【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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この小説もついに後半戦、第4期であるAXZ編に突入しました。
神の力を手に入れんとするパヴァリア光明結社との戦いがスタートします。
それでは、よろしくお願いします!


AXZ編
束の間の平穏と暗躍する組織


 魔法少女事変――キャロルが大立ち回りをして、世界を分解しようとしたあの事件はそう呼ばれるようになっていた。

 それから、数週間の時が過ぎて、あたしたちは夏休みという平穏な時間を過ごしていた。

 

 今日はあたしたちが通うリディアン音楽院の登校日である。

 

「ふひー、眠いよぉ……。今ならアスファルトの上でも熟睡出来ちゃう……」

 

 響は眠たい目を擦りながら、通学路をフラフラと歩く。

 まったく、だらしないわね……。

 

「確かに、あたしは手伝うって言ったわ。だからって、まさか一つも手を付けないとは思ってなかったわよ」

 

 そう、あたしは昨日から日を跨いで今日まで丸一日かけて響の宿題を手伝っていた。

 響は清々しいくらい何もしておらず、あたしと未来の二人がかりで彼女を助け、ようやく15分前にギリギリ終了することが出来たのだ。

 

「まさか、文字を書くのは全部私になるなんて思ってなかったんだよ〜」

 

「私が代わりに書いたら、先生にバレちゃうよ。私の字だって」

 

 ひたすら課題の答えを書く作業をしていたことに対して愚痴をこぼす響に、未来はツッコミを入れる。

 

「そもそも、あなたの下手くそな文字は、あたしは左手で書いても真似できないから。手伝ってもらったことに感謝なさい」

 

 あたしはフラフラと歩く響を支えながら、そう言った。

 

「うん、ありがとう。フィリアちゃん。それに未来も……。大好きだよ」

 

 響はそう言いながら、あたしと未来を抱き締めてきた。

 

「ちょっと、やめなさい。人が見てるでしょ。未来も呆けてないで引き剥がしなさいよ」

 

 響に抱きしめられてだらしない顔をしている未来に声をかけたが届かず、あたしたちは公衆の面前で女三人が抱き合うという異様な雰囲気を醸し出していた。

 

「お前は、人目をちったぁ気にしろ!」

 

 聞き慣れた声と共に、響は頭を叩かれる。

 クリスが見かねて、声をかけてくれたのだ。あー助かった。

 

「痛いよ、クリスちゃん」

 

「うるせぇ! みんな見てっぞ、道の真ん中でバカやってるって!」

 

 頭を擦りながら抗議する響に、クリスは極めて常識的な反論をする。

 最近思ったが、この子が一番真面目なのかもしれない。

 

「先輩たちは朝から騒がしいデスなー」

 

「クリス先輩の怒鳴り声もかなり遠くまで響いてた」

 

 切歌と調は手を繋ぎながら、あたしたちに声をかけてきた。この二人はナチュラルに仲の良さを全面的にアピールしてるわね。

 

「おっはよー、切歌ちゃん、調ちゃん! 今日も二人とも仲がいいねー」

 

 さっきまで眠たい目をしていた響がようやく活動を開始したのか元気よく二人に挨拶をした。

 

「いやー、マジでハンパなく参っちゃったよー。宿題が全然終わらなくてさー」

 

 さらに立ち止まって世間話まで始めてしまうものだから、彼女には困ったものである。

 

 そろそろ、登校時間ギリギリだというのに。

 

「切歌も調も、律儀に響に付き合わなくて良いから。遅刻しちゃうわよ」

 

「オメーは、喋ってないで足を進めろ! バカを後輩に感染すな!」

 

 あたしが切歌と調に声をかけて、クリスが響の背中を押して歩かせる。

 

「もう、響ったら。遅刻したらホントに洒落にならないよ」

 

「わわっ! 未来ぅ、そんなに力を入れると転んじゃうよー」

 

 未来に手を引かれて、響は引きずられるようにして学校に向かって行った。

 

「あたしらも行こーぜ。まったく、朝から騒がしい」

 

「ふふっ、そういうあなたは朝から随分と楽しそうな顔をするようになったわね」

 

「お前ほどじゃねぇーよ」

 

 クリスとあたしはそのまま一緒に教室まで歩いて行った。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「あーっ、よーやくかったりぃ話が終わったか」

