【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
「いっ今のは一体……」
「あっれぇ? フィリアちゃんってば、まだそぉんな力があったのぉ?」
あたしは自らの身体からフィーネのバリアーが出てきたことに驚いた。
「ねぇ、ドクター。そろそろ引いたほうが良くないかしらぁ? ネフィリムもちょっとまだ力が弱いみたいだしぃ」
「フィアナ、ネフィリムの力はこんなもんじゃあない。確かにフィリアくんは食べ損なったが……」
どうやら、ウェル博士は退く気はないらしい。
このスキに離れないと……。せめてLiNKERを奪って――。
あたしはなんとか立ち上がり、ウェル博士の近くにあるトランクに手を伸ばそうとした。
――破閃――
その時である。あたしの四肢がフィアナの紫色の光線によって吹き飛ばされたのだ。
「いくらぁフィリアちゃんでもぉ。ドクターに手を出すんだったらぁ……。本気で殺すわよぉ――」
フィアナの目からはこれまでに感じたことの無いくらいの殺気を感じた。この子本気ね……。
「ナイスです。肉親をも差し出すとは、君だけは他の有象無象と違う。いい子ですね、フィアナ……」
「もちろんよぉ。ドクターの為だったらなんだってしちゃうんだからぁ」
「では、今度こそネフィリムに――」
ウェル博士は私に再びネフィリムをけしかけようとした。
「フィリアちゃんにぃぃぃ! 手を出すなぁぁぁぁっ!」
「ええ、手を出しません。あなたに手を出すことにします――」
「てぇぇいっ! ――えっ?」
「響ぃっ――!」
グシャリという嫌な音が聞こえたと、思うと響の左腕はネフィリムに噛み千切られて食べら
「ふっ、ふふふ……」
「あーら、大惨事ねぇ……」
「あっ……。――うわぁぁぁぁっ!」
左腕からおびただしい量の血を流して響は絶叫する……。
響が、響が……、あたしを庇って腕が……。
「ふふっ、いったぁっ! パクついたぁ! シンフォギアを、 これでぇぇっ!」
ウェル博士は勝ち誇った表情を浮かべた。この男やはりゲス野郎だ……。
「ううっ……」
「響っ! くっ、再生でエネルギーがっ……!」
響がこのままだと……。こんなときにあたしは何でこんなに無力なの。
フィーネでも何でも良いから力を貸しなさいよっ!
「完全聖遺物ネフィリムは、いわば自律稼働する増殖炉! 他のエネルギー体を捕食し、取りこむことでさらなる出力を可能とする! さぁ始まるぞ! 聞こえるか? 覚醒の鼓動! この力がフロンティアを浮上させるのだ! ふははははっ! ふひっ、ふひひひひっ!」
「ホントだぁ、ドクターったら、ここまで計算ずくだったのねぇ。すごいわぁ」
ネフィリムは赤い光を放って、体が巨大化する。
「ふひひひひっ………、ふぇっ?」
「うぅぅぅぅっ! ウガァァァッ! ガァォァァァッ!」
響の体が漆黒に染まった……。ここに来て暴走……? あたしはかろうじて身体を動かして、口にチョコレートを運び少しだけエネルギーの回復をした。
「ウガァァァァッ! グルゥゥゥッ! ガァァァッ! アァァァァァッ!」
あたしみたいに腕を再生したっ!? いえ、あれは……。
「ギアのエネルギーを腕の形に固定!? まるでアームドギアを形成するかのように!」
翼の言うように、響が任意でエネルギーを操って腕の形を作ったという方が正しいわね……。
「ガルゥゥッ!」
「ま、まさか!?」
響はとんでもないスピードでネフィリムの前に移動した。
「ウルァァッ!」
「や、やめろー! やめるんだー!」
「ガウガウァァァッ!!」
響の信じられないほどの強力な攻撃でネフィリムはボコボコにされていく。ウェル博士は驚愕した表情で狼狽えていた。
「成長したネフィリムは、これからの新世界に必要不可欠なものだ! それを! それをぉぉ! フィアナっ! あの女を止めろぉぉぉっ!」
「仰せのままに、ドクター! 」
――破閃――
フィアナは響に向かって紫色の光線を浴びせた。
「あらぁ、効いてないのねぇ……。ぐふっ――」
