【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「依然として、動きは無しか……、こうも静かだと寧ろ不気味だな」
翼はウェル博士とフィアナの動きがないことについて感想をもらした。
「あたしらが、こうやってあのバカ見張ったり、気を張ってるのを知ってるんだろ。緩んだところを狙うつもりなんじゃねーの?」
「こっちもあいつらのソロモンの杖とネフィリムの心臓を奪取しようと思ってるけど、向こうだって神獣鏡を狙ってるはず。だったら人質を取ったりするような過激な行動に出ると読んだけど……」
あたしとクリスと翼は響が友人たちとリディアンから寮まで帰宅している道中を彼女たちに気付かれないように尾行していた。
フロンティア計画――《フロンティア》とF.I.S.が名付けた超巨大遺跡を浮上させ、ネフィリムの心臓を持ってしてそれを操り、月の落下に伴う災厄から人類を救おうとするプロジェクト。
ウェル博士は自らが主導してこれを成し遂げたいと思っている。
この計画のキーは二つある。
一つはネフィリムの心臓だ。これは、フロンティアをコントロールするのに利用する。
そして、もう一つは神獣鏡だ。これの力を持ってしてフロンティアをまずは起動させなければならない。
この辺の見通しはどうだったのか? 意識をなんとか回復したナスターシャにその点を聞いたところ、神獣鏡の力を機械的に高めた程度の「リムーバーレイ」では起動できなかったらしい。
故に、人間がギアを纏わないと起動に必要なエネルギー出力には達しないという結論になったそうだ。
しかし、ウェル博士にはこの点も克服する手段があると豪語していて、フロンティアの起動の計画は彼に任せていたという話だった。
“まぁ、私だったらLiNKERを大量に使ってでも適合係数上げちゃって、手っ取り早く装者を作っちゃうわね”
“バカな、LiNKERだって万能じゃない。そんなので適合出来てたら、あたしだってシンフォギアを纏えたわよ”
“そこは、愛の力で何とかするのよ”
“なぜそこで愛?”
“フィリアちゃん、LiNKERというのはあくまでも接合剤なのよ。強い想いの力とシンフォギアを繋ぐためのね……。想いの力で最も強い力は愛情よ……。愛する人への想いを極限まで高めた状態でLiNKERを使用し適合率を上昇させれば或いは……”
“シンフォギアを纏えるってこと? 今まで資質が足りないとみなされた人でも……”
“多少は可能性はあるわね。まぁ、その段階まで行くんだったら、私なら体のいろんなところを多少弄ったりしちゃったりして無理やりでも適合させちゃうけどね”
“あなたってホントに手段選ばないわよね……”
“あら、そういうのは嫌いかしら。じゃあ、愛情パワーを急上昇させるプランで行きましょう。名付けて……【ラブラブ大作戦】!”
“…………”
フィーネ曰く現時点でもっとも神獣鏡のギアが纏える可能性が高いのは小日向未来とのことだ……。
リディアンの生徒は元々シンフォギア装者の候補を集める目的で作られており、彼女の適性は一般人と比べて高い。
さらに、未来は立花響を愛している。
これは友愛ではなく、恋愛という意味でだ……。
あたしだってそこまで鈍くない。そこそこの期間の付き合いがあり、引っ越しまで手伝ったりして、親交はそれなりに深い。
だからこそ、未来の気持ちは割りと筒抜けである。
ただ、未来にとって幸運なのか不運なのか分からないが、響は一ミリも未来の恋心に気づいてない。
とても仲の良い大切な親友であることには相違ないが、そこまでである。
響はそんな未来の気持ちをまったく知らないで「一緒に寝よう」とか、「帰ってくる日だまり」とか、そんなことを恥ずかしげもなく言うものだから、未来の心はそれだけで大きく揺れている。
“今のままでも、愛情の高さって十分じゃない? なにも、装者にするために恋人同士にするって言うのは――。というか、世界を救うためとはいえ、そんなお節介を……”
“だって未来ちゃん可哀想じゃない。あのままだと、響ちゃんの性格上、一生生殺し状態かも知れないわよ”
“その可能性は否定しないけど、余計なお世話でしょ。大体、もし響が断ったりしたら、それこそあたしは責任負えなくなるんだけど……”
“でも、このまま神獣鏡の装者見つからなかったら響ちゃん死んじゃうわよ。その上、月の落下も止められない。今、まさに、偽善に満ち溢れたあのチャリティー番組のキャッチフレーズな状況ってわけ。《愛は地球を救う》ってね”
“あなた、絶対に楽しんでるでしょ? この状況を……。諸悪の根元の癖に……”
しかし、現状、この状況を打破するほどの代案が浮かぶこともなかったので、非常に遺憾ではあるがフィーネの《ラブラブ大作戦》を採用することにした。
この手段を選ばない性格が暴走して《カ・ディンギル》なんて作って月を破壊しようとしたんだから恐ろしい……。
というわけで、恋愛なんてものに疎い私は《ラブラブ大作戦》を実行するためにどうすれば良いのかを会議をすることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「フィリアくん、なんだその気の抜けるような作戦名は……」
「聞かないでちょうだい。あたしだって嫌なんだから……」
