【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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GX編も残り僅かとなりました。
それでは、よろしくお願いします!


世界を壊す歌と時空の神

「フィリア、お前のよく知る人物が近くに居るぞ。父娘揃ってな。さっそくだが、邪魔者を――」

 

 響と彼女の父親の洸の姿がキャロルによって映し出される。

 あの子、もう一度、父親と向き合おうとしたのね……。勇気を振り絞って……。

 

「わかってるわ。排除すればいいんでしょ?」

 

 あたしは近くに来ていた響の元に向かった。

 

 

 

 

 

「こういう映像って、どうやってテレビ局に売ればいいんだっけ?」

 

「いいかげんにしてよ、お父さん!」

 

 携帯をチフォージュ・シャトーに向けている洸に怒りをあらわにする響。

 やっぱり、こいつ殴ろうかしら?

 

「響、もうその男はダメよ。諦めなさい」

 

「フィリアちゃん! なんで空から? 居なくなったってみんな心配してたんだよ!」

 

 響はびっくりした顔であたしを見ていた。記憶が戻ったついでに、空を飛ぶ術もファウストローブを纏った状態なら使えるようになったのよね……。

 

「ごめんなさい。ちょっとだけ、用事があるのよ。で、響にお願いがあるんだけど聞いてくれる?」

 

「えっ? うん、いいけど」

 

 あたしの言葉に響は頷いた。

 

「しばらく、あたしとキャロルを放っておいて欲しいの。翼たちにもそうして貰うように言ってくれないかしら? あたしはあなたたちに怪我して欲しくないから」

 

「あははっ、何言ってるのか全然わからないよ、フィリアちゃん。だって、それじゃあフィリアちゃんが……」

 

「キャロルの味方みたい、ではなくて、あたしはキャロルの味方なの」

 

 あたしの言葉があまり理解出来ていないような響にあたしはそう告げる。

 

「あれは、チフォージュ・シャトー。アルカノイズを発展応用した世界をバラバラにする解剖機関よ……。これから、キャロルは世界の分解を開始する。あなたたちは、これを止めようと動くでしょ? それをやめて欲しいのよ」

 

 響たちは恐らく必死になってキャロルを止めようと戦うだろう。しかし、そうなると圧倒的な力をもつキャロルに彼女たちはやられてしまう。

 あたしはそうなる前に響たちには撤退してほしかった。

 

 

「フィリアちゃんが、そんなバカなこと言うなんて思ってなかった。だったら、私がフィリアちゃんを連れて帰る」

 

 響がギアペンダントを出してきた。聖詠を唱えるつもりね……。

 

「そう、残念だわ……」

 

 あたしは指から風を繰り出して響のギアペンダントを吹き飛ばした。

 

「あっ――」

 

「ギアを纏わせるわけにはいかないわ。ほら、これでわかったでしょ? 早く帰りなさい」

 

 彼方に飛んで行ったギアペンダントを見つめて、響は愕然としていた。これなら、彼女は戦えない。もう、諦めて――。

 

「嫌だ! フィリアちゃんと一緒に帰る!」

 

「うるさいわね! このバカ響!」

 

「バカはフィリアちゃんだもん!」

 

「あなたにバカって言われたくないのよ! 早く帰りなさい!」

 

 あたしは手のひらから、再び加減した風を繰り出す。

 

「危ない! 響!」

 

 そんな折に、洸が響を抱きしめて庇うようにして風を避ける。

 ふーん。少しは父親としての自覚はあるんだ……。

 

「でも、どうせまた逃げるんでしょう? たとえ、響が死ぬとしても……。あたしはあなたを許さないわ! この子、あなたの姿を見て、自分が事故から助かったことさえ呪ったのよ! この意味、わかる!?」

 

 あたしは洸に向けて手をかざした。手に炎を凝縮させながら。

 

「くっ――確かに、俺は逃げてばかりだった。娘の響は本気で勇気を振り絞って会いに来てくれたのに、それからも目を背けて……」

 

「そうよ、あなたはこれから響の父親であることも止めなさい。その方がお互いのためよ。わかったら、そこをどいてもらえる?」

 

 俯きながらも響の前から動かない洸にあたしはそう声をかける。

 

「嫌だ! どんなに、どこまで逃げても、俺はこの子の父親であることだけからは逃げられない。響! 今のうちに逃げろっ!」

 

「お父さん?」

 

「このくらい――へいき、へっちゃらだ……」

 

 必死に響を守ろうとする洸は、後ろにいる響に顔を向けて、響が口癖のようにつぶやいているセリフを言った。

 

