【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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いよいよ、後半から原作の1話の部分が始まります。
それでは、よろしくお願いします。


無印編
ツヴァイウィングと歌の力


「ツヴァイウィング? 何よそれ?」

 

 あたしは唐突に告げられた言葉を復唱した。

 休日にも関わらず、何が楽しいのか、あたしの部屋に遊びに来てる奏と翼から聞き慣れない言葉を教えられたのだ。

 

「ああ、あたしらが活動してるボーカルユニットの名前だよ。ほらっ、CDだって出してるんだぞ」

 

 奏がニコリと笑ってあたしにCDのジャケットを見せてきた。

 確かに二人がきれいな衣装を着た写真が載った本物のCDである。

 えっ、この子たちプロの歌手活動までやってるの? 奏と翼とひと月くらい付き合った後に、衝撃の事実を聞いてあたしは驚いた。

 

「ていうか、奏はまぁいいとして、翼は人前で歌なんて歌えるんだ」

 

 あたしは意外そうな声を出して翼を見た。

 

「うっ歌えるよ。大丈夫だもん」

 

 翼はあたしの声に反応したが、目は泳いでいた。

 ふーん、本当に大丈夫なのかしら?

 

「へぇ、それに結構売れっ子なんだ、あなたたち。まったく、こんな商売までやってるなんて……」

 

 あたしはパソコンで検索してその結果を見て呆れたような声を出した。

 そして、CDをデスクの上にそのまま置いた。

 

「おいおい、聴かないのかよ!」

 

 奏はあたしが面倒そうに放ったCDを見てツッコミを入れる。

 ああ、これを聴けってことだったのね。

 

 

 逆光のフリューゲルって、洒落た名前をつけるわね……。

 

 歌を聴いたところで、今のあたしは――。

 

 そんなことを思いながら彼女たちの曲を再生した。

 そして、旋律があたしの聴覚を刺激する――。

 

 

 えっ、何よ? この感じ……。歌詞とかメロディじゃないわ……。

 何があたしの胸を締め付けるの?

 

 あたしの核である聖遺物が二人の歌に呼応するかのごとく熱くなる。

 

『二人なら――♪  もっと―― 太陽より――♫』

 

 この身体になって、こんなに感情が蘇ったような感覚になるのは初めてだった。

 何かを思い出せそうで思い出せない、そんな虚しさも感じた……。

 

 

 

「どっ、どうだった? 私の歌、フィリアにはどう聴こえた?」

 

 曲が終わって感想を聞いてきたのは翼の方だった。

 

「……よっ良かったわよ。甘っちょろい歌詞だけど、あなたたちにはお似合いじゃない。別に何を歌ったって自由なんだし……」

 

 素直になれない謎の意地が働いて、そのまま思ったことが言えなかった。

 でも、歌が売れている理由はわかる。こんな人形の感情だって動かせるのだから、人間の心に強くエネルギーを刻み込むことくらいは出来るのだろう。

 

「なぁー、良かっただろ! もっと褒めるがよい! このこの!」

 

 奏はあたしの頭をくしゃくしゃっと撫でて、調子に乗った声を出してきた。

 あたしはこの瞬間、一言でも良かったとかいったことを後悔した。

 

「ねぇ、フィリア。本当に良かった? 私の歌はフィリアに届いたかな?」

 

 翼も翼で、珍しくグイグイくる。どうしたのかしら? いつも内気で引っ込み思案なのに。

 

「ええ、いい歌だったわ。自信を持ちなさい。あなたの歌には人に希望を与える力がある」

 

 そんな翼の圧に負けたあたしは、つい、らしくないことを言ってしまった。

 ダメね、ここのところペースが乱されっぱなしよ。この子たちに――。

 

「ありがとう、フィリア。嬉しい」

 

 ニコッと微笑んだ翼はやさしくあたしの頭を撫でる。もう、奏だけじゃなくて、あなたもなの? いい加減にしなさい。

 

 

「それで、急にそんな話をあたしにしたのには何か意味があるのかしら?」

 

 あたしは気になっていた事を質問した。

 このタイミングでツヴァイウィングについて話を切り出したり、歌の出来栄えを聞いたりするのには理由があると思ったのだ。

 

「おっ、やっぱ気になるよなー。実はさ、こんど、あたしたちでっかいライブをやるんだー」

 

 そう言いながら、今度はカバンからポスターを取り出して見せてくる。

 

 本当に大きなライブ会場じゃない。これって、10万人近く入るんじゃないの?