司令室に集められた、響を除いた二課のメンバー。
いかにして響と未来をくっつけるかという、本人たちからすると本当に大きなお世話な作戦なのだが、これには人類の未来がかかっている。
もはや、《ラブラブ大作戦》は最重要ミッションとなっており、あたしたちは真剣に話し合うことになったのだった。
「それで、フィリアよ。羅武羅舞大作戦とは、どんな兵器を使う作戦なのだ?」
翼が天然を発動させながら、真顔であたしに質問する。
「翼さん、ラブですよ、英語です。恋愛ということですよ」
「れっ、恋愛? それと、月の落下に何の関係が?」
緒川のツッコミに翼は顔を赤らめて、疑問を呈す。
「フィリア、お前、働きすぎて頭がおかしくなったんじゃねぇの?」
クリスには本気で心配そうな顔をされてしまった。
この空気にも耐えられないあたしは手短にフィーネが提案したことをみんなに話した。
未来に神獣鏡の装者になってもらおうということ、そのために響との恋愛を成就させようという内容を真剣に淡々と伝えたのだ。
「愛するという気持ち、響を救いたいという気持ちが高まれば、ギアとの適合率がアップするはず……」
「しかしだな、フィリア。本当に小日向は立花のことを……。もし、間違っていたら、我々はとんだお節介どころの話ではなくなるぞ」
「つーか、間違ってなくてもお節介だろ。バカバカしい」
こういうことだと、割と戦力外な翼は真剣にな表情で、クリスは若干苛立ちながら、そう答えた。
「これが、非常時でないなら、あたしだってこんなこと言いたくもないし、したくもないわよ。でも、このままだと響の命も地球人類の存続も危ないのよ」
「未来くんの恋愛成就が、人命と人類の存亡を左右するという状況というわけか……」
弦十郎も渋い顔をしながら、司令官として何かを言わなくてはと必死に考えているようだった。
「そもそも、何を持ってして恋愛成就と定義します? あのお二人はいつも一緒に居ますし、仮に未来さんが告白して、成功したとしても、これは二人の仲が進展したと言っていいものなのでしょうか?」
緒川は唯一、表情ひとつ変えずにまっとうな意見を出していた。
「何をもって恋愛成就? そりゃあ、いっ、一緒のベッドで寝るとかかぁ?」
クリスが顔を赤らめてそんなことを言う。
「それは、もうやってるわ」
「はぁ? あいつらそんな関係なのかぁ? じゃあもう、付き合ってるでいいじゃねぇか!」
あたしのツッコミにクリスが大声を上げる。
そうね、あたしもそう思うわ……。でも……。
「やっぱり、キスね。その先は高校生だから、私たちが勧めるわけにはいかないし」
合コンによく行ってる友里は腕を組みながらそんな意見を出す。キスかぁ、なんか生々しい話になってきたわね。
「データによると、恋人として一線を超える定義でも《キス》は上位ですね」
女性といい歳して付き合ったことのない、藤尭は何のデータを見てるのかゾッとするけど、いつもどおりの口調でそう言った。
「そっ、それでは、我々は立花と小日向を……、せっ接吻させる作戦を立案しなくてはならないのか……? くっ、これも防人の務め……、不承不承ながら……」
顔を真っ赤にした翼はうつむきながら防人としての務めを果たさねばならないとか言ってる。
うーん、今こそ奏には真面目がすぎるぞって言ってもらいたいわね。
「では、最終目標はキスということで。とりあえず未来さんにはどう伝えます? さすがに作戦をそのまま伝えるのは……」
緒川は未来に告白を促すにしても、そのまま作戦を伝えれば彼女がいらぬプレッシャーに押しつぶされるのではと、懸念した。
確かに、あなたの告白の成否が地球の命運を左右するなんて言われたく無さすぎるわね……。
「それとなーく、あたしが伝えるしかないわね。この中だと、未来と一番長い時間付き合ってるから……」
ものすごく気乗りしないが、焚きつける役はあたしとなった。
「デート行かせるならどこがいいかなぁ、ディナーは夜景の見えるレストランとして……」
だんだん楽しそうな声を出す友里。しかし、デートさせるのは重要ね……。
「データによりますと、告白をしたデートで行った場所上位は水族館、映画館、それから――」
藤尭はまたもや謎の統計を出してきた。この人、こんなことやってるから恋愛経験無いんじゃないかしら?
「そういえば、この間、知り合いから水族館のペアチケットをもらったぞ。フィリアくんにあげようと思っていたが……」
「それなら、その貰ったチケットをあたしが未来に渡すところから話を切り出すわ。レストランは適当に――友里に予約してもらいましょう」
あたしたちは彼女らのデートのための準備を開始することにした。
失敗は許されない。何としてでも響と未来をくっつける!
「珍しいですね、フィリア先輩が私に用事なんて。もしかして、また響に何かありましたか?」
喫茶店に呼び出した未来が不思議そうな顔であたしを見つめる。
「そうね、響にも関係のある話よ……。実は――」
あたしは未来に話を始める。彼女が響に告白するように決心してもらうために――。
こうして、人類の存亡を懸けた、《ラブラブ大作戦》が始動したのである。
本当にこれでいいのかしら――?
完全にふざけてるようにしか見えませんが、みんな真剣です。
次回もよろしくお願いします!