【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「――あっあたしはまだ生きてる?」
人形に死ぬという概念があるのか分からないが、あたしは身体中にいろんな器具を当てられた状態で目を覚ました。
「ほら、大正解だったでしょ。まぁ、私の頭脳にかかれば、このくらいの解析は簡単よ」
「驚いたな。生きた人形とは……」
あたしの目の前には髪を束ねた茶髪の眼鏡の女と赤いツンツン頭の筋肉質の男が立っていた。
「気分はどうかしら? あなた、とっても面白い身体をしてるわねー。悪いけど隅々まで調べさせてもらったわよ」
眼鏡の女はニコリと笑ってあたしに話しかける。
「それはどうも。で、さっそくなんだけど、あたしは今、助けられているのかしら? それとも実験材料になっている最中なのかしら?」
あたしは率直に質問した。自分で言うのもアレだが、こんな人形だ。
人格があっても、そんなのとは関係なく拘束されて実験材料にされる可能性が高かった。
「いや、君には我々の大切な仲間が助けられ、さらに何人もの人が救われている。そんな君を誰がなんと言おうとも危害を加えさせようとは思わないさ」
赤髪の男は優しい言葉をかける。嘘は感じられないわね。少なくともあたしを創った馬鹿よりは信頼できそう。
「そっ、なら助かるわ。ちょっと困っていたのよね。あたし、元々人間だったみたいなんだけど、気付いたら人形になっちゃってて、その上、記憶まで無くなってるの。助けるなら、きちんと責任を持って助けなさい」
あたしは身の上の出来事を手短に話した。もしかしたら彼らはあたしについて何か知ってるかもしれない。
記憶を失ったと言えば何らかの情報が入るかもしれないと考えたのだ。
「そっそうか。それは辛かったな」
「へぇ、無機物に意識を定着させるなんて無茶苦茶をやってたのねー。あの施設……。無くなっちゃって残念だったわ」
赤髪の男は素直に同情し、眼鏡の女は施設が無くなったことを悔やんでいた……って、ちょっと待ちなさい。
「あの施設が無くなったってどういうこと? そもそもあそこはなんだったの?」
あたしは眼鏡の女に質問した。
「その反応、本当に何も覚えていないのね。あの施設は大爆発を起こして吹き飛んだわ。だから、私たちも詳しく知らないのよ。あそこが研究施設で対象が聖遺物と錬金術ということぐらいしか……」
「錬金術……。あたしを創った男もそんなことを言っていたわ。あたしを完全体の
「オートスコアラー……、自動人形……、ふうん。やっぱり興味深いわね。ねぇ知ってる? あなたの心臓にあたる部分は
眼鏡の女は小難しいことを言っていたが、要するにあたしは人形っぽい見た目だけど、限りなく人間に近い組織構成をしてるらしい。
「そう。慰めにもならないけど、自分のことが少しだけわかって嬉しいわ。名前くらいしか分からなかったから――」
「ん? 名前はわかるのか? 記憶を無くしたと言っていたが……」
今度は赤髪の男が質問する。
「ええ、フィリアって呼ばれたから……。多分、あたしの名前でしょ」
本当の名前かどうかは知らないけど、それを調べる術はない。
「そうか、俺の名前は風鳴弦十郎。特異災害対策機動部二課の司令官をやっている。特異災害というのは、先ほど君が倒していた人間を炭素に変える現象物などのことだ。我々はそれを《ノイズ》と呼んでいる。人類をその驚異から守るために特異災害対策機動部は存在する」
風鳴弦十郎と名乗った男は先程の奇っ怪な生き物たちを《ノイズ》という特異災害と呼び。自らをその驚異から人類を守る司令官だと称した。
「ふーん、ご立派ね。子供を戦わせて」
あたしは思ったことを口に出した。皮肉を込めて。
「……っ。痛いところをつく……。確かに、俺が《ノイズ》と戦えるのなら、当然、彼女たちを前線に出そうとは思わん。現在の人類が《ノイズ》に対抗できる手段は《シンフォギア》を纏える彼女たちだけなのだ……。まぁ、今日、君という例外を発見したのだが……」
弦十郎は拳を握りしめて、震わせながら説明をした。少しだけ意地悪なことを言ってしまったようね。
「シンフォギア? もしかして、あの子たちが身につけてた鎧みたいなやつのことかしら?」
あたしは思い当たった節を述べてみる。
「正解、正解よー。フィリアちゃんって賢いのねー」
眼鏡の女があたしの頭を撫でながらニコニコ笑った。この人、なんか苦手だ。
「あたしは一応、成人してたはずよ。多分だけど……。子供扱いしないでほしいわね」
「あらら、そうだったの? まぁ、細かいことは気にしない。可愛いんだからいいじゃない」
あたしは不快感を顕わにしても彼女は撫でることを止めなかった。