 

 あたしは思った以上に大がかりなライブだということを知って驚いた。

 

「ちょっと、これ。普通じゃないわよ。こんなに大がかりなライブなんて、あなたたちがする必要あるの?」

 

 あたしは思ったことをそのまま口に出した。

 彼女たちがライブをするのは、大人の商売に付き合わされてるしか思ってなかったからだ。

 

「フィリア、あたしたちはやりたくてやってるんだよ。ワクワクするじゃないか! これだけの人に感動を与えられるんだぞ! なぁ、翼!」

 

「うっうん。私も奏と一緒ならどんなことだって出来るし、どこへだって飛べる」

 

 二人はやる気に満ちた顔付きであたしにそう告げた。

 ふーん、やりたくてやってるのね。理解できないけどそれなら仕方ないわね。

 

「じゃ、頑張りなさい。応援してるわ」

 

 とりあえずあたしはそう口にして話を終えるつもりでいた。しかし、奏はそのつもりはないようだった。

 

「おいおい、他人ごとみてーなこと言うなよ。フィリアもライブに一緒に来ることになるんだぞ」

 

 彼女は思いもよらないことを言ってきた。

 何ですって?

 

「はぁ? なんであたしがあなたたちの趣味に付き合わされなきゃいけないのよ?」

 

 来ることになるという言い方をされて、あたしは訳がわからなかった。

 それじゃ、まるで二課の仕事があるみたいじゃない。

 

「んー、えーっと何でだっけ? 翼ー、覚えてるー?」

 

「…………」

 

 どうやら奏は肝心なことを忘れてしまったらしく、翼に話を振っていた。

 

「もう、奏ったら、あれだけ説明されたのに忘れちゃったの? フィリア、ライブをする目的は二課が実験をするためでもあるのよ」

 

 翼がライブの目的について説明をする。どうやらそれにはニ課が絡んでるらしい。

 

「ある聖遺物が封印された状態で発見されたんだけど、これを起動させるには大量のフォニックゲインが必要みたいなの。あっ、フォニックゲインっていうのは歌の力みたいなもので、シンフォギアもこれで動いてるんだけど……」

 

 フォニックゲインについては前に了子に聞いた気がする。

 歌には力があって、それが高まると聖遺物が反応したりするようだ。

 

「でね、私と奏が大勢の観客の前で歌うことで、私たちの歌が観客たちと共鳴して大量のフォニックゲインが理論上は生まれるみたいなの」

 

「ふーん、なるほど。ライブを利用してエネルギーを量産し、聖遺物を起動させる実験をするってわけね。そりゃ、あたしも一緒に付き合うことになりそうね」

 

 翼の説明を聞いてあたしは納得した。

 まったく、とことん何でも利用するつもりなのね。

 この子たちは戦わされるだけじゃなくて、人に夢を与える大事なことも、実験材料にさせられてるわ……。

 本人が納得してるから、文句を言うつもりはないけど……。弦十郎、あなたはそれでいいのかしら?

 

「あー、そんな話だった、偉いぞ翼ー。よく覚えてたなー」

 

「もっもう。私は子供じゃない。そう言うのはフィリアにしてよ」

 

 ニカッと笑顔で翼の頭を撫でる奏。

 

 あなたはこんな重要なことよく忘れてたわね。

 いや、そうじゃないか。あなたは単純にみんなの前で歌うことが楽しみでならないだけ。

 本当に純粋すぎる子――どこまでもまっすぐで遠慮がないから、人の懐に入り込むことが出来るのね。

 

 人形のあたしにも――。

 

 

 ライブは来月にあるらしい。その後、あたしは裏方で手伝いをして、実験を見守るという仕事を与えられることになった。

 

