【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
フィリアとキャロルの戦いに決着がつきます。
それではよろしくお願いします!
「クロノスモード……、エネルギーは十分でも所詮は未完成。万象黙示録の完成を待たずして解き放ったところで時空の神と呼ぶには程遠い存在よ」
あたしを作ったキャロルはもちろんこのモードについても知っている。
彼女が言ったとおり、未完成品の今のあたしでは出来ることは少なかった。
「だとしても! あたしはあなたを止めて、前を向いてもらうわ! あたしにだって出来た。何でもできる優秀なあなたに出来ないはずがないじゃない!」
キャロルの悲しみや怒りは計り知れない。失ったモノの大きさも、やり場のない怒りもわかっている。
彼女はただ、イザークの無念を何かにぶつけようとしているだけ――。
「オレを止めるだと!? お前に錬金術を教えたのは誰だ!? その身体を作ったのは誰だ!? 一人では弱くて何もできなかったお前に何ができる!?」
キャロルは尋常じゃない量のフォニックゲインを込めた黄金の竜巻を放った。
「あなたと手を繋げる――あの日のようにっ!」
――
あたしは瞳を閉じて視覚からの情報を遮断する。
この瞬間のみ――あたしは宇宙の時間の概念から解放され独立することが出来る。
要するに、時間を止めたのだ。体感時間にして0.5秒という極めて短い間のみで、連続して使うには10秒以上のインターバルが必要となるが……。
それでも相手の攻撃を躱して、接近することくらいはできる。
あたしはキャロルの眼前まで迫り目を開いた。
「――っ!?」
「キャロル、少しだけ大人しくしてもらうわ」
あたしはキャロルの腹に拳をぶつけようとした。
「その中途半端な優しさが、お前の弱さだ! フィリア! お前が時を止められることを知らぬわけなかろう! その上、加減までしおって!」
拳はキャロルに届かなかった。何重にも張り巡らされている糸が彼女の体を守っていたからだ。
「――お前をバラバラにして、核を回収し、エネルギーを返してもらうぞ! 知っているだろう? オレの歌はただ一人で70億の絶唱のフォニックゲインを凌駕する!」
キャロルは至近距離から、絶唱のようなフォニックゲインを圧縮させたエネルギーの塊を放出した。
確かにこれは――いつか、響たちがネフィリムに与えた強力な一撃を超えているかもしれない。
「もちろんよ。あなたこそ、知ってるでしょう? あたしには世界を破壊するだけのエネルギーが内在するってこと――」
――
あたしは錬成陣を展開させて、すべてを分解するエネルギーを高濃度に圧縮させた一撃を放出する。
巨大なエネルギー同士のぶつかり合いは周囲の空間を歪めて、恒星のような輝きを生じさせ、互いを消滅させた。
「確かに、このモードは未完成。時間を操れると言っても大したことは出来ない。でも、あなたの力の大きさには対抗できるのよ」
「なるほど、オレを止めると大言壮語を吐くだけはある。だからこそ、憎たらしい!」
キャロルは歌いながら再びあたしを攻撃してきた。それをあたしは尽く相殺する。
「思い出して……、あの人は、イザークはあなたを愛していた――そしてこの世界も愛していたのよ!」
「はぁ……、はぁ……、煩い! お前とて、一度は世界を壊すことに賛成したではないか! 日和って逃げ出した臆病者がぁぁぁぁっ!」
キャロルは束ねた糸で織り成した緑色の獣のようなモノを作り出した。
“碧の獅子機って言ったところかしら。錬金術の究極系とも言えるわね。大丈夫? あの子、恐らくは自らの想い出のほとんどをアレに費やしてるわよ。怒らせすぎたんじゃない?”
