【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「まったく、仕事を増やしてくれたわね――」
あたしは水中から飛び出してマリアに向かって手をかざした。
「あまり、あたしを舐めないでくれる?」
――雷獣ノ咆哮――
あたしはマリアに向かって電撃を放った。
しかし、マリアはマントでこれを防いだ。
「舐めてなどいない!」
「そう、どうでもいいわ……」
あたしは潜水艦の上に着地した。
「ふっ、変わらないわね。そのふてぶてしい態度……」
マリアはケージを上に投げると、ケージは空中でフッと消えてしまった。えっと、あたしってふてぶてしいの?
割とショックなんだけど……。
そして、彼女は槍からジャンプして、潜水艦の上に乗り移ってきた。
さらに遠隔操作で海の上に浮かんでいた槍がマリアの手に戻った。
「フィリア! 友人のあなたが相手でも私は手を抜かない」
「あなたみたいな友人なんか知らないわよ――!」
「――くっ!」
あたしとマリアの視線が交錯する。なんでそんな悲しそうな顔をするのよ。
なんで、あたしはこの子を見て優しさを感じてるの?
「はぁぁぁぁっ!」
マリアの槍があたしに接近する。
「遅い――」
あたしは槍を手でいなして、正拳を当てようとする。
しかし、マリアはマントを伸ばしてあたしを攻撃してきた。私はバックステップでこれを躱す。
「信ず我が道の――♪」
そして、歌を口ずさみながら再び槍を構える。
あたしは氷の槍を数本錬成してマリアへと放つ。
マリアはマントを回転させて、それを砕く。
「絶対に譲れない――♪」
槍にエネルギーを充填してあたしに向ける。
「アームドギアに途轍もない量のエネルギーを集中してるわね――。じゃあ、あたしも見せてあげる。この状態で使える近距離戦用の技を……」
あたしは先日に暇つぶしで読んだ本に書いてあった技を真似てみることにした。
――千鳥――
右手に電撃エネルギーを集中して、超加速を併用して放つ突き技――。
ガングニールの一撃に合わせて、これをぶつける――。
『被害状況出ました!』
『船体に損傷! このままでは潜行機能に支障があります!』
友里と藤尭がこの潜水艇の被害状況を告げる。
『ちっ! フィリアくん! マリアを振り払うんだ!』
「了解……」
「誇りと――♪」
マリアがエネルギーを集中させた強力な突き技を放つ。
あたしは「チッチッチッ……」と鳥の鳴き声のような音を発しながら、雷を帯びた右手を彼女のアームドギアにぶつけた――。
「――嘘でしょ……。なっ、なんてパワーなの!?」
マリアはアームドギアごと吹き飛ばされて、驚愕の表情を浮かべていた。
「悪いけど、ここから離れてもらうわよ」
――
さらに背中からの体当たりをマリアにぶつけて吹き飛ばそうとする。
「このっ――」
しかし、マリアはあたしにカウンターの要領で下からマントを伸ばしてあたしにヒットさせた。
なかなかやるじゃない……。
「マイターン!」
それを好機とみて、マリアは再び槍をこちらに伸ばしてくる。
「あなたのターンなんてないわ……」
あたしは着地した勢いでマリアに向かっていき、左に腕を盾にして槍を釘付けにし、マリアの腹に一撃を加える。
「ぐっ……、なっ何をしているっ! あなた、左腕を……」
マリアは引き下がり、あたしの千切れた左肘から下を見て顔を青くした。
「通信で聞いてたけど、あなた本当にフィーネなの? 彼女なんてあたしに穴を空けても顔色ひとつ変えなかったわよ。あむ……」
あたしが特殊な容器から取り出したチョコレートを食べて、左腕の再生に使ったエネルギーを回復した。
「――うるさいっ! でも、そんなになってまで戦うなんて……」
マリアの目は慈しむような表情だった。
「あなたに憐れまれる言われはないわっ!」
あたしは腰を落として弦十郎仕込みの拳法の構えを取る。なんで、敵のあなたに心配されなきゃならないのよっ!
