【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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タイトル通り、フィリアが料理を作ったりする話です。
それではよろしくお願いします!


クッキング

「フィリア、何をしているの?」

 

「えっ? 何ってビーフストロガノフの準備だけど……。今度の学校の調理実習で作るから練習しとこうと思って……」

 

 ここに来る前に買ってきた具材を切ったりしているあたしにマリアが話しかけてきた。

 

「それは見たらわかるわよ。マムがあなたを疑っている以上、半分は人質みたいなものなのよ。何、当然のように料理してるの?って聞いてるのよ」

 

「理由は――マリア、あなたがまだ料理が出来ないからよ。というより驚いたわ、調に教えてもらった食料庫、カップ麺やお菓子ばっかりじゃない……」

 

 あたしは思った以上にカツカツの状況で世界を相手取って宣戦布告した“フィーネ”という組織に呆れていた。

 

 ちなみにフィアナはマリア以上に料理は下手だった。だから、昔、私だけ給仕の手伝いをさせられていたのだ。

 

 ケータリングの料理をあの立ち振る舞いをしたあとにちゃっかりタッパーに入れて持って帰ったという話を切歌に聞いたときは正直言ってドン引きした。

 

 というか、こんな状況で計画なんて遂行できるはずないじゃない。

 切歌と調を使ってクリスと翼のギアペンダントを盗み出すなんて計画を立ててる時点で破綻してるのよ。

 

「だからって、普通この状況で作ろうと思う? ――でも、料理……、相変わらず上手なのね。あなた……」

 

「これくらいで上手いとか言わないでよ。マリアとフィアナが下手すぎるの。調にさっきどんな料理を作るのって聞いたら、カップ麺の作り方を説明されて悲しくなったわよ」

 

「うっ……、何か手伝うことないかしら? 私だって少しくらい……」

 

「あら、そう? じゃあ玉ねぎを薄切りにしてくれる? ちょっと、そんな持ち方だと指を切っちゃうでしょ」

 

 危なっかしい持ち方をしてるマリアにあたしは注意した。

 

「えっ、こっこうかしら?」

 

「ちょっと、貸してみなさい。こうやって持てば安全でしょう? なんでガングニールが使えるのに、そんなに不器用なのよ」

 

 埒があかないので彼女からニンジンを奪い取り見本を見せる。

 

「こういうのも、懐かしいわ」

 

「あなたと料理したことなんかないでしょ?」

 

「そうだけど、こうやって私に口うるさくするのってあなたしか居なかったから……」

 

「口うるさくって、あなた、あたしのことそう思ってたの? 何よ、こんな食生活でなんでこんなに育ってるのよっ!」

 

「ちょっと、どこ触ってるの? やめなさいっ」

 

 マリアとは年齢が近いからこうやって小競り合いはよくやってた。フィアナは楽しそうに見てるだけで、セレナがよく仲裁に入ったっけ。

 

 セレナがまさかあのとき絶唱を……。

 マリアの妹であるセレナ=カデンツヴァナ=イヴはシンフォギアの適合者だった。

 

 彼女が適合者だったからこそ、あたしたちは装者の素質を調べられることになったのだ。

 あたしの素質は最低だったけど……。

 

 ネフィリムが暴走したとき、セレナはそれを止めるために絶唱を歌って命を落としたらしい。奏と同じで……。

 あたしはそれすらも忘れていて、未だに思い出せないことがショックだった。

 

 そして、マリアに聞いた話では、その絶唱の凄まじい力でネフィリムを抑えている間に、いつの間にかあたしは行方不明になっていたらしい。

 自分の記憶はその直前で途切れているので、何が起こったのか、そのあとどうなったのかは謎のままであった。

 

 

「ねぇ、マリア……」

 

「何、改まって……」

 

「あなた、どうしてフィーネのフリなんてしてるの?」

 

「なっ、何をいきなり。フリなんてしてるはずないじゃない」

 

 嘘が相変わらず下手くそね。目が泳いでるわよ……。

 

「あたしはフィーネのクローンよ。わからないはずが無いじゃない」

 

「……っ」

 

 マリアは辛そうな顔をして黙ってしまう。

 

「それにね、フィーネは本当に近々転生するわよ。それが、切歌や調やそれにあたしと同じクローンのフィアナになる可能性もあるのよ」

 

「だから、私がそれだって言ってるでしょ」

 

「そう、わかったわ……」

 

 これ以上、彼女を追求しても意味が無さそうなのであたしはこの件について言及するのを止めた。

 

 そして、再び作業に戻った――。

 