「――っ、その言葉……。そっか、あれはお父さんが……」

 

「最後にいいところ見せたら、チャラになるなんて思わないことね!」

 

 あたしは炎纏った拳を洸に当てようと、上空から舞い降りて、彼に肉薄した。

 

 ――そして、彼の顔前でピタリと止める。

 

「ふーん、そんくらいの勇気があるなら、もうちょっと早く出せば良かったわね」

 

「フィリアちゃん……」

 

「……響、ごめんな。俺は大馬鹿者だ」

 

 洸はうなだれるようにして、響に謝罪した。

 

 

「お父さん……。――っ」

 

 響はその言葉を聞いて、一心不乱に駆け出した。飛ばされたギアペンダントの方に……。

 結局、あたしの甘さがいけなかったか。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron……」

 

 ギアペンダントを握りしめて、響はシンフォギアを身に纏う。はぁ、この子とは戦いたくなかったわ……。

 

「フィリアちゃん。やっぱり、どこに行っても優しいままだった。だから、絶対に連れて帰るね」

 

「余計なお世話よ。悪いけど、向かってくるなら手加減しないわ……」

 

  あたしは響と同じ構えをとって彼女を迎え撃つ。

 

 響の拳が、蹴りがあたしの身体を捉えようと、とんでもない速さで繰り出される。

 

「へぇ、やっぱり強いわね……」

 

「あっ、当たらない!?」

 

 彼女の繰り出す肉弾を、あたしはギリギリで躱し続ける。そりゃあ、弦十郎と組手してるからこれくらいは……。

 

 ――千鳥(チドリ)――

 

 雷撃を纏った超速の掌底を響に繰り出した。 

 

「負けるもんかぁぁぁぁぁっ!」

 

 響も負けじとギアの出力を上げて拳を繰り出す。

 

 大気を震わせる程の轟音が鳴り響き、あたしの掌底と響の拳がぶつかり合い、二人は共に吹き飛ばされる。

 デタラメな力ね……。しかも、こっちが攻勢に出た瞬間にそれに合わせるなんて、センスもずば抜けている……。   

 

 

 ――それに……。

 

 

 あたしの目の前に巨大な剣が落ちてくる。

 

 

「翼……、それにみんな揃って……」

 

 アームドギアの上に翼が……。ビルの上には他の4人の装者たち……。

 思ったよりも動きが早かったか。

 

「フィリア! お前が何を思ってキャロルに協力しているのかは知らんが! 友として、見過ごすわけにはいかん!」

 

 翼があたしの前まで飛び降りて、厳しい表情でこちらを見ている。

 

「あたしとしては、友人として怪我する前に帰って欲しいわ……」

 

 あたしは翼の言葉にそう返した。帰るはずないのはわかってたけど……。

 

「フィリア、諦めろ……。お前が連中のことを大事にしていることは分かったが、それ以上は看過できん」

 

 あたしだけでは手に余ると判断したのか、キャロルが空中から降りてきたのだ。

 

「一つだけ聞きたい! 世界を分解してその後、あなたはどうするつもりなの!?」

 

 マリアはビルから飛び降りて、あたしとキャロルの目の前に近付く。

 

「時を移動する方法を突き止め、400年の時を遡り! 父を助け出す!」

 

「時間を遡る!? そんなことが可能なの!?」

 

 マリアは思ったよりも荒唐無稽な話をされて、驚愕していた。

 

「可能だ。目の前に居るフィリアがそれを証明している。オレとフィリアは400年前に出会ったのだからな! 原因は確か、お前の妹だったか? セレナ=カデンツヴァナイヴの絶唱の影響で時空に歪みが生じ、フィリアは400年前の欧州に飛ばされたのだ」

 

 キャロルはあたしが400年前に飛ばされた話を口にした。

 

「せっ、セレナの絶唱で? 確かにあの後、フィリアも居なくなったけど……、まさか過去の世界に行っていたなんて……」

 

「嘘みたいな話だが、そんな嘘をついても何の得もない。しかし、キャロルの父とやらをフィリアがこのような事に手を貸してまで助けようとする理由がわからん」

 

 マリアと翼は時を遡ったことは意外とすんなり受け入れていた。

 

「結婚の約束をしていたのよ。キャロルの父親と」

 

「「結婚っ!?」」

 

 その場にいる全員が同時に声を上げた。そんなに驚くところ? 400年前に行ったことの方がよっぽど驚くところだと思うけど……。

 

「フィリアちゃんがキャロルちゃんのお父さんと結婚の約束……?」

 

「だけど、約束をしただけということは……」

 

 響と調が何かを察したような顔をした。

 

