【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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前半はマリアVSガリィで、後半は洸登場って感じの回です。
それではよろしくお願いします。


風鳴フィリアは小日向未来に疑われてる

「フィリア……、またあなたに助けられたわね……。情けない。私が弱いばかりに魔剣の呪いに抗えないなんて……。私は……、強くなりたい!」

 

 ガリィたちが襲撃から撤退して、しばらく時間が経ったのだが、マリアはとてつもなく落ち込んでいた。

 

「マリア……、あなたは焦りすぎよ。そんな乱れた心では」

 

「わかってる! でも、フィリアだって答えてくれなかった。私の強いところを! マムも答えを教えてくれなかった……」

 

 マリアは拳を握りしめて声を震わせていた。

 

「あっ……、ボールが……」

 

 エルフナインの声とともにボールがこちらに転がってくる。

 

「ごめんなさい。皆さんの邪魔をしないよう待ってたのですが……」

 

「邪魔だなんて……。練習、私たちも付き合うわ。ねっ? フィリア」

 

「ええ、構わないわよ」

 

「はい!」

 

 マリアの一言であたしはエルフナインのビーチバレーの練習に付き合うこととなった。

 

 

 

「それっ! おかしいなぁ……。さっきみたいに、上手くいかないなぁ……やっぱり……」

 

 なかなか上達しないことをエルフナインは真剣に考察している。いつも、この子は生真面目なのよね。

 

「色々な知識に通じているエルフナインなら、わかるのかな?」

 

「え?」

 

「だとしたら教えて欲しい。強いって、どういうことかしら?」

 

 そんなエルフナインを見て、唐突にマリアは質問を投げかけた。いや、それは無茶ぶりなんじゃ……。

 

「それは……マリアさんがボクに教えてくれたじゃないですか」

 

「えっ?」

 

 しかし、マリアへのエルフナインの回答は直ぐに返ってきた。マリアはその答えを既に知っていると……。

 

「おまたせ〜。ハズレ装者」

 

 海から水が吹き出して、ガリィが再び現れる。計画を実行するつもりね……。しかし、マリアは……。

 

「ガリィっ!」

 

 あたしはミラージュクイーンを出そうと手を開いた。

 

「フィリア、待ちなさい!」

 

「マリア……」

「マリアさん……」 

 

 マリアがそんなあたしを手で制する。

 

「ここは、私に預けてくれる? お願い……」

 

 マリアはあたしに手を出すなと要求してきた。

 

「今度こそ歌ってもらえるんでしょうね?」

 

「大丈夫です! マリアさんなら出来ます!」

 

「Seilien coffin airget-lamh tron……」

 

 エルフナインの言葉に頷き、マリアは聖詠を唱える。マリア……、それならあたしは見守るわ……。強さの答えを見つけるところを……。

 

「ハズレでないのなら、戦いの中で示してみせてよ!」

 

 

 マリアは必死の気迫でガリィに挑むが翻弄されっぱなしだった。

 やはり、イグナイトモジュールを使わないとオートスコアラーの相手は厳しそうね……。

 

 

「てんで弱すぎる!」

 

「――っ! やはりこれを……」

 

 マリアは膝を付き、イグナイトモジュールを使おうとペンダントに手を触れる。

 

「その力……、弱いあんたに使えるの?」

 

「くっ! 私はまだ弱いまま……、どうしたら、強く……!」

 

 ガリィの問いかけに、マリアの心は折れてしまいそうだった。

 

「マリアさん! 大事なのは自分らしくあることです!」

 

「前にマムが言ってたでしょ、強ければ良いってものじゃない。あなたにはあなたならではの力があるって」

 

 エルフナインとあたしはマリアに言葉を送る。彼女は気付くだろうか? マリア=カデンツヴァナイヴという人間の強さに……。

 

「弱い――そうだ! 強くなれない私にエルフナインが気づかせてくれた……。弱くても自分らしくあること。それが――強さ!」

 

 ハッとした表情でマリアは立ち上がり、目に力が戻ってきた。

 

「エルフナインは戦えない身でありながら危険を顧みず勇気を持って行動を起こし……、私たちに希望を届けてくれた。マム、あなたの教えてくれたことが少しだけわかったわ」

 

「ふぅん」

 

「エルフナイン、そこで聞いていて欲しい。君の勇気に応える歌だ! フィリア、見ていてくれ! 頼りない私の意地を! イグナイトモジュール、抜剣!」

 

 変形したギアペンダントがマリアに突き刺さった。

 

「くっ、……。うっうっ……、くはっ……、私は、私は――弱いままこの呪いに反逆してみせるっ!」

 

 マリアは呪いの力を克服して、イグナイトモジュールは正常に起動した。

 そして、ここから、マリアの反撃が始まった。

 

「弱さが強さだなんて、トンチをきかせすぎだって!」

 

 ガリィはアルカノイズを放つ。まったく、面倒ごとを増やして……。

 

「コード、ミラージュクイーン……」

 

 あたしはエルフナインを守りながらアルカノイズたちを斬り裂く。

 

