【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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イザークと婚約をしたフィリアですが、彼女に悲劇が襲いかかります。
それではよろしくお願いします!


フィリアの過去 その2

「よしっ、これでみんなが救われる」

 

 イザークはアルニムと呼ばれる仙草を使って蔓延する疫病の治療法を確立して、病気に苦しむ人たちを数多く救っていた。

 あたしは自分の力で道を切り開く彼のことを尊敬して、そんな彼に愛してもらっていることが堪らなく幸せだった。

 

 しかし、キャロルもまだ幼かったので、彼女にあたしたちの関係を伝えるのはもう少し経ってからということにした。

 

 あたしとキャロルは歳の離れた姉妹のような友人のような関係で共に時を過ごしていた。

 

 

 

 

 ある日、疫病に苦しむ村を救いに行った彼が帰って来なかった。

 あたしとキャロルは心配になって、彼が向かった村に向かった。

 

 

「ちょっと、あの集団は何? って、イザークがあんなところに!」

 

 あたしはフードをかぶった集団と彼らに囲まれて磔にされているイザークを見つけた。

 

「フィリア! パパは、パパはどこに居るの?」

 

 背の低いキャロルはイザークの居る場所が見えないみたいだ。

 

「こっちよ、キャロル!」

 

 あたしはキャロルの手を引いて彼に近付こうとした。

 

「「異端者に裁きを!」」

 

「「資格なき奇跡の代行者に裁きを!」」

 

 フードの集団は磔にされたイザークに火を付ける。

 

「いやぁぁぁぁっ! イザークっ! ちょっと、あなたたち、退きなさいっ!」

 

 あたしはフードの集団を殴り蹴り飛ばし、イザークの元へと走る。キャロルも涙を流しながら彼に近付こうとしたがフードの連中に取り押さえられてしまう。

 

「今、助けるわ! ぐっ、何するのっ! 止めなさい」

 

 しかし、イザークの目前まで来たあたしはフードの連中に捕まり、羽交い締めにされて身動きが取れなくなってしまった。

 

「フィリア! 君は必ず元の世界に戻るんだ! 諦めるな!」

 

「嫌よっ! あなたが居ない世界なんて! 必要ない!」

 

「キャロル! 生きて、もっと世界を知るんだ! それがキャロルの……」

 

 そこで、イザークは炎に飲み込まれてしまい声が途切れてしまった――。

 

 そんな――愛していたのに……。誰よりも大切な人だったのに……。

 

 なんで? なんで、人々を助けて救ったイザークが殺されなきゃいけないの?

 彼が何をしたっていうのよ……。

 

 

 

 イザークは村人たちの疫病を彼の研究の研磨によって治してきた。

 しかし、彼らはそれを奇跡の一言で済ませるばかりか、イザークを資格なき奇跡の代行者として糾弾し、異端者として焚刑に処したのだ。

 

 

 

「奇跡……、パパは奇跡なんかに殺されたんだ……」

 

「イザーク……、あたしは……、あなたが居ない世界でこれからどう生きたら……」

 

 キャロルとあたしは最愛の人を理不尽に奪われて途方に暮れていた……。

 

 

「もう生きていても仕方がない……、キャロル……、あたしは……」

 

 あたしは生きる意思すら失い、死ぬことを考えるようになっていた。喪失感で心が埋め尽くされて、押し潰されそうになる。

 

「フィリア……、私はパパの言ったこと実践するわ。生きて世界の全てを知るの……。そして、もう一つ……、フィリアを元の時代に戻す。これはパパがあなたの為にやり残した命題だから……」

 

 

 そこからのキャロルは人が変わったかのように錬金術の研究に没頭した。

 そして、彼女はたったの一年でイザークがやり残したあたしを元の時代に戻す理論を完成させたのだ。

 

 

「ねぇ? キャロル……、本当にあたしを元の時代に戻すの?」

 

「無論よ。パパの考えた理論を私は実現可能にした。フィリア、私からも頼む。パパのやり残したことを、私にやらせてくれないか?」

 

 キャロルはイザークの意志を継いで、あたしを元の時代に戻したいと懇願した。

 

 あたしはキャロルのただならぬ意志を感じて、その申し出を受けることにした。

 彼女を残すことが心残りだったが、キャロルはあたしに会いに来ると約束してくれたので、それを信じた。

 

「それでは、フィリア。400年後にまた会おう」

 

