【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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フィリアの歓迎会です。
奏や翼と絡んだり、食事をしてみたりします。
それではよろしくお願いします。


ようこそ2課へ

 弦十郎と了子に連れられて、あたしはセキュリティが厳重な施設に入る。服装は了子が選んだ、趣味の悪い、真っ黒なヒラヒラのケープ付きの人形が着るような衣装。まぁ、人形なんだから、仕方ないのかもしれないけど……。

 

 とんでもなく長いエレベーターを降りて、その先に見えるのは重厚感のある扉。

 さすがは国防において重大な施設ね。ここは日本という国で、あたしが話してるのも日本語という言語らしい。

 つまり、この場所は日本を守るための最重要拠点。一体なかはどのような……。

 

 

《ようこそ2課へ! 熱烈歓迎フィリアさん!》

 

「…………」

 

 扉の先は文化祭みたいな飾りつけの立食パーティー会場だったわ。えっ? なんなのこれ? 歓迎会ってこと?

 

 クラッカーの音が鳴り響き、弦十郎さんが満面の笑みであたしを歓迎するって言ってきた。

 後ろの職員たちや了子もみんな笑っていた。

 

 どういうこと? なんで、ここの職員たちはこんな風体の人形をあんな笑顔で迎えられるのかしら。

 

「あの、弦十郎……。いえ、司令。これはどういうことなのかしら?」

 

 たまらず、私は弦十郎に質問した。ちょっと、状況が追いつかない。記憶喪失でなんにも分からないが、この状況がヘンだということくらいわかる。

 

「何って、フィリアくんが二課へ入ってくれると言ってくれたからな。当然、我々は全員で歓迎するに決まってるだろ」

 

「そういうものかしら?」

 

「ああ、そういうものだ」

 

 有無を言わせない、力強い弦十郎の言葉にあたしは反論する気を失わされた。

 もう、勝手にしなさいって感じよ。

 

 

 

「おお、やっと来たか! あたしを助けてくれたあとに倒れたのを見て、焦ったよ。無事でよかった!」

 

 赤髪の少女、天羽奏があたしの肩に腕を回す。

 この子も馴れ馴れしいわね。さっきはあたしの腕を見て少しだけ引いていたのに。

 

「すっかり元気みたいね。体と命は大切になさい。いつこんな風になるのか分からないんだから」

 

「あっああ。聞いたよ、人形の身体にされたってさ……。許せないことするやつが居るんだな」

 

 奏は怒りを顔に出しながら、声を震わせた。

 まったく、他人のために怒るなんて、お人好しな子。早死しなきゃいいんだけど。

 

「ほら、翼もこっちに来いよ! 今日からフィリアが仲間になるんだ。いっぱい話そう」

 

「ええっ、わっ私は……」

 

 奏にグイッと腕を引っ張られる青髪の少女。風鳴翼があたしの前まで連れてこられた。

 

「かっ風鳴翼です。奏を助けてくれてありがとう」

 

 うつむきながら、二度目の礼を言う翼。随分と内気な子ね。奏とは正反対。

 

「だから、礼を言われるためにやったんじゃないわよ。これから一緒に戦うこともあるんだから、それくらいのことで一々お礼なんて言わないでちょうだい」

 

 あたしはぶっきらぼうにそう答えた。《ノイズ》とやらの対抗手段がこんなに少ないのだから、こんな子供が戦わせられる。

 それが避けられないのなら、せめてあたしが出来ることは――《ノイズ》を一体でも多く倒すこと、そして、この子らを守ることくらいだ――。

 

「まぁ、そう言うなって、フィリア。あたしからもお礼を言わせてくれ。ありがとう」

 

 奏は10秒前のあたしの言葉を完全に無視して、後ろから抱きしめながら礼を言ってきた。

 

「はぁ、一つだけいい? あたしは、あなたよりも年上なんだから、フィリアさんって呼びなさいよ」

 

「ええーっ、記憶喪失で年齢もわからないって聞いたぞ。いいじゃん、どう見たってフィリアの方が年下に見えるんだし」

 