“かもしれないわね……。まったく、煽ることしか出来なかったわ”
“でも、やるんでしょ。私はリスクが高いと思うけど”
“ええ、でもこれで駄目なら諦めもつくわ。そのときはあたしもあの子と一緒に――”
“まったく、あなたのせいで、私なんて愛する人と結ばれないまま孫を持つ身になっちゃったじゃない。――はぁ、わかったわ。可愛い孫の為に力を貸してあげるわよ”
フィーネがそう言うと、頭の中に錬成式が流れ込んできた――これはアルカノイズのレシピとそして……。
“フィリアちゃんたちが戦ってるとき、暇だったからアルカノイズについて自分なりに作り方を考えてみたのよ。で、フィリアちゃんの体内にはその分解エネルギーの元がたっぷりあるから……、作り方さえ分かれば擬似的なソロモンの杖になるってわけ。再生する身体はネフィシュタンの鎧の代わりになるとして――”
“はぁ、趣味が悪いけど、アレを作り出すってわけね……”
あたしがキャロルに対抗して身に纏ったのは黙示録の赤き竜――いや、金色だから、黙示録の黄金竜とでも言えばいいのだろうか――?
空中で碧色の獅子と黄金の竜が対峙することとなった。
獅子の口から炎が吐き出され、竜の口からビームが放出される。
まるでこの世の終わりの如き閃熱が迸り、周囲の建物は瓦礫の山となった……。これは、弦十郎の説教だけじゃ済まなそうだわ……。
“出力が足りない! 不完全なまま発動させたから――”
“いいえ、出力は足りているわ。でも、あなたが周りを庇うようにして、キャロルの攻撃に合わせて技を繰り出していることが問題なの”
“当たり前でしょう。XDモードでもない響たちがあんな技を食らったらひとたまりもないわ”
“フィリアちゃんのエネルギー、少しだけ分けてもらうわ。これなら一発くらい防いであげられる。だから、次で決めなさい。じゃないと危険よ、あなたもあの子も……”
フィーネはそう言うと、蜂の巣状のバリアを無数に展開させた。あたしだけでなく、響たちをも守るように。
そうこうしているうちに、キャロルから猛烈な炎が再び吐き出された。
フィーネの展開したバリアは次々と破壊されていく――。
“たかだか400年ぽっちの想い出で私と張り合おうなんて――思わないことねっ!”
しかし、このフィーネも魂のみの存在になったとはいえ、キャロルを上回る化物。
バリアは次々と増殖されていき、ついにキャロルの炎を防ぎきったのだ。
「フィーネ……、感謝するわ……」
黙示録の黄金竜からすべてを破滅させる紫色の光線が吐き出される――。
碧の獅子機の装甲は破壊されて、キャロルの姿が現れた。
今だ! あたしは黙示録の黄金竜を解除してキャロルの元に突撃した。
「想い出など要らぬ! すべて燃やし尽くして! 力に変えてやる――!」
キャロルは自身の想い出をすべて燃やし尽くした一撃をあたしに放った。まさか――まだ力が残っていたなんて――。
チフォージュ・シャトーのエネルギーも枯渇してるけど――仕方ないわ……。
――
あたしは残るエネルギーを燃焼して、キャロルの一撃を相殺する。
しかし、力を出し尽くしたキャロルの碧の獅子機の行き場を無くしたエネルギーが暴走して大爆発を起こそうとしていた。
――
時間を止めて急加速したあたしは、キャロルの元に辿りつき、彼女を抱きしめて、その場から猛スピードで退避する――。
「ううっ……」
キャロルは元の少女の姿に戻り、すべての記憶を失って虚ろな目をしていた……。
あなたをこのまま逝かせない――。
――ループ・ザ・ワールド――
あたしは自分に残されたすべてのエネルギーを使って、この戦いでキャロルの脳内で焼却された想い出を復元した。イザークの想いが伝わることを祈って――。
そして、そのままあたしは地面に着地する。キャロルを抱きしめながら……。
「フィリア――お前は一体何のつもりだ!? なぜ、オレが消し去った邪魔な想い出を元に戻した!? お前はオレの敵じゃないのか!? オレのことなど、お前は――」
キャロルは信じられないという表情であたしを振り払い、睨みつけてきた。
しかし、その顔は次第に泣きそうな顔に変わっていた。