 

 登校日は午前中で終了した。三年生のあたしたちは主に進路についての話だったが……。

 

「クリスは大学に進学するのね。推薦の資料も貰ってたし」

 

「一応なー。まっ、何がしたいってわけじゃねーんだけどよ」

 

 あたしは後ろの席に座っているクリスに話しかける。彼女は成績優秀だからきっと推薦入試で簡単に大学に通ってしまうだろう。

 

「そういうお前は進学しねーんだな」

 

「そもそも、ここに通うのだって翼の為だったし。今さらモラトリアムを謳歌しても仕方ないわよ。S.O.N.G.でしばらくは異端技術の研究者をやるつもり」

 

 実際、あたしに出来ることって言ったら研究くらいだ。フィーネの知識とキャロルから教えてもらった錬金術の知識、これらを役立てるには研究者として精進するのが一番だろう。

 

「確かに、お前くらいの知識があるんだったら、大学なんて行っても意味ねーよな。まぁ、進路の話はまた今度にして、とりあえず、昼飯でも食いに行こうぜ」

 

「いいわよ。どこ行く?」

 

「近くのファミレスで良いんじゃねーの」

 

 あたしとクリスは帰り支度を済ませて立ち上がり教室を出ていった。そして、二人でよく立ち寄るファミレスへと向かう。

 

 

 

 

「ほらよ、いつものメロンソーダだ。お前ってガキっぽいもんが好きだよなー」

 

「別に良いじゃない。だって美味しいんだもん」

 

「だもん、じゃねーよ。いい歳して可愛い子ぶりやがって」

 

 注文を済ませて、クリスがドリンクバーからジュースを持ってくる。

 最近、何にするか聞かれないのは、あたしがこればかり飲んでいるからだろう。

 

「――なんだかなぁ」

 

「ん? どうかしたの? 難しい顔して」

 

 クリスはドリンクに口を付けて、ふと、言葉を漏らした。

 

「ちょっと前まで学校に通うなんざ考えても居なかったのに、今じゃ進学先まで考えてやがる。不思議なもんだと思ってさ」

 

 クリスはあたしたちと出会う前まで酷い扱いを受けていた。

 ウチのアホな母親もそうだが、特にバルベルデ共和国での彼女の幼少期はあたしの人生が可愛く見えるくらい悲惨なものだったのは容易に想像がつく。もちろん、深くは聞いてはいないが……。

 

 

「別に不思議じゃないわよ。あなたが最後に心から望んだから、あたしもあの子たちもあなたと手を取り合うことが出来たの」

 

 あたしはクリスにそう返した。あの日、クリスが友達になろうって言ってくれたことをあたしは忘れないだろう。

 

「あたしはあなたとこうやって友達になれて良かったわ」

 

「なっ、臭ぇこと言ってんじゃねぇよ。恥ずかしいだろーが」

 

 あたしが素直な気持ちを伝えると、クリスは顔を赤くしてそっぽを向いた。これじゃ、素直になり損じゃない。

 

 

 

「あたしだって、お前には――」

 

 少し間をおいて、クリスが口を開いたその時である。あたしとクリスの通信機が同時に鳴り始めた。

 

 どうやら、何か良くないことが起きたみたいね。

 

 あたしとクリスは顔を見合わせて頷き、通信に出た。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「遅くなりました!」

 

 呼び出しをくらったあたしたちは響、切歌、調と合流してS.O.N.G.の司令室へ入った。

 

「揃ったな。さっそくブリーフィングを始めるぞ」

 

 弦十郎の先にあるモニターには緒川と翼、そしてマリアが映っていた。ロンドンで何かあったのかしら?

 

「先輩!?」

 

「マリア……。そっちで何かあったの?」

 

 クリスと調がモニターに反応する。

 

『フィリアには話したことだけど、翼のパパさんからの特命でね、S.O.N.G.のエージェントとして魔法少女事変のバックグラウンドを探っていたの』

 

 確かにマリアはエージェントとして、魔法少女事変の裏側、つまり暗躍していたパヴァリア光明結社について調べていた。

 組織に短い期間とはいえ所属していたあたしはマリアからよく組織について聞かれていた。あまり役には立たなかったみたいだけど……。

 

『私も知らされていなかったので、フィリアがロンドンに来たときまで、てっきり寂しくなったマリアが勝手に英国までついてきたとばかり……』

 

『だから! そんなわけないでしょ!』

 

 翼の天然に律儀にツッコミを入れるマリア。

 翼のこういうところに可愛らしさを感じるのはあたしだけだろうか?

