【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「フィリアちゃん、まさか、人形になっちゃってるとは思わなかったけど……。久しぶりに会った私まで忘れてるって、さっきは割とショックだったわぁ……。しくしく……」
「――よく、あたしのことを調べてるようね。あなたは誰? なんで、あたしのことを知っているの?」
泣き真似をしながら、あくまでも知り合いだったような口調を崩さないフィアナ。
彼女はあたしが人形ということを知っている。
その上、ギアまで纏ってあたしと対峙するってことはこっちの戦力がシンフォギアに近いことくらいは知っているということだ。
「うーん、教えてあげてもいいけどぉ。今ってフィリアちゃんは敵側だからなぁ。そっちを裏切って、私たち側につけば教えてあげるわよぉ」
「寝言は聞かない主義よ」
「ふふっ、やぁっぱりフィリアちゃんはフィリアねぇ……。ノリが悪いぞぉ」
あたしは彼女がどう動いても対処出来るように身構えていた。しかし、人質を盾にされると……。
『我ら武装組織フィーネは各国政府に対して要求する。そうだな……。差し当たっては国土の割譲を求めようか!』
『バカな!?』
「そんなことが出来るはず……」
あたしが目の前のフィアナに気を取られていたら、マリアが無理難題な要求を突きつけてきた。
『もしも24時間以内にこちらの要求が果たされない場合は……、各国の首都機能がノイズによって風前となるだろう!』
『どこまでが本気なのか?』
マリアは24時間で無茶を通せと言っている。何考えてるのこの子……。
「狂ってるわね」
「そう、私たちは正気じゃあないのよぉ。だからこそ、美しいと思わなぁい?」
笑みを浮かべながら戯言を放つフィアナ。
この女、楽しんでる? この状況を……。
『私が王道を敷き、私たちが住まう為の楽土。素晴らしいと思わないか?』
『何を意図しての騙りか知らぬが……』
『私が騙りだと?』
『そうだ! ガングニールのシンフォギアは貴様のような輩に纏える物ではないと覚えろ!』
翼もマリアの要求に怒っていた。無理もない。ガングニールの装者がこんなことをするなんて彼女にとって許されることではないのだ……。
『Imyuteus ameno……』
「いいわよぉ、止めてきて」
フィアナは聖詠を唱えようとする翼を止めるように促す。くっ、この女の言うとおりに動くのはしゃくだが……。
「――っ。待ちなさいっ! 翼っ! 今動けば、風鳴翼がシンフォギア装者だと全世界に知られてしまうわ!」
『でも、この状況で!』
「風鳴翼の歌というのはね、みんなに希望を与える歌なのよ。剣のように敵を倒すだけじゃない!」
『くっ……』
翼はなんとかシンフォギアを纏うことを踏み止まってくれた。しかし、それはそれで危険な状況だ……。
生身で装者に敵うはずがないのだから。
『確かめたらどう? 私が言ったことが騙りなのかどうか……。――ふふっ、それなら、会場のオーディエンス諸君を解放する。《ノイズ》に手出しはさせない。速やかにお引き取り願おうか』
なんと、マリアは人質をいきなり解放すると言い出した。
「あの子……、何を言ってるの? 人質をこのタイミングで解放するなんて……」
「あーあ、マリアちゃんの悪い癖が出たわねぇ。あの子も優しいんだからぁ」
フィアナはやれやれという表情を浮かべるだけで特に動くことはなかった。この子もどうかしてるわね。
『何が狙いだ?』
『ふっ、このステージの主役は私。人質なんて私の趣味じゃないわ』
当然、翼もマリアに意図を問うが、彼女は人質は自分の流儀に合わないとか言っている。よく言うわ……。
「人質とされた観客たちの解放は順調よ、けど……」
『わかっている。こちらも二つの聖遺物のアウフヴァッヘン波形をキャッチした。まさか、君や響くん以外から浄玻璃鏡とガングニールの……。しかも、シンフォギアが……』