「ええ、キャロルの父親、イザークは村で流行っていた病を治していたんだけど……。彼が必死で人助けの為に研究した成果は奇跡で済まされて、彼は資格なき奇跡の代行者として焚刑に処せられて殺されたの。あたしたちの目の前でね……」

 

 あたしはイザークの亡くなった顛末を説明する。だから、キャロルの計画に口も出したし、この身を人形に変えた。

 

「なんつー、救えねぇ話だ……」

 

 クリスは悲しそうな顔をしてあたしを見ていた。

 

「過去に戻ってイザークを救い出す。あたしはその為にオートスコアラーになったの……」

 

 あたしはみんなに自分の過去の話を告げた。

 

 

 ――沈黙が少しの間、この場を支配する。

 

 

 そして、それを破ったのは翼だった。

 

「フィリア、お前の惚れたイザークさんとやらはいい男だったのか?」

 

「ええ、もちろん。どこまでもお人好しで……、人助けにひた向きで一生懸命だった彼をあたしは愛していたわ」

 

 どこまでも、真っ直ぐな翼の視線を見つめ返してあたしは答えた。

 

「そうか――ならばその、イザークさんの為にも私はお前たちを止める! お前が惚れるような男が世界を破壊しようなど、望むはずなかろう!」

 

 翼の言葉にみんなが頷き、戦闘態勢をとる。

 

 まったく、こんな子たちだから……、あたしも目を覚ますことが出来たのでしょうね……。

 

 ――しかし、時間は稼げた。あたしは何の意味もなく身内話をしたわけじゃない。

 

 チフォージュ・シャトーのエネルギーが充填されるのを待っていたのだ。無駄にキャロルと彼女たちが戦わないように……。

 

「もう、遅い! 今からオレたちは本懐を遂げる。どれだけ想い出を償却しようとも!」

 

 キャロルはダウルダブラを奏でてファウストローブを身に纏う。

 

 歌うつもりね……。《世界を壊す》歌を……。

 

 キャロルは世界を分解するための歌を歌い始めた――。

 

「嗚呼、終焉へ――♪ 殺戮の福音に――♪」

 

 キャロルからは信じられない程の量のフォニックゲインを放っていた。

 

 

「宇宙が――♪ ――太陽が……♪」

 

 キャロルが両手を広げて、黄金の竜巻を放つ。

 その凄まじい威力はまるで絶唱のように強力だった。いや、それをも遥かに凌駕する規格外の威力。

 

 それも……、キャロルには全くの負荷はかかっていない。

 あたしがキャロルの計画を中途半端な状態で止めなかったのは、彼女自身の強さが理由だ。

 

 この力に対抗するには、あたしもそれ相応のエネルギーが必要なのだ。

 

 響たちも思った以上のキャロルの強さにたじろいでいた……。

 

 

「愛など――♪ 愛など――♪」

 

 キャロルはニヤリと笑う。いよいよ、あれが発動する……。

 キャロルの歌に共振してチフォージュ・シャトーのエネルギーが高まり――地表へと照射された――。

 

 レイラインマップに沿って、世界中をチフォージュ・シャトーから照射されたエネルギーが覆う。

 

 

 

「フィリア! お前もそろそろ猿芝居を止めたらどうだ!?」

 

「お前がテメーの都合で世界を壊そうとするはずねぇ! 性格が悪ぃ、お前のことだ。何か手があるんだろ!」

 

 翼とクリスがあたしの元に近付き、真剣な顔でそう言った。

 はぁ、あなたたちには敵わないわね……。なんで、無条件にあたしのことを信じられるのよ……。

 

「猿芝居は余計よ。言っとくけど、キャロルを守りたいって気持ちは本当だから……」

 

 このタイミングであたしも切り札を発動する……。

 

「コード、クロノスモード……」

 

 あたしの髪色は銀から金に変わり、黄金の光が身体を覆った。

 

「フィリア! 何をしている!? まだ、世界の分解は終わってないぞ!」

 

 キャロルはギロリとあたしを睨みつけた。計画ではこのモードは万象黙示録が完成後に発動させることになっていたからだ。

 

「世界の分解して、すべてを知れなんて彼は望んでいないわ……。あたしは、彼と同じくらいお人好しで人助けに一生懸命になっていた子を知っている! だからこそ、わかった。彼の命題の答えはそんなものじゃない!」

 

 あたしはキャロルに本心を伝える。言葉でわかってもらえるはずがないことは理解できていたけど……。

 

「まさか、オレを裏切る気か! この状況で……!」

 

「いいえ、あなたを救う! それが義理でもあなたの母親になるって決めたあたしの責任だから!」

 

