【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします!
「これは――?」
「メディカルチェックの際に採取された、響くんの体組織の一部だ」
弦十郎から翼とあたしは金属の結晶のようなものを見せられる。
「胸のガングニールが?」
「そんなバカな……」
あたしたちは目を疑う。
「身に纏うシンフォギアとして、エネルギー化と再構成を繰り返してきた結果……、体内の浸食深度が進んだのだ」
聖遺物と肉体の融合って聞いたときに嫌な予感がしたけど……、まさかこんな……。
「生体と聖遺物がひとつに融け合って……」
「じゃあ、響の異常な爆発力は――」
「フィリアくんの言うとおり、適合者を超越した響くんの爆発的な力の正体がこれだ」
響の力の代償は大きすぎるものだった……。
「この融合が立花の命に与える影響は?」
「遠からず死に至るだろう……」
「立花の死……? 死ぬ? 馬鹿な……」
「そんな……、あたしを庇って……、響は……」
響の侵食を早めたのは、あたしを庇って暴走したからだ……。あたしが独断専行したせいで、こんな結果になるなんて……。
「そうでなくても、これ以上の融合状態が進行してしまうと、それは果たして人として生きていると言えるのか? 皮肉なことだが、先の暴走時に観測されたデータによって、我々では知り得なかった危険が明るみに出たというわけだ」
本当に皮肉な話ね……。どうしたら……。
“あら、やっぱり響ちゃん、大変なことになっちゃってるみたいね”
「フィーネ……」
「ん? フィリアくん、何か言ったか?」
弦十郎が不思議そうな顔をしている。やっぱり、あたしにしか聞こえてないようね……。
“響ちゃんの状態を何とかしたいんでしょう? 力を貸したげようか? 彼女のメディカルデータ、私より詳しい人は居ないわよ”
“はぁ? あなた、何を企んでるの?”
“フィリアちゃん、ママのこと信じられないの?”
“拗らせて、月を破壊しようとして、その結果地球を危機に陥れた張本人を信じろって言うの?”
“えっ、ダメかしら? そんなことくらいで疑われてるの私……”
“あなたみたいな人の遺伝子を使って生まれて来たことが嫌すぎるんだけど……。まぁ、いいわ。どうするの?”
“そうねぇ、長々と説明するのも面倒だから、私の知識をあなたに送るわ……”
「うっ……、何なのこれ……」
「フィリアくん、どうした? 響くんのことがショックなのはわかるが、ボーッとして……」
「そうだ、フィリア。さっきから少し変だぞ」
翼と弦十郎が不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
今、私の意識の中にフィーネの知識が流れ込んでいる。
響を助けるヒントをくれるって言ったけど……。
「神獣鏡……、凶祓いの力……、リムーバーレイ……、聖遺物の力を無効化し、分解……。――確か神獣鏡って、マリアたちのヘリコプターをステルス化させた、聖遺物……。装者不在だけど、ギアペンダントはあるって、言ってたわね……」
神獣鏡には凶祓いの力が宿っており、聖遺物を無効化し、分解する力が眠っている。
ギアとして纏う者がいれば、その力を利用して、響の体の中の聖遺物を除去することが出来るという理屈だ。
「大丈夫か? 今、マリアくんがどうとか言っていたが……」
「司令、響を助ける方法があるかもしれないわ。装者を見つけられれば、だけど……」
「響くんを救う方法だとっ!?」
「フィリア、それは本当か? 立花をどうやって救うというのだっ?」
あたしはフィーネに教えてもらった知識をそのまま弦十郎たちに話した。
もちろん、マリアたちにも協力してもらわねばならないし、第一、装者を見つけなくてはならないという最難関クラスのハードルがある。
「うーむ、なるほど。確かに難しい条件だが……」
「確認されてる装者の数は少ない……。しかし、立花に今後無理をさせねば、時間は作れよう……」
二人は希望が見えてきたという表情となった。
「しかし、フィリアくん。随分と聖遺物の知識に詳しくなったようだが、どうしたんだ。まるで――」
