【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「あはははっ! 威勢よく立ち上がったのに逃げるのが精一杯みたいねぇ」
フィアナは身体中から光線を乱れ撃ちしてくる。紫色の光線は派手に物質を破裂させるし、赤色の光線はもっと危険だ。
あたしはこの女との決定的なほどの相性の悪さを感じていた……。
少しなら錬金術を使っても大丈夫かしら……? いや、やはり今は控えたほうが……。
残像を繰り出しながら、素早い動きで的を絞らせないようにして、あたしはとにかく走った。
――翼のいる方向が騒がしくなっているようね……。
なるほど、響とクリスと合流したのは良いけど、あの切歌と調という子もシンフォギア装者で、三対三の戦いになっているみたい。
まるで、シンフォギア装者のバーゲンセールね。
「それなら、四対四になっても――」
あたしは翼たちとの合流を目指した。とにかく、こいつらに捕まるようなことがあれば致命的だ。
あたしだけの死なら受け入れるが、悪用されて他人にまで被害が及ぶことには耐えられない。
この女はあたしにとっては天敵だが、他の装者からするとそうでもないはずだ。
少なくとも翼が負けるイメージはなかった。
そういう打算も働いて、あたしは全力で逃げに徹したのである。
――そして、やっとステージ上まで辿り着いた……。
ん? 響はなんで棒立ちなの?
「私は困ってる皆を助けたいだけで……。だから!」
「それこそが偽善! 痛みを知らないあなたに、誰かの為になんて言って欲しくない!」
――γ式 卍火車――
調はヘッドギアの左右のホルダーから巨大な回転鋸を二枚、響に向って放った。
「響は痛みを知っている! 何も知らないあなたが、この子の行為を偽善だなんて言うんじゃないわよっ」
あたしはミラージュクイーンで二枚の回転鋸を叩き落とした。
「――っ。リア姉……。どうして……、あの人を……」
「調っ! リア姉は記憶がないんデスっ! 今は敵だってマリアがっ」
調がうつむき、攻撃をやめると切歌は彼女のもとに駆け寄ってあたしの記憶喪失のことを話していた。
これじゃ、まるであたしが彼女らと……。
「フィリア、無事だったか。途中、かなり危なかったようだったから心配したぞ」
翼もあたしの通信を聞いていて心配していたみたいだ。
「ええ、妙な攻撃を受けてしまって……。本調子の力が出ないのよ」
あたしは赤色の光線を受けて力を出しきれない現状を話した。
「なるほど、おっさんの言ってたもう一人の装者があの女か……。本調子じゃねぇなら、あたしらに任せな。一人くらい増えてもどーってことねぇぜ」
「ありがたいけど、疲れはないからもう少し戦わせてもらうわ……」
ミラージュクイーンを構えて、あたしはクリスにそう返した。
その時、巨大な光とともに大型の《ノイズ》が出現した。
「うわぁ……、何? あのでっかいイボイボ……」
《ノイズ》の形状はブニブニとした形に無数のイボが付いている感じで、不気味だった。
「増殖分裂タイプ……」
「こんなの使うなんて聞いてないデスよ!」
「あらぁ、可愛らしいわぁ」
「マム?」
敵側の四人も予定外だったらしく、反応は様々だ。
つまり、糸を引いてる上が近くに居るっていうことね。
「わかったわ……」
マリアが何やらつぶやき、両腕を合わせるとパーツが変形して奏のアームドギアを彷彿とさせる槍形の武器が出来た。
「アームドギアを温存していただとっ!?」
どうやら、この戦いで初めてアームドギアをマリアは使ったらしく、翼は驚いていた。
――HORIZON†SPEAR――
槍に強大なエネルギーを込めて、それを巨大な《ノイズ》に向って放った。
「おいおい、自分らが出した《ノイズ》だろ?」
「じゃあ、フィリアちゃん! あなたをもう一度、仲間にするのはぁ、また今度のお楽しみにしとくわぁ」
クリスの疑問もそのままに、マリアたちは去ってしまった。
「ここで撤退だと!?」
「せっかく温まってきたところで尻尾を巻くのかよ」
「あっ! 《ノイズ》が!」
砕け散った《ノイズ》はまだ機能を失っておらず動いていて、さらに大きくなった。
ミラージュクイーンで攻撃するも、分裂してドンドン数が増えていく。何この、キリがない感じ。
「待て、フィリア。こいつの特性は増殖分裂だ」
「ほうっておいたら際限ないってわけか、このままじゃここから溢れ出すぞ!」
「それはまずいわ。会場のすぐ外には避難したばかりの観客たちが居るの。《ノイズ》をここから出すわけには……」
そう、このままだと外の観客に被害が及ぶ可能性が高い……。
「観客!?」
「迂闊な攻撃では増殖と分裂を促進するだけ……」
「どうすりゃいいんだよ!?」
だからと言って斬ったり撃ったりだと効果は薄い。ならば……。
「コード、ファウストローブ……」
身体の違和感が凄いけど、ファウストローブを何とか身に纏う。