「いい匂いデスなぁ」

「リア姉がおさんどんやってくれて嬉しい……」

 

「調、変な日本語をいつの間に覚えたの……? まぁいいわ、ビーフストロガノフを作ったから、みんなで食べましょう」

 

 あたしはビーフストロガノフが完成したことを切歌と調に伝えた。

 

「わっ私も手伝ったんだから」

 

「へぇ、あれを手伝いと言えるあなたが凄いわ……」

 

「頑張ったんだから良いでしょ!」

 

「はいはい、よく頑張って偉いわよ、マリア……」

 

 あたしはマリアの腰を叩いた。

 

「アナ姉とドクターは晩御飯は要らないみたいデス」

 

「せっかくリア姉が作ってくれたのに……」

 

 食事の準備が出来たことを切歌たちに伝えて来るように頼んだのだが、来たのはナスターシャだけだった。

 

「フィリアが晩御飯を作ったのですか?」

 

「言っとくけど、毒なんて入れてないわよ。ねっ、マリア」

 

「ちょっと、フィリア……」

 

 マリアが戦慄した表情を浮かべた。

 

「さすがに私もそこまであなたを疑いませんよ……」

 

「そう、体の調子が良くないなら、マムにはお粥でも作るわよ」

 

「必要ありません。なるほど、隠れて菓子を作ってただけあって上手に作りますね……」

 

「気付いていたのね……。よく見ていらっしゃったことで……」

 

 ナスターシャはひとくち食べて微かに微笑んだ気がした。気のせいだろうけど……。

 

「美味しいデスよっ! こんな素敵な料理があるなんて」

「ビーフストロガノフ……、響きもカッコいい……」

 

 切歌も調も美味しそうに食べている。これだけ好評ならいつか弦十郎にも食べさせよう。

 

「それでマム、フィリアの提案だけど……」

 

「そうですね。これだけ時間が経っても追手が来ないところを見ると、あなたは本当に誰にもこの場所を漏らしてないみたいですね……」

 

「あら、場所を変えないと思ってたけど、試してたのね」

 

 あたしはナスターシャの目をまっすぐに見た。

 

「ふぅ、行方不明になったあなたとこんな形で再会するとは思いませんでした……。よく思い返せば、あなたほど仲間想いの子は居ませんでしたね……。マリア、切歌、調……、あなたたちはフィリアのことを信頼できますか?」

 

 ナスターシャはマリアたちにそんな質問をした。何の意図があってそんなことを……。

 

「私は一度戦ってみて、フィリアの二課に対する位置付けや、信頼関係は理解してるつもりよ。にもかかわらず、記憶が戻ったら私たちの元に来てくれた。さっき話してみてわかったのよ、彼女は昔と変わってないって。信じるわ」

 

「私や調を守ってくれたリア姉を信じられないはずがないデス」

 

「うん、リア姉なら信じられる……」

 

 三人は記憶を取り戻したばかりのあたしを信じると言ってくれた。まったく、昔と変わらずお人好しなんだから……。

 

「そうですか……。わかりました。私たちは所詮は素人の集団……。どちらにしても、本国に目を付けられた今、後ろ盾が必要な状況なのはフィリアの言ったとおりです。フィリア、あなたに私たちを――」

 

 その時である。けたたましいアラームの音が鳴り響いた。

 

「何があったの?」

 

「ネフィリムが持ち出されました。ドクター、何を考えてるの……?」

 

 ナスターシャが焦りをあらわにした。ネフィリムを? なんの為に……?

 

「フィアナとドクターが外で《ノイズ》をっ……」

 

「はぁ? そんなことをしたら二課は気付くわよ、この場所に……」

 

 フィアナとウェル博士がネフィリムを持ち出して、さらに《ノイズ》を出現させて位置を知らせるような真似をしているらしい。

 

「ドクターとフィアナを止める……」

「調が行くなら、私も……」

 

「それは無理よ……、LiNKERまで持ち出されてる……」

 

 マリアが愕然とした顔をしてそう言った。LiNKERが無かったらあなたたちシンフォギアを纏えないじゃない……。

 

「あたしが出るわ……。何を考えてるのかわからないけど……、フィアナたちを連れ戻してくる」

 

「どうやらそれしか手が無いようですね。先日まで敵側だったあなたに頼むのは気が引けますが……」

 

 ナスターシャは気まずそうな声を出した。

 

「マム、あたしはあなたの優しさも厳しさも知ってるつもりよ。だからこそ、あたしは助けたい。あの数年間を生きていけたのはマムのおかげだから……」

 

