【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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今回はマリア回です。XVの九話のマリアがカッコ良すぎて長くなってしまいました。



マリアの憂鬱

「マリア、フィリア、よく来ましたね……」

 

 入院しているナスターシャの見舞いにあたしとマリアは二人で病院に行った。

 

「体調、良さそうじゃない。安心したわ。調と切歌はちょっと検査があって来れなかったけど、また一緒にくるわね」

 

「マム……、私は……」

 

 ナスターシャの顔を見るなり、マリアは何かを言いたそうにしていた。

 先日の戦いで、オートスコアラーに圧倒された上に最後にはキャロルの錬金術により失神させられたマリアは酷く落ち込んでいるみたいだった。

 

「私は……、弱い……。いつも威勢の良いこと言って自分を奮い立たせるけど……、結局は……」

 

 マリアは俯きながら、ナスターシャにそうこぼした。

 お見舞いに来てるのに、そんな暗い顔してちゃナスターシャに心配かけちゃうじゃない。

 

「マリア、あなたは自分を信じて認めるのです。あなたには、あなたにしかない強さがあります。もう、私はあなたたちを導くことは出来ませんが、見守っていますよ」

 

 ナスターシャは穏やかにマリアに話しかけた。

 マリアにしかない強さかー。

 

 

 

「私にしかない強さって何だと思う?」

 

 ナスターシャの病室から出て二人で喫茶店に入って注文を済ませると、マリアはあたしに真剣な表情で話をしてきた。

 

「えっと、マリアの強さね……。うーん……」

 

 せっかくマリアが頼ってくれているのだ。あたしとしても力になってあげたい。

 あたしは腕を組んで真剣に考えた。

 

「ご注文のケーキセットでーす」

 

 店員さんがあたしとマリアの前にケーキとコーヒーを差し出す。

 あたしは未だに腕を組んでいた。

 

「ねぇ、フィリア……、無いなら無いって、はっきり言ってよ」

 

「ちょっと、待ちなさいって。そんなはずないでしょう。今、頑張って探してるんだから」

 

「そんなに頑張って見つけるほどのものなの!?」

 

 マリアは愕然とした口調であたしを急かす。結構、難易度高い命題だと思うけど……。

 

「マリアって、度胸あるじゃない。ほら、あんなに沢山の人の前で歌えないわよ。普通なら……」

 

「翼だって歌ってるわ……」

 

「あっ……。でも、『狼狽えるなっ』とか『最高の舞台にしてあげる』とかは中々言えないわよ。翼よりもマリアの方が度胸あるわ。絶対に」

 

 何とかマリアを励まそうとあたしは必死で彼女を持ち上げようとした。

 

「あのときの話はヤメて! それに翼だって、『話はベッドの上で聞かせてもらおう』とか言ってたわよ」

 

「あー、通信機で聞いてたわ。あれ、意味分かって言ってるのかしら?」

 

「知らないわよ。あなたの方が付き合い長いんでしょう?」

 

 マリアの強さの話が何故か翼の言葉遣いの話になってしまって脱線する。

 

「――やっぱり、マムの言ってた強さなんて私にはないのよ……」

 

「でも、あたしはそんなマリアのことが好きよ。みんなのために勇ましくなって、時々、弱気になるけど……、それでも持ち前の優しさを力に変えることが出来るあなたが」

 

「フィリア……、あなた……。――って、あなたは昔から、いい感じに纏めて話を逸らせることが得意だったわよね。騙されないわよ」

 

 マリアが納得しかけて首を横にブンブン振って、ジト目で見てくる。

 

「うっ……。そっ、そんなことないわ。でも必ずしも強いほうが良いとか悪いとかそんなのじゃないと思うのよねー」

 

 あたしは両手を振って弁解した。あたしなりにマリアを元気づけたつもりだったが、日頃の行いが良くなかったみたいだ。

 

「ほら、やっぱり……、はぐらかすんだから……」

 

「まぁまぁ、イチゴあげるから」

 

 しょんぼりしているマリアの口にあたしはケーキの上のイチゴを運ぶ。

 