 そして、もう一つだけ。ライブ会場のような一般人が多いところに出るにあたって、二課の研究チームがあたしのために開発してくれたのが身体の継ぎ目を消す塗料だ。

 これを塗ることであたしの身体はなんとか異様に色の白い人間っぽくは見えるようになった。

 

 この塗料は耐水性には優れていて雨くらいでは落ちないが、耐熱性には少しだけ難がある。

 これはどういうことかというと、ミラージュクイーンを使用する際、あたしの身体の温度はかなりの熱を帯びるわけだが、そうなると塗料が溶けてしまうのだ。

 

 つまり、戦闘時はやはり人形の姿に戻ってしまうということである。

 

 まぁ、それでも塗料の存在はありがたく、あたしはこれのおかげで薄着でも外を出歩くことが可能になった。

 

 

 

 そして、任務をこなしたり、オペレーターの雑務を手伝ったりしていると一瞬で月日は過ぎ去り……、ツヴァイウィングのライブの日を迎えたのである。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「間が保たないっていうか、なんていうかさー。開演するまでのこの時間が苦手なんだよねー」

 

「うん」

 

 白いフード付きのローブのような衣装を着て、翼と奏はライブ会場の裏でスタンバってる。

 

 翼は俯いて緊張気味。奏は苦手とか言いつつ自然体だ。

 

「こちとら、さっさと大暴れしたいのに、そいつもままならねぇ」

 

「……そうだね」

 

 頭を掻きながら不満をもらす奏に同意する翼。あら、翼は本当にガチガチじゃない。

 

「もしかして、翼。緊張とかしちゃったり?」

 

 ニヤリと悪い笑みを浮かべて翼の顔色を覗き込む。

 

「当たり前でしょ! 櫻井女史も今日は大事だって――ふわぁっ」

 

 翼が緊張を肯定すると、奏は彼女を軽く小突いた。

 

「かぁー、真面目が過ぎるねー」

 

 へらりと笑いながら奏は翼の緊張を解そうとしていた。

 

「司令、こっちよ。二人ともここにいるわ」

 

「奏、翼、ここに居たか」

 

 あたしが弦十郎を手招きして二人のもとへ彼を近づける。

 

「フィリア、司令……」

 

「こりゃまた、弦十郎の旦那にフィリアじゃないか」

 

 二人はあたしたちに気付いてこちらを向く。

 

「分かっていると思うが今日は――」

 

「大事だって言うんだろ。わかってるから大丈夫だって」

 

 奏はいつもように飄々としたノリで返事をする。まったく、この子の心臓は――。

 

「ふっ、分かっているならそれでいい。――今日のライブの結果が人類の未来をかけてるってことにな」

 

 弦十郎は少しだけ微笑んで安心そうな顔をした。

 

「司令はこんなこと言っているけど、あたしは人類の未来なんて考えるより、今を楽しんできてほしいわね」

 

 あたしは弦十郎のセリフに水を差した。

 

「おいおい……」

「フィリア……」

「えっ?」

 

 ポカンとしてあたしを見る三人。

 

「先のことなんて何があるのか、わかったもんじゃないわ。あなたたちは、この瞬間を大事にすればいいのよ。特に、翼……、あなたの歌はそんな顔してちゃ楽しめないでしょ」

 

 あたしは翼の顔をまっすぐ見てそう言った。

 あー、らしくないことを言っちゃったわね。今夜辺り後悔しそうよ。

 

「うん、ありがとう。ライブ頑張るよ、フィリア」

 

「あたしはフィリアのそういうとこ大好きだぞ」

 

 翼はちょっとだけ明るい顔で返事をして、奏はいつもみたいに肩を組んで頭を撫でてきた。やっぱり言うんじゃなかったわ……。

 

 

「わかった。すぐに向かおう。フィリアくん、準備が終わったようだ」

 

 弦十郎が声をかけ、あたしは彼と実験場に向かうこととなる。

 

「ステージの上は任せとけ」

 

「うん」

「心配してないわ」

 

 サムズアップのポーズを決める奏にあたしたちは頷いて、実験場へと足を運んだ。

 

 今日が忘れられない日になるなんて、あたしはまだ思いもしなかった――。




ついにライブが始まる直前です。
ここから、フィリアの物語も大きく動きますので次回もよろしくお願いします!
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