 あたしはナスターシャにそう伝えて、フィアナたちを止めるために外に出た。こんなところで響たちと戦闘になったりしたら、ナスターシャたちを説得したことが無駄になってしまう……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「何を企てる、F.I.S.!」

 

「企てる? 人聞きの悪い。我々が望むのは、人類の救済! 月の落下にて損なわれる無垢の命を可能な限り救いだすこと!」

 

「月の!?」

 

 遅かった……。既に翼たちは《ノイズ》と交戦中……。

 フィアナもシンフォギアを纏っていた。

 月の落下のことも話しちゃってるし……。

 

「月の公転軌道は各国機関が三ヵ月前から計測中! 落下などの結果が出たら黙って――」

 

「黙ってるに決まってるでしょぉ。バカねぇ」

 

「対処方法の見つからない極大災厄など、さらなる混乱を招くだけです。不都合な真実を隠蔽する理由などいくらでもあるのですよ!」

 

 ここまではあたしも理解できた。情報操作はどこの国もやってることだし……。

 

「まさかっ! この事実を知る連中ってのは、自分たちだけが助かるような算段を始めているわけじゃ?」

 

「だとしたらどうしようかしらぁ? これってヤバくなぁい?」

 

「対する私たちの答えが――ネフィリムっ!」

 

 で、わかんないのが、装者とこのタイミングで争う意味よ……。

 

「何を勝手なことしてんのよっ! ネフィリムの餌はたっぷり与えたでしょう」

 

 本気の正拳でネフィリムを殴りつける。

 

「フィリアっ! お前、ホントに居なくなりやがって!」

 

「クリス、ご苦労さま。ちょっと、こいつら連れて帰るから、あなたたちも帰ってくれるとありがたいんだけど……。――くっ、フィアナっ! 何するのっ? あたしはあなたたちの為にっ!」

 

 フィアナがあたしに向かって光線を放ってきたので、あたしは彼女に抗議した。

 

「うーん、私としてはぁ、フィリアちゃんが帰って来てくれて嬉しかったんだけどぉ。ドクターが、邪魔って言うからぁ」

 

「フィリアさん、あなたの聖遺物の提供には感謝します、が、あなたのやり方だと僕が英雄になれません……」

 

 ウェル博士はどうやら身勝手な理由で暴走しているようだ。だからコイツは信用ならないのよ。

 てか、フィアナのやつ、あたしよりこんな男取るなんて、あとで説教してやる。

 

 

「グォォォォォンッ」

 

 そんなことを思っていると、後ろからネフィリムが恐ろしいスピードで体当たりしてきた。あたしとクリスは吹き飛ばされる。

 

「わざわざ、出てきてぇ、悪いけどぉ……。引っ込んでてねぇ」

 

「フィアナっ――」

 

 赤い光線があたしに当たり、ファウストローブが弾け飛んでしまった……。

 

 さらに、駆けつけてきた翼と彼女に抱きかかえられたクリスは《ノイズ》から粘着性の糸を絡み付けられて動きを封じられてしまった。

 

「フィアナ、お手柄です。ついでに、不死身の身体のお人形様がネフィリムに食われるとどんな反応をするのか試してみましょうか?」

 

「ええーっ、さすがにドクター、フィリアちゃんが死んじゃうんじゃあ」

 

「僕の予想ですと、それでもフィリアさんは平気のはずです。そしてネフィリムもパワーアップする。Win-Winな状態になるはずですよ」

 

 ウェル博士はいやらしい笑みを浮かべて、適当なことを言う。

 そして、動けなくなったあたしにウェル博士はネフィリムをけしかけた。

 

「フィリアちゃんっ!」

 

 響がこっちに駆け寄ってくれるが、《ノイズ》が邪魔をして間に合いそうもない……。さすがに食われて生きてる自信はないわね……。はぁ、あたしは何のために……。

 

“まったく、仕方のない子ねぇ、大人しくしてあげようと思ったんだけど……”

 

 頭の中で声が聞こえたかと思うと、あたしの身体から見覚えのあるピンク色のハチの巣状の盾が飛び出てきた。

 ネフィリムはそれに行く手を阻まれて、吹き飛ばされる。

 

 何、今の? まさか、フィーネの魂があたしに? だって、リインカーネイションって、遺伝子の刻印に関係があるんでしょ?

 人形のあたしが何故……。あたしの頭は混乱してしまっていた……。




響たちは2年生の前半でビーフストロガノフを作ったと思いますが、カリキュラムが違うってことでご容赦ください。
暴走するウェルとフィアナは厄介な方向に進んでいます。
そして、フィーネの魂がまさかのフィリアに……?
次回もぜひご覧になってください。



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