「母親気取りは止めろと言ったはずだ! 世界の分解はもう始まった! 何人たりとも止められやしない!」

 

 キャロルは怒りの形相を浮かべて、あたしにそう言い放った。

 

「それはどうかしら? 忘れたの? あたしの身体は大量のエネルギーを取り込む依代になるために創られているの。つまり、このシャトーから放たれたエネルギーも……」

 

 あたしはチフォージュ・シャトーから放出された分解の為のエネルギーを吸収し始めた。

 本来、糖の分解で蓄えられるエネルギーの限界値はクロノスモード時に限って大幅に増幅される。

 もっとも、このモードを維持するのにも規格外のエネルギーを消費することになるが……。

 

 世界の分解を始める前にチフォージュ・シャトーの全エネルギーをこの身に集める――。

 

 そして、既に壊されてしまった部分は――。

 

遡行する時間(ループ・ザ・ワールド)……」

 

 あたしはチフォージュ・シャトーによって破壊された部分の時を戻し、元通りに復元した。

 

「壊れされた部分が巻き戻って元に戻ったデス……」

 

「リア姉は本当に時間を操っている……」

 

 切歌と調は目の前で壊されたモノが修復されたことに感嘆していた。

 

「バカな! 確かに、チフォージュ・シャトーからエネルギーを受け取る機能は取り付けたが、一度放出されたエネルギーを取り込めるなど――」

 

「出来るのよ、呪われた旋律を刻み込んだイグナイトモジュールには僅かな量だけどミラージュクイーンでコーティングされた部分があったの。呪われた旋律を元に増幅されたエネルギーをこのファウストローブに共鳴させるために……。以前にフィアナから受けた制御光線に対処するための実験用に作った、特殊な溶接剤が役に立ったわ」

 

 あたしは制御光線に対抗するための手段を考えるために、実験用にミラージュクイーンを溶かして希釈したスプレータイプの溶接剤を作っていた。 

 イグナイトモジュールの製造時にはこれを時折使っていたのだ。

 

 その結果、オートスコアラーたちに刻まれた呪われた旋律にミラージュクイーンの力も組み込まれ、あたしのファウストローブに共鳴して、この身にエネルギーを集中させることが可能となったのだ。

 

「もう、やめましょう。チフォージュ・シャトーのエネルギーの大半はあたしの中。本当はあなただってわかってるはずよ。イザークがこんなことを望んでないことくらい」

 

 あたしはキャロルに戦いをやめるように呼びかけた。

 

「そんなのわかっている! だけど!  殺されたパパの無念をどう晴らせばいい!? まだだっ! まだ終わっていない! フィリアの中にエネルギーがあるのなら、それを奪い返すまでだ!」

 

 キャロルにはあたしの声は届かなかった。そして、あたしに対して殺気を漲らせる。

 

 翼たちはあたしの前に立って身構える。イグナイトモジュールの発動の準備をして……。

 

「お願い! 今回だけは手を出さないで! この子はあたしの娘も同然――あたしが決着をつける!」

 

 あたしはみんなを手で制して、前に出る。

 

「フィリアちゃん……、キャロルちゃんに手を差し伸べるんだね」

 

「ええ、あなたのバカが感染ったみたい」

 

「ふぇぇっ!? フィリアちゃんはこんな時にも辛辣だー」

 

 あたしの言葉で相変わらず大袈裟なリアクションをした。

 

「褒めてるのよ。一応……。響、あなたのおかげであたしは――変わることが出来た。今だから言うけど、あたしはあなたが好きみたい」

 

「えへへ、フィリアちゃんに告白されちゃった。あっ! でも、私には未来が……」

 

「バカ、冗談よ……」

 

 顔を真っ赤にしている響を横目に、あたしは空中に浮き上がりキャロルの元に向かった。

 

 

「フィリア、お前だけはオレを理解していると思っていたが……、残念だ……」

 

「理解しているわ。あなたはとても優しくて、天真爛漫で、賢い子よ。だからこそ、あなたと共にイザークの真意を突き止めたい」

 

 あたしの人生に、もし意味があるのなら――それは自分の愛したヒトの遺した忘れ形見を救うことなのかもしれない。

 

 今、この瞬間だけに、あたしは自分の全てを懸けてもいいと、本気で思っていた――。




このGX編だけはフィリアの人生の集大成とも言えるエピソードなので、本当は原作もリスペクトしたいのですが、彼女が決着をつけるという形になりそうです。
4期と5期は多分、もう少し控え目にすると思いますのでご容赦ください。
次回もよろしくお願いします!

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