を……」
マリアは聖詠を唱えて変身を始めた……。間違いない。あれはシンフォギアだ……。
しかも、あのギアは……。
「黒いガングニールって……。何の冗談よ……」
「私は……。私たちはフィーネ。そう――終わりの名を持つ者だっ!」
マリアは自分たちの組織の名を名乗る……。よりによって、《フィーネ》とは……。
あたしの最低の母親の名前じゃない……。
「うはぁっ、マリアちゃんカッコいいわぁ! あのキメ顔、最高でしょ?」
「うるさいわね! こんなこと許されないわよ!」
あたしはフィアナに向かって怒鳴った。こんな奴らに主導権を取られるなんて……。
「そう怒らないの、フィリアちゃんって、
「昔から? あなた、何を……? そっ、それはギアペンダント!?」
あたしを昔から知っている風な言葉に驚いたが、それ以上にフィアナが胸からギアペンダントを取り出した事にはもっと驚いた。
「phili joe harikyo zizzl……」
そして、彼女は当然のように聖詠を唱え……、変身し……、鏡のように銀色に光るシンフォギアを身に纏った……。
新キャラのフィアナは如何でしたでしょうか?
彼女のギアはフィリアの核と同じ聖遺物の浄玻璃鏡で出来ています。
デザインは同じ鏡のシンフォギアの神獣鏡に近い感じのイメージで、色はミラージュクイーンと同様の銀色です。
聖詠は一応、「愛の為に生き、そして死ぬ」みたいな意味合いを込めています。
次回もよろしくお願いします!