【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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原作の一話の終わりくらいまでです。
それではよろしくお願いします!


バルベルデ地獄変

「クリス、大丈夫? さっきから顔色が悪いわよ」

 

 バルベルデ共和国に向かう道中、あたしは深刻そうな表情をしているクリスに話かけた。

 

「ん? なんでもねぇよ……。――って、お前に言ってもしゃーないか。まぁ、色々とあった国だからな。胸がざわついちまうんだ」 

 

 クリスはやはりバルベルデ共和国での事を思い出していたみたいだ。

 この子にとって痛い思いをした国に行くのはかなり酷なことだと思っている。

 

「戦力的にもこちらは十分。もしも出撃が無理なら――」

 

「心配ねぇ! 心配が過ぎるぜフィリア。あたしはお前が思ってるほど、弱くない……」

 

 あたしが出撃を見合わせるように弦十郎に進言してもよいと、言おうとすると、クリスは首を横に振ってそれを止めた。

 

「でも、ありがとな。気持ちだけ貰っとく」

 

「何が気持ちだけ貰っとくよ。痩せ我慢してたら、今度は押し付けてやるんだから」

 

 あたしはクリスの胸をポンと拳で叩いて、立ち去ろうとした。

 

「お前、あのバカに影響され過ぎだぞ」

 

「それは、なんか嫌ね」

 

 背を向けると、呆れた口調でクリスがそんなことを言う。まったくもって遺憾である。

 私はやりかけの研究を済ませるために研究室に向かった。

 

 

 

「やはり上手くいかないものね……。LiNKERの持続時間の上昇をマリアに頼まれたけど……」

 

「無理に持続時間を上げるとバックファイアや体内の汚染が急激に大きくなってしまいます。やはり、この時間が限界なのでしょうか?」

 

 あたしとエルフナインは試験管とにらめっこしながら、どうにかならないものかと思案していた。

 

「フィリアー。ここに居たのね。例の新型LiNKERの開発は進んでるかしら?」

 

 マリアが研究室に入ってきて声をかけてきた。

 

「マリアさん……、すみません。ボクが至らないばかりに……。ぐすっ……」

 

「ごっごめんさない。エルフナイン。あなたが頑張っていることはわかっているわ。プレッシャーをかけるつもりはなかったの」

 

 泣きそうな顔をしているエルフナインにマリアは慌ててフォローする。

 

「悪いわね、マリア。今まで、LiNKERはあなたたちの体への負担をいかに軽減するかに重きを置いて改良していたから……、持続時間については二の次にしていたのよ」

 

 あたしはマリアに研究が遅れていることの言い訳をした。実際、LiNKERの持続時間よりマリアたちの体の方が大事だから、その点を軽視することは絶対に出来ない。

 

「そうよね。切歌や調だって使うんだから、私も配慮が足りなかったわ。でも、お願い。時限式で戦う歯がゆさも、わかって欲しい」

 

 マリアは切実そうな表情でそう言った。

 はぁ、そう言うとは思ってたわ……。

 

「――仕方ないわね。未完成品だけど、このLiNKERを持っていきなさい」

 

 あたしは赤色のLiNKERをマリアに渡す。

 

「フィリアさん、それはまだ……!」

 

「こっこれは何?」

 

 エルフナインは顔を青くして、マリアは不思議そうな顔で赤いLiNKERを見る。

 

「この《Type:R》は従来のLiNKERの3倍の持続時間を可能する上に、適合係数の上昇率も格段にアップしている」

 

「何よ、フィリアもエルフナインも人が悪いわね。凄いものを作ってるじゃない」

 

 あたしの言葉にマリアは表情を緩めて明るい声を出した。

 

「いえ、このLiNKERは未完成品です。これを使えば、おそらくその後の体内の汚染やバックファイアの大きさも従来の比じゃないほどの大きさになるはずです」

 

「だから、出来るなら使わないで。ただ、命の危険にさらされる絶体絶命の場面に限って一度だけ使うことを許可するわ……。三人の中で一番適合係数の高いあなたなら死ぬことはないはずだから……」

 

 あたしとエルフナインはくれぐれも安易に使わないようにマリアに忠告した。

 それでも、彼女にこれを渡したのは、マリアの切実な想いを汲んだからだ。

 

「――そういうことね。わかったわ。どうしてもという場面がもしも来たら使わせてもらう。フィリア、エルフナイン、ありがとう」

 

 マリアは危険性を知った上で、《Type:R》をカバンの中にしまった。

 

「ところで、フィリア。この部屋の中、随分と甘ったるい匂いがするけど……、お菓子でも作ってるの? ん? この液体から匂いがするわね」

 

 マリアはあたしの前に置いてあった、琥珀色の液体の匂いを嗅ぎながら、そう言った。

 あー、それは――。

 

「それは、あたし専用のLiNKERみたいなものよ。《Type:G》とでも名付けておきましょうか」

 

「いや、どう見ても蜂蜜か水飴に見えるんだけど……」

 