「了子みたいって言うんでしょ。今、あたしの魂の中にフィーネが居るのよ……」
「はぁ? 了子くんの魂だとぉっ!?」
「それは本当か? 確かに櫻井女史の知識なら立花の身体にも詳しいし、対応策がすぐに出てきてもおかしくないが……」
あたしの言葉に二人は驚愕の表情を浮かべる。まぁ、そりゃ諸悪の根元みたいな人があたしの中に居るって知ったらそうなるわよね。
「そうか……、了子くんが響くんを助けようと……」
ただ、弦十郎は少しだけ嬉しそうな顔をしていた。
この人、女の趣味が悪いから了子のこと……。
“えーっ、なにそれ聞いてないんだけどー。弦十郎くんって私のこと……。あーあ、もっと早くそれを知ってたら私も乗り換えてもよかったのに”
“人の思考を覗き見した上に気持ち悪いこと言わないでよ。ていうか、そんなに軽いものじゃなかったんでしょ? あなたの気持ちは……”
“まぁね。だけど、弦十郎くんは良い人だから……。まぁいいわ。あと一つだけヒントをあげるわ。響ちゃんを救いたいなら、彼女をトコトン愛する人を探しなさい――。愛の力が適合係数の壁を乗り越えることだってあるんだから……。やりようによってはね……”
「響を愛する人?」
あたしは思い当たる人物を思い浮かべた――彼女は確かに愛の力なら誰にも負けないだろうけど……。
とにかく、協力者となったマリアたちと連係することが決まったばかりで、響のことだけに時間を使うわけにはいかないので、彼女には無理をさせないように注意喚起し、神獣鏡の装者探しをしようという話で落ち着いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねぇ、フィリア。私たちに住む場所を提供してくれたのは嬉しいんだけど……。ここって二課の司令の自宅よね……」
「ええ、広いから部屋が余って仕方ないのよ。あと、あたしの自宅でもあるから」
アメリカからも狙われているマリアを民間のホテルに泊めると色々と危険そうだったので、一番安全そうな場所を思案した結果、二課の司令官、人類最強の男の自宅がもっとも安全だという結論に達した。
「あなたが風鳴弦十郎の養子になったのは知っているけど、一緒に住んでるなんて……。いや、私は良いのよ。でも切歌と調を知らない男の家に泊めるのは……」
「廃病院は良いのに? そっちの方がよっぽどハードル高いと思うわ……。思い出しただけで不憫なんだけど……」
あのボロボロの廃墟に住んでいたって考えるだけであたしは哀しかった。
それなのにマリアは小さなことをぶつくさ言ってくる。
「まぁまぁ、フィリアくん。マリアくんの言うことは当然の話だ。見ず知らずの男が居るとストレスになるだろう。俺は使ってない離れにしばらく住むことにしよう。こっち側は君たちで好きに使うと良い」
弦十郎は離れで一人で過ごすと提案した。まったく、いつもお人好しなんだから。
「一体どうして? あなたの言うとおり、私たちは見ず知らずどころか、先日まで敵だったのよ? こんなに親切に普通しないわよ……」
「確かに君の言うとおり、先日までは我々は敵同士だった。しかし、今は同志だ。地球の危機を救うという共通の目標の為に同じ方向を向いている――。それに……、それ以前に君たちは俺の大事な娘の友人と恩人だ。親ならそんな君たちを大事にするのは当然だろ?」
この親バカというか、バカ親はあたしに相変わらず、バカみたいに甘い。
まったく、恥ずかしいじゃない……。マリアにそんなこと……。
「フィリアには良いお父さんが出来たのね……。羨ましいわ」
「その代わり母親は最低だけどね。これで何とかバランス取れてるわ」
“ちょっと! 酷い言い方じゃない!”
あたしはフィーネの抗議を無視する。いや、普通に考えて人類に迷惑かけまくりの母親って嫌でしょ。
「では、ありがたく住居を使わせていただく。私たちは、あなた方に全面的に協力することを惜しまないわ」
マリアは凛々しい顔つきになって力強くそう言った。多分、奮発して買った高級な牛肉のおかげだろう。
昔からこの子はその日のご飯で力が変わっていたから……。てか、この子って高級食材で固めたメニューを食べさせれば、LiNKERいらないんじゃないの?