「愛してるに決まってるでしょ! そりゃあ、イザークほどじゃないかもしれないけど、あなたはあたしにとってかけがえのない大切な娘なんだから!」
「フィリア……」
あたしはキャロルに気持ちを伝えた。彼女は叱られた子供の様に俯いて小さく震えていた。
「あなたと共に暮らしていた時の想い出を邪魔とは言わせないわ。キャロル……、イザークはあのとき何と言ってたの? 本当は気が付いているんじゃないの?」
あたしはゆっくりとキャロルに問いかけた。今の彼女ならあるいは彼の真意に気付いているかもしれないと思ったからだ。
「――っ。世界を知って……、人と人が分かり合うためにはどうすれば良いか――この命題の答えを――。ううっ……、パパ……、なんでこんな残酷な命題を……」
「賢いキャロルなら、わかるでしょ? そのためにどうすれば良いか?」
キャロルの目から戦意は消え去り、涙が溢れていた。
張り詰めていたものが弾けたように……。
「手を差し伸べて、手を取り合う……。無理だ――もう今さらオレは……、誰とも……、分り合うなど――」
「絶対にそれはない。あたしはあなたが例え地獄の果てに行ってしまっても、手を伸ばし続ける。そんなバカな子を知っているから、あたしもあの子のように、手を差し伸べたい」
あたしはキャロルに手を差し出した。小さなことかもしれないけど……、これがこの子ために出来る最初の一歩になると思ったからだ。
「フィリア……、なんで、パパがお前に結婚を申し込んだのか……、わかった気がする……」
「じゃあ今度、プロポーズされたときの話をしてあげるわ」
「――そうだな。それくらいは……」
キャロルがあたしの差し出した手に、手を伸ばしたその時である。
空中に浮いていたチフォージュ・シャトーが落下してきた。
「あっ――チフォージュ・シャトーのエネルギーを全部使っちゃったみたい。だから、あたしもエネルギーがもう切れて……」
「使っちゃったみたい、ではない! このままでは、オレとお前は――。おいっ、フィリア! なぜ、そこで倒れる!?」
あたしはクロノスモードによる大量のエネルギーの消費によって意識を失ってしまった……。
首都庁はチフォージュ・シャトーに押し潰されて、周囲を巻き込む大爆発が起こった――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この大馬鹿者がっ――!」
弦十郎の声が司令室で木霊する。既に小一時間あたしは弦十郎から説教を受けていた。
いや、弦十郎だけではない。翼を筆頭にシンフォギア装者、それに加えて未来やエルフナインにも大いに叱られる結果になってしまった。
「突然、どこかに行ったかと思うと、怪獣大戦争みたいなことを始めやがって!」
「空中からチフォージュ・シャトーが落下したときはゾッとしたわよ」
「お前には、計画性というものが無いのか? そもそもだなぁ――」
特にクリスとマリアと翼からの叱責は永遠に感じるくらい長かった。
まぁ、今回のことに関しては全面的にあたしが悪いから文句は一切ないけど……。
「――キャロルがフィリアさんを助け出してなかったら、今ごろ……」
エルフナインによればチフォージュ・シャトーの落下時にエネルギー切れを起こして意識を失っていたあたしをキャロルが救ってくれたらしい。
彼女はあたしを安全な場所に置いたあと、エルフナインに念話で話しかけて、あたしの回収を促したのだとか。
「もう一度、世界を回ってパパの言っていたことを考え直すって、キャロルは最後にそう言い残しました」
「そう。じゃあまたいつか会える日が来るかもしれないわね」
あたしはエルフナインの言葉を聞いてそう答えた。
「かもしれない、じゃないよ。フィリアちゃん。きっとまた会える。だって、フィリアちゃんの差し伸べた手をキャロルちゃんは掴んでくれたんだから」
「響……」
あたしは響が確信をもってそう言ってくれたことが嬉しかった。
そうね、キャロルはきっといつか会いに来てくれる。
「その時はリア姉はお母さんになるデスかぁ?」
