【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
4期、5期を含めて、この先の展開においてかなり重要な回になります。
それでは、よろしくお願いします!
「うーん、いつも魅了されてしまうねぇ、フィリアの淹れた朝のコーヒーに」
白いハットを被り、白い服を着た青髪の長髪の男はコーヒーに口をつけながら、あたしにコーヒーの感想を伝える。
「もう、思いっきり昼間よ……、局長……」
パヴァリア光明結社に所属して一年が過ぎた。チフォージュ=シャトーには定期的にテレポートで顔を出してキャロルには逐一こちらで掴んだ情報を報告している。
立場は下っ端のあたしだったが、パヴァリアの局長であるアダム=ヴァイスハウプトはあたしの淹れたコーヒーが気に入ったとかで彼はあたしを自らの秘書にした。
人生、どこで何が役に立つかわからないものである。
「おやおや、これじゃ酷く怒られるじゃないか、まだ何一つ仕事を片付けてないことを、サンジェルマンに」
独特の口調のこの男、びっくりするくらい仕事が出来ない。
それでも、彼が局長の立場にあるのは、彼が強いからだ。
規格外の錬金術の使い手。何一つ自分では編み出さないが、覚えれば何でも出来てしまう、この男は人間離れした完璧さを持っていた。
「とっくにあなたの仕事は片付けたわよ。あなたに任せると日が暮れるどころか、日をまたいでしまうもの」
「辛辣だねぇ、フィリアの言いようはいつも。しかし、いいことだ、仕事が早いっていうのは」
アダムは楽が出来ることを喜び上機嫌そうにコーヒーをすすっていた。
「神の力を一刻も早く手に入れるためよ。トップが仕事が出来ない無能だって言われてたら士気に関わるじゃない」
半年も居ればこの組織が異常だということはわかった。
人の生命を何とも思っておらず、実験を繰り返す。
エネルギーの為に人を分解する。救済のためならば多少の犠牲は致し方ないという考えは受け入れられるものではない。
しかし、世界を解剖するという計画はそれどころではない犠牲を生む可能性をはらんでいた。
ならばこの自分の感情は偽善でしかない。
イザークに会いたいという独りよがりの欲望を満たすために動いている自分に彼らを非難する資格はなかった。
このまま突き進むことを迷っている――あたしは弱い自分の心を嫌悪した。
愛する人の為に動こうとすればするほど、人を助ける為に動いていたイザークの顔が思い浮かび、彼に対する罪悪感で胸が締め付けられるのだ。
「ふふっ。優しいんだね、誰よりも君は……」
「別に優しくなんてないわよ……」
「おかわりを貰おうか、美味いコーヒーの」
アダムはあたしにコーヒーのおかわりを要求した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
連中の計画は大体わかってきた。神の力の器はオートスコアラー。
しかし、その肝心のオートスコアラーは400年ほど前にパヴァリア光明結社とフィーネが対立したときに破壊されてしまったらしいのだ。
その上、計画を実行したときに、神の門とやらの座標を見つける機能もこのオートスコアラーには搭載されているので、結社の幹部たちは血眼になって、世界中のどこかにあるという、そのオートスコアラー《ティキ》の部品を探している。
そして、その裏でもう一つの計画が進められていた。
《ティキ》に代わる、いや、それ以上のオートスコアラー――完全体
生化学の分野に特化する新しい錬金術の使い手が入って来てから、こちらの研究も急ピッチに進んでいる。
しかしながら、それにいい顔をしていないのが《ティキ》の捜索をしている幹部たちである。
そもそも、得体のしれない要素を計画に組み込むことに、難色を示し、さらにはファウストローブの研究を最優先したい彼女らは、そちらの計画は破棄するように近々アダムに談判するのだそうだ。
「ここの頭の固い幹部たちは英雄が何たるものか理解出来ていない。そうは思いませんか? フィリア」
白髪に眼鏡をかけた錬金術師であり、生化学者でもある、ゲイル博士は研究室で愚痴をこぼしていた。
「神というのは完全なものであり、あらゆるスペックが完成されています。人間ではなく、バラルの呪詛から解放されている
ゲイル博士はつまらなそうにパヴァリアの計画をそう評価した。
「完全であり、不完全でもある、真の完全なもの。つまり成長する完全体。タダの人形じゃあそうはいかない。人間と人形の中間の存在こそがオートスコアラーの完成形であり、神の依り代として、神をも超える可能性をもつ究極の存在になれるのです。なぜなら、人間というものは弱く不完全だからこそ成長するのですから! これぞ、英雄的発想!」
自分に酔ったような発言ばかり繰り返す彼は影で大馬鹿者だと揶揄されている。
