【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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原作5話の後半まで。
それではよろしくお願いします!


チャンピオンに挑戦

「それでは、リア姉は私たちの仲間になってくれるのデスか?」

 

「――そうね切歌。そう解釈してくれても構わないわ。あなたたちの後ろには――マム……、ナスターシャが居るのね?」

 

 あたしは切歌の問いを肯定しつつ、情報を聞き出そうとした。

 

 二人は無言で頷く。

 

 ナスターシャはF.I.S.の技術者であたしたちを指導し観察してきた。

 彼女らをまとめて動かすことが出来る人物で想像できるのはこの人しかいなかった。

 

「それで、あなたたちは何でこんな所に、下手くそな潜入のようなマネを?」

 

「うう、リア姉は記憶が戻るなり辛辣デス」

 

「でも、懐かしい……」

 

 切歌と調は素直に理由を話した。この子らは本当に純粋ね……。今のあたしの立場をわかってるのかしら?

 

 なるほど、あの黒い生き物のようなモノが「ネフィリム」という完全聖遺物だったのね……。

 見覚えがあるはずだ……。というか、あたしの記憶はアレが暴走して暴れまくっているところで止まっている。

 

 そのことはまぁいい。「ネフィリム」というのは聖遺物を食らって成長し、エネルギーの無限の増殖炉になることが出来るらしい。

 

 だが、食べさせる聖遺物には限りがあったので、翼とクリスのギアペンダントを狙って彼女は潜入してきたのだ。

 

 なんでそんなモノが必要なのかと聞いたところ、現在、月が落下していて、人類を救うために必要なんだそうだ。

 何それ? SF映画? でも、ルナアタックの影響って考えるとあり得なくはない。

 NASAが大嘘をついてることになるけど……。

 

 何より、あのマリアが悪役になってまであんなことをする理由にはなるわね……。

 

「わかった、食べさせる聖遺物はあたしがなんとかするわ」

 

「リア姉が騙し討ちして、彼女らを血祭りにしてくれるのね……」

 

「しないわよっ! 相変わらず、物騒なことを時々ぶっ込むわね……。そんなことより、お腹空いてるんだったら、これでも食べる?」

 

 あたしは彼女らにりんごケーキを見せた。

 

「リア姉の」

「ケーキデェス」

 

 二人は仲良くケーキを食べだした……。このスキに弦十郎のプライベートメールにメッセージを……。 

 あたしは敢えて司令としてではなく、風鳴弦十郎個人にこの不明瞭な情報とあたしのこれから行うことを送ることにした。

 柔軟な彼ならきっとこの方が……。

 

「ふぅー、美味しかったデス」

「マリアたちにも食べさせたい……」

 

 子供たちのための食事を作るのをよく、年長者のあたしは手伝わされた。

 あたしは筋が良かったらしく、こっそりお菓子の作り方などを教わり、マムの目を盗んでは彼女らに食べさせていた。

 

「それでは、長居は無用デスし、戻るのデスか?」

 

「いいえ、一つだけ寄るところがあるわ……」

 

 あたしは二人を連れて――目的地へと向かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「さぁーて!  次なる挑戦者の登場です!」

 

 勝ち抜きステージの司会者が次の挑戦者を招き入れようとする。

 

「わっ、とっとっと……」

 

 クリスは誰かに背中を押されたのか、バランスを崩しながら前に出てきた。

 

「リア姉……、あの人は……?」

 

「雪音クリス――あたしの大切な友人よ……」

 

 まさか、本当に出てくるとはね……。彼女なりに前に進んでいるってことね……。

 

 クリスは最初は戸惑っていたが、恥ずかしそうにして歌い出す。

 

「誰かに手を差し――♪ 傷みとは違った――♪」

 

 彼女が編入してきてから、ずっと人の好意に戸惑っていた。

 

 でも、最近は少しずつそれを受け入れるようになった……。

 

「色付くよゆっくり――♪ 誇って咲く――♪」

 

 あたしはそんな彼女を見て、心から願う……。

 胸を張って、ここが帰る場所だって言えるようになってほしいと……。

 

「笑っても――♪ 許してもらえ――♪」

 

「わぁ……」

 

「あっ、あっ……」

 

 一緒に付いてきた調と切歌もクリスの歌を聞き入っている――。

 

「こんなこんな暖か――♪ ――帰る場所♪」

 

 

 クリスが歌い終えると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

 

 クリス……、あなたはこんなに楽しく歌を歌えるのね……。

 あたしは気が付いたら拍手を送っていた自分に気が付いた。あら、切歌も調も拍手してるのね……。

 

「勝ち抜きステージ、新チャンピオン誕生!」

 

「へ?」

 

「さあ、次なる挑戦者は!?  飛び入りも大歓迎ですよー!」

 

「やるデ――、はっ、リア姉?」

 

 あたしはステージ上に向かってジャンプして飛び降りた。

 

 

 

「――チャンピオンに挑戦よ」

 