 年長者に敬意を持てというあたしに対して、「いいじゃん」の一言ですませようとする奏。この見た目を理由にするのは反則だ。

 

「あっあなたねぇ。ちょっとばかり発育がいいからって、そういう風吹かせてるんじゃないわよ」

 

「そっ、そうだ。奏はいつもそうやって意地悪を言う」

 

「えっ?」

 

 あたしの反論に対して翼がまさかの援護射撃を行う。どうやら、この子も奏の理不尽に付き合わされてるらしい。

 

「じゃあ、翼に聞くけどさ。フィリアって、フィリアさんというよりも、フィリアって感じじゃないか?」

 

 奏は平然とした表情でなんとも言い難い質問を翼にぶつける。

 

「えっと、それは、まぁ、そうだけど……」

 

 一瞬で寝返られた……。というか、簡単に言いくるめられすぎよ。

 

「ということで、これからよろしくな、フィリア」

 

「うん、よろしく。フィリア」

 

「何が『ということ』なのか、一ミリも理解できないんだけど……。もう、どうでもいいわ。好きに呼びなさい」

 

 あたしは途端に面倒になって、年下扱いを受け入れることにした。

 まぁ、これが後々の面倒に発展するんだけど、随分と先の話だ。

 

 二人を適当にあしらって、あたしは料理を食べてみることにした。甘いものがいいって言ってたけど……。とりあえず、目の前のプリンでも食べてみようかしら。

 

「あむ……、へぇー。やっぱり味覚はあるのね」

 

 人形の身の口に運ばれる食べ物から感じる甘味。そして、そのあとに得られる充足感。うん、確かにこれが足りないような気がしてたって感じ。

 

 あたしは食事によって得られるエネルギーの回復を実感していた。

 

 

 

「さっそく装者の二人とも打ち解けて仲良くなれているみたいで何よりです」

 

 爽やかそうな笑顔の茶髪で黒スーツの男があたしに近づいてきた。

 今のやりとり見て、どうやったら『打ち解けて仲良く』なんて言葉が出てくるのよ。

 

「別に、仲良くなんてなってないでしょ。おめでたい頭をしてるのね」

 

 あたしは思ったことをそのまま口に出した。自分ですらこの身が得体の知れない存在だと思っているのに、そんな人形(やつ)と仲良くなりたい酔狂な人がいるなんて考えられない。

 

「そんなことはありません。翼さんも奏さんも、かなり孤独を感じてるみたいでしたから。友達になれそうな仲間が増えて喜んでますよ」

 

 相変わらず笑顔を絶やさない茶髪の男はそんなことを言う。孤独ね、あの歳で二人きりで戦うのは確かにそう感じても無理ないか。

 

「あら、そう。でも、仲間になるのはいいけど、友達は勘弁願いたいわね」

 

「おや、どうしてですか?」

 

「情が移ったら楽しいことばかりじゃないでしょ。まっ、今のあたしには関係ないことかもしれないけどね」

 

「――なるほど。やはり、司令から聞いていたとおり、お優しい方みたいですね」

 

「はぁ?」

 

 弦十郎から何を聞いているのか分からないが、この茶髪の男は甘ったるいことを言ってくる。まったく、どいつもこいつも何を思ってあたしに優しいなんて言葉をくれるのよ。

 

「僕もあなたとは仲間であり友人になりたいと思ってますよ。すみません。自己紹介が遅れました、僕は緒川慎二と申します。主に、機密保護や情報操作、隠蔽工作などを担当してる、いわゆる裏方です」

 

 緒川慎二と名乗った茶髪の男は随分と暗躍をするような仕事をしてるみたいだ。

 

「ふーん、なかなか厄介そうな仕事をしてるのね。だからそうやって気配を薄くしてるのかしら」

 

 この男の身のこなしは他の人間とはかなり違うのはなんとなく理解できた。スキがないのだ。

 

「気付かれてましたか。これは心強いです」

 