「パクッ……。言っとくけど私はあの子みたいに餌付けされないわよ」

 

「だから、してないって……。それより今度の休暇……、じゃなくて、特訓だけど……」

 

 あたしは弦十郎が提案した、『筑波の異端技術機構での調査結果の受領任務の期間を利用してそこで心身の鍛錬に励め』という、実質的な休暇について、話を切り出した。

 

 マリア、切歌、調のギアはすでに強化させて、彼女らに与えている。

 弦十郎の狙いは心身共にリフレッシュさせて呪いに負けないために必要な精神の回復だということは明らかだった。

 

「ええ、みんなは浮かれても大丈夫だと思うわ……。でも私は――」

 

 マリアは憂鬱そうな顔をして窓の外を眺めていた。こりゃ重症ね……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「おーい!  マリアー!」

 

「何をやってるデスかー?」

 

 調と切歌がマリアを呼んでいる。しかし、マリアはあなたたちと違って今、悩んでいるのよ。

 海に来たからって浮かれるなんてことは――。

 

 

「求めた強さを手に入れるため……、私は……、ここに来た……」

 

「めちゃめちゃ、浮かれてるじゃないのよ! どこで買ってきたの!? その水着! セリフと見た目が全然あってないわよ!」

 

 あたしはド派手な水着にサングラスをかけたマリアに対してツッコミを入れた。

 

「にっ、似合わないかしら」

 

「はぁ……、似合うから腹立つのよ……。でも、良かったわ」

 

 あたしはため息をついてマリアの背中を叩いた。心配して損しちゃった。

 

「特訓といえば、この私! 任せてくださーい!」

 

「特訓なら、映像として記録しとかなきゃね。しとかなきゃ!」

 

 未来は幸せそうに響の水着姿を写真に収めている。あの子、響と付き合い出してから遠慮がなくなったわね……。

 

 

 しばらくして、あたしたちはビーチバレーをすることになった。シンフォギア装者だけでなく、未来やエルフナインもいるから全部で9人、人数は奇数だから入れ替わりでチームを組んでいる。

 

 今は、あたしと翼がチームを組んで、エルフナインとマリアのチームと勝負している。

 

「なかなかどうして、この鍛錬のメニューはタフなメニューばかり。フィリア、お前の言うオーストラリアンフォーメーションとはこれで良いのか?」

 

「ええ、さすがは翼! スジが良いわ!」

 

「いや、フィリアこそ、戦略を即時に考えるその頭脳には感服する!」

 

 翼はあたしが適当に言ったことを実行して、勝手に感心していた。あー、翼のこういうところが可愛くて仕方ないのよねー。

 

「絶対にフィリア先輩、翼さんで遊んでるよ……」

 

「まぁまぁ、翼さんも楽しんでいるし……」

 

 響と未来にはあたしの悪ノリがバレているみたいだ……。

 

 

「あれっ? なんでだろう?  強いサーブを打つ為の知識はあるのですが……。実際やってみると全然違うんですね」

 

 エルフナインがジャンピングサーブをしようとして失敗していた。

 

「背伸びをして誰かの真似をしなくても大丈夫。下からこう……、こんな感じに」

 

 マリアが優しくエルフナインにサーブのやり方を指南する。ああやって見ると親子みたい……。

 

 なんか、マリアってお母さんっぽいところがあるわ……。

 あたしなんて、婚約者の娘にも上手く母親の顔が出来ないのに……。

 

「ふぅ……。すみません……」

 

 申し訳なさそうな顔をエルフナインはしていた。

 

「弱く打っても大丈夫。大事なのは自分らしく打つことだから」

 

「はい!  頑張ります!」

 

 マリアはそれでも尚、エルフナインに優しくアドバイスしていた。

 

 

「――あっ、今度は上手く入りました」

 

「すごいじゃない。エルフナイン!」

 

 エルフナインは下からボールを打ってサーブを成功させる。マリアも笑顔で手を叩いた。

 

 

「フィリア! ボールを上げるぞ!」

 