しかし、彼のおかげでファウストローブの研究や組織の被験体にされた者たちへの延命措置の研究が一気に加速したので無碍に扱えない。
「組織の批判ともとれる危険な発言よ、ドクター。少しは慎んだほうがいいわ。あたしの立場も知ってるでしょ?」
「ええ、この発言はくれぐれも局長にはご内密に……」
ゲイルは試験管に入った血液を眺めながらそういった。
「はっ、フィリアは媚の売り方が上手いぜ」
「ミラアルク……」
パヴァリアの人体実験は神話の生物までも創り出そうというところまでエスカレートしていた。
彼女はその被験体……、そして実験の失敗によりヴァンパイアになり損ねてしまった女性である。
彼女のような被験体たちはこの組織でも特に扱いが悪い。
そして、新参で下っ端のあたしが局長の秘書に抜擢されているのを知られてからというものよく絡まれるようになった。
「あら、ごめんなさいね。何か気に食わないことでもしちゃったかしら?」
別にこの組織で事を荒立てるつもりはないのであたしは特に言い返すことはしない。
「わたくしめたちの為に尽力してくれているドクターを局長に売るつもりなのではと言っているのであります」
「エルザまで、居るということは……」
「私が居たらまずかったかしら? フィリア……」
「いいえ、会えて嬉しいわ。ヴァネッサ」
あたしは声がする方向に顔を向けて返事をした。
エルザとヴァネッサ、彼女らもパヴァリアの被験体である。
エルザは常人を遥かに超えた速度やマニピュレーターデバイス『テール・アタッチメント』を使用するために複数の獣のDNA配列が後天的にインプラントされ、見た目は人間に獣の特徴が加えられたような感じになっている。
そして、ヴァネッサはファウストローブの研究中の事故で身体のほとんどが欠損してしまい、全身を錬金術によりサイボーグ化して命を取り留めた。
二人ともミラアルクと同じく、被験体で組織の中で冷遇されている。
「とにかく、ドクターは我々の命を取り留めるパナケイア流体の改良に成功し、他にも被験者たちの待遇改善のために動いてくれている私たちの英雄なのです。余計なことはしないでいただきたい」
ヴァネッサはゲイル博士に寄り添うようにしてそう言った。
「あのね、ドクターは聞いてもないのにペラペラ勝手に話をしただけなの。別にあたしはなんにもするつもりはないわよ」
まるであたしを、邪魔者扱いするような態度のヴァネッサに向かって一応反論はしておく。
「まぁまぁ、ヴァネッサもそんなに目くじらを立ててはいけません。フィリアは局長に何か言うはずがありませんよ。僕はそれを信じているからこそ君には本音が言えるのです。秘密があるのはお互い様ですからねぇ」
「ドクター……、あなた……!」
――どこまで知ってる?
危うく、あたしは口を滑らせそうになった。
「僕は並行世界の住人でしたから、君のことも別の世界で知っているのですよ。たとえば、シンフォギアに君が憧れてることもね。レセプターチルドレンの君がこんな所に居るなんて思いませんでした」
ゲイル博士はあたしのプライベートな情報も知っていた。もっとも、レセプターチルドレンだった過去は局長や幹部連中には知られているが……。
以前に苦渋を舐めさせられたフィーネの魂の依り代になりうるあたしを手元において置きたいという考えも、もしかしたらアダムは持っているのかもしれない。
「なるほど、あの噂は本当だったのね。並行世界とこちらを繋ぐ実験が失敗したと思いきや、ひとりこちらの世界に迷い込んだ者が居るって……。F.I.S.であなたと随分と似た顔を見たことがあるわ。ジョン=ウェイン=ウェルキンゲトリクス……、これがあなたの本名ね」
あたしはゲイル博士の正体を今、知った。
「んっんー、ご明察です。もっともこっちの僕は錬金術には手を出していないみたいでしたが……。ヴァネッサ、フィリアもまた実験の失敗例として不遇な扱いを受けてきた身です。そんなに敵意を剥き出しにしないであげてください」
ゲイル博士はヴァネッサをなだめて、安価に大量生産を可能にした希少血液型の人工血液を彼女に渡した。
彼はこれらの功績により、独自の研究が許され、その上でヴァネッサたちの地位の向上を唱えていたので、彼女らから慕われていたのだ。
辺境に追いやられた彼女らが新型の人工血液の実験のためとはいえ、本部への出入りが許されたのもゲイル博士によるところが大きい。
もっとも、ゲイル博士がヴァネッサたちに尽力するのは神話の生き物やサイボーグが英雄っぽいからとかいう安い理由なのだが……。
「フィリア、君の体内にある浄玻璃鏡だけど……、使い道がありますよ。力が欲しいなら、いつでもいらっしゃい。君がその気になれば神の力をも超えることが出来ますから」
彼はヴァネッサたちが帰った後にあたしに満面の笑みでそう言った。
力か……。それさえあれば、セレナも、イザークも……。
あたしはその場では何も答えずに必要な書類を持って部屋を出た。