「マリアちゃーん、頑張んなさーい! 私もそろそろ応援するからぁ!」
フィアナが突然大声を上げた。
「テメー、何を企んでやがるっ!」
「はっ!?」
突然、上空から鋸が降ってきて、響はウェル博士を突き飛ばし、何とか避ける。
「なんと、イガリマーッ!」
翼に切歌は鎌で斬りかかり、翼は剣でそれを受け止める。
「くっ、どこから現れた!?」
「切歌ちゃん、調ちゃん、グッドタイミーング。じゃ、私もぉ、phili joe harikyo zizzl……」
フィアナも翼から解放されてシンフォギアを身にまとった。
「ばぁーんってね」
そして、クリスに向かって人差し指を向けて挑発する。
「テメー、あたしに向かっていい度胸じゃねぇかっ! くっ、こんな攻撃っ……」
クリスは怒りの声を上げるが、フィアナのレーザー光線の連射を避けるのが精一杯みたいだ。
防戦一方のクリスを助けようとする響に調が回転鋸を飛ばす。
「とぉっ! てぇあっ!」
響はそれを得意の徒手拳で叩き落として防ぐ。
――非常Σ式 禁月輪――
調は脚部と頭部から体の周囲に円形のブレードを縦向きに展開し、一輪車のような乗り物にしてそのまま響に突撃する。
「なっ……」
響もこれには堪らずバランスを崩してしまった。
――破閃――
フィアナの連続する紫色の光線がクリスを襲い、彼女のギアの一部が弾け飛んでしまう。
「痛くしちゃってごめんなさぁい」
さらに接近したフィアナに腹を蹴られて吹き飛ばされるクリス。
「ぐはっ!」
「雪音っ!」
翼がクリスに駆け寄ろうとすると、切歌が鎌を全力で振るうっ!
「チャンスデェェス!」
「ちっ、適合係数が落ちて力が発揮できない」
翼はなんとか剣で受け止めて、切歌の攻撃を防御する。
「ドクター、ソロモンの杖を取り戻しましたぁ」
「さすがフィアナ。仕事が早いですね」
「えへへ、ドクターに褒められちゃったー」
ソロモンの杖がウェル博士の手に戻ってしまった……。
それにしてもマリアたちはどこから現れたの?
マリアも調も切歌も何もない空間からいきなり現れた。いったいどうやって……。
――とりあえずは目の前のマリアに集中しなきゃ
あたしがそう思って身構えたとき……。
「ちっ! 時限式ではここまでなの!? フィリア、あなたとの勝負はここで預けるわ」
「時限式? まさか奏みたいにLiNKERを……?」
そうだ、マリアはセレナと違って……。何、セレナって誰よ?
あたしがあっけにとられてると、大きなヘリコプターが突然現れて、マリアはロープに掴まって上昇する。
「それじゃあ、フィリアちゃん。私たちの仲間になる件を考えといてねー。バイバーイ」
フィアナはウェル博士を抱えて空を飛んでいって、ヘリコプターに入っていった。
切歌と調もロープをつかんでヘリコプターに乗り込んで、逃げていってしまった。
「ソロモンの杖を返しやがれッ!」
――RED HOT BLAZE――
クリスはアームドギアをスナイパーライフルに変形させ、ヘッドギアのスコープでヘリコプターを捕捉し狙撃を行おうとした――。
しかし、ヘリコプターは突然姿を消してしまう。
「なんだとっ!?」
クリスすら相手を見失ったらしい。
『反応……、消失……』
『超常のステルス性能――これもまた異端技術によるものか?』
なるほど……、異端技術か……。
そんな技術があるなら、いろいろな良からぬことが出来そうね……。
翼たちは潜水艇の上まで来たが、連中に勝ち逃げを許してしまい、落ち込んで座り込んでいた。
はぁ、珍しいわね。この子達が揃って落ち込むなんて。
「無事か!? お前たち!」
「師匠……」
そんな中に弦十郎が声をかけてきた。
「了子さんと……、たとえ全部分かり合えなくても、せめて少しは通じ合えたと思ってました……。なのに……」
響はフィーネと再び対立したという事実が受け入れられないらしい。
あたしにはマリアがあの性悪オバサンには見えなかったんだけどな。
「通じないなら、通じるまでぶつけてみろ! 言葉より強いもの。知らぬお前たちではあるまい」
「言ってること、全然わかりません。でも、やってみます!」
「うむ」