 

『マリアさんの捜査で一つの組織の名が浮上してきました。それがパヴァリア光明結社です』

 

「チフォージュ・シャトーの建造にあたり、キャロルに支援していた組織だったようです。裏歴史に暗躍し、一部には今の欧州を暗黒大陸とまで言わしめる要因とも囁かれています」

 

 緒川とエルフナインがパヴァリアの名前を出す。自分で言うのもアレだが、よくそんな組織に1年以上も潜入していたと思う。

 

「あのマーク! 見たことあるデスよ!」

 

「確か、あれって……」

 

『そうね……、マムやドクターと通じ、F.I.S.を武装蜂起させた謎の組織……。私たちにとっても向き合い続けなければならない闇の奥底だわ』

 

 切歌と調がパヴァリアのエンブレムに反応すると、マリアがF.I.S.の蜂起のきっかけとなった過去を話す。こう考えると連中は手広く陰謀をコントロールしていると言ってもいい。

 あたしも少しの間だったが、連中のやり口はよく理解したつもりだ。

 

 今、考えると、あたしやキャロルはパヴァリア光明結社の手の上で踊らされていたのかもしれない。

 

 まぁ、あたしは研究資料を持っていったり、冷遇されていたとはいえ、研究者のゲイルを連れ出したりしているから、それなりに恨みを買っているかもしれないが……。

 

「フィリアくん、君は短期間とはいえ、パヴァリア光明結社に潜入していたと聞いたが……」

 

 弦十郎と緒川、そしてマリアと翼にはあたしがパヴァリア光明結社に潜入していた過去のことを話している。

 魔法少女事変やフロンティア事変について調査するだろうことがわかっていたからだ。

 

「ええ、1年ちょっとだけ、局長の秘書をやっていたわ」

 

 あたしはちょうど良い機会だったので、みんなにキャロルのところからパヴァリア光明結社に潜入していた話をした。

 

「お前、大丈夫なのかよ? そんなやべぇ、組織に関わって……」

 

「さぁ、今のところは連中から何のアクションも無いし、あたしも特に連中に不利益を与えてないから大丈夫なんじゃないの?」

 

 クリスの言葉にあたしはそう返した。実際は粛清される対象にされているかもしれないが……。

 

「連中の目的は神の力を手に入れること。この目的が数年でブレていないのであれば、フロンティア事変も魔法少女事変もそのために連中が必要だから起こした、と考えるのが自然ね」

 

 あたしはパヴァリア光明結社が二つの陰謀に関わっていた理由についての考察を話した。

 

『神の力ですか……。でしたら、これもそれに関わっているのかもしれません。マリアさんからの情報を元に調査部でも動いてみたところ、このような映像を入手しました』

 

「「アルカノイズ!」」

 

 緒川がモニターを切り替えると、響たちは一斉にそう声を上げた。

 

 モニターにアルカノイズが映し出されたからである。

 

 

『撮影されたのは政情不安な南米の軍事政権国家――』

 

 緒川の言葉から、さらに画面が切り替わり、軍服を着た男の肖像画が映る。

 

「バルベルデかよ!」

 

 クリスは目を見開いて声を荒げた。まさかここにきてバルベルデとは……。

 

 待って、バルベルデって確か……。

 あたしはパヴァリアに居たころ、サンジェルマンという幹部に頼まれた仕事のことを思い出した。

 

「装者たちは現地合流後、作戦行動に移ってもらう。忙しくなるぞ!」

 

 弦十郎はそう締めくくり。あたしたちは作戦の準備に取り掛かる。

 あたしの仮定が正しいのなら、連中の目的は間違いなく()()だ。

 

 あたしはそのことを弦十郎に伝えることにした――。

 

 バルベルデ共和国――南米の軍事国家にてあたしたちの新たな戦いが始まった。

 

 




今回は日常から有事への移り変わりという感じの回でした。
GX編ではクリスとフィリアが同じクラスという設定を活かせませんでしたので、普段の友達として付き合ってるシーンを入れてみました。
次回もよろしくお願いします。
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