 翼はあたしにチャンスボールを上げる。

 

「秘技! 竜巻落とし!」

 

 幾重にもボールが分裂して砂浜を抉るようにしてボールが着弾して、砂煙が舞い上がった。

 

「うむ、特訓の成果が現れてきたな」

 

 翼は満足そうにうなずく。

 

「ケホッ、ケホッ……、フィリアさんのボールの撃ち方も理論を超えています。これが――フィリアさんらしさ……」

 

「ゴホッ……、違うわ。エルフナイン……、あれは大人気ないって言うのよ」

 

 真面目な顔をしているエルフナインにマリアは首を横に振って否定した。

 

「オメーはバカか!? ちったぁ、加減しろっ!」

  

 審判をやっているクリスに頭を叩かれて、以後は加減をするようにと説教をされてしまった。

 

 

 

 

 

「気がついたら特訓になっていた……」

 

「フィリアのバカがバカたちを焚きつけるからだ……」

 

 思いの外、激しいビーチバレーになってしまい、疲れを感じないあたし以外は疲労を顔に出していた。

 響とのアタックの撃ち合いは中々盛り上がった。

 

「晴れて良かったですね」

 

「昨日台風が通り過ぎたおかげだよ」

 

「日頃の行いデース!」

 

 エルフナインの言葉に未来と切歌が笑顔で答える。

 

 

「ところで皆、お腹が空きません?」

 

「だが、ここは政府保有のビーチゆえ……」

 

「一般の海水浴客がいないと、必然売店の類も見当たらない……」

 

「ともすると、やることは一つね。負けないわよ」

 

 響の言葉から私たちはコンビニに買い出しに行く人間を決めるジャンケンをすることになった。

 

「「コンビニ買い出しじゃんけんぽん!」」

 

 

 

「あーあ、負けちゃった……」

 

 あたしはチョキを出して負けてしまった。

 

「あははっ! 翼さん、変なチョキ出して負けてるし!」

 

「変ではない! かっこいいチョキだ!」

 

 翼は親指と人差し指で作る独特のチョキを出していた。かっこいい……?

 

 

 

「斬撃武器使いが……」

 

「軒並み負けたデス!」

 

 負けたのは、調と切歌とあたしと翼……、ミラージュクイーンも斬撃武器だし、確かに……。チョキが出やすい統計でもありそうね……。

 

 

「好きなものだけじゃなくて、塩分とミネラルも補給出来る物もね」

 

 マリアはあたしたちにそう指示を出す。昔から面倒見のいい子だったけど、変わらないわね。

 切歌や調と一緒に悪ノリしてたら、よく叱られたっけ。年下のクセにとか言ったらもっと怒られた。

 

「むぅーっ……、ん? サングラス?」

 

「人気者なんだから、これかけて行きなさい」

 

「母親のような顔になってるぞ、マリア……」

 

 翼の顔にサングラスをかけさせるマリアは確かにお母さんの表情になっていた。

 あたしもキャロルにこんな顔をしたい……。

 

 

 

 

「切ちゃん、自分の好きなのばっかり……」

 

「こういうのを役得と言うのデース! リア姉のオススメのお菓子はハズレがないのデス!」

 

 切歌はぎっしりと好きなものが詰まった袋を持ってホクホク顔だった。

 

「まぁ、スポーツドリンクとか、熱射病対策になるものも買ったから、マリアには叱られないでしょ」

 

「フィリアはマリアに叱られたことはあるのか?」

 

 あたしが自分の袋を見せると、翼が興味深そうにマリアとあたしのことを聞いてきた。

 いや、マリアにはねぇ……。

 

「リア姉なんて、私たちよりもマリアに怒られてたデス」

 

「悪巧みするのは、大体、リア姉かアナ姉のどちらかだったから……」

 

「ちょっと……、昔の話でしょ」

 

 あたしが言い淀んでると切歌と調が昔話を暴露する。

 

「ふふっ、私もマリアに叱られないようにせいぜい気をつけるか」

 