「うむ、じゃないわよ。バカ……。会話が成立してないじゃないの……」
あたしはバカ師弟にツッコミを入れた……。
まぁ、悩んでも仕方ないってことか……。
マリア、そしてセレナという名前……。間違いない、あたしは彼女らを知っていた……。
その事実はあたしの胸に重くのしかかっていた……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日は秋桜祭当日、あたしたちのクラスは屋台を出していた。
売っている品物はデザート類なのだが、あたしのりんごのケーキも何故か商品にされてしまった。
まったく、こんなことならクラスメイトに食べさせるんじゃなかったわよ……。
「フィリア、雪音さん知らない?」
クラスメイトの鏑木乙女があたしに話しかけてきた。同じくクラスメイトの五代由貴と綾野小路も一緒である。
「クリスを? さぁ、あたしはずっとここで店番やってたから……。ホントにあの子をアレに出すつもりなの?」
「うん、だってフィリアも見てたでしょ、雪音さんがとても楽しそうに歌うところを」
由貴はクリスの授業中のときの話を振る。
「そうね。あの子は歌うことが好きだから……」
「じゃあ、フィリアも雪音さんを見つけたら説得してね。頼んだよ」
「えっ? ちょっと待ちなさい!」
小路がそう言い残して、三人は走り去ってしまった。
「――すみませーん。りんごのケーキを二つ」
「はい、400円。長持ちしないからとっとと食べるのよ」
あたしはケーキと引き換えにお金を受け取る。
はぁ、勝ち抜きステージねぇ。ちょうど休憩中だし、見に行こうかしら?
休憩に入り、あたしは勝ち抜きステージを見に行くことにした。
「形が悪かったケーキを包んで持って出ちゃったけど、響と未来にでも渡しましょう……」
そう思って歩いていると、見覚えのある二人組を見つけた。
しゃがんで赤い菊の花を見ていた……。
――赤い菊……? 調……? 切歌……?
「この色のマム(菊)はリア姉が好きだった……」
「そうデスね。昔、調と無理をしてリア姉に一輪だけプレゼントしたデス」
「うん、怒られたけど……。その後で喜んでくれた」
何よ、そんな話……。なんであたしは懐かしい気持ちになっているの?
『はい、お誕生日プレゼント……』
『こっそり抜け出して取って来たデスよ』
――ズドンと爆発が起きたように、あたしは閉ざされていた記憶の扉が開放された感覚に落ちた。
高圧電流が身体中を駆け巡るような――どうしても、この2年以上もの長い間、思い出せなかった記憶の数々が蘇ってきたのだ……。
思い出した……。あたしはこの二人を知っている……。
確か、名前は……。
「月読調……、暁切歌……。二人とも大きくなったわね……」
「「えっ?」」
「フィアナ……、マリア……、そしてセレナ……。あたしたちは同じ施設に居た……」
「リア姉、まさか記憶が戻ったデスか?」
「セレナの名前も、私たちの名前も伝えてないはず……。間違いない……」
思い出したのは数年前までの記憶――彼女たちとの日々の記憶だ。かつてこの子たちは大切な仲間だった。
そして、フィアナは――あたしの妹……。フィーネが作ったクローンはあたしともう一体いたのだ……。
「ごめんなさい。あなたたちの事をあたしは大事に思っていたのに……」
あたしは切歌と調を抱きしめて頭を撫でた。
米国の聖遺物研究機関F.I.S.にフィーネの魂の依代として集められた子供たちがいた。
レセプターチルドレン――あたしたちはそう呼ばれていた。
考えてみれば、あそこはフィーネが自らのクローンであるあたしたちを捨てるにはもってこいの場所だったのだろう。
それにしても、この子たちになんてことをさせてるのよ――マリア、フィアナ……。
「あたしをあなたたちのアジトに連れていきなさい……」
そして――あたしはある決意を秘めて、二人にそう言った。
この戦いはあたしがケリをつける。もう、彼女たちの手を血に染めさせてなるものか……。
やっと、フィリアの記憶の一部が蘇りました。
菊はアメリカでは『マム』と呼ばれているみたいです。
次回もよろしくお願いします!