 ある、洞窟の奥に連れて行かれたあたしは、キャロルのその言葉を聞いたあと、全身が凍えそうなほどの寒さを感じた――。さらにその後、急激な眠気に襲われて、あたしは眠ってしまった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「久しいな、フィリア。父とお前との約束は確かに果たしたぞ」

 

 あたしが目を覚ますと、目の前にキャロルが居た。格好も雰囲気も全然違うけど……。

 

「あっ、あなたキャロルなの? なんか、感じが違うけど……」

 

 あたしはキャロルの一瞬の変貌にびっくりした。今の彼女からは、シンフォギア装者やネフィリム以上の凄みを感じる。

 

「当たり前だ。あれから400年も経ったんだ。変わらないほうがおかしい」

 

「ちょっと待って、その言い方だとキャロルはあたしと一緒に400年後の世界に行ったわけじゃないの?」

 

 あたしはキャロルが400年生きてきたような口ぶりだったのでその点を質問する。

 

「そのとおりだ。もっとも、お前も400年間、錬金術によって出来た特殊な氷の中で自らの時を止めていたに過ぎんから、移動したわけではない。オレには父が遺した命題を解き明かすという使命があったのでな、時を止めるわけにはいかなかったのだ。とりあえず、付いてきてもらおう」

 

 キャロルは小瓶を地面に投げると、それが割れた。

 そして錬金術の書物で見た錬成陣が出来上がった。

 

 あたしとキャロルがその上に乗ると、目の前の風景が一瞬で変わった。

 

 

「ここは……」

 

「チフォージュ・シャトー……、世界を解剖する為の装置だ。もっともまだまだ不完全だ。こいつを起動させる為のプロセスというのが極めて面倒で、オレもそれなりに苦労している」

 

「ごめんなさい、キャロル。言ってること全然分からないわ」

 

「……そうだな。基本的なことから話そう。お前はそれを聞いて自分の道を決めるが良い」

 

 キャロルはそこから、自分が極めた錬金術のことや、イザークの遺した言葉から世界を解剖して全てを知れば、彼からの命題が解き明かせるのではと考えて行動していることを話した。

 

「――とまぁ、こんなところだ。どうだ、何か質問はあるか?」

 

 キャロルが成そうとしていることは常人ではおおよそ理解出来ないことだ。しかし、分かるのはイザークへの想い。

 想い出の燃焼の力を操っていたけど、彼女はイザークやあたしのことは忘れていなかった。

 

 でも、それでも、あたしは――。

 

「それで、キャロルは満足なの? イザークの遺した命題が解けたらそれで……」

 

「なんだとっ――! お前は父の命題を愚弄するかっ!? ――うっ! なんだ、その眼は……」

 

 キャロルはあたしの目を見てたじろいだみたいだ。そんなに酷い顔をしていたのかしら……。

 

「あたしはイザークの居ない世界なんて、どうだっていいわ! 世界のすべてが分かるんでしょ? だったら、あたしが絶唱の力で過去に吹き飛ばされたメカニズムも分かるかもしれない! そうよ、それでイザークを助け出しましょう! きっと、あそこで助からないと思った彼はあたしたちに助けを求めたのよ!」

 

 あたしはキャロルの説明を聞いて、イザークを救うことこそ、彼の言いたいことだったと解釈した。

 

「過去に……、なるほど。それなら、父が最後にオレに命題を託した理由にもなるな。オレ一人ではその発想に至らなかった。お前をこの時代に送ったことにも意味があったということか」

 

 キャロルは口角を釣り上げて笑っていた。

 それにしても、あの可愛かったキャロルとは随分と違う。いや、400歳を超えているなら当たり前なんだけど……。

 

「では、お前にも紹介しておこう。シンフォギアの呪われた旋律を受ける、四体の自動人形(オートスコアラー)を!」

 

 キャロルがそう言い放つと、趣味の悪いオブジェだと思っていた4体の人形がこちらに動き出す。

 

「えっ、えっと、キャロル? 呪われた旋律を受ける人形って動くの?」

 

「あら、お客様。マスターの作ったこの身体は動くだけじゃなくってぇ、こぉんな感じでが可愛くお喋りもしちゃいまーす」

 

 青いメイド服のような人形はあたしの顔を下から覗き込むようにして反応を伺ってきた。

 

「…………」

 

「ガリィ、フィリアが驚いている。自重しろ」

 

 あたしが固まっていると、キャロルはメイド服の人形をガリィと呼んで注意する。

 

「はーい! ごめんなさーい!」

 