切歌がハッとした顔をしてそう言った。そうしたい気持ちはあるけど、それはキャロル次第だと思うの。
「じゃあ、風鳴司令はお祖父ちゃん?」
「おっ、俺はまだ結婚もしてないのにか? うーむ……」
調の言葉に弦十郎は腕を組んで複雑な顔をしていた。
「とっとにかくだ。まぁ、フィリアくんのおかげで、世界の分解は防げた。被害は小さくは無かったが、最悪のシナリオは避けられた。よって――今回の独断専行は謹慎一週間ってところで済ませてやろう」
弦十郎から下された裁定は想定していたよりもずーっと甘かった。
正直、クビになるかと思ってたけど……。
「良かったね、フィリアちゃん。夏休みはいっぱい遊べるよ!」
「夏休み? ああ、そんなのあったわね。忘れてたわ」
響はあたしに笑顔を向けてそう言ったので、あたしはもう夏休み期間に入ることを思い出した。
「あの、夏休みって何ですか?」
「楽しいんだって。夏休み」
「私たちも初めてデス!」
エルフナインの素朴な疑問に調と切歌がそう答えた。この子たちもよく笑うようになった。
「早起きしなくていいし、夜更かしもし放題なんだよ」
ドヤ顔で堕落した生活スタイルを響は三人に教える。切歌と調には響だけは手本にしないように言い聞かせなくては……。
「それは響のライフスタイル……」
「あんま変なこと吹き込むんじゃねぇぞ」
見かねて、未来とクリスもツッコミを入れた。
「夏休みはね、商店街でお祭りもあるんだ! 焼きそば、綿あめ、たこ焼き、焼きイカ!」
「食べ物以外にもあるでしょ。ホントにそういうところもブレないわね」
食い意地の塊みたいな発言をする響は何だか楽しそうだった。
「何だかとても楽しそうです」
「だったら、エルフナインちゃんも一緒に行こっ! みんなで一緒に遊びに行こう! よーしお祭りの日の前日は食べる量減らして、お腹を目一杯減らすぞー」
エルフナインと祭りに行く約束をして、響はまた食べ物の話をする。
「ふふっ、響ったら、ホントに食べることが好きなんだから」
「ん? フィリア、今笑ったのか?」
翼が驚いた顔をして、あたしの顔をじっと見た。
「えっと、そうだっけ? よくわからないけど」
「確かに笑ったぞ。立花の食い意地の悪さが、決して笑わなかったフィリアを笑わせたのか」
人形になってから、確かに声に出して笑ったことは無かったかもしれない。この身になってずっと一緒だった翼は少しだけ涙ぐんで喜んでいた。
「翼さん、それじゃあ、私がすっごく食いしん坊みたいじゃないですかー」
「事実じゃない? 響の食欲って、ものすごいもん」
「えー、そりゃあないよー。未来ぅ」
響はそんな翼に不満を言って、未来はジト目で響にツッコミを入れる。
なんだか、この感じも久しぶりね……。
キャロル、あなたもいつか、こんな日常を幸せに感じられる様になってくれるかしら?
響たちを見て無邪気に笑っているエルフナインの顔を見て、遠い昔の彼女の笑顔を思い出したあたしはキャロルが幸せな日常に戻れる日が来ることを願わずにはいられなかった。
「行こっ! フィリアちゃんも! ほら、早く!」
「ちょっと、あたしは謹慎中!」
「そんなの明日からで良いよな? おっさん!」
「まったく。夜には帰ってくるんだぞ!」
響に手を引かれて、クリスに背中を押されあたしは外に連れ出される。平和な日常が再び戻ってきた――。
―― GX編完結――
すみません。装者置いてきぼりのオリ主無双みたいなことは、本当はしたくなかったのですが、話の流れ的にフィリアに決着をつけて欲しかったのでこういった形になりました。
感想欄で返事を出したときは普通に全員で戦う予定でしたので、マリアと翼の合体技も出すつもりでしたのですが……、それも出せず終いで申し訳ありません。
言い訳はこの辺にしまして、GX編はいかがでしたでしょうか?
ずーっと引っ張ってきたフィリアの過去の話を明らかにしましたので、4期と5期はこの設定をどう活かすか、というところになると思います。
また、AXZ編を開始する前に絶唱しないシンフォギアを投稿致しますので、こちらの方も是非ともご覧になってください。