フィアナの攻撃はまったく効果を見せなかった上に響は彼女をチラッと見たと思うと、一瞬で詰め寄って、腹を蹴り上げた。
フィアナは大きく吹き飛ばされて、地面に倒れる。バカね、喧嘩を売る相手が悪すぎるわ……。
「ガルァァッ! ウルァァァッ!」
そして、響はネフィリムをボコボコにする作業に戻って行った。
「いゃめろぉぉぉっ! フィアナっ! 寝てる場合ではなぁぁぁいっ! アレを何とか止めろっ!」
ウェル博士はフィアナに声をかけながらソロモンの杖を使い、《ノイズ》を召喚した。
召喚された《ノイズ》たちは合体して巨大な《ノイズ》に変形する。
「なっ……、響、なんて……」
響は、自分からノイズの口の中へ入り、内側から《ノイズ》を破壊したのだ。
「ウガァァァァァッ!」
「ドクター、LiNKERをください。歌います……。絶唱を……」
「そうか、そうか、さすがはフィアナ。歌っちゃいなYO! いくらでもぉぉぉっ!」
ウェル博士はフィアナの首にLiNKERを刺した。
「ネフィリムはドクターの大切なものよぉ。それを、やらせはしないっ――。Gatrandis babel ziggura ――……、Emustolronzen fine――」
あのバカっ! なんて、無茶を……! なんで、あの男の為にそんなことが出来るのよ!?
「最大出力! くらいなさぁいっ!」
フィアナは両手を響に向けて超巨大な黄金のレーザー光線を放った。
しかし、響はネフィリムを光線に向かって投げ飛ばして盾にするっ……。
フィアナの絶唱から繰り出された光線が直撃したネフィリムは悲鳴のような絶叫を上げる。
「何をやってるっ! ちゃんと狙えよっ役立たずがっ!」
「ごっ、ごめんなさぁい。ドクター、もう一回、LiNKERを……。ゲホッ……、ください……」
フィアナは口から血を吐き出しながらLiNKERをもう一回、体内に投与するようにウェル博士に頼む。
「クックック、それでいいぃぃぃ! 今度は外すなぁぁぁっ! 奴を吹き飛ばせぇぇぇぇっ!」
「いい加減になさいっ! この大馬鹿者っ!」
あたしはウェル博士とフィアナを蹴り飛ばした。ふぅ、ようやく動けるようになったわ……。ファウストローブは使えないけど……。
「ふげぇっ」
「きゃっ」
ウェル博士とフィアナは地面に倒れた。
フィアナ……、こんなに簡単に倒れるなんて……、やっぱり、ギリギリだったんじゃない……。もう一度、絶唱なんてしたら死んでもおかしくなかったわよ。
「フィリアちゃん、なんで私の邪魔するのぉ?」
「あなたの姉だからに決まってるでしょっ! 死ぬ気なのっ?」
「うん、死ぬ気だよ――。ドクターの為に……」
「――っ!?」
真剣な目でまっすぐにそんな宣言をされてあたしは絶句した。何考えてるのか解りにくい子だったけど、こんな目をして冗談を言う子じゃなかったからだ……。
そんな中、ネフィリムの絶叫が再び耳に届いた。
響の拳がネフィリムの体内から心臓のようなものを抜き出したからだ。
そしてブチブチと音を立てて、響はネフィリムの心臓のようなものを掲げた。
「ひぃぃ! ネフィリムがぁぁぁっ!」
響は心臓を投げ捨てて、上空にジャンプして、右腕を槍のような形に変形させた。
「ガルァァァァッ!」
響はネフィリムの背中に槍を突き刺す。
すると、ネフィリムから赤い光が放出されて大爆発を起こした。
そして、《ノイズ》たちも同時に消え去った。
「ちっ、引くしかない……」
フィアナは素早くドクターを抱えて、ネフィリムの心臓を手にして逃げていった。あの子……、マリアたちのところに戻りそうな感じじゃないわね……。
「よせっ! 立花、もういいんだ!」
「お前に、黒いのは似合わないんだよ!」
さらに暴れようとしている響を動けるようになった翼とクリスが取り押さえる。
「ガルッ……、グルァァァァァっっ!」
「くっ!」
「このバカ!」
響は体から光を発して、そして――元の姿に戻って気絶した。
左腕……、再生してるですって……?