 マリアは訝しい顔をして、《Type:G》を眺めている。

 パヴァリアの錬金術師、特にサンジェルマンたち幹部や局長のアダムといつか戦うようなことがあったとき、あたしのファウストローブだけでは戦力不足が否めなかった。

 

 だから、あたしは一種のドーピング薬を作った。これが切り札になれば良いけど……。

 

 

 それからしばらく、《Type:G》と新型LiNKERの研究に没頭していると、弦十郎からバルベルデ共和国に到着したという連絡を受け、あたしは司令室へ向かった。

 

 さて、異端技術を軍事利用している不届き者を懲らしめないとね……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ホントにアルカノイズを使ってるなんて……。何を考えてるのかしら?」

 

 あたしはバルベルデの軍隊が繰り出すアルカノイズを切り裂く作業を続けていた。

 

「まったくだ。胸糞悪いぜ」

 

 背中合わせでクリスがあたしの言葉に同意する。

 クリスの遠距離攻撃とあたしの近距離攻撃のコンビネーションでアルカノイズはもちろん、バルベルデの兵器にも多大なダメージを与えていた。

 

 

 あらかた、地上を制圧したと思ったら、巨大な飛行戦艦が錬成陣の中から出てきた。

 

 地上はマリアと調と切歌に任せ、あたしと翼とクリスと響はヘリコプターの上に乗り、飛行戦艦と対峙する。

 

「コード……、ファウストローブ……」

 

 戦況も佳境に入ったことを察したあたしはファウストローブを身に纏って、攻撃の範囲を広げた。

 

「フィリア! あのデカブツにデカイのぶつけるぞ!」

 

 翼と響の活躍により飛行戦艦の中に居た軍人を外に連れ出すことに成功したので、あたしとクリスは戦艦にトドメを刺そうと身構えた。

 

 ――MEGA DETA PHOENIX――

 

 クリスの繰り出した巨大なミサイルにあたしが錬金術で錬成した炎の翼を纏わせて巨大飛行戦艦に向けて放つ――。

 

 

 轟音が鳴り響き、飛行戦艦は爆発して炎に飲まれた。

 

 

 

「国連軍が到着したみたいね……」

 

「ああ、とりあえず、あたしらの任務は完了だな」

 

 あたしたちは次の軍事拠点が判明するまで待機となった。

 ストレスが溜まる戦いね……。

 

 

 

 待機中にあたしたちはシャワーを浴びて休憩することにした。

 

「S.O.N.G.が国連直轄の組織だとしても、本来であれば武力での干渉は許されない」

 

「だが、異端技術を行使する相手であれば見過ごす訳には行かないからな……」

 

 マリアと翼の言うとおり今回の我々の出撃は異例の事態である。そもそもシンフォギアを使用しての武力行使など普通の紛争地域ではもってのほかなのだ。

 

「アルカノイズの軍事利用……」

 

 クリスは先ほどからやはり元気がない。無理もないことだが……。

 

「リア姉、LiNKERの持続時間ってもう少し長くならない?」

 

「戦える時間がもう少し長くなれば私たちももっと役に立つことが――」

 

 着替えを始めようとしていた、あたしに調と切歌が声をかけてきた。この子もマリアと気持ちは同じみたいね……。

 

「今、急ピッチで研究を進めてるの。もう少し待ってて。でも心配しないで大丈夫よ。今のままでもあなたたちは十分よくやってるから」

 

 あたしは調と切歌の背中に手を置いて、そう声をかけた。

 

 

 

 みんなの着替えが終わったと思っていたが、クリスがまだシャワールームから出てきていないかった。

 

「どうしたのかしら……?」

 

あたしは心配になり、彼女の様子を見に行った。

 

 

「くっ! クソッタレな想い出ばかりが領空侵犯してきやがる!」

 

 クリスはずぶ濡れのまま体も拭かずに苦しそうな表情を浮かべていた。

 

「クリス……、風邪引くわよ」

 

 あたしはバスタオルで彼女の体を拭く。

 

「ごめんな。さっきは虚勢を張ったけど……、やっぱこの国にはいい思い出がねーから、ちょっと辛ぇや……」

 

 クリスはぽつりぽつりとそう言って、目を瞑った。両親を失って、地獄のような生活を送った彼女にはやはりこの国は精神的に悪影響を与えているようだ。

 

「大丈夫よ。あなたはもう一人じゃないんだから」

 

「――フィリア。悪い……、少しだけこうさせてくれ」

 

「ちょっと、クリス……」

 

 クリスはあたしの胸にもたれるようにして覆いかぶさった。こういうのは(あの子)の方が得意なんだろうけども……。

 

 しばらくの間、あたしはクリスを抱きしめた。

 こうすることで少しでも彼女の心が癒されることを願って――。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「新たな軍事拠点が判明した。次の任務を通達するぞ。目標は化学兵器を製造するプラントだ。川を遡上して上流の軍事施設に侵攻する。周辺への被害拡大を抑えつつ、制圧を行うんだ」

 

 弦十郎が次の任務をあたしたちに告げる。

 

「「了解!(デス)」」

 

 装者たちは声を揃えて返事をして、出撃の準備に向かった。

 

