【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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フィリアの過去編はこれで最後です。
それでは、よろしくお願いします!


フィリアの過去 その4

 パヴァリア光明結社から計画の概要を手に入れたあたしはキャロルの元に戻り、自らが自動人形(オートスコアラー)になり、膨大なエネルギーの依り代になることを伝えた。

 

 そのためにゲイル博士の研究をチフォージュ=シャトーでさせることも……。

 

 キャロルは少しだけ渋い顔をしたが、あたしの決意を知って、ガリィたちの設計図を元に新しい自動人形(オートスコアラー)のベースを作った。

 

 そして、浄玻璃鏡の欠片を元にミラージュクイーンという錬金術を使うための媒体とファウストローブとしての性能を兼ね備えた新たな武器を作成した。

 

「ここまで完成すれば、後はエネルギー循環効率のアップと自動再生機能を重点的に仕上げましょう。なんせ身体は人間に近くさせなくては魂が馴染みませんから――」

 

「糖の分解のエネルギーで動くだと? 貴様の発想は訳がわからん」

 

 キャロルとゲイル博士はとんでもない速度で完全体自動人形(オートスコアラー)を完成に近づけていた。

 

 しかし――。

 

「パヴァリアの連中がお前らの居場所として、ここを嗅ぎつけそうだ。悪いが、日本にある聖遺物と錬金術の研究機関に身を隠してもらえないか? あそこはパヴァリアすら簡単に手出しが出来ぬ、日本の国防機関が裏で非合法の研究をしている場所だ。取引をして、実験が終わるまで、お前らを匿って貰えることになった」

 

 キャロルはあたしとゲイル博士に日本に飛ぶように伝えた。

 確かに、今、パヴァリアとゴタゴタするのは面倒だ。ここは身を隠すのが正解だろう。

 

「わかったわ。どうせ、最終的には日本に行く予定だったんだし……。ついでに日本のシンフォギアについても探ってくるわよ」

 

 日本は秘匿にしているが、《ノイズ》への対抗手段としてシンフォギアを用いていることは、私たちは既に知っている。

 呪われた旋律を刻むのにシンフォギアを用いるなら、日本の特異災害対策機動部の情報は必須だ。

 

「さすがは、フィリア。この状況をも利用するとは……。わかった、そちらはお前の判断に任せよう」

 

「ええ、計画を実行するときに日本で会いましょう」

 

 あたしとキャロルはそう誓って、別れた。

 

 あたしはゲイル博士と日本の国防機関が裏で研究しているとかいう怪しい研究施設に身を潜めながら、体を人形にする実験を行うことになった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「日本での《ノイズ》の出現回数って、こんなに増えてるのね……。一体、何人が犠牲に……」

 

 あたしは日本での新聞記事を読みながらそんなことを言っていた。

 

「フィリア、君は迷ってませんか? 僕は知ってますよ。君がキャロルの計画に手を染めることに迷っていることを……」

 

 ゲイル博士はコーヒーをすすりながら、そんなことを言う。これから、いよいよ実験だというのに……。

 

「迷ってる――のかしら? イザークに会いたいし、救いたいという気持ちは全然消えないのよ。ただ、人が犠牲になったり、親しかった人たちに何かあると考えたら……。イザークが死んだときは、もうどうでもいいと思ってたのに……」

 

 パヴァリアで、目的遂行のために犠牲を厭わないという姿を幾つも目の当たりにしたことが、あたしは今の自分に対する疑問を生んだ。

 

「君は無制限に優しく、そして甘いのです。その上、誰よりも弱い。まぁ、いいですよ。僕は君に力を与えるのが目的ですから。報酬は前に言ったとおり僕を英雄にすることです。さしあたっては、この国で《ノイズ》でも打ち倒しましょうか。そうしたら、愚民たちは我々を神の使いだと思うほど称賛しますし、あなたも目的のシンフォギアに近づける」

 

 ゲイル博士はあたしに対してそんな提案をした。はぁ、確かにこの男を引き込むのに英雄にするという約束はしたけど……。

 

「人からの称賛には興味がないけど、《ノイズ》を倒すのは悪くない提案ね」

 