「立花! しっかりしろ! 立花ぁぁぁっ!」
「早く、救護の手配をしなさい!」
響に声をかける翼に、あたしは指示を出す。
「お前、まだ帰らないつもりかよっ! あのバカがこんなになってんだぞっ!」
「ごめんなさい、クリス……。大切な人を、守りたいのよ……。大丈夫よ、すぐに戻るわ……。約束する……」
「フィリア……、お前……。はぁ、やっぱ、お前はお前だったか……。好きにしな」
クリスは少しだけ微笑むと、響の元に駆け寄って行った。
そして、私もマリアたちの元へ戻った。
マリアから通信が来たのだ、ナスターシャの容態が悪くなったと……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「マム! マム! しっかりしてマム!」
ナスターシャは血を吐き出してぐったりしていた。まったく、こんな体調で……。何を考えてるのかしら……。
「マリアっ! 一刻を争うわ。二課の医療設備なら、マムに十分な医療を受けさせることが可能よ」
あたしはマリアにニ課に身を寄せることを提案した。
「しかしっ! マムの指示も無しでそんな勝手っ……!」
「じゃあ、あの男の方が信用できるって言うの? アイツは自分が英雄になることしか考えてない大馬鹿者よ」
「くっ……、だけど、ここで私たちが捕まっては……」
マリアは苦渋の表情を浮かべた。迷ってるのね……。
「それなら大丈夫よ。あなたたちを拘束するのは全部終わってからにするから」
「それは、どういうこと?」
「あなたたちは武装組織“フィーネ”としてではなく、あたしの友人の民間協力者として二課に来てもらうから」
弦十郎からのメールを開いて、マリアに見せた。やっぱり、最初にプライベートメールに送って考える時間を作ってもらって正解だったわ。
「そんな無茶苦茶でバカなこと……」
「出来るのよ、ウチの父もその部下もみんなバカだから。“フィーネ”だって、気付かなかったことにするのっ。既に月の軌道計算は終わってる。あなたたちの主張が正しいってことも大きかったわ。世界を救う方法があるなら教えてほしい……。それがあたしたちの出した結論よ……」
そう、月の落下が事実だとわかった今、この子たちと争うほど無駄なことはない。あたしたちがすべきことは、情報を迅速に収集し、事態の改善方法を模索すること……。
「――ふぅ、あなたが居て良かった。このままだと私は壊れてしまいそうだった」
マリアはあたしをギュッと抱きしめて、そう声を出した。優しいあなたには特に辛いことだったのでしょうね。
「切歌、調、私たちはマムを失うわけにはいかない! それにこの世界を救わないわけにはいかないっ! 積み重ねたことを崩すことになって申し訳ないけど……」
「何を言うのデスか。マリアに負担がない道があるなら、そのほうがいいに決まってるデス!」
切歌はマリアのことを心配していたらしく、ホッとした表情を浮かべていた。
「でも、フィーネの生まれ変わりのマリアが酷いことされないか心配……」
調はマリアの身を案じているようだ。この子も優しい子よね。
「ああ、フィーネの魂ならあたしの中にあるからマリアは大丈夫よ。相変わらず、そそっかしいんだから」
「「えっ!」」
「ちょ、ちょっとフィリア。それは、一体どういうこと?」
「ああ、面倒だから後で話すわ。それより応急処置は出来てるみたいだけど、マムをこのまま放置できないでしょう。ウチの救護班の手配をするから、あなたたちも二課に同行してもらうわよ」
こうして、あたしは弦十郎に連絡を取り、民間協力者4名を二課の司令室と緊急救命室に連れて行くことに成功した。
月の落下防止の為にあたしたちは協力し合うことで同意となったのだ。
――しかし、大きな衝撃があたしに襲った。暴走していた響のことだ。
彼女の心臓と融合しているガングニールの欠片が、どんどん体中に侵食を開始して彼女を蝕んでるらしい……。
“あら、やっぱり響ちゃん、大変なことになっちゃてるみたいね”
響の容態を聞いて愕然としていたあたしに、聞き慣れたムカつく声が再び話しかけたのだった。
マリアたちが原作よりも早くニ課へ……。まぁ、ずっとこのままという訳にはいきませんが。
そして、再びフィーネの声が聞こえたフィリアは……。
次回もよろしくお願いします!