「ねぇ、クリスちゃん。長いことフィリアちゃんと出て来なかったみたいだけど、なーにしてたのっ?」

 

 響がクリスにシャワールームから出てくることが遅かったことについて聞いてきた。

 

「うっ、うるせぇな。何でも良いだろーが」

 

 クリスは顔を真っ赤にして、響の言葉に反応する。仕方ない子ね。

 

「ちょっと、クリスがシャワーを浴びすぎてのぼせちゃったみたいだから、あたしが介抱しただけよ。クリスもそんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない」

 

 あたしはクリスのフォローをした。

 

「クリスちゃん、私もよく湯あたりするから、恥ずかしくないよ!」

 

「雪音、疲れが溜まっているのか? 何かあったら早めに言うのだぞ」

 

「あっああ。悪い……」

 

 響と翼はあたしの話を聞いて納得してそう声をかけた。クリスはキョトンとした顔をしていたが、一言だけそう呟いた。

 

「じゃあ、あなたたちは気を付けて。なるべく犠牲が出なければいいわね」

 

 あたしはそう言って司令室から装者たちを見送った。

 そう、あたしには別に任務があるのだ。

 

 

「藤尭、友里、準備はいいかしら?」

 

「フィリア、大丈夫なのか? やばい連中も来てる可能性があるんだろ?」

 

 あたしが声をかけると藤尭が不満そうな声を出す。オペレーターの彼としては、武闘派の連中に絡まれる可能性は避けたいのだろう。

 

「もう、情けない声出さないの。フィリアちゃん、もしもの時はよろしくー」

 

 肝が座っている友里は拳銃のメンテナンスを終えて、準備万端のようだ。

 

「ええ、任せなさい。命だけは守ってあげるから。藤尭は振られたばかりで死ぬのも可哀想だし」

 

「げっ、フィリア……、どうしてそれを!?」

 

「えー、何なにー。面白そうな話じゃん。詳しく教えてよー」

 

 あたしが祭りの日に藤尭が振られた話をしようとすると彼は動揺して、友里は楽しそうな顔をした。

 

「それが藤尭ったら、お祭りの日に花火で――」

 

「わぁっ! やめてくれっ! 頼むから言わないでくれっ!」

 

 藤尭は慌ててあたしの口を塞いできた。

 彼がここまで動揺するのも珍しい。

 

 こうして、あたしたちとS.O.N.G.のエージェント数人はもう一つの任務へと向かった。

 

 

 

 化学兵器のプラントの制圧はもちろん重要な任務だが、これを陽動としてあたしたちはバルベルデ共和国のあるオペラハウスに来ている。

 

 実はこのオペラハウスを中心にある結界のようなモノが邪魔をして衛星からの補足が不可能になっていたのだ。

 

 つまり、この場所こそバルベルデ共和国が軍事的に重要視している拠点の可能性が高いということになる。

 

 そして、パヴァリア光明結社の狙いのモノがここにある可能性が高いのだ。

 

 なぜなら、パヴァリアがバルベルデ共和国にアルカノイズを提供した理由は我々に彼らを制圧させ、彼らの動きを制限し、このオペラハウスの場所を特定するためなのではないかという可能性が浮上したからである。

 

 あたしは以前にティキの身体や部品の行方について調査したことがある。

 その中の候補地にバルベルデが確かにあった。

 故に、あたしはバルベルデ共和国にティキの身体が隠されていると推理した。

 

 ならば、この騒動の最中にパヴァリアは動く。おそらく、幹部が……。

 

 出来れば、遭遇せずにティキの身体を回収出来ればいいのだけど……。あたしたちはそういう事情でオペラハウスを目指したのである。

 

 

「遅かったみたいね……、連中は既に地下に侵入してるみたいよ……」

 

 オペラハウスに着いたとき、既に時遅く、バルベルデの要人たちはパヴァリアの幹部たちに殺されており、彼女らは地下に侵入していた。

 

 そんなわけで、あたしたちもこっそりと連中の後を追うこととなった。

 

 

 地下に居たのはパヴァリアの幹部、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティの三人。

 

 そして彼女らが狙っているオートスコアラーの《ティキ》の身体もそこにはあった。

 

 ここでの戦闘は避けたいので、あたしたちは彼女らの写真を撮影するに留める予定だった。

 藤尭のパソコンの音が鳴って彼女らにあたしたちの存在がバレるまでは――。

 

「あっ、しまった!」

「撤収準備!」

 

 藤尭の言葉と同時に友里は撤収を決定してサンジェルマンたちに発砲する。

 

「友里、あなたも逃げなさい。ここはあたしが――」

 

 あたしはエージェントたちを先に逃がすためにサンジェルマンたちの前に立ちはだかる。

 

 

「久しぶりね……、サンジェルマン……」

 

「フィリア=ノーティス……!」

 

 あたしは久しぶりに彼女たちと再会した。

 

 彼女ら三人を相手にどこまでやれるかわからないけど、やれるだけやるしかないわね――。




フィリアとサンジェルマンたちが早くも遭遇しました。
次回もよろしくお願いします!
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