 あたしはクリスを指さしてそう言い放った。

 

「おおーっと、派手な登場をして挑戦者が降り立った!」

 

「はぁ? フィリア……、お前……」

 

 クリスは驚いた顔をしてあたしを見た。

 

「どうしたの? クリス、鳩が豆鉄砲食らったような顔してるわよ」

 

「いや、お前はこういうの絶対に出ないっていうか……」

 

「そうね、でも誰かさんが、とっても楽しそうに歌ってたから……」

 

「うぐっ……、勝手にしろ」

 

 クリスはプイとそっぽを向いてしまった。

 

「次の挑戦者は、ご存知、スーパースター風鳴翼の妹! 風鳴フィリアですっ!」

 

「ちょっと、妹じゃなくて、従姉妹だって何度も……」

 

「曲は、風鳴翼の“FLIGHT FEATHERS”! お姉さんの曲を選ぶとは可愛らしいですねー!」

 

「あなた、あたしの声は聞こえてるわよね?」

 

 司会者に苛立ちながらもイントロが流れてあたしは歌う準備をする。

 

 

「Deja-vuみたい――♪ 制裁みたい――♪」

 

 翼、記憶を失って人形になって、可愛げのない態度だったあたしを受け入れてくれた大切な友人……。

 

「Justice空――♪  感情のまま――♪」

 

 響、クリス、共に戦い抜いた仲間……。

 これからどんなことがあっても信じてほしいと思うのは、あたしの勝手な気持ち――。でも……。

 

「一人じゃない――♪  教えてくれ ――♪」

 

 あたしはこれから一人で戦ってくるわ。

 必ずここに戻ってくる。だから――。

 

「信じてMy――♪」

 

 あたしはFLIGHT FEATHERSを歌い終えた。

 

「チャンピオンとてうかうかしてられない素晴らしい歌声でした! これは得点が気になるところです!」

 

 司会が歌の感想を述べる。初めて歌ったけど、悪くなかったようね……。

 

「フィリア、お前もやるじゃねぇか! いい歌だった」

 

 クリスがあたしに手を差し出したとき――。

 

「リア姉、アジトが特定されて、帰還命令が出たデス」

「早くこっちに……」

 

 切歌と調がステージに駆け寄ってきた。何か不測の事態が起きたようね……。

 

「おっお前らはっ! 何をバカなことを……、おいっフィリア、どこに行く?」

 

「悪いわね、クリス。そういうことだから――」

 

「さあ! 採点結果が出た模様です! あれ?」

 

 あたしは結果を待たず二人とともに会場を出た。

 

 しかし、急いで出たにも関わらず、二人を連れて逃げ出すのは容易ではなく――。

 

「くそっ、どうしたものかデス」

 

「はぁ、こういうときの手際はいいのね……」

 

「切歌ちゃんと調ちゃん、だよね? それにフィリアちゃんはどうして?」

「フィリア、これはどういうことだ? 説明してもらおうか?」

 

 翼と響にそして、クリス。三人に取り囲まれてしまった。

 

「簡単に説明するわ。記憶の一部が戻ったのよ。で、あたしはこの子たちの仲間だった。それだけよ。だから、この子たちに付くことにしたの」

 

 あたしは淡々とした口調で翼たちにそう告げた。

 

「おい、それは本気で……」

 

 クリスがあたしに掴みかかろうとしたとき、翼が手で制した。

 

「記憶が? しかし、彼女らの仲間だった過去があったとて、今のお前は……」

 

「ええ、二課の一員よ。離れるのは残念だけど、邪魔しないでね。出来るだけ、あなたたちと戦いたくないもの」

 

 あたしはジッと翼を見据えてそう言った。

 

「フィリアちゃん、本当に……」

「わかった。何処へでも好きなところに行くがいい」

 

「おいっ、お前まで何言ってんだよ?」

 

「ここで、手荒なマネをするほどバカじゃないと信じてたわ。行くわよ、切歌、調……」

 

 あたしは切歌と調に声をかけて、リディアン音楽院から外に出た。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 あたしたちは合流地点であるカ・ディンギルの跡地に到着した。

 

 そこに例の大型のヘリコプターが到着する。

 

 マリアが降りてきてこちらに向かってきた。

 

「マリア、大丈夫デスか?」

 

「ええ」

 

「良かった……。マリアの中のフィーネが覚醒したらもう会えなくなってしまうから」

 

 切歌と調はフィーネの器となったマリアを気遣った。

 

「フィーネの器になっても私は私よ。心配しないで……、それよりも……、フィリアが本当に来るなんてね……」

 

 マリアは切歌たちの後ろにいるあたしに目をやった。改めて見ると、マリアはずいぶんと大人っぽくなったわね……。

 

「ええ、久しぶりは……、変ね。マリア……。今まで忘れていて悪かったわ」

 

「そうね、忘れられていたことはショックだったけど……。今は思い出してくれて嬉しい」

 