 ヘラヘラとした態度で言葉だけの謝罪を述べたガリィはあたしから離れた。

 

「ガリィが失礼を……、わたくしはファラ。以後お見知りおきを」

 

 ロングヘアーの人形はファラと名乗り、優雅なポーズで頭を下げる。

 

「400年の眠りから覚めた姫君とは、なんとも派手なストーリーで羨ましい! 私はレイア、よろしく頼む」

 

 ウェーブがかった髪をした人形はレイアと名乗り、こちらも何やら格好をつけて挨拶をする。

 

「ミカだゾ! マスターの友達なんて初めて見たゾ!」

 

 ツインテールの赤髪の人形はなんだろう……、ユニークな立ち振る舞いだったが、可愛らしかった。

 

「いろいろと凄いのね、キャロルは……。あたしなんて、イザークが亡くなって泣くことしか出来なかったのに……。今のあなたなら出来るわ、何だって。ごめんなさい。それなのにあたしは無力だから……」

 

 あたしはキャロルの400年に渡る錬金術の研磨に感嘆した。

 

「フィリア、これからオレはお前に錬金術を再び教えよう。計画を実行するときはオレはフィリアに側にいてほしいと思っている。お前はオレに残された最後の家族なのだから……」

 

「ええ、あたしもキャロルのことを家族だと思ってるわ。イザークとは結婚の約束までしか出来なかったけど……」

 

 あたしにとって二人は大切な家族だと思っている。

 フィアナという妹は居るが、血の繋がりが無くても深く情愛で繋がることが理解できた。

 

「けっ結婚の約束だと……? おっオレは聞いてないが……」

 

「あっ……、イザークったら、まだ言ってなかったのね。キャロルが家族って言ったから、こっそり伝えてたものだと……」

 

 この時代に戻ってからキャロルが初めて動揺を見せた。

 やっぱり、父親が再婚を考えてたって400年以上生きていてもショックなのね……。

 

「今思えば、オレが眠るのを不自然に待っていたり、時々ふたりで居なくなったりということがあった気がする……」

 

「………」

 

「どうして、無言で顔を赤くするっ!? いや、理由は言わんでいい! 聞きたくないっ!」

 

「あたしのこと、お母さんって呼んでいいわ……、キャロル。責任は取るから」

 

「絶対にお断りだ! 400年越しの秘密を知ってそんなにあっさり受け入れられるか!」

 

 結局、キャロルは気持ちが落ち着くまで友人として接してくれと頼まれた。

 こればかりは秘密にしていた、あたしたちが悪いから仕方がない。

 

 

 こうしてしばらくの間、キャロルから錬金術を指南してもらうこととなる。

 

 

 そして、半年ほど過ぎたとき、あたしはキャロルから仕事を頼まれることになったのだ。

 

「パヴァリア光明結社? なによそれ?」

 

 あたしはキャロルから聞いた言葉を復唱した。

 

「古代より歴史の裏で暗躍している、錬金術師たちの組織だ。オレもいろいろと援助してもらってな、このチフォージュ=シャトーも連中の援助があって建設ができた」

 

 キャロルは簡単にパヴァリア光明結社について説明した。

 

「そのパヴァリア光明結社とやらがどうかしたの?」

 

「連中は神の力とやらを手に入れようと躍起になっているらしくてな。そんなモノには興味はないが、その膨大なパワーの受け皿には興味はある。時空間を自由に跳躍させるためには大きなエネルギーを受ける為の器が必要なはずだからだ」

 

 キャロルは神の力とかいう大仰なものについて語り出した。

 

「いや、それだけじゃない。もしかしたら、擬似的にその神とやらをも創り出す必要すらある。連中がどのようにして神の力を手に入れようとしているのか、お前にパヴァリア光明結社に潜入して探ってきてもらいたいのだ」

 

 キャロルはあたしにパヴァリア光明結社に探りを入れて来るように頼んできた。

 彼女があたしに頼み事をするなんて初めてね……。それでこの子の役に立てるなら――。

 

「安いものね……」

 

「はぁ?」

 

「やるわよ。どこにだって潜入してみせるわ。幹部に取り入って連中の計画のすべてを手に入れる」

 

 あたしはパヴァリア光明結社に潜入することになった。

 すべてはイザークと再会するために……。

 




イザークの死を受けてフィリアは彼を救うためにキャロルと動き出しました。
次回、フィリアはパヴァリア光明結社に潜入します。
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