 あたしはゲイルの提案を飲み込んだ。シンフォギア以外の《ノイズ》撃退方法が出てきたとなると、おそらく特異災害対策機動部はあたしたちを放っておかないでしょうから。

 

「ええ、楽しみにしておいてください。キチンと組み込みますから、人類の敵を抹殺する手段を――。そして、神をも超える力を手に入れる機能も……。しかし、僕はかなりの生命力を消費しますから、そのあとは少しだけ休みます」

 

 ゲイル博士の錬金術の基本は自らの生命力の燃焼である。

 彼いわく、人形に魂ごと意識を定着させるのはかなりのエネルギーを消費するらしい。

 要するに、彼にとっても今回の実験は命がけなのだ。

 

「大馬鹿者よね、あなたもあたしも……。こんなことに命を懸けるんだから……」

 

「ええ、馬鹿で良いじゃないですか。凡人には理解出来ない領域にあるのですから」

 

 彼はそう言って、あたしの頭を右手で触った。そして、材料の調達の関係でかなり小さくなってしまった、新しいあたしの身体の核の部分に彼は左手で触れる。

 

「さぁて、いきますよ。フィリア……」

 

 ゲイル博士がそう言うと目の前に錬成陣が浮かび上がる。

 

「ぐぬぅぅぅぅぅぅぅっ! はぁぁぁぁっ!」

 

「ちょっと、ゲイル! 変よ、あたしの頭の中から……」

 

 あたしは頭の中で何かが閉じ込められるような感覚に陥った。

 

「ふふっ、はははははっ! 君には余計なしがらみが多すぎる! それでは英雄にはなれません。余計な繋がりや、考えはすべてリセットして差し上げます! 僕が再教育して差し上げますよっ! 英雄に必要な気高い精神を!」

 

 ゲイル博士の顔が歪み、高笑いが聞こえる……。

 

 こっ、この男は最初から……。くっ、体が動かない……、このままだと――記憶が消えて――。

 

 あたしは彼の本性を知って愕然としたが、抵抗は出来なかった。

 安易に力を手に入れたいと願ったから……。自分の馬鹿さ加減を呪いながら、あたしの意識は人形へと引きずり込まれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、随分と可愛らしい姿になってるじゃない。もしかして、あなたの趣味かしら?」

 

 そして、目を覚ましたとき、あたしはすべてを忘れて、この大馬鹿者に話しかけていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 まるで長い夢を見ていたようだった。目の前にはあたしに口づけをしたファラが……、そして、隣にはキャロルが立っていた。

 

“壮絶だったわね。フィリアちゃんの人生って……。まぁ、私の娘らしいっちゃ、らしいけど……”

 

“やっぱり、覗き見してたのね”

 

“あーあ、好きな人から愛されてて、羨ましかったわぁ、娘に先越された気持ちって、わかる?”

 

“あたしの人生を見た感想がそれって、やっぱりあなたはどうかしてるわよ”

 

“それで、イザークくんを、フィリアちゃんは救い出すために世界を分解するのかしら?”

 

“――そんなの決まってるでしょ……”

 

 フィーネの問に対する気持ちは目覚めたときから決まっていた。

 

 

“キャロルを止めるのが義理でも母親としての責任よ! イザークだって、そんなことを望むはずがないっ!”

 

“あら、随分と意見を覆すじゃない。てっきり愛する人のために全てを捨てて頑張っちゃうのかと思ったわ”

 

“記憶を失ってなかったらそうしてたかもしれないわね。でも、あれから……、あのお人好したちと出会ってあたしの考え方までいつの間にか変えられちゃったみたい……”

 

“そういえば、前とは随分と雰囲気が変わったわね”

 

“翼もマリアも大切な人を失っても前を向いて生きている。それに、イザークのように誰かを助けるために奔走してる放っておけない子もいるし……。こんなあたしを慕ってくれる子や、友達だと言ってくれる子、そして、娘だと想ってくれる人もいる……。あたしは守りたい――。だって彼の意志があたしの(なか)でまだ生きてるのだから!”