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「邪魔するわよ……」
「いやーん、今着替え中ー! フィリアのエッチ、スケッチ、ワンタッチ」
緑色の髪をした、スタイルの良いパヴァリアの幹部、カリオストロが着替え中だったらしく、非難めいた目であたしを見てきた。
「元男が何を黄色く張り上げてるワケダ? フィリアが困っているだろ。バカバカしい」
黒髪と眼鏡が特徴的でカエルの人形を抱いているパヴァリアの幹部、プレラーティが入って来いと手招きした。
「フィリア、局長の尻叩きを感謝している。次の我々の渡航先だが――」
「サンジェルマン。シリアスに語ってる中、悪いけど、まずは服を着てくれないかしら? 目のやり場に困るわ。最近、局長にも同じ注意をしたけど……」
あたしは下着姿で仁王立ちしている、薄い緑っぽい色の髪を青いリボンでまとめているパヴァリアの幹部、サンジェルマンにツッコミを入れた。
ていうか、彼女だけは最初から女性のはずなんだけど……。
「すまない。君は女性だからあまり気を使わなかった。それより、局長に同じ注意をしたという話だが……」
「聞かなかったことにしてちょうだい」
「あーしも局長のは見たかないわぁ。ねぇ、大きかった?」
「だから、フィリアは聞いてくれるなといっているワケダ。ていうか、流石にモロ出しはないだろう」
あたしが余計な一言を言ったばっかりにおかしな話になってしまった。
「一応、《ティキ》のパーツに関する情報をピックアップして、そこから考えられる移動先を256のカテゴリーに分けてみたの」
サンジェルマンに頼まれた書類を作成して彼女たちに見せた。
「えーっ、こんなにあるのぉ」
「ふむ、私は昨日の晩に簡単にピックアップしてくれと頼んだだけなのだが……」
「どこぞの無能とは全然違うワケダ」
一応、仕事はきちんとやってる。あたしは事務処理的なことがそれなりに得意みたいで、こういう点と、怠け者をそれなりに働かせている点は彼女らに好評だった。
もっとも、それもミラアルクからすれば媚の売り方が上手いと言われるところなのかもしれないが……。
サンジェルマンとは、真面目な性格というところがあたしと気が合ったのか、仕事の合間によく食事をしたりお茶を飲むようになった。
「この身を完全なものにするためにモノに変えて何百年も生きてきたが……、未だに完全には程遠い……」
「錬金術の到達点である、完成形というものがもしあるのだとして、神の力を得られればそこに至れるのかしら?」
サンジェルマンは身体を完全なモノへと作り変え、永遠に近い生命力を持っている。
そして、神の力を手に入れて、人類を神の支配から解放しようという理想を持って何百年も動いているのだ。
まぁ、そのために何万人もの命を奪っているが……。この人はその人数も律儀に数えている。
彼女のやってることは理解は出来ないが、人同士の付き合いをしてみると波長が合うのはあたしも独善的に生きているからだろうか?
「もちろんだ。そのために我々は長い年月を活動をしてきた。フィリアも、この調子で数年も頑張ってくれれば、私の方から幹部への昇進を推そう。局長も認めてくれるだろう」
足がかりというか、スパイで入ったのに……、妙に待遇が良くなっていって逃げ出し辛くなったんだけど……。
不真面目にはしておけば良かったってこと? いや、それじゃあ情報は手に入らなかっただろうし……。
「ところで、フィリア。ゲイル博士と最近親しくしているみたいだが……。あまり彼とは付き合わない方が身の為だぞ。彼はよからぬ野心を抱いている可能性があるからな。局長に頼んで何とか閑職に追いやることは出来たが……。一応忠告しておく……」
サンジェルマンはそう言って、あたしの分の会計も済まして店を出ていった。
ゲイル博士と付き合うな、ねぇ……。それは出来ない相談よ……。だって……。
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「ほう、これがチフォージュ=シャトーですか……。なるほど、僕の新しい居場所を提供してくれて感謝しますよ。フィリア、そして、キャロル」
「フィリアよ、お前、本気で言っているのか?」
「ええ、あたしは本気よ。あたしたちの悲願のためにあたしは力を手に入れるわ。ドクターの言う完全体
あたしは誰もこれ以上失わないために、そして、やりたい事を成し遂げるために、この身を人形に変える決意をした。
4期、5期の敵が前倒しで登場しました。
そして、新キャラのゲイル博士は本当に引っ張っておいて申し訳ないのですが、並行世界で錬金術を覚えていたウェル博士でした。
彼の活躍で5期のストーリーにもかなり影響が……。
次回、ついにフィリアがオートスコアラーに!?
次回もよろしくお願いします!