「了子くん!」
「もー、わかったわよ。じゃあ、特別にシンフォギア・システムの開発者である、この私、櫻井了子がシンフォギアについて講義してあげましょう」
櫻井了子と名乗った眼鏡の女がペラペラとシンフォギアについて説明をする。
長い説明でどうにかわかったことは、シンフォギアとは聖遺物とかいうオーバーテクノロジーの結晶を身に纏うことで戦闘力を上げて《ノイズ》を打ち倒すということ。
そして、誰もがシンフォギアを纏えない。適合者というごく僅かな人間のみがシンフォギアを使いこなすことができるということ。
それが、赤髪の少女、天羽奏と青髪の少女、風鳴翼の二人ということ。
歌を歌いながら戦うことでさらに戦闘力を増すこと。
これらのことを理解すると、弦十郎が悔しそうな顔をした理由がよくわかった。
「そういうことだったのね。弦十郎さん、無神経なことを言って悪かったわ」
あたしは先程の非礼を詫びる。
「いや、むしろ俺は嬉しかった。君があの子たちのことを想う気持ちが伝わってな。優しいんだな、フィリアくんは」
「優しい? あたしが? それは間違いなくあなたの勘違いでしょうね。あたしは、単純にあなたに意地悪をしただけよ」
あたしはまっすぐにあたしの目を見つめる弦十郎から目を背ける。
優しさなんてあるんだったら、人が目の前で死んだら涙の一つも零すものでしょ。
もう、あたしは泣くことも笑うことも出来なくなってしまったんだから――。
少しだけ沈黙して、あたしは気になったことを質問した。
「ねぇ、そういえば、あたしが意識を失った原因って何なの?」
あたしは目の前が真っ暗になった原因を尋ねてみた。
また、あんなことがあったら困るし、対策が出来るならそうしたい。
「ああ、あなたが倒れた原因は単純にエネルギー不足よ。いろいろ試したけど、これが一番よく効いたわ」
そう言って了子は液体の入った試験管を出してきた。
特殊な薬剤を使ったのね。これから薬に頼って生きていかなきゃならないのかしら。
「まさか、ただのブドウ糖で意識を取り戻すと思わなかったぞ」
「もう、弦十郎くん、ネタバレ禁止よ。もう少しこの子のリアクションを観察したかったのに。あなたのエネルギーは主に糖分の分解から得られるようなの。しかも、ご丁寧に口からも摂取出来るようになってる――」
了子はつまらなそうに説明をする。
それは、つまり……。
「つまりだ、フィリアくんは普通に食事をすればエネルギーは供給される。甘い食べ物がより効率がいいようだ……」
「はぁ、なんだか、急激にお腹が空いた感覚になってきたわ――」
あたしはため息が出てしまった。こんな見た目になっても、食事はしなきゃいけないのね……。
異常に白い肌と継ぎ目を見て、あたしは人形だと、実感したが、それでいて人間らしい生活を強制されるのは少しだけ虚しかった。
「フィリアくん、これは直ぐに結論を出してほしいというわけではないのだが……、君に特異災害対策機動部二課に所属してほしい。《ノイズ》に対抗する手段を少しでも増やしたいんだ――。このとおりだ……。もちろん、君のプライベートは完全に保証する」
弦十郎はあたしに頭を下げる。何よ、この人。
こんな化物みたいな人形に頭を下げて仲間になれってどうかしてるわよ。
「あなたはあたしみたいな得体のしれないやつを仲間にしたいって言うの? どう考えたって化物よ、あたしは!」
「いや、君は信頼の出来る人間だっ!」
「バカなの? あたしが人間なわけないじゃない! この見た目のどこが人間なのよ!」
「シンフォギア装者が、子供だということに嫌悪感を表した。それだけで君が人間らしい感情を持ち、信頼のおける人間という理由には十分だ! それに、奏くんを救ってくれた! 誰がなんと言おうと、君がどう言おうと、俺は君を人間として扱う!」
弦十郎は力強い視線をあたしに送った。
本当にバカなのね、この人は……。
いいわよ、出来るものならやってみなさい。あたしを人間として扱うなんて……。
「バカと討論するのは嫌いなの。考える時間なんていらないわ。その代わり給料を頂戴。それくらい出るんでしょ、司令官さん」
あたしは特異災害対策機動部二課とやらに入ることに決めた。どのみち行く場所なんてないし、《ノイズ》とやらを駆逐することがあたしの存在価値なら、彼らの元にいたほうがその価値を満たすことが出来るはず。
この日、特異災害対策機動部二課に一体のオートスコアラーが所属した――。
フィリアが特異災害対策機動部二課に所属しました。
人間に限りなく近いオートスコアラーのフィリアにはまだ本人すら知らない秘密があります。
次回は奏や翼との交流回です。