 緒川は楽しそうな口調でそう言い残すと、ペコリと頭を下げて、了子の元へと歩いて行った。

 

「はぁ、嫌になるわね……」

 

 あたしはため息をついて、2個目のプリンに手を出した。

 ホントに誰も物怖じしないんだもの。あたしの感覚がオカシイって思っちゃいそうになるでしょうが。

 

 

「おおっ、そのプリン結構高いんだぞ。どうだ、美味いか?」

 

 あたしが3個目のプリンをぱくついてると、弦十郎が楽しそうな陽気な声で絡んできた。

 

「まぁ、悪くないわ……。あなたも食べる?」

 

「そうだな、いただこう!」

 

 あたしは冗談のつもりで勧めたんだけど、このクマみたいな男は、平気な顔をして似合わない食べ物に手を出した。

 

「うむ、やはり美味い。さすがはフィリアくんのオススメのプリンだ」

 

 頷きながらプリンを口に運ぶ弦十郎。本当に似合わないわね。

 

「別に勧めてなんてないんだけど……」

 

「そうだったか?」

 

「そうよ……」

 

 そんなどうでもいいやり取りをしながら、私は4つ目に手を出す。

 別に、気に入ったとかじゃないけど……。

 

「ところで、フィリアくん。折り入って相談があるのだが……」

 

 弦十郎がプリンを食べ終えて、あたしに真剣なまなざしを送ってきた。

 

「なによ、改まって。さっさと言いなさい」

 

「そうだな、率直に言おう。フィリアくん、俺の娘にならないか?」

 

「…………」

 

 言葉が出なくなるってこういう状況なのね。この男は何を言ってるのかしら。

 えっ、あたしを娘って、なに?

 

「……そういう、趣味の方なの?」

 

 いろいろと頭を回転させて出てきた結論がそれだった。人形を娘にしたいなんて、特殊な性的嗜好は知らないけど、知りたくないけど。

 

「趣味? いや、違うぞ。二課へ入るにあたって君の身分を作りたいと思ってな。とりあえず、海外から実験材料として連れてこられた難民ということにしてだな、俺の養子にすれば、君の人間としての身分を確立できる。既に許可も取ったし、事務的な手続きも終わった。あとは君の意思次第だ」

 

 弦十郎が話したことは、趣味以上に異常だと思えることだった。

 確かに彼はあたしを人間として扱うとは言ってくれてたけど、本当に人としての身分を与えようとしてくれるなんて思ってもみなかった。

 

 しかも、自分の養子にしてまでして。こんなバカな大人がいるとは思わなかった。

 

 本気の目をしてるわね。ありえないわ、この人……。

 

「人形なんて、娘にしたら後悔するわよ」

 

「どうかな? 俺はそうは思わん。もちろん、強制はしない。君次第だ!」

 

「そう、だったら後で悔やみなさい。いいわよ、あなたの娘になってあげるわ」

 

 あたしはこの、風鳴弦十郎の娘になる道を選んだ。

 人形のあたしを自分の養子にしてまで人間扱いしようとする大バカに興味を持ってしまったからだ。

 はぁ、好奇心はまだ残ってるみたいね……。

 

「そうか、それなら君は今日から風鳴フィリアくんだ。これで、君は一人の人間としての身分を手に入れたことになるぞ」

 

「はいはい、ありがとうって言っておくわ」

 

「ははっ、じゃあ、俺のことは父さんと呼ぶがいい」

 

「それは絶対にお断りよ、司令……」

 

 陽気に笑う弦十郎と、それを無表情で見つめるあたしは父娘になってしまった。

 まぁ、形式的なものだから、彼だってあたしを娘だとは思わないでしょ。

 

 それでも、あたしはこの瞬間から、風鳴フィリアとなり、新しい生活が始まった――。




フィリアが弦十郎の娘になりました。
これで、翼とは義理の従姉妹になりますね。
翼に年下扱いをされることと、風鳴の姓を手に入れたことは、後の彼女の生活に大きく影響しますが、フィリアは気付いてません。
次回もよろしくお願いします。
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