 マリアは手を差し出して、あたしは彼女の手を握った。

 

 そして、ナスターシャとウェル博士、さらにフィアナも出てきた。

 

「やっほー、フィリアちゃん。記憶戻ったんだー? 良かったわぁ。フィリアちゃんと戦うのって胸が痛かったんだからー」

 

「フィアナ、あなたも、そのう……色々と大きくなったわね……。大事な妹を忘れてしまってごめんなさい。あなたとも戦ったりして……」

 

「バカねー。私とフィリアちゃんの仲じゃない。昔から取っ組み合いの喧嘩もしたし、お互い様よ。お互い様……」

 

 フィアナは昔からこんな感じで飄々としていた。彼女の明るさには何度も助けられた。

 

「フィリア、記憶が戻った様ですね。しかし、私はあなたを信じられません。話によれば、切歌と調にギアペンダントの奪取をやめるように話したとか……」

 

「聖遺物が欲しいんでしょ? 効率が悪い上にしくじる可能性が高い方法を親切で止めてあげたのよ」

 

 予想通り、ナスターシャはあたしを疑っている。

 

「効率が悪いぃ? ちょっとぉ、フィリアちゃん。ドクターの提案した方法にケチをつけるんだったらぁ、私は許さないわよぉ」

 

「待ちたまえ、フィアナ。僕は興味がありますよ。フィリアさんがどのような代案をご教授してくれるのか」

 

 ウェル博士はフィアナを手で制して、あたしに代案を聞こうとする。

 

「簡単よ……。コード、ファウストローブ……」

 

 あたしはファウストローブを纏った。

 

「ほう」

 

「フィリアちゃん、そんな格好をしていきなり戦闘でも始めようってんじゃあないわよねぇ」

 

 フィアナは腕を組んであたしを見据えた。それをしてあなたたちを取っ捕まえたら、まぁ考えないようにしましょ……。

 

「ほらっ、これで解決よ。この腕は聖遺物でコーティングされてるわ」

 

 あたしは左腕を千切って投げた。

 

「リア姉、何をしてるのデスか!」

「腕を……」

 

「バカね、簡単にこれくらい再生出来るわよ」

 

 あたしはチョコレートを取り出してかじる。すると、いつものように腕が光に包まれて再生した。

 

「ほらね。で、あと何本欲しいの? あなたたちがホントに月の落下とやらを防ごうとしてるんだったら、これくらいするわよ」

 

「ふっふっふ。はぁーはっはっは! 素晴らしいですよ! やはり、君は英雄の素質タップリです! くっくっく、確かにこんなに簡単な方法があるなら、ギアペンダントを掠め取ろうとするなんて愚策と言われても仕方ありませんねぇ」

 

 ウェル博士はご満悦の表情を浮かべていた。やっぱりこの人は好きになれないわね。

 ていうか、フィアナが身内ってわかった瞬間、とっても将来が心配になったんだけど。

 

「聖遺物の提供には感謝します。しかし……」

 

「あら、ずいぶんと疑い深いじゃない。まぁ無理もないけど。でも、あたしを疑う余裕なんてあるの? 本国である米国からも追手が来ていては、計画の実行というのも厳しくなっているんじゃないかしら?」

 

「あなたは昔から自分のペースに相手を巻き込むのが上手でした。それでは、一応聞いておきますが、計画を実行する良い方法とやらがあるというのですか?」

 

 ナスターシャはようやくあたしの話に聞く耳を持ってくれた。

 

「二課に来なさい。あたしの養父は二課の司令官。月の軌道計算さえすれば、すぐにNASAの発表が嘘ということもわかるはず。この絶望的な状況を逆転する一手があるのなら、私の父は協力を惜しまないわよ」

 

 あたしは彼女らを二課に引き込もうと説得した。

 

「……少しだけ考える時間をください」

 

「ちょっとぉ、マム! ここまで来て引くっていうのぉ?」

 

「そうですよ。二課などに頭を下げるなど英雄のする事ではありません。手柄を横取りされますよ」

 

 ナスターシャの発言にフィアナとウェル博士が批判をした。

 手柄の横取りときたか……。面倒なことを言うわね。

 

 だけど、一筋縄にはいかない予感はしてたわ。

 だからこそ、あたしは彼女らの懐に飛び込むという潜入任務をしているのだ。

 武装組織フィーネと二課の交渉のテーブルを作る。これがあたしの目標――。

 

 弦十郎にはキチンとその意図は伝えた。

 翼たちには伝えずに出たのは、あのとき下手なことを言って、切歌と調にいらない警戒をさせない為と、彼女らがあたしが危険な任務をしようとすることを止める可能性があったからだ。

 

 さて、どうしたものか……。




ついにフィーネに潜入を開始したフィリア。
補足ですが、フィリアの記憶はネフィリムが暴走してセレナが絶唱を唱える寸前まで戻ってます。
次回もよろしくお願いします!



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