「あたしが燃やし尽くすわ」
――
炎を錬成して火の鳥を――って……。
「ぐっ、エネルギーは十分なのにっ……」
錬成を開始してすぐにファウストローブは弾けて消えてしまった……。
「おい、無理はするな。他の方法を……」
「そんなの、簡単に――」
あたしが翼に反論しようとしたとき……。
「絶唱……、絶唱です」
響が口を開いた。
「あのコンビネーションは未完成なんだぞ?」
「うん」
「増殖力を上回る破壊力にて一気殲滅。立花らしいが理には適っている」
「おいおい、本気かよ?」
まさか、アレを実戦で使うの? 確かにアレならば……。
「「よしっ」」
響が、二人と手を繋ぐ。これで準備が完了だ。
「行きます! S2CAトライバースト!」
「スパープソング!」
「コンビネーションアーツ!」
「セット! ハーモニクス!」
虹色の光が出現して《ノイズ》をどんどん消し去っていく。
しかし、響にエネルギーが集中し、彼女は苦悶の表情を浮かべる。
「耐えろ、立花っ!」
「もう少しだッ!」
S2CAトライバースト――装者3人の絶唱を響が調律し、一つのハーモニーと化す……。それは手を繋ぐことをアームドギアにする響だけしかできない大技。しかし、その負荷は響だけに集中してしまう……。
「うぉぉぉっ――」
虹色の光がさらに大きくなる。
「今だ!」
「レディ!」
響の右手に虹色の光が集まっていく。
三人分の絶唱のエネルギーを拳に込めた響……。
「ぶちかませ!」
「これが、私たちのっ! 絶唱だぁぁぁぁぁっ!」
響はそのエネルギーの込められた拳を《ノイズ》にぶつける。
エネルギーが解放されて、虹色の竜巻が天空へと登っていき、巨大な分裂型《ノイズ》は跡形もなく消滅した。
恐ろしい技を使うようになったわね……。あの力はどうやってもあたし一人じゃ出せる気がしないわ。
「無事か!? 立花!」
「へいき……、へっちゃらです!」
ぺたりと座り込む響に翼が話しかける。響の目には涙が溜まっていた。
「へっちゃらもんか! 傷むのか? まさか、絶唱の負荷を中和しきれなくて?」
クリスも心配そうに響に声をかける。彼女は身体的に異常があるわけじゃなさそうね。
「私のしてることって偽善なの――」
「偽善なんかじゃないわ。ホンモノよ」
「フィリア……ちゃん?」
驚いた顔の響とあたしの目が合った。
「あなたのまっすぐな意志は本物だって言ってるの。知らない人の言葉を真に受けすぎよ。自分を信じなさい」
「ありがとう……、でも……、もう少し考えてみるよ……」
かなり心が堪えてるみたいね……。
しかし、あたしも困ったことになったわ。あの光線は本当にあたしの天敵よ……。
何か手を打たないと……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あれから一週間、あたしの身体のエネルギーの調子もだいぶ良くなってきて、ファウストローブも問題なく起動できるまでは回復した。
フィーネと名乗る組織は意外な程に静かで、現在は二課が総力を追って捜索中であった。
そして、リディアン音楽院では秋桜祭が差し迫っており、生徒たちは目下その準備に勤しんでいた。
あたしはというと……。
「雪音? 何をそんなに慌てて」
「奴らが……、奴らに追われているんだ。もうすぐそこにまで……」
「何っ!?」
「特に不審な輩など見当たらないようだが?」
「そうか、上手く撒けたみたいだな」
「誰を撒いたのかしら?」
あたしはクリスの背後から話しかけた。
「げえっ、フィリアっ! いつの間に!」
「フィリアじゃないか。雪音を追っていたのはお前だったのか?」
「ええ、だって、この子ったら秋桜祭の準備を放ったらかして行こうとするから……。せっかく仲良く話しかける子もいるのに……」
あたしとクリスは同じクラスとなり、クラスメイトたちもクリスに友好的に接している。
しかし、こういう空気にまだ彼女は馴染めないでいた。
「うるせぇ! 大体、お前はこっち側だろ? 裏切って、クラスの連中と追いかけ回しやがって」
「雪音さーん!」
「もう、どこ行っちゃったのかしら?」
「そうよ、あたしはあなたの味方、だから一緒に戻るわよ」
クラスメイトが近くでクリスを探しているので、あたしは彼女に戻るように声をかけた。
「ぐっ……、でも、フィーネを名乗る謎の武装集団が現れたんだぞ。あたしらにそんな暇は……」
「何言ってんの? ここの常在戦場中の防人だって――」
「ふっ、見ての通り。雪音が巻き込まれかけている学校行事の準備だ」
そう、翼もキチンと学校行事に参加しようと努力していた。
本当に変わったわね……。まぁ、あたしもホントは人のこと言えないんだけど……。
「それでは間を取って雪音とフィリアに手伝ってもらおうかな」
「なんでだ!?」
「あたしも!?」
翼が唐突にあたしとクリスに作業を手伝うように言ってきた。この人はあたしの話を聞いてたのかしら?