 

“あの子も大好き、この子も大好きって、我儘な子ねぇ。でも、それがあなたの強さ……。あなたは私のクローンだけど……、弱かったからこそ成長出来たのね……”

 

 あたしは自分の犯した罪と戦い、キャロルを助けるために、彼女を止めることを決めた。

 

 この身体になったのはあたしが望んだことだった。本当に大馬鹿者だと思う。

 でも、だからといって足を止めては何も出来ない。過去から逃げ出さずに、今できることをするしかないんだ。

 

「キャロル、全部思い出したわ……。ごめんなさい。大事なあなたのことを忘れていただなんて……」

 

「想定外の出来事は仕方がない。記憶が戻ったのならそれでいい」

 

キャロルはあたしの拘束を解いてそう言った。よし、身体が自由になった……。

 

 だが、あたしとキャロルの戦力差は大きい。さらに、四体のオートスコアラーの戦闘力もかなり高い――。

 

 確かに、刺し違える覚悟ならあたしは、一体くらいオートスコアラーを破壊することはできる。

 

 しかし、それではキャロルの計画の延期は出来ても阻止は出来ない。

 

 

 ならばこの場は――。

 

「計画をスムーズに遂行するためにあたしは一度、S.O.N.G.に戻るわ。内部からシンフォギア装者をコントロールしてスムーズに動かしてみせる」

 

「そうだな。確かにお前は連中からの信頼も厚い。エルフナインを送り込んだが、奴では不安な部分もある。その方が都合が良さそうだ……」

 

 キャロルはあたしの提案を受け入れた。これで一度、司令部に戻って――。

 

「マスター、ちょっと待ってくださーい」

 

「なんだ? ガリィ……、何か言いたいことがあるのか?」

 

 話がまとまりかけたところで、ガリィが待ったをかけた。

 

「ガリィはフィリアちゃんのことが信用できませーん。もしかしたら、こっちの味方のフリをして、逃げ出そうとしてるかもしれないじゃないですかー」

 

「ガリィ、貴様……! フィリアがオレを裏切るだとっ!?」

 

 ガリィはまさにあたしの考えをピタリと当てた。面倒な奴ね……。

 

「恐れながら、マスター。わたくしも同意見でございます。フィリアが記憶を失ってここを離れていた期間は短くありません。監視の一つも付けたほうがよろしいかと」

 

 ファラもガリィに同調してあたしの裏切りを懸念した。

 

「くっ……、念には念を入れろというわけか……。すまないが、フィリア。貴様のことは全て監視出来るように、身体を弄らせてもらうぞ」

 

 キャロルによって、あたしは彼女に動きの全てと視覚からの情報を監視出来るようにされたしまった。

 さすがに、タダで帰してもらえなかったか……。想定はしていたけど……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「くっ……、しつこいわね……!」

 

 ――雷獣ノ咆哮――

 

 あたしはファウストローブに身を包み、迫りくるファラとレイアに電撃を放った――。

 

 そして、ガリィからの水攻めと、ミカの炎を避けて走る――。

 

「フィリアちゃん!」

 

 あたしがオートスコアラーたちと逃亡戦を繰り広げていると、響がギアを纏ってこちらに駆けつけてきた。

 

「派手に散れっ!」

 

 レイアがコインをあたしに放つ……!

 

「しっしまった――」

 

 あたしはコインによって胸を貫かれ、その場に倒れた。

 

「フィリアちゃん! しっかりしてっ! 大丈夫?」

 

 響があたしを抱き起こす……。

 はぁ、こんな芝居をしなければならないなんて……。

 

 そして、程なくして響のギアは分解された……。

 

 オートスコアラーたちは撤退し……、あたしたちは、敗戦の空気を抱えながらS.O.N.G.の収容班によって回収される。

 

 響には申し訳ないことをした……。

 

 だが、あたしは帰ってきた、仲間たちの元へ――。

 

 




記憶喪失の期間中の繋がりで、フィリアは暴走から立ち直りました。響が歌えなくなるイベントはカットしました。申し訳ありません。
次回もよろしくお願いします!




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