「気を付けなさい。まぁ、マリアが叱るのはあたしたちの為を思ってのことだけどね……」

 

 まぁ、翼がマリアに本気で叱られるなんてことないと思うけど……。キチンとしてる子だし……。

 

 

 しばらく歩いたあと、響たちの居る方向から煙が立ち上っていることにあたしたちは気付いた。

 

「あれはっ!?」

 

「もしかして、もしかするデスか!?」

 

「行かなきゃ!」

 

 おそらく、オートスコアラーの襲撃……。

 この近くの神社を狙って、さらに――。

 

「ここは危険です! 子どもたちを誘導して安全なところにまで!」

 

「冗談じゃない! どうして俺がそんなことを!」

 

 翼が近くで部活動をしていたように見える子供たちの誘導をガソリンスタンドの店員っぽい服装の男に頼んだが、彼は走ってどこかに行ってしまう。

 

「ちょっと、あなたっ! 待ちなさい!」

 

 たまらず、あたしは彼を呼び止めようとしたが無駄だった。まったく、もう……。

 

「大丈夫。慌てなければ危険はない。フィリア、お前がこの中で一番速い。この子たちは私に任せて、援護に行ってくれ」

 

「わかったわ。コード……、ミラージュクイーン……」

 

 翼の言葉に頷いたあたしはひと足先に戦闘が行われている場所に走った。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 あたしがマリアの近くまで辿り着いたとき、彼女はイグナイトモジュールを発動して失敗したからなのか、暴走していた。

 

 くっ、マリアが暴走してしまうなんて……。そして、あれはガリィか……。

 

「うがぁぁぁぁぁっ!」

 

 暴走状態のマリアがガリィに襲いかかっている。

 

「いやいや、こんな無理くりなんかでなく――」

 

「ガァァァァァッ!」

 

「歌ってみせなよ。アイドル大統領!」

 

 ガリィはマリアの頭を掴んで抑えつけられ、地面に強く叩きつけられてしまった。

 

「やけっぱちで強くなれるなどとのぼせるな!」

 

 さらに、ガリィは氷の刃でマリアを突き刺そうとする――。

 

「そこまでよ……。ガリィ……」

 

 ミラージュクイーンでガリィの刃を弾いた。

 

「あらイヤだー、人間と友達ごっこしてる可愛らしいお人形さんじゃなーい……」

 

 あたしとガリィが対峙する。

 キャロルのオートスコアラーが相手だろうと、マリアをこれ以上傷付けるのは許さない。

 

 マリアの体が発光してギアが解除される……。

 

「何、マジになってんのか知らないけど……。間違って壊しちゃうかもねー」

 

「誰に向かって口を利いてるの?」

 

 ガリィの氷の刃を躱して、ミラージュクイーンを伸ばす。

 

「フィリアちゃーん、つよーい! ガリィ、負けちゃうかもー」

 

 ヘラヘラとした表情であたしのミラージュクイーンに貫かれたガリィは水に写った幻影で消えてしまう。

 

「残念でしたー」

 

 ガリィはあたしの背後から攻撃を加えようとした。

 

「残念なのは、こんなチンケな手にあたしが引っかかると思ったあなたの頭よ……」

 

 ――鉄山靠――

 

 あたしはガリィの動きを先読みして、彼女に背中から体当たりを加えた。

 ガリィは吹き飛ばされたが、水のクッションを繰り出して、衝撃を和らげ着地する。

 

「あーあ、これ以上、やり合うとマスターに怒られちゃーう。えーん……、マスターには、フィリアちゃんにイジメられたって言い訳しちゃおうっと」

 

 ガリィは泣き真似をしながらテレポートジェムを取り出した。

 

「じゃあ、そこのハズレ装者さんによろしくー」

 

 そう言い残して、ガリィは消えてしまった。

 

 マリア……、ここからがあなたの正念場かもしれないわね……。

 




調子に乗っていろいろと書いてましたら一話にガリィ戦がおさまりませんでした……。
やっぱり日常パートは止まらなくなるから自重しなくてはなりませんね。
次回もよろしくお願いします!
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