「そうね、あたしも驚いたわ。でも人質がいないなら問題ない。翼の方もあたしが何とかしてみせる」
『現状、自由に動ける君だけが頼りだ。敵の実力は未知数……。気をつけろよ』
「了解……」
あたしが弦十郎と電話をしても黙って見ているだけのフィアナ。ホントにどういうつもりなのかしら。
「もう、終わったかしらぁ?」
「ええ、怪我したくなかったら、そこを退きなさい。これから行かなきゃならないところがあるのよ」
「うふふ、それを私が許すとでもぉ? マリアちゃんの邪魔はさせないわ」
フィアナのシンフォギアから多数の銃口が出てきてエネルギーが充実していく――。
「そう、じゃあ勝手に通らせてもらうわ……」
「――よーく狙ってぇ、ずどーん」
――破閃――
フィアナの肩と腰から紫色の光線が幾重にも渡って照射される。
そして、光に当たった物質は砕けて弾け飛ぶ。
クリスと似た遠距離型で手数が多いタイプ……。
「コード、ミラージュクイーン、マナバースト」
――神焔一閃――
あたしは光線を避けつつ、ミラージュクイーンに炎を纏わせて強力な一撃を放つ。
しかし、フィアナはギアの背中に付いている噴射口からレーザーを噴射して空中に浮かび上がり、それを躱す。
「ふーん、フィリアちゃんも強くなったのねぇ。どうやってもギアを纏えなかったあなたが、力を手に入れるために人の姿を捨てるなんて。あなたも十分、狂ってるわぁ」
「好きでこんな姿になっちゃいないわよっ!」
「ホントにそぉかしら? 今度は大きいの行くわよぉ」
――流閃――
フィアナが両手をかざして巨大な赤い光線を放つ。
「ちっ、コード、ファウストローブ……」
――雷獣ノ咆哮――
あたしは錬金術で作った雷撃を放ってフィアナの光線を相殺する。
何なの、この子の火力……。ファウストローブを纏ったあたしの錬金術と互角?
「へぇ、それがあなたの纏う鎧なのねぇ。その形状はギアを纏えなかったコンプレックスかしらぁ?」
「だから、知らないわよっ」
この女に構っている暇はない。早くあの場所に向かわないと……。翼の身が危ないわ……。
「だから行かせないわぁ」
――破閃――
フィアナはさっき以上に紫色のレーザーを乱れ撃ってきた。
「捉えたわよぉ。――えっ? 消えた?」
――
緒川の忍術を参考に編み出した、残像を残しながら移動する、独特の歩法……。
こういう苦手なタイプと戦うことを想定して覚えた新しい技よ……。
「えー、すっごぉい。フィリアちゃんって、ニンジャだったんだぁ。――って、待ちなさぁい」
「待つわけないでしょ……」
あたしは音速を超えた最高速度で目的地を目指した――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翼はマリアに追い詰められ、全世界にシンフォギア装者だということを晒す覚悟で聖詠を唱えようとしていた。
『聞くがいい! 防人の歌を!』
『Imyuteus amenohabakiri tron……』
――ふぅ、ギリギリセーフね……。
「安心なさい、翼! 全世界への中継は遮断したわ。シンフォギア装者だと世界中に知られて、アーティスト活動が出来なくなってしまうなんて、風鳴翼の友人として見過ごすわけにはいかないもの!」
『フィリアっ……! 感謝するっ!』
「ええ、ちょっと煩いのを片付けたら助太刀にいくわ」
あたしは何とか制御室に辿り着いて、中継を切ることに成功した。
「あらあら、やってくれたじゃなぁい。まっ、いいわ。あっちはあっちで何とかするでしょ。私は私の仕事をこなすだけよぉ」
「へぇ、あなたの仕事? それは何なの?」
「もっちろん、フィリアちゃんをー、ボコボコにしてぇ。連れて帰ることよぉ」
フィアナはシャドーボクシングのような仕草をした。
あたしを連れて帰るですって? ホントにこの子……。
「舐めないでちょうだい……」
「えっ? ――きゃっ!」