「フィリア! そこは任せた! こっちは私がっ!」

 

 マリアの火力が格段と上がり、アルカノイズを一瞬で殲滅する。

 

「いいね、いいねぇ!」

 

 ガリィはニヤリと笑って嬉しそうな顔していた。

 計画通りに事が進んでいることが余程嬉しいのね……。

 

 マリアはそんなガリィを一刀両断するが、それは水の分身で、彼女の攻撃は空振りに終わって、辺りに無数の泡が舞う。

 

 泡の中に分身をいくつも出現させてガリィは得意の相手を翻弄する戦術をとる。

 

 マリアは銀色の矢を次々と放って泡を撃ち抜く。

 

「私が一番乗りなんだから!」

 

 しかし、ガリィはマリアの背後に現れて挑発的なポーズをとる。

 

 マリアはそんなガリィに肉薄して拳を放つ。

 

「ふふっ、貧弱ねぇ」

 

 ガリィはシールドを展開してマリアの拳を防いでいた。

 

 しかし、マリアのアガートラームが発光すると更に力強さを増して、ガリィのシールドは破られた。

 

 さらに、マリアは強烈なアッパーパンチを繰り出して、ガリィを吹き飛ばす。今の彼女はいつもと覇気が違うわね……。

 

 ――SERE†NADE――

 

 マリアは空に飛ばされたガリィよりも高くジャンプしてアガートラームを巨大化して、炎を纏わせる。

 そして、そのまま猛スピードで突撃し――一閃……!

 

「一番乗りなんだからぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 ガリィは絶叫しながら爆発した――。これで、彼女には呪われた旋律が刻まれたことになる……。さらにアレも……。

 

 マリア、見事だったわ。あなたらしい戦いだった。

 

「マリアさん! フィリアちゃん!」

 

 響たちがあたしたちの元に駆けてくる。

 

「オートスコアラーを倒したのか?」

 

「どうにかこうにかね……」

 

 翼の質問にマリアは頷き、答えた。

 

「これがマリアさんの強さ……」

 

「いや、弱さかもしれない――。でもそれは私らしくある為の力だ。教えてくれてありがとう」

 

 マリアはエルフナインにニコリと微笑んだ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 夜になり、あたしたちは、元気になったマリアも含めてみんなで花火をしていると、またもやコンビニに買い出しをすることとなった。

 あたしは先ほどの反省を活かして、パーを出したのだけど……。

 

「負けたのは、あたしと響なんだから、未来は良かったのに……」

 

「こんな夜道でフィリア先輩と響を二人きりになんてさせられません。一人よりも危険です」

 

「あなた、あたしを何だと思ってるの?」

 

 割と本気よりの警戒心をあらわにされて、あたしは困惑していた。

 

「だって、フィリア先輩って前に響のことを好きだって言ってましたし……」

 

「えっ? フィリアちゃんが?」

 

 ずっと前にあたしが未来を焚き付けるためについた嘘をまだ未来は根に持ってるみたいだ。

 

「だから、あれは神獣鏡のギアを起動させるために仕方なく……」

 

「私も一度は信じましたけど、フィリア先輩は響に優しすぎます! 手作りのお菓子なんて普通はあんなにプレゼントしません。包装も綺麗にしてますし……」

 

 未来はあたしが暇つぶしに作った菓子を、最近ハマっているラッピングアートの練習も兼ねて響に渡していることを指摘していた。

 

「私は絶対に渡しませんから。響のこと……」

 

「悪かったわ。自重するから……。大丈夫、絶対に響だけは取らないから。命は惜しいもの……」

 

 未来の気迫に押されて、あたしは謝罪した。この子は絶対にイグナイトモジュールより強い……。

 

 

「すごいよ未来、フィリアちゃん! 東京じゃお目にかかれないキノコのジュースがある!」

 

「死ぬほど、どーでもいいわね……」

 

 自販機の前ではしゃぐ響をあたしは横目で見ていた。

 

「えっ!? こっちはネギ塩納豆味!? アンコウ汁ドリンクって!?」

 

「あれ? 確か君は……、未来ちゃん、じゃなかったっけ?」

 

 コンビニから出てきたのは、さっき子供を置いて逃げていった男だった。どうして、この人が未来を……。

 

「え?」

 

「ほら、昔うちの子と遊んでくれていた……」

 

「あっ!」

 

 男の言葉に未来は彼が誰なのか思い出したみたいだ。

 

「どうしたの? 未来ー」

 

「ひっ、響……」

 

 未来の声で、こちらを振り向いた響はハッとした表情をする。

 

「お父、さん……」

 

「はぁ? この人が、響の父親って……。ちょっと、響、どこに行くのよ!?」

 

 響は顔を真っ青にして走ってその場を立ち去ってしまった。

 まさか、響の父親と鉢合わせするとは……。

 確か、前に響の父親って、家族を置いて失踪したって聞いたけど……。

 

「ちょっと、あなたが響のところから失踪した父親なの?」

 

 あたしは男の腕を掴んで、問い詰めた。

 