「私とフィリアとなら人見知りで照れ屋な雪音でも作業できるだろう。それとも、このままフィリアに連行されたいか?」
「むー」
「仕方ないわね。少し事情を話してくるわ」
翼にはクリスをクラスに連れて行くのは荒療治だと思えたみたいだ。そうね、ちょっと急いじゃったかしら。
「まだこの生活に馴染めないのか?」
「まるで馴染んでない奴に言われたかないね」
面倒そうな表情で手伝いながら、翼の問いかけにそう返すクリス。
「ふっ、確かにそうだ。しかしだな、雪音――」
翼がそう口を開いたとき――。
「あ、翼さん、居た居た」
「材料取りに行って、なかなか戻って来ないから皆心配してたんだよ?」
「でも心配して損した。いつの間にか可愛い妹とその友達を連れ込んでるし」
翼のクラスメイトの歩と杏胡と瞳子が教室に入ってきた。誰が翼の妹よ……。
「皆……、先に帰ったとばかり……」
翼は驚いた表情で彼女らを見た。最近、割と表情豊かになってるわね。
「だって翼さん、学祭の準備が遅れてるの自分のせいだと思ってそうだし」
「だから私たちで手伝おうって」
「私を、手伝って?」
翼を手伝おうとやってきた三人に翼はキョトンとしていた。
「案外人気者じゃねえか」
「ホント、あたしたちの手伝いなんて、いらないじゃない」
あたしとクリスはジトっと翼を見る。
「でも昔は近寄りがたかったってのも事実かな」
「そうそう。孤高の歌姫って言えば聞こえはいいけれどね」
「始めは、なんか私たちの知らない世界の住人みたいだった」
「そりゃあ、芸能人でトップアーティストだもん」
翼もクラスメイトと壁があったのは私も知っている。だから、あたしはこの学校に入学したんだし、それもあまり意味なかったんだけど……。
「でもね」
「うん」
「思い切って話しかけてみたら私たちと同じなんだってよくわかった」
「皆……」
「特に最近はそう思うよ」
翼……、どんな会話をしたのか気になるわね……。割と天然なところが多分バレたんだろうけど……。
「フィリア、今なにか、私について失礼なことを考えてなかったか?」
「えっ、えっと……、そんなわけ……、ないじゃない……」
「嘘だな。最近わかるようになったんだ――」
あたしは最近するどくなった翼に驚いてしどろもどろになった。
「ほら、妹とこうやって話してるところを見ると普通でしょ」
「だから、妹じゃないわよ」
「はいはい。チョコレートあげる」
「むぅー」
上級生には完全に子供扱いされているのであたしは不満な顔をしていた。
「はぁ……、ちぇっ、こっちもそっちも上手くやってんのかよ」
「面目ない……。気に障ったか?」
「さぁーてね、だけどあたしも、もうちょっとだけ頑張ってみようかな」
「そうか」
クリスは少しだけ前向きになってくれたようだ。
これからも、変わらずにこんな日常が過ごせれば……、そうあたしは思ってた……。
次回はいよいよ、ドクターとフィリアが!?
ここから、かなりオリジナルな展開も交えます。
マリア達とフィリアの関係も明らかになっていきます。