あたしは一瞬でフィアナとの間合いを詰めて、殴り飛ばす。
「あなたの技は遠距離特化……、こうして距離を詰めての攻撃には弱いみたいね」
「たったあれだけの戦いで見切られちゃうなんてぇ。ショック大きすぎぃー。でもぉ、こんなのはどうかしらぁ?」
フィアナがニタリと笑いながら右手を明後日の方向にかざす。
あたしがその手のかざされた方向を見ると、そこには逃げ遅れたのか、二人の少女が立っていた。
一人は金髪でショートカットで黒っぽい服を着ていて、もう一人は黒髪のツインテールでピンク色の服を着ていた。
まさか、この子、彼女たちを……。
「さぁて、優しいフィリアちゃんはぁ、こうするとぉ、どぉするのでしょうか?」
フィアナの手にエネルギーが集まって、赤い光線が放たれた――。
「くっ、二人ともっ、伏せなさいっ」
あたしは二人の少女と赤い光線の間に飛び込み――まともに攻撃を受けてしまった……。
「あーあ、当たっちゃったわねぇ……。これでおしまぁい……」
「何をバカなことをっ――なっ――ファウストローブが……、身体が……」
あたしのファウストローブが突然弾けて、剥がれてしまう。そして、エネルギー切れでもないのに、核からのエネルギーの供給が乱れて力が出なくなってしまった。
くっ、立ち上がるのもままならない……。
「人の優しさに付け込んで攻撃なんて卑怯デスよ、アナ姉」
金髪の少女はフィアナに抗議するように声を出した。あなたたち仲間だったの? それじゃ、あたしはまんまとこの女に嵌められたってわけね……。
「あらぁ、切歌ちゃん、私たちは悪の組織なんだからぁ、卑怯もらっきょうもないんじゃあないかしらぁ?」
「ううっ、それはそうデスけど……」
ちょっと、簡単に言いくるめられてんじゃないわよ。
「このお人形がホントにリア姉なの……?」
黒髪の子はじぃーっとあたしの瞳をまっすぐに見ながら、フィアナに尋ねる。『リア姉』って誰よ!
「そうよぉ、調ちゃん。だからドクターの調節した私の浄玻璃鏡を制御する光線がこんなに効いてるのぉ。さすがはドクター、ああ、ドクターは私を褒めてくれるかしら? 力強くドクターに抱きしめられたいわぁ」
フィアナは自分の世界に入ってしまったような感じで、目をキラキラさせながら天を仰いだ……。
翼、あたしは絶対にこんな子と似てないわよ……。
「さいデスか……。アナ姉は男の趣味が悪いデス……」
「リア姉……、私たちをまた守ってくれた……」
切歌と呼ばれた金髪の子は呆れた顔をして、フィアナを見て、調と呼ばれた黒髪の子はまた、あたしを『リア姉』と呼んでこちらを見つめていた。
浄玻璃鏡の制御光線なんてものがあるなんて……。
「んじゃ、切歌ちゃんと調ちゃんはマリアちゃんを手伝ってあげなさぁい。私はフィリアちゃんを連れてくから」
「了解デス」
「わかった……」
くっこのまま、こいつらの好きにさせてたまるか……。
「無駄よぉ……、浄玻璃鏡から出るエネルギーの量を制御したんだから……。まだ、抵抗するならもう一発くらい……」
「舐めるんじゃ……、ないわよっ……」
あたしはフィアナに掴まれた腕を合気道の要領で投げ飛ばした。
「油断しちゃったぁ……。諦めが悪いのも、昔のままねぇ」
「知った風な口を利くなっ! コード、ミラージュクイーンっ!」
あたしは何とかエネルギーの乱れを調節して、ミラージュクイーンを出現させる。
まだ、エネルギーの運用が本調子じゃない……。
ファウストローブを使うのは危険……。
「へぇ、もう動けるようになったんだぁ。これはドクターに報告しなきゃ。――じゃっ、第二ラウンド開始していいかしらぁ。すぐ終わっちゃいそうだけどぉ」
フィアナは両手にエネルギーを充実させながら、余裕の笑みを浮かべた。
フィアナのギアは遠距離特化の火力重視という尖った性能です。
彼女の想い人はあのドクターで彼に褒められる為に頑張ってます。
次回もよろしくお願いします。