「マリアー、すごいデス! 調と一緒に使うベッドが大きくてふかふかデス!」
「切ちゃんと暖かい部屋で眠れるの久しぶり……」
自分たちの使う部屋に案内されてしばらくプライベートな空間を楽しんでいた切歌と調が嬉しそうな表情でリビングにやってきた。
「「…………」」
「何、あなたたちのそのいたたまれない者を見るような視線は! 悪かったわよ! お金がギリギリの状態で武装蜂起なんてしようとしてっ! 切歌と調に我慢させちゃって!」
「いや、俺は別に……」
「マリアって、ときどき逆ギレするわよね……」
私は涙目で逆ギレしてるマリアを呆然と眺めていた。
まぁ、ナスターシャも何もしないで死ぬよりはって感じで決死の覚悟で動いたんでしょうけど……。
マリアには切歌と調に負い目があったみたいだ。
「まっまぁ、マリアくん。こちらの都合ではあるが、シンフォギア装者の一人である響くんが戦えなくなってしまった。だから、戦力が増えることはとても助かっているんだ」
「でっでも、私たちにはもう、LiNKERが……」
「そうデス。アナ姉のバカとアホドクターが……」
「私たちはもう戦えない……」
弦十郎の発言にマリアたちは悔しそうな表情を浮かべた。
「そうね、当面は奏の使ってたLiNKERで凌ぐしかなさそうね。まぁ、近いうちに、あたしが新しいやつを作るわ」
「「えっ?」」
マリアたちは驚いた表情であたしを見た。
「言ったでしょ、あたしの魂にフィーネが居るって。彼女から役立ちそうな知識をさっき送ってもらったの。そもそも、LiNKERはフィーネが作ったんだから。F.I.S.製の改良型LiNKERのサンプルも、フィアナが落とした奴を持って帰って来たから解析して量産可能よ」
あたしはフィーネを利用するだけ利用することにした。借金はそれでも全然返済できないだろうけど……。
「フィーネはマリアじゃなくて本当にリア姉に宿っていたのデスか?」
「でも、それじゃあリア姉がフィーネに……」
「うーんと、多分大丈夫よ。この人なりに反省してるみたいだし……。あたしの身体を乗っ取る気なら知識だけ渡すなんてマネしないでしょう」
あたしはフィーネに身体を取られる心配について否定した。迷惑な同居人が増えたけど、仕方ないと割り切るしかない。
「では、私たちもドクターなしで戦うことが出来るというわけか。それなら……」
マリアたちの顔が少しだけ明るくなった。
本当は誰にも戦って欲しくないんだけどね……。
ただ、このまま戦力が少ないって状況になると響のバカが――絶対に無理をしようとする……。
あたしにはそれが堪らなく嫌だった――。
「それじゃあ、俺はそろそろ離れに行くから……。何かあったら連絡してくれ」
弦十郎はあたしたちにそう声をかけて母屋から出ていった。
弦十郎も内心複雑よね。出来れば翼やクリスにだって、いや、あたしにだって戦って欲しくないって思ってるくらいだから……。
本当に甘い人なんだから……。
“あれも大好き、これも大好きって、フィリアちゃんは友達想いね。私は恋愛の力が至上だと思ってたけど……、フィリアちゃんの友愛の力もなかなかやるわね……”
“うるさいわね。別にそんなんじゃないわよ”
困ったことに
あたしは寝ない身体なので、彼女のお話に死ぬほど付き合わされて……。ついでに科学者としての知識を活かした研究のやり方を教わるのだった。
おかげで、私は早い段階で実用性があり、尚かつ体に負担が少ないLiNKERとより安全な体内洗浄の方法を確立するに至ったのである。
フィーネは戦闘より科学者の資質がある。さすがは自分のクローンだと調子のいいこと言ってた。
あたしはガラクタって言われたこと忘れてないから――でも、今回に限ってはありがたかった。
“あら、フィリアちゃんってば、デレてるのー? 可愛いー”
やっぱりこの人は最低の母親だ……。
フィーネが便利キャラになってしまい、フィリアも便利な感じになってしまいました。
これくらい盛っておかないとGX編以降が大変になりそうというご都合主義もありますので、ご容赦ください。
実は了子口調のフィーネが好きなので、復活させることが出来て嬉しかったりします。
次回もよろしくお願いします!