「えっ、いやぁ……、ははっ参ったなぁ。未来ちゃん、この子は君たちの友達の妹かい?」

 

「いえ、私たちの学校の先輩でして……、そのう……。フィリア先輩、おっ穏便にしてください……」

 

 あたしが怒りをあらわにしていることに気が付いた未来はあたしの肩を叩いて耳打ちをする。

 

「たははっ……、ずいぶんと俺の印象が悪くなってるみたいだなぁ。なぁ、未来ちゃん、響と話し合いたいんだけどさ、連絡先って教えてもらえるかな?」

 

「はっはぁ、それは構いませんが……」

 

「ちょっと、未来! いくら父親でも響になんの断りもなくっていうのは……」

 

 連絡先を教えてほしいという響の父親の問いかけを了承する未来にあたしは待ったをかける。

 

「でも、会うとか会わないとかは響が決めればいいと思うから……」

 

 結局、未来は響の父親に響の連絡先を教えた。

 本当にこれで良かったのだろうか……?

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「じゃー、ちょーっと行ってくるから先に帰ってて」

 

 ニ年生の教室から響が走って出ていく。

 

「さぁ、追いかけますよ。フィリア先輩」

 

「なんであたしもなの? それにこれは響の家庭の問題でしょう?」

 

 未来から連絡があり、彼女のクラスに向かうと、響が父親と会うからこっそり後をつけようと提案された。

  

「フィリア先輩の言うとおりでした。私、余計なことをしてしまったかもしれません! 響、あれから元気が無くなっちゃって」

 

「もう、遅いし、響だって子供じゃないんだから。会うんだったら、あとは拒絶するなり、受け入れるなりするでしょうよ」

 

 あたしは響の後を追うなんて乗り気じゃなかった。それは友達の踏み込んでいい領域ではない気がしたからだ。

 

「お願いします。私、響が心配で、心配で……」

 

「はぁ……、仕方ないわね。待ち合わせ場所は分かってるの?」

 

「それとなく聞き出しました……」

 

 あたしと未来はこっそりと響が父親の(アキラ)と待ち合わせている喫茶店へと向かった。

 

 

 

 

「――前に、月が落ちる落ちないと騒いだ事件があっただろ?」

 

 洸は響にフロンティア事変の話題を出していた。

 

「あの時のニュース映像に映ってた女の子がお前によく似ててな……、以来、お前のことが気になって、もう一度やり直せないかと考えてたんだ」

 

 やはり洸は響たちの家族と復縁を望んでいるみたいだ。

 

「やり直す?」

 

「勝手なのはわかってる。でも、あの環境でやっていくのは俺には耐えられなかったんだ」

 

 未来から聞いた話だが、奏が亡くなったあの悲劇の生き残りの響は酷いイジメにあっていたらしい。彼女だけでなくその家族も……。

 洸はそういう環境に耐えられなくなり失踪したらしい。

 

「なあ? また皆で一緒に……。母さんに俺のこと伝えてもらえないか?」

 

 洸は自分と響の母親の仲を娘である響にとりなして欲しいと頼んだ。

 

「無理だよ。一番一緒に居て欲しい時に居なくなったのは、お父さんじゃない」

 

 しかし、響は当然のように彼を拒絶した。まぁ、大事なときに居なくなった人間を信頼は出来ないわよね。

 

「やっぱ無理か――。何とかなると思ったんだけどな。いいかげん時間も経ってるし……」

 

 その洸の物言いに、響は思わずギュッと拳を握っていた。

 ついでにあたしも……。

 

「フィリア先輩、抑えてください」

 

 未来があたしの拳を慌てて止める。さすがに手は出さないわよ。多分……。

 

「覚えてるか?  響……、どうしようもないことをどうにかやり過ごす魔法の言葉……、小さい頃、お父さんが教えただろ?」

 

 洸は何やら響に話かけているが、響は怒って帰ろうとした。

 

「まっ、待ってくれ、響!」

 

 慌てて洸は響を呼び止めた。意外と食い下がるわね……。本気で復縁は望んでいるのかしら?

 

「持ち合わせが心許なくてな……」

 

 そう言って、洸は伝票を響に差し出した。じゃあなんで、サンドイッチ食ってるのよっ!

 

 響は伝票を毟り取って、走って店を出ようとしていた。

 

「――未来、あいつぶん殴っていいかしら?」

 

「やめてください……。さすがにそれは……響のお父さんが死んじゃいますから……」

 

 あたしは弦十郎仕込みの正拳突きを繰り出そうと立ち上がったが、未来があたしの腕を握りしめて慌てて止めた。

 

「はぁ……、だったらあたしが響を追いかけるわ。あなただと、付けてきたことがバレたら面倒なことになるでしょう?」

 

「――響の弱ってるところを利用して、心まで奪おうとしないですか?」

 

「いい加減、そこのところは信じてもらえない? はい、これで支払っといて」

 

 あたしは未来にお金を渡して、会計を頼み、響を追いかけた。

 




最後までフィリアに洸を殴らせようとか思いましたけど、普通に事件になりそうなので止めました(笑)
次回もよろしくお願いします!

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